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【号外】UAEとイスラエル和平合意
  • MRA商品市場レポート

2020年8月14日 号外

UAEとイスラエルが国交を樹立、両国に大使館を設置するなど、サプライズなニュースが流れた。これにより中東の力学が大きく変化する可能性が出てきた。確かに「教科書に載るような」歴史的な合意といえる。

もちろん米国にとっては選挙にらみのレガシー作りで、これによってユダヤ人票の確保を狙ったことは明らかである。

そもそもユダヤ教徒であるジャレッド・クシュナーがイスラエル寄りの政策を、トランプ大統領とすすめてきたことは公知のことである。

今年1月に発表された米国の中東和平案も、イスラエルが望むことをすべて代わりに米国が発表した、といえる内容だった。

その中にはヨルダン川の併合をイスラエルに認める見返りに、500億ドルの金銭的な支援をパレスチナ側にするというものも含まれており、更にはパレスチナの軍保有を認めず、パレスチナの防衛や国境管理もイスラエル側が担うという内容のもので、パレスチナが飲めるようなものではない。

これを推進するにあたり、重要な役割を担ったとされるのがサウジアラビアのムハンマド皇太子である。しかし、ムハンマド皇太子は、ジャーナリストのカショギ氏殺害に深く関与したとして外交的な立場を悪化させる中、パレスチナにとって悪い選択を積極的に支持できる状態ではなくなった。

そこで、最近サウジアラビアと足並みがそろっていないが、サウジアラビアの兄弟国との位置付けであるUAEが対象になった、ということだろう。

今回のコロナショックの影響はことのほか大きく、中東の産油国の財政状況は悪化、コロナの感染も拡大し、地域によってはバッタ被害なども発生、人心が王族から離反しやすい状況にある。

この中でUAEは他中東諸国と比較した場合財政・経常収支の均衡水準が低く、
OPECショック以降も外貨準備が積み上がっていたが、さすがにこの数ヵ月は悪化している。そのため、今後の財政的な厳しさを考えた場合、UAEが経済的な後ろ盾を得る方向に舵を切ったと整理するほうが適当だろう。

今回の和平合意を積極的に周辺のアラブ諸国が肯定するかどうかは微妙であるが、イスラエルによるヨルダン川西岸の入植中断を勝ち得たところは大きい、といえる。

ネタニヤフ首相の求心力が弱まる中、イラン包囲網を敷いているという文脈で、国内の支持率回復を狙っていると考えられる。

ただ、イラン包囲網を敷けるか、という点に関してはUAEはイランとのガス田問題を解決するためサウジアラビアから距離を取り、イランとの関係改善を目指すなどの動きも見せていたのも事実であり、今回の件でイラン封じ込めとなるのかは微妙なところだ。

また、今回の合意にパレスチナが反発するのは必至である(すでに反発しているし、ガザ地区に拠点をおくハマスも反発している状況)。以前からイスラエルとの関係改善に踏み出そうとしていたサウジアラビアが、今後どのような対応をするかが最大のポイントとなるだろう。

なお、昨日の市場はこのニュースの後に原油価格が下落しているが、上記を材料として下落したというよりはIEA見通しが需給見通しを下方修正した影響のほうが大きかったようだ。

外交の重要な情報であるためそう簡単にニュースに出てくるとは考え難いが、今後、中東から出てくるニュースに市場は一喜一憂することになる。

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