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週末売られた商品が買い戻される 方向感出難く
  • MRA商品市場レポート

2020年7月21日 第1789号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「週末売られた商品が買い戻される 方向感出難く」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:下落後上昇。統計改善ペースの減速や増産観測で売られたが、ユーロ高・ドル安を受けて上昇。

統計の改善ペース減速が価格を下押しするが、EU首脳会議が材料となりドル安が進行しやすく、ファイナンシャルな面で堅調推移を予想。

◆非鉄金属:統計改善ペースの減速を受けて軟調な推移だったが、LME指定倉庫在庫の減少と、ユーロ高・ドル安進行で上昇。

経済統計の減速はあるが、季節的な需給タイト化とEU首脳会議を材料としたユーロ高・ドル安進行で高値圏維持。

◆鉄鋼原料:小幅に下落。中国南部の洪水の影響が緩和せず、鉄鋼製品向け需要が減少していることが背景。

中国南部での洪水被害は継続しており、鉄鋼原料価格も小幅に水準を切り下げると予想。

◆貴金属:上昇。長期金利低下に伴う実質金利の低下と、ユーロ高・ドル安進行が材料となった。

ユーロ復興基金を巡る期待が継続しており、ユーロ高・ドル安となりやすいことは貴金属価格の上昇要因に。

◆穀物:トウモロコシは生産地の生産環境改善で軟調、大豆はパーム油価格の上昇を受けて上昇、小麦は輸出の減少で大幅下落。

トウモロコシ・小麦は軟調、大豆は小じっかり。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は週末と異なり、その他農産品や穀物が下落し、景気循環系商品が買い戻される流れとなった。特段材料があったというよりも、週末に価格が上昇した商品に調整売りが、売られた商品に買戻しが入った、と整理するほうが適切だろう。

現在、商品市場は方向感が出難くなっており、唯一明確に価格が上昇しているのは鉱物セクター。多くの鉱山が南半球に集中しており、コロナウイルスの影響で生産が滞っていることが材料となっている。

貴金属セクターも、特に米国の実質金利マイナスまで緩和する金融政策の影響で強い。ただ、金はそろそろ上値が重く、割安感が強い銀やプラチナが循環物色される流れとなっている。

本日の日経新聞でも紹介されているが、中国の景気の指標として「ドクター・カッパー」と呼ばれている銅であるが、非鉄金属セクターの中では錫と並んで価格上昇が突出しており、供給面がプラスアルファで意識されていることを伺わせるもの。

季節の北半球・南半球の違いにより、冬場に銅価格が下押しされる可能性はある。株式市場では「銅価格が上昇しているので、株価も上昇トレンドに入っている」というコメントも目にするが、銅価格の上昇が上昇トレンドに必ずしも入っている訳ではないことは、意識しておきたいところだ。

※日経新聞の記事はこちらから。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61638920X10C20A7I00000/?n_cid=SNSTW001

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【本日の見通し総括】

本日は、商品価格を変動させるような固有の材料に乏しいが、欧州の復興基金関連を受けた期待からユーロが上昇する流れとなっており、それに伴うドル安進行が、広くドル建て資産価格を押し上げる展開になると考える。

とはいえ、経済統計の改善幅にも減速感がみられ始めており上値も重く、結局はもみ合い推移になると予想される。

【昨日のトピックス】

この数日、市場ではEU首脳会議での経済再生のための「復興基金」の動向が価格を左右している。平たく言えば経済対策実施期待でユーロが上昇、それを受けたドル安がドル建て資産全般の上昇要因になっている、ということである。

初期の欧州委員の提案では、5,000億ユーロを返済の必要がない補助金とし、残りの2,500億ユーロを融資として提供する、としておりメルケル首相はこのスキームを強く支持している。

ただ、加盟国の間では補助金と融資のバランスをどうするか、で議論が紛糾しておりここだけ取り出すとユーロ高となる理由はあまりない。しかし、メルケル首相が指摘しているように、欧州当局者はそのスキームの詳細がどうなるかはとりあえず置いておいたとしても「合意させる必要があり、それ以外の選択肢はない」ということでは意見が一致しているようだ。

その中で昨日は、補助金を3,900億ユーロ、残りの3,600億ドルを低利融資とする方向に舵が切られたようだ。財政規律を重んじる欧州的にはあり得る妥協案といえるだろう。

しかし、これらの材料はこの数日で織り込み済みとも言え、合意後はむしろユーロが売られ、ドルが買われる展開となり、現在割高な商品群が売られる可能性は十分にあり得る。

また、これとは直接関係ないが、英国が香港問題を巡って中国に対する姿勢を硬化させており、BBCなどは駐英大使を呼び出して新疆ウイグル自治区での民族浄化(ともとれる映像)を見せ、意見を求めるといった番組を報じたりしている。

中国は全力で阻止しようとするだろうが、香港の優秀な金融人材の獲得競争も激化しており、通商問題やコロナ問題の場外戦もこれから激しくなることになろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(▲3.0%→▲4.9%)ている。2021年に関しても+5.8%→+5.4%と下方修正した。

結局、コロナウイルスの影響が2021年意向も残存することが前提となっている。ただ、この冬場の再ロックダウン時の経済への影響は、2020年初に見られたほどの過激なものにはならず、半分程度にとどまるケースをメインシナリオとしている。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。現在でも感染は世界的に拡大しており、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のFTA締結なしEU離脱のリスク。EUとFTAで合意できなければ関税引き上げが発生し、合意なき離脱に匹敵する混乱となる可能性(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウン解除の動きと量的緩和・信用緩和を受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格はもみ合った結果、前日比プラスで引けた。各国経済統計に「前月比ベースでの改善度合いの減速」がみられはじめ、OPECの増産も始めることが価格を下押ししたが、欧州の経済対策期待によるユーロ高・ドル安がファイナンシャルな面で価格を押し上げた。

【原油価格見通し】

原油価格は各国の経済統計の改善継続から目先強含み易いものの、その改善ペースの減速やOPECの減産幅縮小や、世界的なコロナの再拡大懸念を受けて上値も重いと考える。

DOEは2019年対比で元の水準に戻るのは2022年以降と想定しており、原油需要の戻りや価格の戻りは制限されると考えられるが、OPECの減産によってすでに原油需給バランスが供給不足になっているとの見通しも示しており、下落余地も限定されるとみている。当面はレンジワークとなるだろう。

しかし、米中対立やコロナの影響継続、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、このタイミングでプレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、常に価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべき時期にあると考える。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(27ドル~50ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後(ワクチン・治療薬の開発完了後)の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

ただ、今のところ今年の冬に感染拡大の第2ラウンドが来る可能性は高く、むしろメインシナリオになりつつある。この場合、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きとなっていたが、ここにきて上昇も、下落もしなくなってきている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。

6月の中国の石炭輸入は前月から回復したが、前年水準を▲6.7%下回った。中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、輸入を抑制する可能性を否定していない。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

しかし、水準を切り上げていた中国の港湾在庫は急速に減少し、過去5年レンジを大きく下回っていることから、一定の輸入需要が見込めると考えられさらなる価格下落余地も限定される。

石炭期間構造はコンタンゴで限月交代によるジャンプも起きにくく、価格変動性は12%程度(VaRの概念では、現在の価格を50ドル程度とすれば、7割の確率で1年後の価格が±6ドル程度しか変化しない)と通貨の変動率程度まで変動性が低下している。

結局、燃料炭価格は狭いレンジの中で、低いボラティリティを維持しつつ現状水準での推移を続けると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲2割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国小売売上高 前年比▲11.4%の17兆2,256億元(1-5月期▲13.5%の13兆8,730億元)、6月単月でも▲1.8%の3兆3,526億元(前月▲2.8%の3兆1,973億元)とマイナス幅を縮小している。

しかし、工業セクターや固定資産投資と異なり、最終需要は弱いものと考えられる(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTI、Brentともロングが増加、ショートも増加したが、ロングの増加が大きかったためネット買い越し幅を拡大。

景気回復への期待感が、高値警戒感を上回った。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが692,258枚(前週比 +5,715枚)ショートが152,507枚(+1,281枚)ネットロングは539,751枚(+4,434枚)

Brentはロングが268,413枚(前週比+13,790枚)ショートが58,638枚(+3,271枚)ネットロングは209,775枚(+10,519枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場は総じて堅調。LME指定倉庫在庫の減少傾向持続と、EU首脳会議での復興基金案を巡る妥結期待でユーロ高・ドル安となっていることが材料視されている。

なお、LME非鉄金属セクターの中で銅と錫のパフォーマンスが突出しており、その他は頭打ちとなっている。銅・錫に共通して言えることは供給リスクが顕在化していること。

「ドクター・カッパー」の知名度は上がったが、使い方を誤ると相場を読み違えますので、注意が必要である。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は高値圏を維持すると考える。今のところ市場参加者は、北半球の主要国は夏場のロックダウンを想定していないと見られること、中国・米国のインフラ投資実施による公的セクターの需要下支えが期待されるうえ、コロナの影響による南半球、特に南米生産者の供給減少が意識されており、ベンチマークである銅価格が堅調に推移すると予想されることから。

南半球で広がっているコロナウイルスの影響は見通せず、少なくとも北半球の冬場(11月頃)までは供給抑制要因になると考えておいたほうがよさそうだ。

今回の米中の公共投資は、5G分野やEVステーションの整備、通常の公共投資が行われる見込みであり、銅、亜鉛、アルミの需要がその恩恵を受けると予想される。

割安に推移してきたアルミは中国の製錬キャパシティの拡大が2020前年比で▲130万トンの減少が見込まれ、アルミナの供給能力も、中国で180万トン程度が停止していることから、秋口にかけての上昇リスクは小さくないとみる。

しかし、今年は北半球の冬場に再びロックダウンとなる懸念がぬぐえないため、北半球の夏場の非鉄相場は強いものの、大統領選後の冬場は南半球が夏になり、供給制限が緩和される見込みであることを考えると、年後半は需給両面で価格が下落するリスクは小さくないと考えている。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

ただし、コロナウイルスへの中国の対応(情報隠ぺい)を受けて、欧米の中国に対する今までの積年の不満が、香港・新疆ウイグル自治区問題、台湾問題で爆発しており、今後、欧米が協調して中国からのデカップリングを進める可能性は高い。むしろメインシナリオだろう。

特に、反中に転じたバイデン候補が勝利した場合、欧州と連携して中国包囲網を強めると予想される。

結果、貿易量の減少を通じて非鉄金属価格には下押し圧力が掛かることになる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・6月中国製造業PMIは50.9(前月50.6)と改善した。内訳を見ると生産が回復、新規受注も50.9→51.4と改善、輸出向けの新規受注も大きく改善(35.3→42.6)しており、ロックダウン解除による国内の経済活動の回復と、海外市場の稼働再開が影響したことが鮮明となった。

これに伴い、原材料・完成品在庫とも水準を切り下げており、新規受注の増加と合わせた両要因で、新規受注・在庫レシオは水準を切り上げることになった。

中国国内の原材料・完成品需給はタイト化が予想され、特に鉱物資源価格の上昇要因となる。

・6月中国銅線生産者 97.1%(前月101.7%、過去4年平均 87.1%) 銅棒生産者 77.8%(80.4%、76.1%) 銅板生産者 63.5%(65.9%、70.8%) 銅管生産者 86.2%(83.4%、85.6%)

・6月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 89.0%(前月90.9%) 中規模事業者 71.9%(73.3%) 小規模事業者 74.3%(73.1%)

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国固定資産投資は前年比▲3.1%の28兆1,603億元(1-5月期▲6.3%の19兆9,194億元)と回復基調を持続。

しかし、公的セクターの回復(▲1.9%→+2.1%)によるところが大きく、規模の大きな民間部門は▲7.3%(▲9.6%)と回復ペースは緩慢。

・1-6月期の中国不動産開発投資は前年比+1.9%の6兆2,780億元(1-5月期▲0.3%の4兆5,920億元)とプラス成長に転じた(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・6月の中国の銅地金輸入は前年比+98.8%の66万トン(前月+20.8%の44万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+8.4%の159万4,000トン(▲8.3%の169万ト)と、地金輸入が大幅な増加、銅鉱石輸入は減少傾向となっている。

銅のTC/RCは7月13日段階で54.5ドルと2014年以降の最低水準になっており、鉱石市場の需給がタイト化しており、中国の消費者は精錬品を物色している。

低下していた銅現物プレミアムも上昇しており、少なくとも北半球の夏場はコロナの影響が緩和しているため、この状況が続くことに。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・7月10日付のLMEロング・ショートポジションは、ニッケルを除いてロングの積み増しが続き、すべての金属でショートの買戻しが続いた。

中国経済の回復と南半球のコロナウイルス感染拡大を受けた供給懸念が材料視されている。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は54.6億ドル(前週34.3億ドル)と、買い越し幅を拡大している。すべての金属が買い越しに転じた。買い越し幅の増加率は+59.3%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで1,040千トン(前週424千トン)と買い越し幅を拡大した。買い越し枚数の増加率は+145.4%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は小幅安下落、中国鉄鋼製品先物価格は上昇した。

中国南部の洪水被害が続いており、建設需要の落ち込みやそれに伴う鉄鉱石需要の落ち込み観測が価格を下押ししている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。中国鉄鉱石在庫が日数ベースで過去5年の最低水準で推移していること、中国政府のインフラ投資が今後も継続する見込みであることから、中国国内の足元の鉄鋼原料需給並びに今後の需給見通しがタイト化しているため。

ただし中国南部で発生している洪水の影響がことのほか大きく、建設需要の減少を通じて鉄鋼原料価格の下押し要因となるため、上値も重い。

また、上昇を続けてきたバルチック海運指数は下落に転じている。同指数は石炭輸送状況の影響を強く受けるが、ブラジル・豪州の中国向け鉄鉱石輸出が急速に減少している影響が顕在化しているためと考えられる。

コロナウイルス感染拡大や、人権問題を巡って欧米と中国の対立が強まっており、両者の対立は交易量の減少を通じて鉄鋼製品価格・鉄鉱石価格を下押ししすることになる。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が好況投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。但し、中国政府は国内生産を増加させる方針であること、洪水の影響による需要の減速で上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均程度での推移が続いており、鉄鉱石よりは需給が緩和している。

インドネシア・豪州の中国向け石炭輸出は増加していたが、週間輸出実績は急減速している。バルチック海運指数にも低下圧力が掛かっており、今後の動向に注目したい。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・6月の鉄鋼業PMIは49.3(前月50.9)と前月から悪化した。生産は引き続き高水準であるが(56.4→57.5)、新規受注が急減速(52.9→46.4)したことが影響した。輸出向け新規受注の水準も低下しており、鉄鋼製品の国内外向けの需要は急減速しているといえる。

鉄鋼業は中国政府の公共投資を受けて公的需要が増加していたと見られるが、それが一服したためと考えられる。やはり、中国もそこまで財政的にゆとりはないということだろう。

結果、完成品在庫・原材料在庫とも指数が上昇しており、今後、鉄鋼製品価格や鉄鉱石価格の下押し要因になると予想される。

・中国河北省の高炉稼働率は7月10日時点で78.6%(前週78.9%)と小幅に低下。鉄鋼製品生産の回復は頭打ちとなっていることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国固定資産投資は前年比▲3.1%の28兆1,603億元(1-5月期▲6.3%の19兆9,194億元)と回復基調を持続。

しかし、公的セクターの回復(▲1.9%→+2.1%)によるところが大きく、規模の大きな民間部門は▲7.3%(▲9.6%)と回復ペースは緩慢。

・1-6月期の中国不動産開発投資は前年比+1.9%の6兆2,780億元(1-5月期▲0.3%の4兆5,920億元)とプラス成長に転じた(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、6月は188万トンと記録的な水準に。国内生産は5月時点で9,227万トンと記録的な水準。一方で鉄鋼製品の輸出は370万トンと過去5年レンジを下回り、この5年の最低水準。圧倒的に国内需要が旺盛であることを示唆。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+29.4万トンの1,501.1万トン(過去5年平均 1,036.7万トン)となった。例年よりも在庫水準は高く、今週も例年と異なり在庫が増加している。

・6月の中国の鉄鉱石・精鉱輸入量は過去2番目の水準となり、1億168万トンとなった。中国の港湾在庫の水準は絶対水準が過去5年平均を下回り、在庫日数は過去5年の最低水準で推移しており、やはり国内のインフラ向け需要が旺盛であることを伺わせる内容。

一方で週次の鉄鉱石輸入は6月に入ってから減少を始めており、ブラジルや豪州の鉄鉱石週間輸出も減少を始めている。さらに減速するかどうかはブラジルについてはコロナウイルスの感染拡大状況、豪州はコロナを巡る中国との対立次第であるが、仮にそうなった場合、さらに海上輸送鉄鉱石価格は上昇することに。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+195万トンの1億1,200万トン(過去5年平均1億2,043.6万トン)、在庫日数は+0.4日の22.4日(過去5年平均 29.2日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイト。

・6月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比▲6.7%の2,528万6,000トン(前月▲19.7%の2,205万7,000トン)と前年比マイナスが続いており、減速し、過去5年平均程度まで落ち込んでいる。中国の石炭国内生産が増加しているためとみられる。

原料炭の輸入は5月は前年比▲19.1%の479万トン(前月▲15.4%の628万トン)と急減速した。おそらく国内生産が増加したことによるもの。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇した。長期金利が小幅に低下したことや、ユーロでの復興基金案を受けたユーロ高・ドル安進行が材料となった。銀は金銀在庫レシオが増加したものの、銀が割安感から物色される流れが継続しており、大幅な上昇に。

プラチナも金価格の上昇を受けて物色され、パラジウムは株高もあってプラチナを上回る上昇となった。

【貴金属価格見通し】

金銀は高値圏を維持すると考える。FRBが実質金利をマイナスにする緩和策を容認していることもあり、かつ、2022年までは現状の政策が維持される見込みであること、景況感とは乖離して上昇している株価下落への備え、といった観点で需要が高まると予想されるため。

また、米中対立激化がほぼ確実な情勢になっていることや、コロナ不況を背景とした新興国経済の混乱も安全資産需要を高めることになる。

ただ、実質金利がさらに下落するには原油価格が高騰するなどの材料が必要であるが、今のところそこまでの上昇は見込めないため金価格の上昇余地は限定される。そのため、割安感のある銀が代わりに物色されることになるだろう。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスク・プレミアム)は214ル(前日比変わらず)。

一方、現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,580~1,600ドル程度まで上昇しており、緊急時の換金による下落余地が限定されている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では105倍程度が妥当、となっているが現在は93.7と低下している。銀÷金在庫レシオの低下が要因となっている。

過去1年平均を基準にすると95倍程度、全期間を通じた分析では80倍程度が妥当であり、これ以上の上昇があるかどうかに関しては、金価格動向次第か、更に金在庫の増加・銀在庫の減少が進む場合だろう。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることも、割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになると予想する。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、自動車セクターの回復は緩やかなものにとどまる見通しであることから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

6月の米自動車販売は年率1,305万台(市場予想 1,309万台、前月 1,221万台)と、市場予想には届かなかったが大幅な改善となった。ただし、経済活動が再開されているが、プレ・コロナの水準に戻るには相当の時間がかかる見込みであり、PGM価格の押し上げ効果は限定的なものとなろう。

中国の6月の自動車販売は前年比+11.6%の230万台(前月+14.5%の219万台)と前月比プラスとなったが、前年比では伸びが減速した。引き続き年初来の販売累計は▲16.9%の1,026万台となっており、コロナの影響に伴う販売遅れを取り戻せていない状況。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが330,205枚(前週比 ▲6,825枚)、ショートが67,777枚(▲1,895枚)、ネットロングは262,428枚(▲4,930枚)、銀が85,679枚(+4,938枚)、ショートが41,810枚(▲1,106枚)、ネットロングは43,869枚(+6,044枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが27,111枚(前週比 ▲569枚)ショートが10,807枚(+442枚)、ネットロングは16,304枚(▲1,011枚)

パラジウムが3,817枚(+566枚)、ショートが2,116枚(+379枚)ネットロングは1,701枚(+187枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は高安まちまち。

トウモロコシは新たな手掛かり材料はなかったが、生産地の天候状況改善が材料となった。ドル安が進行したことを受けたショートの買戻しが入ったとみられる。

大豆は上昇。ドル安の進行もあったが、コロナウイルスの影響によるパーム油需給のタイト化から価格が上昇しており、競合商品である大豆油が堅調であることが材料となった。

小麦は大幅に下落。米週間輸出で小麦輸出が大幅に減少したことが材料視されていた。

2020年7月16日時点の米穀物週間輸出検証高は以下の通り。トウモロコシ 1,149.35千トン(前週+231.38千トン)大豆 452.81千トン(▲30.52千トン)小麦 500.61千トン(▲159.12千トン)

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は米ガソリン出荷の回復確認を受け、投機の買戻しも入りやすく、堅調な推移になると予想。但し、生産地の生育環境の改善を受けて上値も重いと考える。

大豆も飼料向け需要の回復と、中国の合意履行遵守期待、大豆油が競合連産品であるパーム油価格の上昇、トウモロコシの上昇を受けて堅調。

小麦は北米の冬小麦の作柄が良好ではなく、そもそも取引所在庫の水準が低い中、ロシアやフランスの生産減少観測が強まっていること、競合飼料であるトウモロコシも米石油製品出荷の回復で上昇し易くなっていることから、上昇余地を探る展開に。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、現在はインド・パキスタン・イラン、エチオピア・ソマリア・ケニアにまたがる地域で猛威を振るっている。

懸念はアフリカ西部にバッタが飛来する可能性が指摘されている点。こうなると影響がアフリカ北部全域に広がることになり、食料危機を通じて北アフリカの治安が不安定化するリスクは無視できない。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億Bu(150億4,085万Bu、前月159億9,500万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,430万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億2,400万Bu(18億4,372万Bu、18億7,700万Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 24億4,800万Bu(27億3,052万Bu、33億2,300万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,389万Bu、3億9,500万Bu)小麦 9億4,200万Bu(9億5,019万Bu、9億2,500万Bu)

・6月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 52億2,400万Bu(49億5,862万Bu、79億5,300万Bu)大豆 13億8,600万Bu(13億9,113万Bu、22億5,300万Bu)小麦 10億4,400万Bu(9億8,661万Bu、14億1,200万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが259,735枚(前週比 +3,263枚)、ショートが359,424枚(▲4,287枚)ネットロングは▲99,689枚(+7,550枚)

大豆はロングが199,115枚(▲19,020枚)、ショートが71,421枚(+3,795枚)ネットロングは127,694枚(▲22,815枚)

小麦はロングが118,613枚(+2,557枚)、ショートが101,889枚(▲28,436枚)ネットロングは16,724枚(+30,993枚)

◆本日のMRA's Eye


「小麦価格の上昇リスク」

コロナウイルスの影響による黒海周辺国の輸出禁止観測を受けて高騰していたシカゴ小麦価格は、コロナウイルスの影響でガソリンを需要が前年比▲15%程度の減少となっていることを受けたエタノール向けのトウモロコシ需要の減少観測を受け、競合飼料の位置づけもあり、水準を切り下げた。

しかし7月の米農務省の需給報告を受けて、水準を大きく切り上げた。

米国はトウモロコシと大豆の一大輸出国であるが、小麦は世界各地に生産地が遍在しているため、徐々にその輸出国としての影響力が低下している。そのため、トウモロコシや大豆と異なり、シカゴ小麦の価格動向分析を米国の需給動向で占うよりも、全世界の需給動向を分析するほうが適切なことが多い。

7月の需給報告では、世界の小麦期初在庫は前年比+1,732万トンと、前作物年度の生産が大幅に増加したことなどから、2020-2010作物年度の供給は前年比+2,180万トンの12億4,970万トン、輸出と国内需要の合計見通しは前年比+409万トンの9億3,486 万トン、期末在庫は+409万トンの9億3,486万トンとなる見込みである。

弊社は穀物価格を予測するにあたり、需要を供給で割った需給率という指標を主に用いている。

需要が増える、ないしは供給が減るとこの数値が上がり、価格上昇を肯定、逆に下がれば価格下落を肯定するという仕組みだ。

需給率の観点では、74.8%(▲1.0%)と、1965年以降で最低の水準になると予想されており、この視点では小麦価格は大きく下落しなければ、需給ファンダメンタルズ的にはおかしい。

6月見通しからの変化については、生産が▲412万トンの減少となるが、期初在庫の増加(+128万トン)、総需要の減少(▲718万トン)の影響で、供給も▲300万トンとなる見込みであり、需給率も前月から▲0.4%低下しておりやはり、世界全体の需給を見た場合小麦価格は下落するほうが反応としては素直である。

しかし、小麦の価格は7月8日から高騰をはじめ、需給報告発表後も水準を切り上げ、高値圏での推移となっている。これは、1.主要生産地であるロシアやフランスなどの減産見通しが示されたこと、2.シカゴ小麦の取引地である米国の国内需給がタイト化する、との見方が強まったためである。

フランス農業省は今年の軟質小麦生産見通し前年比▲21%の3,130万トンになるとの見通しを示し、ロシアの農業市場研究所が2020年のロシア小麦の収穫量を▲150万トン下方修正し、7,800万トンとしており、黒海周辺国や欧州での供給懸念が顕在化しつつある。

米国の供給は前作物年度の輸出需要が増加した影響で期初在庫が減少(▲98万トン)、生産も▲263万トンの4,963万トンしたことで供給は▲266万トンの8,185万トン、輸出を含む需要は前年比横ばいの5,620万トンが見込まれているが、需給率は68.7%と6年ぶりの高水準になると予想されている。

シカゴ穀物取引所の取引所在庫の水準も過去5年の最低水準を大きく下回っており、米国の国内需給は海外と比べると相当タイトである。

シカゴ小麦価格の上昇は、需給率からすると是とされるものだ。

今のところ、米国の需給率をもとに算出される2020年の小麦価格平均見通しは533セント/ブッシェル程度であり、現在の水準とほぼ変わらない。このことを考慮すると、さらなる上昇余地は限定されると考えられる。

しかし、気象庁のエルニーニョ・ラニーニャ監視速報によれば、今年は秋口にかけて40%程度の確率でラニーニャ現象の発生の可能性が指摘されている。

過去、ラニーニャが発生した時には小麦価格が急騰しているケースが多い。すでに欧州の減産見通しが示される中、8月に発表される豪州の需給見通しが下方修正されることがあれば、8月の米需給報告での生産見通しも下方修正され、価格がさらに上昇する可能性は否定できない。

また、小麦はトウモロコシや大豆と異なり、主として人間の食用に供されるものであり、この供給が減少し価格が高騰した場合、財政状況が不安定な北アフリカ・中東新興諸国の政情が不安定化する可能性がある。

コロナウイルスの影響によって資源価格が低迷、生産量も回復しない中での食品価格の上昇は、場合によるとアラブの春の時のような反政府行動、政権打倒の動きにつながる可能性があるため、問題が穀物価格にとどまらない可能性が出てくる。

今のところそこまでの価格上昇にはならないと見られているが、今年の後半は穀物価格、特に小麦価格の上昇リスクは警戒しておくべきだろう。

◆主要ニュース


・6月日本貿易収支季節調整前 ▲2,688億円の赤字(前月▲8,382億円の赤字)
  輸出 前年比▲26.2%の4兆8,620億円(▲28.3%4兆1,856億円)
  輸入 ▲14.4%の5兆1,309億円(▲26.2%の5兆238億円)

 米国向け
  輸出 ▲46.6%の7,247億円(▲50.6%の5,879億円)
  輸入 ▲12.6%の6,000億円(▲27.5%の5,783億円)

 欧州向け
  輸出 ▲28.4%の4,337億円(▲33.8%3,638億円)
  輸入 ▲9.5%の6,119億円(▲29.4%の5,770億円)

 アジア向け
  輸出 ▲15.3%の3兆186億円(▲12.0%の2兆7,452億円)
  輸入 ▲6.0%の2兆7,071億円(▲11.8%の2兆7,391億円)

 中国向け
  輸出 ▲0.2%の1兆2,431億円(▲1.9%の1兆1,263億円)
  輸入 +0.8%の1兆3,894億円(▲2.0%の1兆5,115億円)

・6月日本コンビニエンスストア売上高 前年比▲5.2%(前月▲10.0%)

・6月独生産者物価指数 前月比±0.0%(前月▲0.4%) 前年比▲1.8%(▲2.2%)

・5月ユーロ圏経常収支季節調整済 80億ユーロの黒字(前月143億ユーロの黒字)

・EU首脳会議、復興基金で返済不要な補助金を5,000億ユーロから3,900億ユーロに減額する妥協案を提示。残りの3,600億ユーロは低利融資。

・英国、香港との犯罪人引渡条約を即時停止。中国は報復を示唆。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・米Chevron、Noble Energyを50億ドルで買収すると発表。

・ナイジェリア オネアマ外務大臣がコロナウイルスに感染。

・サウジアラビア サルマン国王、胆嚢炎の検査で入院。

・イラン政府、反政府デモ参加者3人の死刑を取りやめ。SNSで抗議殺到。

【メタル】
・Eskom、Camden発電所が閉鎖され、1,000MW~2,000MWの電力供給が減少。

・インドネシア エネルギー鉱物資源省、ニッケル鉱石販売監視のためのタスクフォースを結成。タスクフォースのレビューに基づき、政府は規制された基準価格を下回るニッケル鉱石を販売する企業に制裁を科すことができる。

・ブラジル 7月13日までの月間鉄鉱石輸出は158万トン/日。6月は21営業日で143万トン、2019年7月は23営業日で149万トン。

・Citi、「鉄鉱石価格は6割の確率でQ320は100ドル、Q420は80ドルに。2割の確率の強気シナリオでは120ドルへの上昇を予想。」

・Q220住友商事、世界最大級のニッケル鉱山開発プロジェクトであるAmbatobyの操業停止が続いており、決算悪化。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.銀 ( 貴金属 )/ +3.01%/ +11.52%
2.中国CSI300 ( 株式 )/ +2.98%/ +14.25%
3.ICEココア ( その他農産品 )/ +2.73%/ ▲12.64%
4.TCM灯油 ( エネルギー )/ +2.46%/ ▲34.27%
5.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +2.04%/ ▲9.44%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲9.02%/ ▲60.70%
69.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲5.95%/ +6.44%
68.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲5.38%/ ▲19.49%
67.TGE小豆 ( 穀物 )/ ▲5.26%/ ▲24.46%
66.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲4.55%/ ▲29.44%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,680.87(+8.92)
S&P500 :3,251.84(+27.11)
日経平均株価 :22,717.48(+21.06)
ドル円 :107.27(+0.25)
ユーロ円 :122.80(+0.50)
米10年債 :0.61(▲0.02)
中国10年債利回り :2.93(▲0.03)
日本10年債利回り :0.03(+0.01)
独10年債利回り :▲0.46(▲0.01)
ビットコイン :9,175.45(+17.76)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :31.68(+0.26)
エネルギー :36.60(▲0.22)
ベースメタル :20.57(▲0.1)
貴金属 :17.58(+0.46)
穀物 :38.65(+0.23)
その他農畜産品 :35.01(+0.61)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :33.37(▲0.87)
Brent :30.31(▲0.87)
米天然ガス :68.88(+0.29)
米ガソリン :44.02(▲0.2)
ICEガスオイル :29.46(+0.13)
LME銅 :20.93(+0.23)
LMEアルミニウム :19.50(▲0.07)
金 :12.31(+0.06)
プラチナ :21.41(+0.06)
トウモロコシ :29.92(+0.4)
大豆 :12.31(+0.06)

【エネルギー】
WTI :40.81(+0.22)
Brent :43.28(+0.14)
Oman :43.57(+0.29)
米ガソリン :122.85(+0.40)
米灯油 :123.55(+1.64)
ICEガスオイル :370.50(+3.00)
米天然ガス :1.64(▲0.08)
英天然ガス :12.21(▲1.21)

【貴金属】
金 :1817.77(+7.35)
銀 :19.91(+0.58)
プラチナ :849.71(+9.47)
パラジウム :2050.50(+30.14)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,411(▲37:6B)
亜鉛 :2,183(▲18:12C)
鉛 :1,828(▲6:23C)
アルミニウム :1,658(+4:37C)
ニッケル :13,187(▲133:25C)
錫 :17,330(▲10:70B)
コバルト :28,418(▲13)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6474.50(+37.50)
亜鉛 :2198.50(+17.00)
鉛 :1829.00(+15.50)
アルミニウム :1662.50(▲0.50)
ニッケル :13185.00(+70.00)
錫 :17375.00(+110.00)
バルチック海運指数 :1,710.00(+11.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :109.22(▲0.72)
SGX鉄鉱石 :107.66(▲0.33)
NYMEX鉄鉱石 :107.18(▲0.04)
NYMEX原料炭スワップ先物 :113.5(▲0.07)
上海鉄筋直近限月 :3,707(+32)
上海鉄筋中心限月 :3,719(+8)
米鉄スクラップ :276(±0.0)

【農産物】
大豆 :903.00(+5.00)
シカゴ大豆ミール :288.60(+2.10)
シカゴ大豆油 :29.93(+0.01)
マレーシア パーム油 :2754.00(+55.00)
シカゴ とうもろこし :328.25(▲4.75)
シカゴ小麦 :522.00(▲12.75)
シンガポールゴム :154.00(+1.00)
上海ゴム :10510.00(+15.00)
砂糖 :11.72(▲0.01)
アラビカ :98.50(▲2.55)
ロブスタ :1253.00(▲15.00)
綿花 :62.99(+0.98)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :50.40(▲2.40)
シカゴ生牛 :102.28(▲1.00)
シカゴ飼育牛 :141.60(▲1.10)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。