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IMF見通し下方修正とコロナ禍リスクで下落
  • MRA商品市場レポート

2020年6月25日 第1772号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「IMF見通し下方修正とコロナ禍リスクで下落」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:下落。IMFの見通し下方修正と米石油統計が弱気な内容となったことで、売り圧力が強まった。

昨日の弱気なIMF見通しを受けて四半期末を意識した売りで軟調。ただし米週間新規失業保険申請件数の若干の減少が価格を下支えか。

◆非鉄金属:下落。IMF見通しの下方修正と、米国のカナダに対するアルミ課税などを受けたドル高進行で、利益確定売りが強まった。

IMF見通し下方修正を受けた景気への懸念と、米国の各国に対する制裁強化見通しで四半期末を意識した売りで軟調。

◆鉄鋼原料:鉄鋼原料先物価格は上昇。中国の4連休を控えた休日前の駆け込み需要の増加で。

最大の買い手である中国勢不在で軟調な展開。

◆貴金属:貴金属セクターは下落。米石油統計を受けた原油価格の下落が実質金利を押し下げたため。パラジウムは株の急落が売り圧力に。

四半期末を意識した利益確定の動きと、実質金利の上昇で軟調も、株安や低金利政策継続観測が下支えで高値圏維持。パラジウムは下げ幅拡大か。

◆穀物:下落。米石油統計を受けて原油価格が急落、それを受けたドル高進行が材料となった。

昨日の下落率が大きかったことから本日は買戻しからスタートも、リスク回避のドル高傾向持続で総じて軟調に。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、米石油統計を受けてエタノールが大きく上昇し、人民元安となったことで人民元建ての商品が物色されたが、その他の商品は軒並み水準を切り下げる流れとなった。

四半期末が近く、明日のスポ末(月内受け渡し取引の最終日)を控え、利益確定の動きが強まりやすい地合いの中で、IMFの経済見通しが下方修正されたこと、米石油統計を受けて原油価格が下落して実質金利が上昇、ドル高が進行したことが材料となった。

また、米国の南部や欧州でコロナウイルスの感染者数が拡大し、ロックダウンの可能性が再び意識されていることもリスク回避の動きを強める結果となっている。

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【本日の見通し総括】

本日は目立った手掛かり材料に乏しい中、昨日のIMF見通しの下方修正や、欧米諸国の感染者数拡大に伴うロックダウン再開への懸念から、四半期末ということもあって調整売り圧力が強まる展開が継続すると予想する。

繰り返しこのコラムでも主張しているが、どうも5月を底に米経済は底入れしたようだが、それでも前年水準を回復するほどの改善にはなっていない。

リアルタイムで現在の経済状況を把握するための指標として参考になる、米石油統計における製品出荷は、改善はしているものの依然、前年比▲17%と、前年水準の回復には程遠い。

また、忘れられがちだが、コロナウイルスの感染が拡大する前から、まだ世界経済は減速しており、Q220~Q320のどこかで底入れするのでは?という程度だったのだ。よって、今の原油や株(リモートワーク定着で慎重したIT関連は除く)が、ポスト・コロナの水準を回復するのは、通常の状態では考え難い。

そのように考えると今週末からカレンダーが変わる直前の30日頃までは、リスク資産価格には下押し圧力が掛かる展開が予想される。新しい四半期に入り「スタートダッシュ」の利益確定売りが入る可能性はあるだろう。

昨日時点のセクター別の前期末からの騰落率は、エネルギーが+24.4%、株が+18.8%、LME非鉄金属が+8.8%、ソフトコモディティが+7.2%、畜産が+5.2%、穀物が▲5.0%となっている。

【昨日のトピックス】

IMFが発表した経済見通しは、前回見通しから下方修正された。2020年の成長見通しが▲4.9%(前回調査時比▲1.9%)、2021年が+5.4%(▲0.4%)、世界貿易が各々▲11.9%(▲0.9%)、+8.0%(▲0.4%)に減速するとの見通しを示している。

IMFは2020年の経済見通しに関して、前回見通しよりも上半期の経済活動への影響が大きくなり、下期の回復も緩やかになることを想定している。

下期の回復が緩やかになる前提として、1.ソーシャルディスタンスの確保が2020年後半も続く、2.Q120・Q220のロックダウン期間中の経済活動への打撃が予想以上になることで、残された傷跡が大きくなる、3.存続している企業が職場の安全と衛生基準を強化することで生産性がマイナスになる、ことを挙げている。

2020年は深刻な景気後退となり、2021年の回復は緩やかになる、という前提を置いているがそのようにならない不確実要素は多数存在しており、以下のものを指摘していた。

・パンデミックとそれに伴って必要になるロックダウンの長さ・ソーシャルディスタンスの確保が消費に影響・職を変更しなければならなくなる、失業者の再雇用問題・企業倒産や労働人口から外れる失業者が与える将来への影響(パンデミック終了後の経済活動の回復に影響)・職場の安全強化に伴う事業コストの上昇・供給途絶への対応力を挙げるための、グローバル・サプライチェーンの見直しが生産性に影響を与える・外需の低下と資金調達不足がもたらす国際的な波及効果の大きさ・現在の資産価格と景気見通しの乖離の解消。

また、パンデミック動向が全体の方向性を決定するため、見通しに対するリスクはパンデミック対応関連のものが多い。

・医療技術の進歩や、新生活様式への対応が速やかに進み、経済活動の再開が想定よりも早い場合・感染再流行による企業倒産の拡大(金融環境がタイト化しクレジットクランチ発生)・米中間の対立激化・OPECプラス内での摩擦の高まり・先進諸国を中心とする低インフレと高債務の組み合わせが、総需要の低迷が続いた場合経済活動を圧迫。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(+3.3%→▲3.0%)ている。ただし2021年には+5.8%への急回復を見込んでいる。

ただこの通りになるためには、コロナウイルス感染拡大終息が必要条件であり、第二次感染拡大となり得る冬場までの終息がなければ、それは難しかろう。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。現在でも感染は世界的に拡大しており、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は移行期間の延長を拒否しており、EUとFTAで合意できなければ関税引き上げが発生し、合意なき離脱に匹敵する混乱となる可能性(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウンの動きを受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は下落した。IMFの見通し下方修正や米石油統計で原油在庫の増加が確認されたこと、ロックダウンへの懸念、四半期末を意識した手じまいの動きが意識されたため。

昨日発表された米石油統計は原油在庫+1.4MBと市場予想(+1.1MB)を上回る在庫の増加となった。原油価格に影響を与えやすいクッシング在庫は▲1.0MBの減少と減少傾向を維持しており、全体の在庫増加の影響は緩和された。

昨日の統計で注目すべきは、原油の生産が増加(+0.5MBD)している点。OPECプラスの減産や経済対策、ロックダウン解除の動きで原油価格が上昇したことによるものとみられる。

また、引き続き製油所の稼働率は74.6%と同じ時期の最低水準である90.2%を大きく下回っており、製品需要が回復していないことを伺わせる内容。

ガソリンは▲1.8MBの在庫減少が見込まれていたが、▲1.7MBの減少とやや市場予想を下回った。生産の増加(+0.4MBD)、輸入の増加(+0.2MBD)が影響したため。

出荷は前週比+0.3MBDと回復し、前年比でも▲17.0%(前週▲20.4%)と回復している。

しかし、石油製品全体の出荷は前年比▲13.3%(▲13.2%)と足踏みをしており、輸出も含めた出荷も▲16.2%(▲18.9%)と回復はしているものの、依然として20%程度前年よりも低い。

米南部では感染者数が拡大しており、ドイツでは一部の州が再びロックダウンが実施されるなど、再び経済活動の強制停止の可能性は低くなく、石油製品需要の先行きリスクは下向きである。

【原油価格見通し】

原油価格はOPECの減産幅縮小観測や、四半期末決算を控えた手仕舞い売りの動きを受けて、一旦調整圧力が強まると考えられる。

ただし、今週末がいわゆる「スポ末」であるが、場合によると新しい四半期に入ってから利益確定の動きが強まる展開になるかもしれない。いずれにしてもこの2週間は構造的に下押し圧力が強まる展開が予想される。

DOEは2019年対比で元の水準に戻るのは2022年以降と想定しており、原油需要の戻りや価格の戻りは制限されると考えられるが、OPECの減産によって6月以降は原油需給バランスが供給不足になるとの見通しも示しており、下落余地も限定されるとみている。

テクニカルなサポートラインとしては、Brentは一目均衡表の雲の上限となる36ドル、WTIは31ドル程度。

しかし、米中対立やコロナの影響継続、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、プレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、常に価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべき時期にあると考える。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(27ドル~50ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末あたりではないだろうか。

今のところ6月の決算危機の可能性は、政府・中央銀行の一連の対策で、その可能性は低くなったと考えられる。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

逆に、コロナウイルスの感染拡大防止に失敗し、「今年の冬に第二ラウンドに突入」となると需要の回復は難しく、かつ、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きが続いている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。水準は低いが小じっかり、ということだ。

5月の中国石炭輸入は2,206万トン(前月3,095万トン)と過去5年平均程度まで急速に減少した。国内の経済活動の回復が一旦頭打ちとなったことや、国内生産が高水準(過去5年レンジを上回る)の増加が要因とみられる。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲2割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国小売売上高は前年比▲13.5%13兆8,730億元(1-4月期▲16.2%の10兆6,758億元)と回復は遅れており、5月単月でも▲2.8%の3兆1,973億円(前月▲7.5%の2兆8,178億元)と回復はしているがマイナスは継続(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし前年比マイナスの状態が続き、回復ペースは緩慢。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTIはロング・ショートとも減少したがロングの減少幅が大きかった。四半期末を控えた利益確定の動きとみられる。

Brentもロング・ショートとも増加しているが、OPECプラスがイラクに減産順守させるとの方針を受け、ショートの買戻しのほうが大きかった。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが706,483枚(前週比 ▲26,451枚)ショートが160,211枚(▲4,814枚)ネットロングは546,272枚(▲21,637枚)

Brentはロングが247,607枚(前週比▲2,240枚)ショートが62,387枚(▲3,922枚)ネットロングは185,220枚(+1,682枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場は下落した。IMF経済見通しの下方修正や、再ロックダウンへの懸念からリスク回避の動きが強まったことで、四半期末を意識した投機的な売り圧力が強まったためと考えられる。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は四半期末を控えた手仕舞いの動きと、銅現物プレミアムの低下(銅など)に反映される需給の緩和が価格を下押しするものの、米国の1兆ドルインフラ投資計画や、株価が高値を維持していること、緩和政策の長期化観測がファイナンシャルな面で価格を下支えするため、結局レンジワークを継続すると予想する。

ただし、今週末がいわゆる「スポ末」であるが、場合によると新しい四半期に入ってから利益確定の動きが強まる展開になるかもしれない。いずれにしてもこの2週間は構造的に下押し圧力が強まる展開が予想される。

2016年の大統領選挙時も1兆ドルインフラ投資(この時は10年かけて1兆ドル)が材料となり相場が上昇したが、大統領選挙で一巡してその後下落している。

今回の公共投資では、5G分野やEVステーションの整備、通常の公共投資が行われる見込みであり、銅、亜鉛、アルミの需要が増加すると考えられる。

割安に推移してきたアルミは中国の製錬キャパシティの拡大が2020前年比で▲130万トンの減少が見込まれるため、秋口にかけての上昇リスクは小さくないとみる。

しかし、今年は冬場のロックダウンの懸念がぬぐえないため、北半球の夏場は強いものの、大統領選後の冬場は南半球が夏になり、供給制限が緩和される見込みであることを考えると、年後半は需給両面で価格が下落するリスクは拭えない。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

ただし、コロナウイルスへの中国の対応(情報隠ぺい)を受けて、欧米の中国に対する今までの積年の不満が、香港・新疆ウイグル自治区問題、台湾問題で爆発しており、今後、欧米が協調して中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

特に、反中に転じたバイデン候補が勝利した場合、欧州と連携して中国包囲網を強めると予想される。

結果、貿易量の減少を通じて非鉄金属価格には下押し圧力が掛かることになる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・5月中国製造業PMIは50.6(前月50.8)と2ヵ月連続で減速した。新規受注は国内を中心に回復しているとみられるが、輸出受注の減速を受け、生産が減速したことが影響したようだ。

しかし、新規受注在庫レシオは回復基調を持続しており、中国の完成品及び原材料需給はタイト化していると見られる。主に中国国内のインフラ投資と思われる需要が増加していることによるものと考えられ、生産活動がやや減速する中で完成品、原材料ともに在庫水準が低下したことが、レシオ上昇に寄与した。

また、欧米の経済活動再開も、非鉄金属価格にはプラスに作用され、「冬場の再ロックダウンリスク」を意識して、夏場が想定以上に需要増加で価格が上昇する可能性が出てきた。

・6月中国銅線生産者 97.1%(前月101.7%、過去4年平均 87.1%) 銅棒生産者 77.8%(80.4%、76.1%)

・5月中国銅板生産者 64.8%(68.3%、72.2%) 銅管生産者 82.7%(84.4%、75.4%)

・5月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 90.9%(前月90.3%) 中規模事業者 73.3%(65.9%) 小規模事業者 73.1%(73.1%)

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・5月の中国の銅輸入は前年比+20.8%の44万トン(4月+12.6%の46万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比▲8.3%の169万トン(+22.2%の203万トン)となった。

銅地金の輸入は過去5年の最高水準を上回っていたが今月は減速、鉱石輸入も5年平均程度まで減速している。上海銅プレミアムの低下を見るに、中国の銅地金・鉱石輸入はいったん一巡したとみられる。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・6月19日付のLMEロング・ショートポジションは、引き続き総じてショートの買戻しが顕著だったが、アルミと錫以外は新規にロングが積み増された。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は5.8億ドル(前週4.4億ドル)と、1月24日以来のネット買い越しとなっている。買い越し幅の増加率は+32.8%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲173千トン(前週▲238千トン)と売り越し数量を縮小したが、ネット買い越しには転じていない。アルミのネット売り越しが大きいため。ネット売り越しの減少率は▲27.1%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は小幅下落、中国鉄鋼製品先物価格は小動きだった。

中国の連休を控えた休み前の買いが入ったことが、鉄鉱石価格の上昇要因となった。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は堅調な推移になると考える。中国鉄鉱石在庫が日数ベースで過去5年の最低水準で推移していること、中国の鉄鋼業PMIなどを見るに、中国国内の鉄鋼原料需給がタイト化しているため。

中国のインフラ投資(公的需要)、米国の1兆ドルインフラ投資、ブラジルの供給懸念も価格の押し上げ材料。

なお、足元のバルチック海運指数は急速に上昇しており、過去5年の上限レンジを上回った。

同指数は石炭輸送状況の影響を強く受けるが、足元、ブラジル・豪州の中国向け鉄鉱石輸出が過去5年レンジを上回って高水準で推移しており、鉄鉱石在庫積み増しの動きの影響が大きくなっている可能性がある。

ただし、鉄鋼製品在庫の水準は例前年比でみても高く、貿易統計に見る鉄鋼製品輸出は440万トンと過去5年の最低水準を大きく下回っており、外需の回復には時間がかかりそうな状況。

中国河北省の高炉稼働率は6月19日時点で78.9%(前週78.7%)と小幅に上昇しており、鉄鋼製品生産の回復がまだ緩慢であることをうかがわせる内容。

コロナウイルス感染拡大や、人権問題をめぐって欧米の中国への不満が高まっており、両者の対立は交易量の減少を通じて鉄鋼製品価格・鉄鉱石価格を下押ししよう。

原料炭は中国の生産活動再開の影響もあるが、中国の国内生産の増加もあり、低調な推移になると考える。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は一時、過去5年平均を回復したが、再びこの水準を下回っている。

インドネシア・豪州の中国向け石炭輸出は増加しており、バルチック海運指数の押し上げ要因となっている。しかし、中国生産者の在庫の積み増しが進んでいることを考えると早晩頭打ちとなるだろう。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・5月の中国鉄鋼業PMIは50.9(前月45.9)と回復した。主に新規受注の回復(39.9→52.9)によるものであり、生産は好調ながらも緩やかな回復となった(53.4→56.4)。

この結果、完成品在庫指数は29.2(38.8)、原材料在庫指数は41.2(38.3)と非常に低い水準を維持、需給はタイト化している

しかし、需要はほとんどが国内向けとみられ、輸出向け新規受注は31.9(27.8)と低迷が続いている。欧米のロックダウンが解除の方向にあり、徐々に回復すると予想されるが、中国に対する欧米の風当たりが強まっており、順調な回復になるかどうかは不透明。

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・5月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲23.3%の440万1,000トン(前月▲0.2%の631万9,000トン)大幅に減速した。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲38.0万トンの1,451.8万トン(過去5年平均1,052.7万トン)と、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが続いている。

ただし、例年よりも取り崩しのペースは早く、鉄鋼生産者の稼働が最終需要家の回復よりも遅れている可能性があることを示唆している。

・5月の中国の鉄鉱石の輸入量は前年比+3.9%の8,703万トン(前月+18.5%の9,571万トン)と前年比プラスとなったが、過去5年レンジを下回り、過去5年平均程度まで落ち込んだ。しかし、ブラジル・豪州の週間鉄鉱石輸出は中国向けが増加しており、恐らく6月の統計は強めの数字となろう。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+60万トンの1億835万トン(過去5年平均1億1,901.6万トン)、在庫日数は+0.1日の22.8日(過去5年平均 27.5日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイト。当面、鉄鉱石価格は高止まりすると予想される。

・5月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比▲19.7%の2,205万7,000トン(前月+22.3%の3,095万トン)と減速し、過去5年平均程度まで落ち込んだ。中国の石炭国内生産が増加しているためとみられる。

原料炭の輸入は4月は前年比▲15.4%の628万トン(前年比▲8.1%の564万トン)と急減速した。おそらく国内生産が増加したことによるもの。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は下落した。米石油統計を受けて原油価格が下落し、期待インフレ率の低下を通じて実質金利が上昇したため。

銀、プラチナも下落したが、金・銀レシオの低下によって感応度が上がっているため、銀・プラチナの下落率が金の下落率を上回った。ただし結果的に金銀レシオは100.6に上昇している。

パラジウムはIMF経済見通しの下方修正や、ドル高の進行で金銀プラチナ以上に下落した。

【貴金属価格見通し】

金銀はやや軟調な推移になると予想する。感染第二波の影響や四半期末を控えた利益確定の動きが株式市場にみられる中、金にも決算を意識した利益確定の動きが強まると予想されるため。

ただし、FOMCでは2022年までの政策金利据え置きの見通しが示されており、パウエル議長も慎重な金融政策維持方針を示し、債券購入拡大も実施、金融面では金価格はサポートされるため、下落するといっても3月のような決算危機にならない限り、大幅な調整にはならないと考える。

また、米中対立激化がほぼ確実な情勢になっていることや、コロナ不況を背景とした新興国経済の混乱も、安全資産需要を高めることになる。

コロナウイルス対策で各国とも財政支出を拡大しており、アルゼンチンで発生したようなデフォルト発生が意識されることが安全資産需要を高めることも、価格を押し上げると考える。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は224ドル(前日比+4ドル)と低下。現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,500~1,520ドル程度に切り上がっている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では110倍程度が妥当、となっているが現在は100倍台となっている。

過去1年平均を基準にすると95倍程度が妥当であり、この水準への回帰の動きがみられていることから、銀の金に対しての上げ余地はあるとみられる。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることも、割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになると予想する。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、少なくともQ220は景況感の低迷が続く見込みであることから、工業向け需要低迷がから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

5月の米自動車販売は年率873万台(市場予想 1,104万台、前月 858万台)と、市場予想に到底届かないほどの低迷となった。足元、経済活動が再開されているが、米国の経済活動の正常化は、想定以上の時間がかかると考えるべきであり、PGM向けの需要の伸びは低迷しよう。

中国の5月の自動車販売は前年比pら14.7%の219万台(前月+4.4%の207万台)と前月比プラスとなった。景気テコ入れ(ただしその多くがEV車向け)の動きや、密を回避するための手段としての自動車の有用性が再確認されていることなどが材料とみられる。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となる可能性が濃厚になっており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが277,395枚(前週比 +13,423枚)、ショートが53,047枚(▲2,312枚)、ネットロングは224,348枚(+15,735枚)、銀が66,664枚(+1,004枚)、ショートが30,042枚(▲2,253枚)、ネットロングは36,622枚(+3,257枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが26,368枚(前週比 ▲1,002枚)ショートが7,257枚(▲398枚)、ネットロングは19,111枚(▲604枚)

パラジウムが2,622枚(▲26枚)、ショートが1,945枚(▲39枚)ネットロングは677枚(+13枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は下落した。米石油統計でのエタノール在庫・生産動向は同国のエタノール需給のタイト化が進んでいることを示唆する内容だったが、原油価格の急落と、それを受けたドル高に押された形。

大豆はドル高の進行でじり安、小麦はトウモロコシに連れる形で米石油統計発表以降に水準を切り下げた。

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格はロックダウン解除後のガソリン出荷の回復観測が相場を押し上げてきたが、出荷回復が頭打ちとなっていること、生産地の天候回復観測で頭重い推移を予想。

大豆も飼料向け需要の回復と、中国の合意履行遵守期待で堅調。

小麦は北米の冬小麦の作柄が良好ではなく、投機筋のショートの水準が過去5年レンジを下回っており、買戻しが入りやすいが、競合飼料であるトウモロコシに下押し圧力が掛かりやすい状況になっていることで、上値は重い。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、7月頃に終息の見込み。ただし西アフリカに飛来する、との指摘もあり予断を許さず。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気だ。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・6月の米需給報告の生産見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 159億9,500万Bu(159億1,736万Bu、159億9,500万Bu)大豆 41億2,500万Bu(41億3,804万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億7,700万Bu(18億5,514万Bu、18億6,600万Bu)

・6月の米需給報告の在庫見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 33億2,300万Bu(33億5,554万Bu、33億1,800万Bu)大豆 3億9,500万Bu(4億2,861万Bu、4億500万Bu)小麦 9億2,500万Bu(9億500万Bu(9億900万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが243,291枚(前週比 +7,164枚)、ショートが457,949枚(▲13,191枚)ネットロングは▲214,658枚(+20,355枚)

大豆はロングが187,495枚(+208枚)、ショートが97,293枚(▲5,885枚)ネットロングは90,202枚(+6,093枚)

小麦はロングが122,549枚(+2,570枚)、ショートが120,573枚(+1,755枚)ネットロングは1,976枚(+815枚)

◆本日のMRA's Eye


「食品価格高騰がもたらすリスク」

世界に多くの異常気象をもたらしたと考えられるエルニーニョ現象が終息し、現在なんのリスクも顕在化していない。

しかし、今年の7月以降、3割程度の確率でラニーニャ現象が発生する可能性がある。過去の例を見ると、ラニーニャ現象がひとたび発生すると、6ヵ月~24か月程度継続する傾向がある。

ラニーニャ現象が発生した際の主な影響は地域ごとに影響が異なる。しかし、昨年11月の2020年度見通しで解説したように、すでにサヘル地域でのサバクトビバッタの大量発生はリスクとして顕在化している。

今のところサバクトビバッタの影響は7月頃に終息する見込みであるが、2018年、2019年にアラビア半島にサイクロンが上陸して今回のバッタ大量発生につながったため、ラニーニャ現象発生が懸念される現状、このリスクは無視できないと考えるべきだろう。

では、直ちに食料危機が発生するか?というと数字の上ではそのような感じはない。国連が算出している食料品価格指数はヒストリカルに見ても低い水準にあり、世界の穀物などの在庫水準も高いからだ。

しかし、今年の秋は穀物価格に与える影響が近年高まっているラニーニャ現象の発生が予想されるうえ、コロナウイルスが北半球の収穫期に生産地で拡大し、収穫や供給(特に輸出)に影響を及ぼすリスクは無視できない。

また、米国ではコロナ発生によるロックダウンで精肉工場の稼働が停止し、牛肉を始めとする肉類の価格が高騰した。つい先日もドイツの精肉工場でクラスターが発生している。冬場のロックダウンの可能性がある以上、同様のリスク再発生の可能性は無視できない。

これに加えて2018年に発生した豚熱の流行が中国で継続しており、中国の豚肉価格は高止まり、その他の肉類の価格も高い。

2010年12月にアラブの春の切っ掛けとなる「ジャスミン革命」が起きたが、これは職に就けない若者が生活に困窮して起こした革命であり、別に「若者の民主化への目覚め」ではない。つまり、職に就けず、十分な保護も得られない場合、国民が蜂起する可能性が以前よりも高い、ということである。

アラブの春が起きた時、リーマンショックの傷が十分に癒えていない状況だったため、中東諸国は高まる国民の不満にこたえるだけの「財政的なゆとり」がなかった。

しかし、原油価格の下落で中東・北アフリカ産油国の財政状況は、コロナショックによる需要による販売量の減少+価格下落で顕著に悪化しており、冬場の再ロックダウンがあれば、さらに状況が悪化することになる。

この場合、中東・北アフリカ諸国の「有事発生時の対応能力」は十分とは言えず、アラブの春発生時と同様に食品価格が上昇すれば、大規模デモに発展するリスクは十分にあり得る。

今年の秋以降は、食品価格の高騰に伴う中東北アフリカ諸国の政情悪化リスクに、十分備えておく必要があるのではないか。

◆主要ニュース


・4月日本景気動向指数改定
 先行指数 77.7(速報比+1.5、前月改定 84.7)
 景気一致指数 80.1(▲1.4、90.2)

・6月独IFO企業景況感指数 86.2(前月79.7)
 期待指数 91.4(80.5)
 現状指数 81.3(78.9)

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲8.7%(前週+8.0%)
 購入指数▲3.0%(+3.5%)
 借換指数▲11.7%(+10.3%)
 固定金利30年 3.30%(3.30%)、15年 2.81%(2.80%)

・4月米FHFA住宅価格指数 前月比+0.2%(前月+0.1%)

・2020年6月 IMF世界経済見通し
 2020年 ▲4.9%(前回調査時比▲1.9%)、2021年 +5.4%(▲0.4%)
  OECD諸国 ▲8.0%(▲1.9%)、+4.8%(+0.3%)
   米国 ▲8.0%(▲2.1%)、+4.5%(▲0.2%)
   ユーロ圏 ▲10.2%(▲2.7%)、+6.0%(+1.3%)
   日本 ▲5.8%(▲0.6%)、+2.4%(▲0.6%)

  非OECD諸国 ▲3.0%(▲2.0%)、+5.9%(▲0.7%)
   中国 +1.0%(▲0.2%)、+8.2%(▲1.0%)
   インド ▲4.5%(▲6.4%)、+6.0%(▲1.4%)
   ブラジル ▲9.1%(▲3.8%)、+3.6%(+0.7%)
   ロシア ▲6.6%(▲1.1%)、+4.1%(+0.6%)
   サウジアラビア ▲6.8%(▲4.5%)、+3.1%(+0.2%)
   ナイジェリア ▲5.4%(▲2.0%)、+2.6%(+0.2%)
   南アフリカ ▲8.0%(▲2.2%)、+3.5%(▲0.5%)

  世界貿易 ▲11.9%(▲0.9%)、+8.0%(▲0.4%)
   OECD諸国 ▲13.4%(▲1.3%)、+7.2%(▲0.2%)
   非OECD諸国 ▲9.4%(▲0.5%)、+9.4%(▲0.7%)

 Brent価格 36.18ドル(+0.57ドル)、37.54ドル(▲0.33ドル)

・米国、フランス・ドイツ・スペイン・英国からの31億ドル相当の輸入品(オリーブ、ビール、ジン、トラック、航空機、チーズ、ヨーグルトなど)に追加関税を検討。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油+1.4MB(クッシング▲1.0MB)
 ガソリン▲1.7MB
 ディスティレート+0.2MB
 稼働率+0.8

 原油・石油製品輸出 7,220KBD(前週比+66KBD)
 原油輸出 2,713KBD(▲5KBD)
 ガソリン輸出 338KBD(+19KBD)
 ディスティレート輸出 1,146KBD(+61KBD)
 レジデュアル輸出 114KBD(+11KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,012KBD(+15KBD)
 その他石油製品輸出 1,803KBD(▲31KBD)

・米クシュナー大統領上級顧問、イスラエルのヨルダン川西岸のユダヤ人入植地を併合するというイスラエル・ネタニヤフ首相の計画を承認するかどうかの協議に参加。

【メタル】
・ペルー鉱山技術者協会、「ペルーの大規模鉱山生産は7月までに100%となる。中小規模生産者の生産は9月まで完全に回復することはない。ペルーの2020年の銅生産は前年比▲12%~15%減少する可能性がある。」

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CBTエタノール ( エネルギー )/ +2.74%/ ▲7.35%
2.SGX天然ゴム ( その他農産品 )/ +1.11%/ ▲11.97%
3.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +0.94%/ +0.38%
4.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ +0.86%/ ▲8.37%
5.ICEココア ( その他農産品 )/ +0.66%/ ▲3.90%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲7.93%/ ▲29.53%
69.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲5.98%/ ▲43.69%
68.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲5.85%/ ▲37.75%
67.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲5.44%/ ▲38.92%
66.DME Oman ( エネルギー )/ ▲5.35%/ ▲39.10%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,445.94(▲710.16)
S&P500 :3,050.33(▲80.96)
日経平均株価 :22,534.32(▲14.73)
ドル円 :107.04(+0.52)
ユーロ円 :120.43(▲0.02)
米10年債 :0.68(▲0.03)
中国10年債利回り :2.86(▲0.05)
日本10年債利回り :0.02(+0.00)
独10年債利回り :▲0.44(▲0.03)
ビットコイン :9,288.58(▲341.31)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :34.03(+0.57)
エネルギー :49.56(+1.94)
ベースメタル :21.32(+0.1)
貴金属 :21.70(+1.56)
穀物 :27.32(+0.18)
その他農畜産品 :38.11(▲0.03)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :55.32(+2.13)
Brent :56.17(+2.1)
米天然ガス :40.22(▲0.16)
米ガソリン :56.40(+5.46)
ICEガスオイル :52.88(+4.05)
LME銅 :18.68(▲0.15)
LMEアルミニウム :19.05(+0.11)
金 :8.25(+0.33)
プラチナ :24.26(+2.35)
トウモロコシ :15.01(▲0.03)
大豆 :8.25(+0.33)

【エネルギー】
WTI :38.01(▲2.36)
Brent :40.31(▲2.32)
Oman :41.06(▲2.32)
米ガソリン :119.64(▲10.30)
米灯油 :115.08(▲5.22)
ICEガスオイル :345.75(▲22.00)
米天然ガス :1.60(▲0.04)
英天然ガス :14.64(▲0.36)

【貴金属】
金 :1761.17(▲7.24)
銀 :17.50(▲0.44)
プラチナ :804.57(▲25.52)
パラジウム :1880.60(▲51.05)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,883(▲27:11.5C)
亜鉛 :2,023(▲35:8C)
鉛 :1,756(▲6:13C)
アルミニウム :1,587(▲12:22.5C)
ニッケル :12,577(▲15:67C)
錫 :16,739(▲161:90B)
コバルト :28,500(▲334)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5889.00(▲22.00)
亜鉛 :2031.00(▲6.50)
鉛 :1762.00(+15.00)
アルミニウム :1576.00(▲15.50)
ニッケル :12505.00(▲180.00)
錫 :16650.00(▲205.00)
バルチック海運指数 :1,617.00(+59.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :101.98(▲1.39)
SGX鉄鉱石 :103.13(+0.67)
NYMEX鉄鉱石 :103.12(+0.27)
NYMEX原料炭スワップ先物 :111.43(▲0.07)
上海鉄筋直近限月 :3,733(+9)
上海鉄筋中心限月 :3,615(+1)
米鉄スクラップ :303(±0.0)

【農産物】
大豆 :870.75(▲4.25)
シカゴ大豆ミール :286.70(+0.40)
シカゴ大豆油 :27.65(▲0.52)
マレーシア パーム油 :2542.00(±0.0)
シカゴ とうもろこし :324.25(▲0.75)
シカゴ小麦 :481.25(▲4.75)
シンガポールゴム :146.40(+1.60)
上海ゴム :10200.00(+40.00)
砂糖 :11.75(▲0.04)
アラビカ :96.65(+0.40)
ロブスタ :1145.00(▲13.00)
綿花 :61.66(▲1.38)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :45.93(▲0.98)
シカゴ生牛 :93.30(▲0.23)
シカゴ飼育牛 :132.88(▲0.33)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。