CONTENTSコンテンツ

金融緩和継続による循環物色で総じて堅調
  • MRA商品市場レポート

2020年8月5日 第1797号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「金融緩和継続による循環物色で総じて堅調」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:米追加経済対策協議の難航報道を受けたドル安や、米統計改善を受けて上昇。

OPECプラス増産を受けて調整売りに押されるが、朝方のAPI統計を参考にすると、米石油統計では市場予想を上回る原油在庫の減少が確認される可能性があるため、結局もみ合い。

◆非鉄金属:目立った材料がない中、前日の流れを受けて上昇、米国時間に入ってからのドル安でさらに上昇。銅、錫は利益確定売りに押される。

金融緩和継続に伴う循環物色で堅調地合い維持。但し中国の洪水の影響大きく、上値も重い。

◆鉄鋼・鉄鋼原料:ブラジルの7月の鉄鉱石輸出小幅減少を受けて鉄鉱石価格上昇。供給に懸念が少ない原料炭は、中国南部の洪水の影響による建設需要低迷で小幅安、鉄鋼製品は高安まちまち。

南米の供給懸念は継続しており堅調も、中国南部の洪水の影響で上昇余地を限定、結局高値もみ合い継続。

◆貴金属:金価格は上昇し、スポットベース価格は初めて2,000ドルを超えた。銀は金価格の上昇を受けて大幅に上昇、プラチナ、パラジウムもつれ高となった。

金は達成感があるためいったん売られる展開を予想。金価格の調整を受けてその他の貴金属も本日は調整売りに押される展開に。

◆穀物:下落。トウモロコシは作柄の改善、大豆も同様だが大豆油の下落が追加要因。小麦は黒海周辺諸国の生産が回復が売り材料視された。

新規材料に乏しく、生産状況の改善期待が高まっているため軟調推移か。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は畜産や穀物セクターが売られたが、その他の商品は物色されて総じて堅調な推移となった。金融緩和の継続に伴う金融相場の様相を呈し始めており、割安な商品が循環物色され始めているといえる。

このコラムでも指摘してきた金だが、スポットベースで初めて2,000ドルを超えた。価格上昇の背景は米国の実質金利緩和であるが、TikTok問題など、米中対立が昨日は材料となった。

昨日最も上昇したのが欧米の天然ガス。気温の上昇に伴う需要増加はあるが、DOE見通しでは8月頃から需給が供給不足に転じている可能性があることも材料となっているようだ。

市場は新しい材料待ちの状態だが、米国で続いている追加経済対策の動向を注視している。基本的に合意すると予想されるがそれまではまだ紆余曲折がありそうだ。

※ニュース解説は、不定期ですがFBでも行っていますので、ご興味のある方はフォローをお願いします。https://www.facebook.com/Market.Risk.Advisory/

※レポートのお申込みはこちらから
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

※商品市場分析入門のお求めはこちらから
https://www.amazon.co.jp/dp/447810445X/

【本日の見通し総括】

本日も米追加経済対策の決議動向をにらみつつ、金融緩和継続に伴う割安銘柄物色の流れで総じて堅調な推移になると予想する。

本日発表予定の手掛かり材料としては米ADP雇用統計、米ISM非製造業指数に注目している。

雇用関連統計は経済の遅行指標であるが、それでも足元、米国の雇用環境の再悪化が意識されているため市場の関心は高い。

市場予想は前月比+120万件(前月+236.9万件)の大幅な改善が見込まれているが週間新規失業保険申請件数が増加に転じていることを考えると市場予想程の改善にならない可能性はある。

また、改善するとは言っても前月の水準の半分程度であるため、やはり雇用の改善ペースは徐々に頭打ちになってきていると考えるべきだろう。構造的な雇用環境の変化は不可避と見られ、一定数の失業者が出るのは仕方がない。

ISM非製造業指数は個人消費の先行指標でもあるが、市場予想は55.0(前月57.1)と恐らく雇用環境の悪化を背景に悪化見通しである。

【昨日のトピックス】

経済統計はコロナからの回復による前月比プラスがあまり材料にならなくなり、前年比での改善がどこまでか、に焦点が移っているがそれでもマイナスの状態が継続しており、経済回復の足取りは重い。

コロナは全く収束する兆しが見えず、北半球では感染者数が再び増加に転じている。このままだと再びロックダウン地域が拡大し、売上減少で破綻する企業も出てくることになると予想される。

そのため、追加経済対策を打たねばならなくなっているが、米国ではこの協議が難航している。選挙年ということもあり、共和党・民主党とも「差別化」をしなければ得票につながらないためだ。

世界中そうであるが、有権者のためというよりは自身の当選のために政策を遂行している感は否めない。今回、難航しているポイントは、共和党の追加対策の規模が不十分である、と民主党が主張していることによる。

とはいっても交渉が決裂した場合両党にとって選挙にマイナスにしかならないため、必ず何かしらの合意に至ると考えられるため、大きな混乱にはならないだろう。

そんな中でトランプ政権はTikTokの排除を進めている。この手続きが傲慢であり、横暴だ、と中国側が主張しているが、中国共産党政府がTiktokに命令すれば、保有する情報を取得できる体制になっていることが、安全保障面で問題になっていることが背景にあると考えられる。

というのも、TikTokの膨大な「人間が体を動かしている情報」は、人間の体の動きに関する情報であるため、人の行動認識に役立ち、更には軍事転用が可能であるからだ。規制のルールに則っていないなどの指摘はあっても米政府が強硬しているのはそのためである(それを言い出すと、共産党政府が命令するとデータをすべて差し出さなければならない中国の体制のほうが先に問題である)。

こうした「場外戦」は経済活動には間接的に影響するにとどまるため、今後も過熱することになり、その都度、リスク回避の動きが強まることになるだろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、ロックダウンを再開している地域も見られ、完全に元の状態に戻るには、ワクチン・治療薬の開発が必須に。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(▲3.0%→▲4.9%)ている。2021年に関しても+5.8%→+5.4%と下方修正した。

結局、コロナウイルスの影響が2021年意向も残存することが前提となっている。ただ、この冬場の再ロックダウン時の経済への影響は、2020年初に見られたほどの過激なものにはならず、半分程度にとどまるケースをメインシナリオとしている。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。現在でも感染は世界的に拡大しており、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

・米大統領選挙を巡る混乱。

反中に転じたバイデン氏が今のところ有利に選挙戦を進めているとみられるが、バイデン勝利の場合、より他国と連携して中国包囲網を強めるとみられるため、貿易量の減少を通じて景気循環系商品価格の下落要因に。

また、バイデン勝利の場合増税への懸念が強まるため株価にはマイナスと判断されており、この場合、株下落に伴う逆資産効果で商品価格の下押し要因となる可能性。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のFTA締結なしEU離脱のリスク。EUとFTAで合意できなければ関税引き上げが発生し、合意なき離脱に匹敵する混乱となる可能性(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウン解除の動きと量的緩和・信用緩和を受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇した。米国の経済対策協議が難航しているとの報道を受けてドルが下落を始めたこと、米経済統計が市場予想を上回ったことが材料となった。但し上昇幅は70セント程度であり、大幅な上昇というわけではない。

【原油価格見通し】

原油価格は各国の経済統計が徐々に強弱が入り混じった状態になっており、足元の需要の回復力は強いとは言えない(ないしは中期的に改善持続が可能かどうかは疑問)。また、8月からOPECの増産が始まっていること、世界的なコロナの再拡大懸念を受けてやや軟調な推移になると考える。

但し、各国とも経済対策を行っていること、金融緩和を積極的に実施していることからファイナンシャルな面で価格は下支えされると予想する。

ファイナンシャルな面、という意味では50日移動平均線が200日移動平均線を上抜けするいわゆるゴールデンクロスがこの1~2週間以内に訪れる可能性があり、仮にそうなればテクニカルに価格が上昇するリスクは指摘しておきたい。

チャート的には典型的な三角持ち合いの状態になっている。上下どちらかに抜けた場合、テクニカルに相場が大きく変動する可能性がある。

しかし、米中対立やそれに伴う経済活動への悪影響、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、このタイミングでプレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、上昇リスクよりは、価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべきと考える。

なお、DOEは2019年の水準に需要が回復するのは2022年頃になると予想している。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(27ドル~50ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後(ワクチン・治療薬の開発完了後)の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

現在すべての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

ただ、今のところ今年の冬に感染拡大の第2ラウンドが来る可能性は高く、むしろメインシナリオになりつつある。この場合、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

ただ、コロナに対する知見が増えたことから、この冬にみられたような大規模なロックダウンは回避されると予想され、影響は懸念したほどにはならないとみられる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は前日比小幅に下落した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きとなっていたが、ここにきて上昇も、下落もしなくなってきている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。

6月の中国の石炭輸入は前月から回復したが、前年水準を▲6.7%下回った。中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、輸入を抑制する可能性を否定していない。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

しかし、水準を切り上げていた中国の港湾在庫は急速に減少し、過去5年レンジを大きく下回っていることから、一定の輸入需要が見込めると考えられさらなる価格下落余地も限定される。

石炭期間構造はコンタンゴで限月交代によるジャンプも起きにくく、価格変動性は10%程度(VaRの概念では、現在の価格を50ドル程度とすれば、7割の確率で1年後の価格が±5ドル程度しか変化しない)と通貨の変動率程度まで変動性が低下している。

結局、燃料炭価格は狭いレンジの中で、低いボラティリティを維持しつつ現状水準での推移を続けると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲2割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国小売売上高 前年比▲11.4%の17兆2,256億元(1-5月期▲13.5%の13兆8,730億元)、6月単月でも▲1.8%の3兆3,526億元(前月▲2.8%の3兆1,973億元)とマイナス幅を縮小している。

しかし、工業セクターや固定資産投資と異なり、最終需要は弱いものと考えられる(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTI・Brentともロングが減少、ショートが増加した。景気回復ペースの鈍化もあって弱気のポジション取りに方向転換しているようだ。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが676,822枚(前週比 ▲11,088枚)ショートが144,253枚(+5,219枚)ネットロングは532,569枚(▲16,307枚)

Brentはロングが267,765枚(前週比▲5,722枚)ショートが76,140枚(+15,177枚)ネットロングは191,625枚(▲20,899枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属は銅と錫を除いて上昇した。特段材料があったわけではない中でアジア時間から上昇、米国時間のドル安進行でさらに水準を切り上げた。

結局のところ、金融緩和継続に伴う循環物色で、割安とみられる非鉄金属が買われていると考えるのが妥当だろう。銅、錫はLME非鉄金属セクターの中では年初来上昇率が昨日時点で+4.6%、+3.5%と高い。次いで亜鉛+2.4%、ニッケル▲0.5%、アルミ▲1.9%、鉛▲2.1%となる。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は高値圏を維持すると見る。北半球の夏場の大規模ロックダウンは回避される見通しであることや、南半球を中心市とした生産側がコロナの影響で減産を余儀なくされる状態が続くと考えられることから。

金価格の上昇余地が限定され始める中、「割安な鉱物セクター」「非鉄金属の中でも割安な金属」の再物色が起きる可能性は低くない。

なお、今回の米中の公共投資は、5G分野やEVステーションの整備、通常の公共投資が行われる見込みであり、銅、亜鉛、アルミの需要がその恩恵を受けると予想される。また予算を確保して行うため、需要としては「堅い」需要となる。

割安に推移してきたアルミは中国の製錬キャパシティの拡大が2020前年比で▲130万トンの減少が見込まれ、アルミナの供給能力も、中国で180万トン程度が停止していることから、秋口にかけての上昇リスクは小さくないとみる。

しかし、今年は北半球の冬場に再びロックダウンとなる懸念が拭えないため、北半球の夏場の非鉄相場は強いものの、大統領選後の冬場は南半球が夏になり、供給制限が緩和される見込みであることを考えると、年後半は需給両面で価格が下落するリスクは小さくないと考えている。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

しかし、コロナウイルスへの中国の対応(情報隠ぺい)を受けて、欧米の中国に対する今までの積年の不満が、香港・新疆ウイグル自治区問題、台湾問題で爆発しており、今後、欧米が協調して中国からのデカップリングを進める可能性は高い。むしろメインシナリオだろう。

反中に転じたバイデン候補が勝利した場合、欧州と連携して中国包囲網を強めると予想される。結果、貿易量の減少を通じて非鉄金属価格には下押し圧力が掛かることになる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・7月中国製造業PMIは51.1(前月50.9)と改善した。内訳をみると、生産が小幅に回復(53.9→54.0)したが、新規受注の回復が大きかった(51.4→51.7)。輸出向け新規受注の持ち直し(42.6→48.4)と、国内の恐らく公的需要の増加が影響したとみられる。

一方、完成品・原材料在庫水準はやや積み上がり傾向がみられており、原材料・完成品在庫とも水準を切り上げた。これにより、新規受注・在庫レシオは水準を小幅ではあるが切り下げており、需給バランスの若干の緩和を示唆、価格の下押し要因となろう。

・8月中国銅線生産者 99.9%(前月101.6%、過去4年平均 87.1%)

・7月中国銅棒生産者 76.8%(78.7%、74.6%) 銅板生産者 63.2%(65.9%、69.8%) 銅管生産者 87.2%(89.3%、80.9%)

・6月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 89.0%(前月90.9%) 中規模事業者 71.9%(73.3%) 小規模事業者 74.3%(73.1%)

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国固定資産投資は前年比▲3.1%の28兆1,603億元(1-5月期▲6.3%の19兆9,194億元)と回復基調を持続。

しかし、公的セクターの回復(▲1.9%→+2.1%)によるところが大きく、規模の大きな民間部門は▲7.3%(▲9.6%)と回復ペースは緩慢。

・1-6月期の中国不動産開発投資は前年比+1.9%の6兆2,780億元(1-5月期▲0.3%の4兆5,920億元)とプラス成長に転じた(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・6月の中国の銅地金輸入は前年比+98.8%の66万トン(前月+20.8%の44万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+8.4%の159万4,000トン(▲8.3%の169万ト)と、地金輸入が大幅な増加、銅鉱石輸入は減少傾向となっている。

銅のTC/RCは7月13日段階で54.5ドルと2014年以降の最低水準になっており、鉱石市場の需給がタイト化しており、中国の消費者は精錬品を物色している。

低下していた銅現物プレミアムも上昇しており、少なくとも北半球の夏場はコロナの影響が緩和しているため、この状況が続くことに。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・7月24日付のLMEロング・ショートポジションは、総じてネット買い越し幅を拡大する展開となった。銅と亜鉛、アルミはショートの買戻しが継続している。

ロングはおそらくバッテリーの交換需要が一巡したこともあり、鉛のロングが減少した。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は77.6億ドル(前週68.3億ドル)と、買い越し幅を拡大している。買い越し幅の増加率は+13.5%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで1,571千トン(前週1,388千トン)と買い越し幅を拡大した。買い越し枚数の増加率は+13.2%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は小幅下落、中国鉄鋼製品先物価格は直近限月が下落、中心限月が上昇した。

ブラジルの7月の鉄鉱石輸出が前年比▲1%と小幅減少したことが供給面でのリスクを意識させ、鉄鉱石価格を押し上げ。

国内増産で供給懸念が後退している原料炭は小幅下落、鉄鋼製品は中国南部の洪水の影響に伴う建設需要停滞でまちまち。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。南米の生産がコロナウイルスの影響で計画比下振れする可能性が高いことに加え、中国政府のインフラ投資が今後も継続する見込みであることから、中国国内の足元の鉄鋼原料需給並びに今後の需給見通しがタイト化しているため。

但し、中国南部で発生している洪水の影響が継続、建設需要の減少が見込まれること、米中の対立が激しさを増しており最大消費国である中国の景気に悪影響を及ぼす可能性が高いことから、上値も重い。

また、上昇を続けてきたバルチック海運指数は急速に水準を切り下げた。同指数は石炭輸送状況の影響を強く受けるが、ブラジル・豪州の中国向け鉄鉱石輸出が急速に減少している影響が顕在化しているためと考えられる。

減少を続けてきた鉄鉱石・鉄鋼製品在庫は季節性もあり、増加に転じている。中国の公共投資・ブラジルの供給懸念で需給がタイト化していた鉄鉱石市場であるが、徐々に環境に変化がみられることは意識しておきたい。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。但し、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であること、洪水の影響による需要の減速で上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均程度での推移が続いていたが、先週から水準を切り下げ、需給はタイト化している。

原料炭の先物期間構造としては、バックワーデーション幅が縮小しているが、期先が上昇する形での幅縮小であり、いわば限界生産コストが上昇している可能性がある。

結果、原料炭価格はしばらくの間、高止まりする公算が強まっている。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・7月の中国鉄鋼業PMIは49.2と前月から小幅に低下した。これを見るに鉄鋼業界自体は比較的安定しているとみられる。

7月の中国南部での洪水によって鉄鋼市場も影響を受け、需要の下押し要因となった。新規受注は公共投資などの影響で回復しているが、まだ50を下回っている。なお、海外市場の再開から輸出向け新規受注は大幅に増加している(31.2→42.8)。

生産は洪水の影響で原材料の確保が難しく、57.5→54.5と減速。在庫水準も原材料・完成品在庫とも低下した(各々、44.2→43.2、44.3→40.2)。

引き続き鉄鋼市場の需給はタイトな状態が続くとみられ、価格は高値圏での推移を維持する公算。

・中国河北省の高炉稼働率は7月31日時点で78.8%(前週79.0%)と小幅に低下した。しかし、過去5年平均を下回った状態が続いており高炉の稼働率は高止まりしている。

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国固定資産投資は前年比▲3.1%の28兆1,603億元(1-5月期▲6.3%の19兆9,194億元)と回復基調を持続。

しかし、公的セクターの回復(▲1.9%→+2.1%)によるところが大きく、規模の大きな民間部門は▲7.3%(▲9.6%)と回復ペースは緩慢。

・1-6月期の中国不動産開発投資は前年比+1.9%の6兆2,780億元(1-5月期▲0.3%の4兆5,920億元)とプラス成長に転じた(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、6月は188万トンと記録的な水準に。国内生産は5月時点で9,227万トンと記録的な水準。一方で鉄鋼製品の輸出は370万トンと過去5年レンジを下回り、この5年の最低水準。圧倒的に国内需要が旺盛であることを示唆。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+15.0万トンの1,544.6万トン(過去5年平均 1,042.5万トン)となった。例年よりも在庫水準は高く在庫は増加している。

・6月の中国の鉄鉱石・精鉱輸入量は過去2番目の水準となり、1億168万トンとなった。中国の港湾在庫の水準は絶対水準が過去5年平均を下回り、在庫日数は過去5年の最低水準で推移しており、やはり国内のインフラ向け需要が旺盛であることを伺わせる内容。

一方で週次の鉄鉱石輸入は6月に入ってから減少を始めており、ブラジルや豪州の鉄鉱石週間輸出も減少を始めている。さらに減速するかどうかはブラジルについてはコロナウイルスの感染拡大状況、豪州はコロナを巡る中国との対立次第であるが、仮にそうなった場合、さらに海上輸送鉄鉱石価格は上昇することに。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+190万トンの1億1,695万トン(過去5年平均1億2,057.6万トン)、在庫日数は+0.4日の23.6日(過去5年平均 29.3日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイト。しかし、徐々にではあるが緩和感が出始めている点は注意か。

・6月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比▲6.7%の2,528万6,000トン(前月▲19.7%の2,205万7,000トン)と前年比マイナスが続いており、減速し、過去5年平均程度まで落ち込んでいる。中国の石炭国内生産が増加しているためとみられる。

原料炭の輸入は5月は前年比▲19.1%の479万トン(前月▲15.4%の628万トン)と急減速した。おそらく国内生産が増加したことによるもの。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇し、スポットベースの価格が初めて2,000ドルを超えた。米国の経済対策協議が難航していることなどを材料に株価が調整する中で長期金利が低下、実質金利が低下したことが材料。

Tiktokを巡る米国の対応と、それに伴う中国との対立も材料となった。

銀÷金在庫レシオの低下を受けた金銀レシオの低下で銀価格は金を超える大幅な上昇。南米の鉱山からの副産物としての生産減少観測も支えに。

プラチナは銀価格の上昇を受けて上昇、パラジウムも金高、米国時間終盤の株高を受けて水準を切り上げた。

【貴金属価格見通し】

金銀は高値圏を維持すると考える。FRBが実質金利をマイナスにする緩和策を容認していることもあり、かつ、2022年までは現状の政策が維持される見込みであること、米中の対立が経済制裁には至らないものの、領事館の閉鎖など、徐々に具体的な行動に移り始めており、安全資産需要が高まると予想されることが背景。

ただ、実質金利がさらに下落するには原油価格が高騰するなどの材料が必要であるが、期待インフレ率が原油価格とは乖離して上昇を始めており、実質金利を押し下げている。しかし、やはり原油価格の上昇余地は限定されるとみられることから、さらなる大幅な上昇は見込めないため、実質金利面での金価格の上昇余地は限定されるとみる。

また、名目金利に関してはそれでもまだ0.6%程度、米国の10年金利は下げ余地があるため、全く金融政策の影響がないとは言えない。

そのため、割安感のある銀が代わりに物色されることになるが、すでに年初来のパフォーマンスが金を上回っているため、目先、銀の上昇余地は限定されることになると考える。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスク・プレミアム)は341ドル(前日比+31ドル)。

一方、現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,620~1,650ドル程度まで上昇しており、緊急時の換金による下落余地が限定されている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、77.6倍と昨日は大幅に低下した。

過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当であり、そろそろ銀単体で上昇するのは難しかろう。

但し、コロナの影響で亜鉛や鉛など、銀の主要生産物を生産する鉱山の稼働が低下する恐れがあり、需給面が価格を押し上げる可能性が出てきた。

しかし、市場参加者が実際に供給不足になっているかを判断する材料としては、取引所在庫の水準で判断するしかない。更に銀在庫が減少する、ないしは金在庫が増加する、あるいはその両方が必要になる。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになると予想する。

特に、銀の金に対する「出遅れ感」は解消しているため、今度は循環物色でプラチナが上昇する可能性は高いと考えている。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、自動車セクターの回復は緩やかなものにとどまる見通しであることから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

7月の米自動車販売は年率1,452万台(市場予想 1,400万台、前月 1,305万台)と、市場予想を上回る回復となった。ただし、コロナ以前の水準に自動車販売が戻るには相当の時間がかかる見込みであり、PGM価格の押し上げ効果は限定的なものとなろう。

中国の6月の自動車販売は前年比+11.6%の230万台(前月+14.5%の219万台)と前月比プラスとなったが、前年比では伸びが減速した。引き続き年初来の販売累計は▲16.9%の1,026万台となっており、コロナの影響に伴う販売遅れを取り戻せていない状況。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが312,588枚(前週比 ▲21,649枚)、ショートが75,787枚(+7,986枚)、ネットロングは236,801枚(▲29,635枚)、銀が74,401枚(▲15,609枚)、ショートが47,093枚(+3,838枚)、ネットロングは27,308枚(▲19,447枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが33,342枚(前週比 +2,088枚)ショートが10,930枚(+88枚)、ネットロングは22,412枚(+2,000枚)

パラジウムが5,300枚(+608枚)、ショートが2,184枚(+174枚)ネットロングは3,116枚(+434枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は下落した。

トウモロコシは生産地の生育環境の改善によって作柄が例年に比べて高い水準を維持したことが材料となった。

大豆の作柄は例年の水準を大きく上回っていることや、大豆油が下落したことが材料となった。

小麦は黒海周辺国の生産改善が材料となっている。但し、レバノンの爆発事故で小麦が使えなくなったことから、小麦を輸入すると報じられていることは買い材料となっている。

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は、米経済活動の回復に一服感が出てきていることに伴う燃料向け需要の減少観測や、米国と中国の対立激化、生産地の生育環境改善で軟調な推移になると予想。

大豆は中国が米国との通商合意を履行する方針であるものの、場外戦で領事館閉鎖などの具体的なアクションがみられていること、生産地の環境改善が価格を下押しすると予想。

小麦は北米の冬小麦の作柄が良好ではなく、そもそも取引所在庫の水準が低いが、ここにきて黒海周辺諸国の生産が増加するとの見方が出始めており上値が重くなってきた。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、現在はインド・パキスタン・イラン、エチオピア・ソマリア・ケニアにまたがる地域で猛威を振るっている。

懸念はアフリカ西部にバッタが飛来する可能性が指摘されている点。こうなると影響がアフリカ北部全域に広がることになり、食料危機を通じて北アフリカの治安が不安定化するリスクは無視できない。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億Bu(150億4,085万Bu、前月159億9,500万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,430万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億2,400万Bu(18億4,372万Bu、18億7,700万Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 24億4,800万Bu(27億3,052万Bu、33億2,300万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,389万Bu、3億9,500万Bu)小麦 9億4,200万Bu(9億5,019万Bu、9億2,500万Bu)

・6月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 52億2,400万Bu(49億5,862万Bu、79億5,300万Bu)大豆 13億8,600万Bu(13億9,113万Bu、22億5,300万Bu)小麦 10億4,400万Bu(9億8,661万Bu、14億1,200万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが286,534枚(前週比 +19,913枚)、ショートが388,953枚(+23,478枚)ネットロングは▲102,419枚(▲3,565枚)

大豆はロングが201,291枚(+1,325枚)、ショートが88,248枚(+9,781枚)ネットロングは113,043枚(▲8,456枚)

小麦はロングが121,339枚(▲1,712枚)、ショートが104,681枚(+436枚)ネットロングは16,658枚(▲2,148枚)

◆主要ニュース


・7月東京消費者物価指数 前年比+0.6%(前月+0.3%)
 除く生鮮+0.4%(+0.2%)、除く生鮮エネルギー+0.6%(+0.4%)

・7月日本マネタリーベース 前年比+9.8%576兆3,000億円(前月+6.0%の544兆233億円)

・6月ユーロ圏生産者物価指数 前月比+0.7%(前月▲0.6%)、前年比 ▲3.7%(▲5.0%)

・6月米製造業耐久財受注改定
 前月比+7.6%(速報比+0.3%、前月改定+15.1%)
 除く輸送機器+3.6%(+0.3%、+3.6%)
 製造業新規受注資本財非国防除く航空+3.4%(+0.1%、+1.6%)

・7月米自動車販売年率 1,452万台(前月 1,305万台)

・6月米製造業新規受注 前月比+6.2%(前月+7.7%)
 製造業受注除く輸送機器+4.4%(+2.6%)

・ECBレーンチーフエコノミスト、「最近発表された経済統計を深読みしすぎるべきではない。新型コロナウイルスの感染症例が世界的にまた増えていることで、家計と企業が当面圧迫されるだろう。」

・中国と米国が今月15日に防疫合意の順守を協議。

・中国政府、「Tiktok米事業の強制売却は強奪だ。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・Q220 BP
 石油換算総生産量 252万5,000バレル(前期257万9,000バレル、前年262万5,000バレル)

 液体石油生産 136万6,000バレル(130万6,000バレル、130万1,000バレル)

 天然ガス生産 6,725MCFD(7,387MCFD、7,680MCFD)

 CAPEX 30億6,700万ドル(38億6,100万ドル、56億5,400万ドル)

・API石油統計 原油在庫▲8.59MB、クッシング+1.63MB
 ガソリン▲1.75MB、ディスティレート+3.82MB

・DOE米在庫統計市場予想 原油▲2,309KB(前週▲10,611KB)
 ガソリン▲534KB(+654KB)
 ディスティレート+465KB(+503KB)
 稼働率+0.12%(+1.60%)

・レバノン ベイルートで大規模爆発。73人が死亡、3,700人がけが。

【メタル】
・独Wieland Group、Marjin IncとNasco Incの買収により、米国の錫メッキ事業を拡大。

・6月チリ銅生産 前年比▲0.7%の466,500トン

・金スポット価格が初めて2,000ドルを上回る。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +8.80%/ ▲36.31%
2.銀 ( 貴金属 )/ +7.02%/ +45.67%
3.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +4.38%/ +0.18%
4.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +3.92%/ +3.69%
5.欧州排出権 ( 排出権 )/ +2.72%/ +9.22%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
65.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ ▲3.42%/ +22.12%
64.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲2.91%/ ▲20.50%
63.CBT小麦 ( 穀物 )/ ▲2.45%/ ▲9.04%
62.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲1.71%/ ▲16.36%
61.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲1.57%/ ▲12.48%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,828.47(+164.07)
S&P500 :3,306.51(+11.90)
日経平均株価 :22,573.66(+378.28)
ドル円 :105.72(▲0.23)
ユーロ円 :124.78(+0.16)
米10年債 :0.51(▲0.05)
中国10年債利回り :2.94(▲0.01)
日本10年債利回り :0.02(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.55(▲0.03)
ビットコイン :11,214.45(▲169.08)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :29.50(+0.6)
エネルギー :28.49(+1.52)
ベースメタル :19.59(+0.39)
貴金属 :32.69(+1.3)
穀物 :35.46(+0.79)
その他農畜産品 :30.80(▲0.04)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :27.35(+0.61)
Brent :22.05(+0.02)
米天然ガス :65.79(+12.47)
米ガソリン :31.58(▲1.7)
ICEガスオイル :27.82(+0.06)
LME銅 :20.81(▲0.13)
LMEアルミニウム :17.27(+0.84)
金 :12.06(+1.26)
プラチナ :30.69(+0.14)
トウモロコシ :22.56(+1.85)
大豆 :12.06(+1.26)

【エネルギー】
WTI :41.70(+0.69)
Brent :44.35(+0.20)
Oman :44.09(+0.72)
米ガソリン :121.43(+0.12)
米灯油 :125.84(+1.75)
ICEガスオイル :372.75(+2.75)
米天然ガス :2.19(+0.09)
英天然ガス :19.79(+1.60)

【貴金属】
金 :2019.21(+42.23)
銀 :26.01(+1.71)
プラチナ :938.40(+17.38)
パラジウム :2141.51(+46.37)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,435(±0.0:5B)
亜鉛 :2,316(+18:11.5C)
鉛 :1,853(▲33:18.5C)
アルミニウム :1,749(+30:39C)
ニッケル :13,933(+199:45C)
錫 :17,860(▲62:30B)
コバルト :33,000(+2,800)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6450.00(▲28.00)
亜鉛 :2328.50(+18.50)
鉛 :1883.00(+14.00)
アルミニウム :1768.00(+23.50)
ニッケル :13985.00(+25.00)
錫 :17745.00(▲105.00)
バルチック海運指数 :1,385.00(+35.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :115.35(+5.91)
SGX鉄鉱石 :115.36(+1.57)
NYMEX鉄鉱石 :115.55(+1.34)
NYMEX原料炭スワップ先物 :110.5(▲0.50)
上海鉄筋直近限月 :3,771(▲9)
上海鉄筋中心限月 :3,843(+32)
米鉄スクラップ :265(▲6.00)

【農産物】
大豆 :883.75(▲13.75)
シカゴ大豆ミール :283.70(▲3.40)
シカゴ大豆油 :31.53(▲0.14)
マレーシア パーム油 :2892.00(+42.00)
シカゴ とうもろこし :308.25(▲9.25)
シカゴ小麦 :508.25(▲12.75)
シンガポールゴム :163.00(+0.70)
上海ゴム :10800.00(▲120.00)
砂糖 :12.78(+0.06)
アラビカ :121.05(+3.15)
ロブスタ :1404.00(+53.00)
綿花 :63.93(+0.40)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :49.70(▲0.18)
シカゴ生牛 :102.28(▲0.75)
シカゴ飼育牛 :144.70(▲0.18)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。