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長期金利低下でリスク資産総じて高い
  • MRA商品市場レポート

2020年6月30日 第1774号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「長期金利低下でリスク資産総じて高い」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:上昇。米統計の改善や供給減少観測、株高を材料に買戻し。

受け渡しベースでは7月入りしているが月末最終日ということもあり、昨日の上昇を受けて一旦売られるものと予想。

◆非鉄金属:上昇。独消費者物価指数が上昇したことでユーロ高・ドル安となったこと、その後の米住宅関連統計の改善が材料となった。

インフラ投資などの経済対策が一部顕在化をし始めていると考えられるが、ロックダウン再開の動きも見られ、上値重く高値圏維持。

◆鉄鋼原料:鉄鋼原料先物価格は小幅上昇、鉄鋼製品価格は下落。

状況に大きな変化はなく、高値圏でのもみ合い継続を予想。

◆貴金属:FRBの緩和プログラムの1つが開始されたことで長期金利が低下、実質金利が低下したことが価格を押し上げ。株価も上昇したためパラジウムも上昇。

長期金利の低下による実質金利低下が続いており、株高があっても高値圏維持。

◆穀物:上昇。原油価格が上昇したことを受けてトウモロコシが上昇、それに連れ高となった。

本日は四半期最終日ということもあって原油に調整売りが入るとみられることから、穀物セクターも下落か。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はその他の農産品を除くと、軒並み水準を切り上げる展開となった。米国の長期金利が低下し、インフレ系資産が物色され、更に株価が上昇したことで、特に景気循環系商品に循環物色が入ったものと考えられる。

昨日最も上昇したのが欧米天然ガス。景気循環系銘柄物色の流れの中で、気温上昇観測が材料となった。しかし天然ガスの在庫水準の高さを考えると子の上昇が継続するかは疑問。

目立った新規材料に乏しい中、低金利政策や公共投資などの政策期待がリスク資産価格を支える状態が継続している。ただ、この楽観は経済規模が大きい北半球の経済活動が継続している、北半球の夏場に限定される可能性があることは、意識する必要があるだろう。

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【本日の見通し総括】

本日は中国、米国で重要な闘鶏が発表されるがいずれも前月から改善予想であり、景気循環銘柄が物色される流れになると予想する。

中国製造業PMIは50.5(前月50.6)、非製造業PMIも53.6(53.6)が予想されていたが、各々50.9、54.4と市場予想を上回る結果となった(詳しくは明日の「昨日のトピックス」で解説の予定)。

また、夜間発表のシカゴPMIも45.0(32.3)と大幅な改善が見込まれている。北半球が夏場で基本的にコロナウイルスの感染力が低下すると「期待される」時期であり、かつ、夏場の再ロックダウンは国としても回避したいとの意向が強い可能性が高い。

そのため、急に経済活動を停止するというシナリオをある意味意図的に市場は無視しているように感じる。米低金利政策によって長期金利が低下しているため、しばらくリスク資産価格は高止まりしよう。

【昨日のトピックス】

昨日発表された経済統計も軒並み市場予想を上回るものが増えている。統計予想と実際の結果との乖離を示す「サプライズ指数」を見ると、欧米諸国は改善傾向が顕著になっている。

アナリストの予想は通常、過去のトレンドを見て、そのトレンドが継続するという前提で予想をするケースが多く、実際の数値を積み上げて予想できる統計は少ない。

たとえば、マイナス傾向が続いていれば翌月の統計はマイナスを予想する人が増え、逆ならプラスの人が増えるわけだが、これが上方に乖離する、ないしは予想に反して逆の動きとなる場合は、景況感に変化が起きた可能性が高いことを示唆している。

このサプライズ指数を俯瞰すると、まず、最も早く感染が拡大した中国のサプライズ指数が悪化、それから1ヵ月ほどの時間差をもって米国と欧州が悪化した。

この間、日本はむしろサプライズ指数が上振れしており、その他の国と異なる動きになっていたことがうかがえる。

理由は定かではないが、他国ほど感染者が増えなかった(検査数が少なかったということもあるが)ことで、経済活動の完全な停止が見送られたこと、中国が苛烈なロックダウンによって早期に経済活動が回復したことによる恩恵を受けたものだ。

その後、2ヵ月ほど遅れて米国のサプライズ指数が上振れ、それから3週間ほど遅れて欧州が改善を始めている。これは国の意思決定の仕組みの違いによる、対策を打ち出す速さ・規模の差が出たものといえるだろう。

では今後についてはどうか。先行指標である中国のサプライズインデックスはすでに減速を始めている。上記の関係が維持されていれば、米国・欧州の統計も、早晩市場予想程強い数字にならなくなると予想される。この場合、多くのリスク資産価格に下押し圧力が掛かることになるだろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(+3.3%→▲3.0%)ている。ただし2021年には+5.8%への急回復を見込んでいる。

ただこの通りになるためには、コロナウイルス感染拡大終息が必要条件であり、第二次感染拡大となり得る冬場までの終息がなければ、それは難しかろう。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。現在でも感染は世界的に拡大しており、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は移行期間の延長を拒否しており、EUとFTAで合意できなければ関税引き上げが発生し、合意なき離脱に匹敵する混乱となる可能性(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウンの動きを受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇した。欧州消費者物価指数の上昇を受けたユーロ高・ドル安が契機となり上昇、その後米住宅関連統計を受けた株価の上昇を受けて循環物色の動きが強まったため。

また、すでに古い材料となっているがChesapeakの破綻が、ほかのシェール企業の破綻→供給減少観測を想起させたことも材料となった。

ただし、大幅上昇といっても週末の下落を取り返すだけの上昇であり、レンジワークを継続していることに変わりはない。

【原油価格見通し】

原油価格はOPECの減産幅縮小観測や、世界的なコロナの再拡大懸念を受けて、一旦調整圧力が強まると考えられる。金融緩和や株の上昇で循環的に原油にも見直し買いが入っていた側面は否めない。

DOEは2019年対比で元の水準に戻るのは2022年以降と想定しており、原油需要の戻りや価格の戻りは制限されると考えられるが、OPECの減産によって6月以降は原油需給バランスが供給不足になるとの見通しも示しており、下落余地も限定されるとみている。

テクニカルなサポートラインとしては、Brentは100日移動平均線となる37ドル、WTIは32ドル程度。

しかし、米中対立やコロナの影響継続、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、プレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、常に価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべき時期にあると考える。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(27ドル~50ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

逆に、コロナウイルスの感染拡大防止に失敗し、「今年の冬に第二ラウンドに突入」となると需要の回復は難しく、かつ、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きが継続している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。水準は低いが小じっかり、ということだ。

5月の中国石炭輸入は2,206万トン(前月3,095万トン)と過去5年平均程度まで急速に減少した。国内の経済活動の回復が一旦頭打ちとなったことや、国内生産が高水準(過去5年レンジを上回る)の増加が要因とみられる。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲2割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国小売売上高は前年比▲13.5%13兆8,730億元(1-4月期▲16.2%の10兆6,758億元)と回復は遅れており、5月単月でも▲2.8%の3兆1,973億円(前月▲7.5%の2兆8,178億元)と回復はしているがマイナスは継続(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし前年比マイナスの状態が続き、回復ペースは緩慢。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTIはロング・ショートとも減少したがロングの減少幅が大きかった。四半期末を控えた利益確定の動きとみられる。

Brentもロング・ショートとも増加しているが、OPECプラスがイラクに減産順守させるとの方針を受け、ショートの買戻しのほうが大きかった。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが711,257枚(前週比 +4,774枚)ショートが150,374枚(▲9,837枚)ネットロングは560,883枚(+14,611枚)

Brentはロングが261,320枚(前週比+13,713枚)ショートが59,651枚(▲2,736枚)ネットロングは201,669枚(+16,449枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場は上昇した。LME指定倉庫在庫の減少継続と、欧州CPIの上昇を受けたドル安進行で上昇、その後の米中古住宅販売の増加を受けて上げが加速した。

しかし、ベンチマークである銅価格は3ヵ月先渡しで6,000ドルが上値として意識されており、ローソク足も上髭が長く、上値は重くなっている。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は高値圏を維持すると考える。中国・米国のインフラ投資実施に加え、冬場のロックダウン前の駆け込み的な経済活動の活性化がみられるため。一時急落していたベンチマークである銅の上海プレミアムは再び上昇に転じている。

しかし、ロックダウン再開の懸念は根強く、上値も重いと考えられ結局レンジワークになると予想される。

2016年の大統領選挙時も1兆ドルインフラ投資(この時は10年かけて1兆ドル)が材料となり相場が上昇したが、大統領選挙で一巡してその後下落している。

今回の公共投資では、5G分野やEVステーションの整備、通常の公共投資が行われる見込みであり、銅、亜鉛、アルミの需要が増加すると考えられる。

割安に推移してきたアルミは中国の製錬キャパシティの拡大が2020前年比で▲130万トンの減少が見込まれるため、秋口にかけての上昇リスクは小さくないとみる。

しかし、今年は冬場のロックダウンの懸念がぬぐえないため、北半球の夏場は強いものの、大統領選後の冬場は南半球が夏になり、供給制限が緩和される見込みであることを考えると、年後半は需給両面で価格が下落するリスクは拭えない。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

ただし、コロナウイルスへの中国の対応(情報隠ぺい)を受けて、欧米の中国に対する今までの積年の不満が、香港・新疆ウイグル自治区問題、台湾問題で爆発しており、今後、欧米が協調して中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

特に、反中に転じたバイデン候補が勝利した場合、欧州と連携して中国包囲網を強めると予想される。

結果、貿易量の減少を通じて非鉄金属価格には下押し圧力が掛かることになる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・5月中国製造業PMIは50.6(前月50.8)と2ヵ月連続で減速した。新規受注は国内を中心に回復しているとみられるが、輸出受注の減速を受け、生産が減速したことが影響したようだ。

しかし、新規受注在庫レシオは回復基調を持続しており、中国の完成品及び原材料需給はタイト化していると見られる。主に中国国内のインフラ投資と思われる需要が増加していることによるものと考えられ、生産活動がやや減速する中で完成品、原材料ともに在庫水準が低下したことが、レシオ上昇に寄与した。

また、欧米の経済活動再開も、非鉄金属価格にはプラスに作用され、「冬場の再ロックダウンリスク」を意識して、夏場が想定以上に需要増加で価格が上昇する可能性が出てきた。

・6月中国銅線生産者 97.1%(前月101.7%、過去4年平均 87.1%) 銅棒生産者 77.8%(80.4%、76.1%)

・5月中国銅板生産者 64.8%(68.3%、72.2%) 銅管生産者 82.7%(84.4%、75.4%)

・5月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 90.9%(前月90.3%) 中規模事業者 73.3%(65.9%) 小規模事業者 73.1%(73.1%)

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・5月の中国の銅輸入は前年比+20.8%の44万トン(4月+12.6%の46万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比▲8.3%の169万トン(+22.2%の203万トン)となった。

銅地金の輸入は過去5年の最高水準を上回っていたが今月は減速、鉱石輸入も5年平均程度まで減速している。上海銅プレミアムの低下を見るに、中国の銅地金・鉱石輸入はいったん一巡したとみられる。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・6月19日付のLMEロング・ショートポジションは、引き続き総じてショートの買戻しが顕著だったが、アルミと錫以外は新規にロングが積み増された。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は5.8億ドル(前週4.4億ドル)と、1月24日以来のネット買い越しとなっている。買い越し幅の増加率は+32.8%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲173千トン(前週▲238千トン)と売り越し数量を縮小したが、ネット買い越しには転じていない。アルミのネット売り越しが大きいため。ネット売り越しの減少率は▲27.1%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小動き、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品先物価格は下落した。

連休明けの中国勢の買いで鉄鉱石価格は小幅に上昇したが、方向感に欠ける展開となった。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移を継続すると考える。中国鉄鉱石在庫が日数ベースで過去5年の最低水準で推移していること、中国の鉄鋼業PMIなどを見るに、中国国内の鉄鋼原料需給がタイト化しているため。

中国のインフラ投資(公的需要)、米国の1兆ドルインフラ投資、ブラジルの供給懸念も価格の押し上げ材料。

なお、足元のバルチック海運指数は急速に上昇しており、過去5年の上限レンジを上回った。

同指数は石炭輸送状況の影響を強く受けるが、足元、ブラジル・豪州の中国向け鉄鉱石輸出が過去5年レンジを上回って高水準で推移しており、鉄鉱石在庫積み増しの動きの影響が大きくなっている可能性がある。

ただし、鉄鋼製品在庫の水準は例前年比でみても高く、貿易統計に見る鉄鋼製品輸出は440万トンと過去5年の最低水準を大きく下回っており、外需の回復には時間がかかりそうな状況。

中国河北省の高炉稼働率は6月26日時点で79.3%(前週78.9%)と小幅に上昇しており、鉄鋼製品生産の回復がまだ緩慢であることをうかがわせる内容。

コロナウイルス感染拡大や、人権問題をめぐって欧米の中国への不満が高まっており、両者の対立は交易量の減少を通じて鉄鋼製品価格・鉄鉱石価格を下押ししよう。

原料炭は中国の生産活動再開の影響もあるが、中国の国内生産の増加もあり、低調な推移になると考える。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は一時、過去5年平均を回復したが、再びこの水準を下回っている。

インドネシア・豪州の中国向け石炭輸出は増加しており、バルチック海運指数の押し上げ要因となっている。しかし、中国生産者の在庫の積み増しが進んでいることを考えると早晩頭打ちとなるだろう。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・5月の中国鉄鋼業PMIは50.9(前月45.9)と回復した。主に新規受注の回復(39.9→52.9)によるものであり、生産は好調ながらも緩やかな回復となった(53.4→56.4)。

この結果、完成品在庫指数は29.2(38.8)、原材料在庫指数は41.2(38.3)と非常に低い水準を維持、需給はタイト化している

しかし、需要はほとんどが国内向けとみられ、輸出向け新規受注は31.9(27.8)と低迷が続いている。欧米のロックダウンが解除の方向にあり、徐々に回復すると予想されるが、中国に対する欧米の風当たりが強まっており、順調な回復になるかどうかは不透明。

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・5月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲23.3%の440万1,000トン(前月▲0.2%の631万9,000トン)大幅に減速した。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲20.5万トンの1,31.3万トン(過去5年平均 1,049.7万トン)と、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが続いている。

ただし、例年よりも取り崩しのペースは早く、鉄鋼生産者の稼働が最終需要家の回復よりも遅れている可能性があることを示唆している。

・5月の中国の鉄鉱石の輸入量は前年比+3.9%の8,703万トン(前月+18.5%の9,571万トン)と前年比プラスとなったが、過去5年レンジを下回り、過去5年平均程度まで落ち込んだ。しかし、ブラジル・豪州の週間鉄鉱石輸出は中国向けが増加しており、恐らく6月の統計は強めの数字となろう。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+90万トンの1億925万トン(過去5年平均1億1,879.6万トン)、在庫日数は+0.2日の21.1日(過去5年平均 27.5日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイト。当面、鉄鉱石価格は高止まりすると予想される。

・5月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比▲19.7%の2,205万7,000トン(前月+22.3%の3,095万トン)と減速し、過去5年平均程度まで落ち込んだ。中国の石炭国内生産が増加しているためとみられる。

原料炭の輸入は4月は前年比▲15.4%の628万トン(前年比▲8.1%の564万トン)と急減速した。おそらく国内生産が増加したことによるもの。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇した。FRBのプライマリー・マーケット・コーポレート・クレジット・ファシリティの運用が開始され、社債のスプレッドが低下するなど、FRBによる緩和策への期待が高まり、長期金利が低下したことが背景。

銀価格は金価格の上昇を受けて上昇、プラチナも上昇。

パラジウムは金価格の上昇に加えて株価が上昇したことが価格を押し上げた。

【貴金属価格見通し】

金銀は再び上昇基調を強めると考えられる。FRBが実質金利をマイナスにする緩和策を容認していることもあり、かつ、2022年までは現状の政策が維持される見込みであること、景況感とは乖離して上昇している株価下落への備え、といった観点で需要が高まると予想されるため。

また、米中対立激化がほぼ確実な情勢になっていることや、コロナ不況を背景とした新興国経済の混乱も、安全資産需要を高めることになる。

コロナウイルス対策で各国とも財政支出を拡大しており、アルゼンチンで発生したようなデフォルト発生が意識されることが安全資産需要を高めることも、価格を押し上げると考える。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は213ドル(前日比変わらず)となった。現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,520~1,550ドル程度に切り上がっている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では110倍程度が妥当、となっているが現在は再び100を下回った。

過去1年平均を基準にすると95倍程度が妥当であり、この水準への回帰の動きがみられていることから、銀の金に対しての上げ余地はあるとみられる。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることも、割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになると予想する。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、少なくともQ220は景況感の低迷が続く見込みであることから、工業向け需要低迷がから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

5月の米自動車販売は年率873万台(市場予想 1,104万台、前月 858万台)と、市場予想に到底届かないほどの低迷となった。足元、経済活動が再開されているが、米国の経済活動の正常化は、想定以上の時間がかかると考えるべきであり、PGM向けの需要の伸びは低迷しよう。

中国の5月の自動車販売は前年比pら14.7%の219万台(前月+4.4%の207万台)と前月比プラスとなった。景気テコ入れ(ただしその多くがEV車向け)の動きや、密を回避するための手段としての自動車の有用性が再確認されていることなどが材料とみられる。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となる可能性が濃厚になっており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが308,459枚(前週比 +31,064枚)、ショートが56,502枚(+3,455枚)、ネットロングは251,957枚(+27,609枚)、銀が71,859枚(+5,195枚)、ショートが33,936枚(+3,894枚)、ネットロングは37,923枚(+1,301枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが25,774枚(前週比 ▲594枚)ショートが8,011枚(+754枚)、ネットロングは17,763枚(▲1,348枚)

パラジウムが2,655枚(+33枚)、ショートが1,974枚(+29枚)ネットロングは681枚(+4枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は上昇した。原油価格がユーロ高・ドル安などを材料に上昇したことで、ほぼそれに連れ高となった。大豆・小麦も同様。

2020年6月25日時点米穀物輸出検証高は以下の通りトウモロコシ 1,234.69千トン(▲61.16千トン)大豆 324.51千トン(+68.70千トン)小麦 515.36千トン(▲170.68千トン)

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格はロックダウン解除後のガソリン出荷の回復観測が相場を押し上げてきたが、出荷回復が頭打ちとなっていること、生産地の天候回復観測で頭重い推移を予想。

大豆も飼料向け需要の回復と、中国の合意履行遵守期待で堅調。

小麦は北米の冬小麦の作柄が良好ではなく、投機筋のショートの水準が過去5年レンジを下回っており、買戻しが入りやすいが、競合飼料であるトウモロコシに下押し圧力が掛かりやすい状況になっていることで、上値は重い。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、7月頃に終息の見込み。ただし西アフリカに飛来する、との指摘もあり予断を許さず。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気だ。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・6月の米需給報告の生産見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 159億9,500万Bu(159億1,736万Bu、159億9,500万Bu)大豆 41億2,500万Bu(41億3,804万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億7,700万Bu(18億5,514万Bu、18億6,600万Bu)

・6月の米需給報告の在庫見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 33億2,300万Bu(33億5,554万Bu、33億1,800万Bu)大豆 3億9,500万Bu(4億2,861万Bu、4億500万Bu)小麦 9億2,500万Bu(9億500万Bu(9億900万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが257,634枚(前週比 +14,343枚)、ショートが479,610枚(+21,661枚)ネットロングは▲221,976枚(▲7,318枚)

大豆はロングが195,154枚(+7,659枚)、ショートが87,140枚(▲10,153枚)ネットロングは108,014枚(+17,812枚)

小麦はロングが122,527枚(▲22枚)、ショートが137,170枚(+16,597枚)ネットロングは▲14,643枚(▲16,619枚)

◆本日のMRA's Eye


「新たなパンデミックへの備え」

目立った手掛かり材料に乏しい状態が続いているが、テキサス州では再び行動制限が導入され、東京でも感染者数の再度の増加が確認されている。

テキサス州の場合、選挙をにらんだ経済活動の再開容認だったため、感染者はむしろ減っていなかったため、ある意味当然であるが、東京の場合は検査数が増加したことの影響も無視できないため、日米を同列に評価することは難しい。

しかし、今回のコロナ問題はこうした一連の政府の対応の在り方を考える上では重要なイベントとなった。

5月にロシアのNorilsk Nickelが保有するディーゼルタンクが倒壊し、ディーゼルオイルが河川に流れ込む汚染被害が発生した。どうも貯蔵タンク自体が基盤から倒壊したことによるもののようだ。

通常、ロシア北部の構造物は、永久凍土(ツンドラ)の上に構築するが、この永久凍土が温暖化の影響で溶け出し、地盤が崩れたのが倒壊・ディーゼルオイルの流出に繋がった要因である。

この数年、このツンドラ地帯からは冷凍されたマンモスなど、過去の動植物の遺骸が発見されており学術的な研究進捗が期待されている。しかしそれはこの生物の中に「冷凍保存」されていた新しいウイルスが、空気中に放出される可能性があることを示唆している。

武漢で発生したコロナウイルスが、もともと中国にあったものなのか、開発したものなのか。開発したもの、という見方は今のところ世界的にも否定されておりあまり現実的ではないため、やはり中国にもともといたものなのだろう。

しかし、それがこのタイミングで拡大した、というのは、ロシアや北極近辺に生息する渡り鳥が、温暖化で新たに空気中に放出されたウイルスを中国に運んできたものなのではないだろうか。ちなみに、武漢市にある沈湖湿地や東湖、漲渡湖などは渡り鳥が越冬をする場所として有名らしい。

あくまで上記は仮定の話だが、今後、まったく異なるウイルスが北極圏からもたらされる可能性はある。そのたびにロックダウン、ワクチン開発...では全くの鼬ごっこであり、対応は十分できないだろう。

現状、コロナウイルスの封じ込めに動いているが、今後発生する可能性がある新型のウイルスに対して、「どのように対応するか」といった、コンチ・プランの策定は、世界中で急務といえる。

もちろん、ワクチン開発・治療薬の開発は今後も継続しなければならないが、それ以上にパンデミック発生を防ぐための体制作りがより重要名のではなかろうか。

◆主要ニュース


・5月日本小売売上高 前年比▲12.3%(前月▲13.9%)、前月比+2.1%(▲9.9%)

・5月日本百貨店スーパー販売額 前年比▲16.7%(前月▲22.1%)

・6月ユーロ圏景況感指数 75.7(67.5)
 鉱工業景況感 ▲21.7(▲27.5)
 サービス景況感 ▲35.6(▲43.6)
 消費者信頼感 ▲14.7(▲14.7)

・6月独消費者物価指数 前月比+0.7%(前月±0.0%)、前年比+0.8%(+0.5%)

・5月米中古住宅販売仮契約 前月比+44.3%(前月▲21.8%)、前年比▲10.4%(▲34.6%)

・6月ダラス連銀製造業活動 ▲6.1(前月▲49.2)
 生産 13.6(▲28.0)
 新規受注 2.9(▲30.6)
 受注残 ▲2.3(▲17.4)
 完成品在庫 ▲9.8(▲8.9)
 雇用 ▲1.5(▲11.5)

・FRBパウエル議長、「美経済が数十年ぶりの深刻な悪化から回復する中で、コロナウイルスの感染を抑制は不可欠。」

・中国外務省、香港問題で悪質な言動を取る米国人の入国を制限すると発表。米政権が香港の自治を損ねる措置にかかわった当局者の入国を制限するとしたことへの対抗措置。

・フランス地方選、与党主要都市で大敗。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・Chesapeakが連邦破産法11条を申請。

・イラン、ソレイマニ司令官の殺害に関与したとしてトランプ大統領に逮捕状。

・イスラエル、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地などの併合に関する協議を本格化させる方針。

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +14.73%/ ▲48.60%
2.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +14.31%/ ▲21.93%
3.欧州排出権 ( 排出権 )/ +7.66%/ +8.28%
4.NYM WTI ( エネルギー )/ +3.14%/ ▲34.98%
5.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +3.14%/ ▲23.94%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲4.34%/ ▲36.33%
69.SHF天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲3.14%/ ▲21.65%
68.日経平均 ( 株式 )/ ▲2.30%/ ▲7.02%
67.LIFFEココア ( その他農産品 )/ ▲2.18%/ ▲3.79%
66.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲1.82%/ ▲20.16%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,595.80(+580.25)
S&P500 :3,053.24(+44.19)
日経平均株価 :21,995.04(▲517.04)
ドル円 :107.58(+0.36)
ユーロ円 :120.94(+0.65)
米10年債 :0.62(▲0.02)
中国10年債利回り :2.85(▲0.01)
日本10年債利回り :0.02(+0.01)
独10年債利回り :▲0.47(+0.01)
ビットコイン :9,180.36(▲9.90)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :33.77(▲0.74)
エネルギー :46.12(▲4.15)
ベースメタル :21.55(▲0.1)
貴金属 :21.38(▲0.53)
穀物 :27.85(+0.67)
その他農畜産品 :38.91(+0.04)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :53.36(+0.8)
Brent :49.27(▲7)
米天然ガス :57.35(+10.86)
米ガソリン :57.36(▲0.79)
ICEガスオイル :52.33(▲0.46)
LME銅 :19.09(+0.34)
LMEアルミニウム :21.19(▲0.05)
金 :7.91(▲0.03)
プラチナ :23.98(▲0.33)
トウモロコシ :18.02(+3.24)
大豆 :7.91(▲0.03)

【エネルギー】
WTI :39.70(+1.21)
Brent :41.71(+0.69)
Oman :42.41(+0.39)
米ガソリン :118.41(+3.08)
米灯油 :116.54(+2.91)
ICEガスオイル :348.00(+9.00)
米天然ガス :1.71(+0.21)
英天然ガス :15.97(+2.05)

【貴金属】
金 :1772.82(+1.53)
銀 :17.86(+0.05)
プラチナ :815.05(+9.30)
パラジウム :1900.43(+16.79)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,967(▲18:9.5C)
亜鉛 :2,031(▲37:8C)
鉛 :1,794(+6:10.5C)
アルミニウム :1,607(+10:18C)
ニッケル :12,723(▲28:39C)
錫 :16,751(▲48:229B)
コバルト :28,484(▲13)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5969.00(+26.00)
亜鉛 :2055.00(+19.00)
鉛 :1797.50(+13.50)
アルミニウム :1613.00(+15.50)
ニッケル :12770.00(+105.00)
錫 :16810.00(+10.00)
バルチック海運指数 :1,749.00(+11.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :102.1(▲0.13)
SGX鉄鉱石 :103.11(+0.07)
NYMEX鉄鉱石 :103.06(▲0.17)
NYMEX原料炭スワップ先物 :111.43(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,675(▲58)
上海鉄筋中心限月 :3,569(▲46)
米鉄スクラップ :303(±0.0)

【農産物】
大豆 :866.50(+1.50)
シカゴ大豆ミール :280.50(▲1.60)
シカゴ大豆油 :27.62(+0.42)
マレーシア パーム油 :2428.00(▲45.00)
シカゴ とうもろこし :326.25(+9.25)
シカゴ小麦 :485.50(+11.50)
シンガポールゴム :147.90(+1.40)
上海ゴム :9880.00(▲320.00)
砂糖 :11.71(+0.16)
アラビカ :98.65(+3.00)
ロブスタ :1153.00(+25.00)
綿花 :59.62(▲0.93)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :45.38(+0.10)
シカゴ生牛 :95.00(+0.30)
シカゴ飼育牛 :133.50(+0.90)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。