CONTENTSコンテンツ

ワクチン開発期待と中国統計を受けて堅調
  • MRA商品市場レポート

2020年7月13日 第1783号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ワクチン開発期待と中国統計を受けて堅調」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:上昇。IEA月報での需給見通し上方修正や、コロナウイルスを巡り、前向きな材料が出てきたことが背景。

週明け月曜日も目立った手掛かり材料に乏しく、レンジワークを継続の見込み。ただし北半球の夏場のロックダウンの可能性は低く、下値は堅いとみる。

◆非鉄金属:供給不安がテーマとなる中、コロナウイルスのワクチンを巡る報道を受けたリスク選好の過熱とそれにともなうドル安進行が材料に。

引き続き供給不安が材料となり、公共投資期待も根強いことから価格は需給面で上昇継続の見込み。

◆鉄鋼原料:中国のインフラ投資期待とブラジルからの供給減少観測が引き続き価格を押し上げた。

需給環境に大きな変化なく、ブラジルの情勢が悪化していることによる供給面、中国のインフラ投資強化などの需要面両面から堅調地合いを持続の公算。

◆貴金属:実質金利上昇とドル安進行、株価の戻りなどの強弱材料が混在する形で高安まちまち。

月曜日は新規材料乏しいが、実質金利の下げ幅がそろそろ限定され始めていることから上値も重く、高値圏での維持を継続。

◆穀物:シカゴ穀物市場はまちまち。米需給報告はすべて強気の内容だったが、トウモロコシ・大豆は景気循環銘柄買い・非景気循環銘柄売りの影響を受けたと考えられる。

景気循環系商品物色の流れを受けてトウモロコシ・大豆はやや軟調、小麦は欧州諸国の供給懸念から高値維持の公算。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は総じて堅調な推移となったが、穀物・貴金属の一角など、非景気循環系商品が週末を控えた調整売りに押された。

金曜日は中国のファイナンス関連統計が発表され、政府の緩和策もあって予想を上回る伸びとなっていることが確認され、北半球経済が夏場は順調であると見られたことや、米国でレムデシビルがコロナウイルスに対して有効との報道を受けて安心感が広がったことが、広く価格を押し上げた。

しかし、経済活動が回復してはいるものの、絶対水準が昨年の水準を取り戻しているというわけではなく、財政出動や金融緩和などの政策が価格を押し上げているという感じは否めない。

商品市場も徐々に互いの商品の価格相関性が高まっており、鉱物資源価格を除き、徐々に金融相場入りし多少なりともその影響が出始めていることは、意識しておいたほうが良いかもしれない。

この場合、特に需給以外の要因が価格に影響を及ぼしやすい貴金属セクターが循環物色のの対象になる可能性がある。

※ニュース解説は、不定期ですがFBでも行っていますので、ご興味のある方はフォローをお願いします。https://www.facebook.com/Market.Risk.Advisory/

※レポートのお申込みはこちらから
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

※月次の世界商品需給と期間構造
https://marketrisk.jp/category/news-contents/contents/fundamentals

※新型コロナウイルスの新規感染者数
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8925.html

※Brent・WTIの期間構造
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8377.html

※商品市場分析入門のお求めはこちらから
https://www.amazon.co.jp/dp/447810445X/

【本日の見通し総括】

月曜日は予定されている材料があまりないため、週末の流れを受けて景気循環系商品を中心に物色される流れが続くものと考えられる。

しかし、コロナウイルスの経済活動への影響は強弱まちまちであり、仮にロックダウンの動きが広がるようであれば、再び株を中心に売り圧力が強まることになるだろう。

現状、冬場の部分的なロックダウン再開をメインシナリオとしているが、少なくとも北半球の夏場は経済活動を強制的に停止させる意向はどの国もあまりないと考えられ、総じてリスク資産価格は高止まりすることになるだろう。

転換点になるのは夏から秋にかかり、かつ、年度決算が意識され始める9~10月、11月の大統領選挙あたりだろう。

【昨日のトピックス】

昨日発表された中国のファイナンス関連統計は、総じて市場予想を上回る内容となった。これは中国政府の景気刺激を目的とした金融緩和の影響が顕在化したものであることは明らかである。

また製造業の稼働状況に対する説明力が比較的高い、中国のM1(現金通貨と銀行が保有する預金の合計)は、6ヵ月程度OECD景気動向指数に先行するが、今年の1月頃に底を打ち、回復基調にある。これまでのパターンであれば、製造業の景況感は年後半に向けて回復していくことが予想される。

しかしこれは北半球の冬場に突如発生する可能性がある、経済のロックダウンのリスクをファクターとしては織り込めておらず、必ずしもこの関係性が維持できるかどうかはわからない。

昨日はOECDの景気先行指数も発表された。同指数は6ヵ月後の景況感を表す指標でどの国・地域も回復が確認されているが、主要国・地域の中で閾値である100を上回っているところはない。

6月時点で100を上回っていないということは、年末時点で景況感が好況入りする可能性は低いことを表している。前月比でみたときの景況感の回復が続いていることは否定しないが、やはり景気回復の足取りは重いと考えておくほうが良い。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(▲3.0%→▲4.9%)ている。2021年に関しても+5.8%→+5.4%と下方修正した。

結局、コロナウイルスの影響が2021年意向も残存することが前提となっている。ただ、この冬場の再ロックダウン時の経済への影響は、2020年初に見られたほどの過激なものにはならず、半分程度にとどまるケースをメインシナリオとしている。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。現在でも感染は世界的に拡大しており、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。ジョンソン首相は移行期間の延長を拒否しており、EUとFTAで合意できなければ関税引き上げが発生し、合意なき離脱に匹敵する混乱となる可能性(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウン解除の動きと量的緩和・信用緩和を受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇した。米医薬品会社がコロナウイルスの治療薬として期待されるレムデシビルが有効であるとの見通しを示したことにより、景気への経済活動再開への期待が高まったこと、IEAが月報で需給見通しを若干上方修正(タイト化)させたことが背景。

とはいっても前日の下落部分を埋めた程度であり、引き続きコロナを巡る見通しは錯綜しており結局はレンジワークとなっている。

昨日発表されたIEA月報では、IEAは2020年の石油需要が2019前年比▲790万バレル減少するとの見通しを示した。これは過去最大の落ち込みであるが、6月予想の▲830万バレルよりは多少影響度が緩和した。

Q220の需要は前年比▲17%とし、前月見通しから+150万バレルに上方修正、Q320に関しては前期比+14%増加するとしている。OPECの減産も続くことから、在庫調整も進捗するとの見通しを示した。

しかし、ほとんどの商品で同じであるが、今後のコロナウイルスの感染拡大動向が不透明であり、予測も不可能であることから需要見通しのリスクは下向きである。

【原油価格見通し】

原油価格は最大消費国である米国の経済活動が回復していることから目先強含み易いものの、OPECの減産幅縮小観測や、世界的なコロナの再拡大懸念を受けて上値も重いと考える。

DOEは2019年対比で元の水準に戻るのは2022年以降と想定しており、原油需要の戻りや価格の戻りは制限されると考えられるが、OPECの減産によってすでに原油需給バランスが供給不足になっているとの見通しも示しており、下落余地も限定されるとみている。当面はレンジワークとなるだろう。

しかし、米中対立やコロナの影響継続、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、プレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、常に価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべき時期にあると考える。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(27ドル~50ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

ただ、今のところ今年の冬に感染拡大の第2ラウンドが来る可能性は高く、むしろメインシナリオになりつつある。この場合、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きとなっていたが、ここにきて上昇も、下落もしなくなってきている。

機関構造は緩やかなコンタンゴで限月交代によるジャンプも起きにくく、価格変動性は15%程度(VaRの概念では、7割の確率で1年後の価格が±8ドル程度しか変化しない)と通貨の変動率程度まで変動性が低下している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。水準は低いが小じっかり、ということだ。

5月の中国石炭輸入は2,206万トン(前月3,095万トン)と過去5年平均程度まで急速に減少した。国内の経済活動の回復が一旦頭打ちとなったことや、国内生産が高水準(過去5年レンジを上回る)の増加が要因とみられる。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲2割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国小売売上高は前年比▲13.5%13兆8,730億元(1-4月期▲16.2%の10兆6,758億元)と回復は遅れており、5月単月でも▲2.8%の3兆1,973億円(前月▲7.5%の2兆8,178億元)と回復はしているがマイナスは継続(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし前年比マイナスの状態が続き、回復ペースは緩慢。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTI、Brentともロングの解消売りが顕著。ロックダウン再開への懸念が影響したものと考えられる。

WTIはショートの買戻しが多く、Brentはショートの新規積み増しが顕著だった。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが686,543枚(前週比 ▲17,850枚)ショートが151,226枚(▲9,341枚)ネットロングは535,317枚(▲8,509枚)

Brentはロングが254,623枚(前週比▲10,315枚)ショートが55,367枚(+4,570枚)ネットロングは199,256枚(▲14,885枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場は錫以外、上昇した。南半球のコロナ感染拡大の影響で供給面が強く意識されている一方、レムデシビルの効果に対する前向きな報道を受けた需要面の回復期待が強まっていることが背景。

足元、北半球と南半球の季節の違いによる需給ギャップの発生が価格を押し上げている。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は高値圏を維持すると考える。今のところ市場参加者は、北半球の主要国は夏場のロックダウンを想定していないと見られること、中国・米国のインフラ投資実施による公的セクターの需要下支えが期待されるうえ、コロナの影響による南半球、特に南米生産者の供給減少が意識されており、ベンチマークである銅価格が堅調に推移すると予想されることから。

ここにきて特に市場参加者は、鉱山供給の停止リスクを強く意識し始めている。鉱山を保有する国の多くが新興国であり、医療体制が充実していないなどコロナウイルスに対する体制が脆弱である。

特に南米はブラジルを中心に対策が遅れており、ベンチマークの銅の供給懸念は日に日に強まっている状況。これに米中のインフラ投資需要が重なっているため、通常は工場の稼働が夏休みで低下する夏場にかけて、相場は強含み易い。

今回の米中の公共投資は、5G分野やEVステーションの整備、通常の公共投資が行われる見込みであり、銅、亜鉛、アルミの需要がその恩恵を受けると予想される。

割安に推移してきたアルミは中国の製錬キャパシティの拡大が2020前年比で▲130万トンの減少が見込まれ、アルミなの供給能力も、中国で180万トン程度が停止していることから、秋口にかけての上昇リスクは小さくないとみる。

しかし、今年は北半球の冬場に再びロックダウンとなる懸念がぬぐえないため、北半球の夏場の非鉄相場は強いものの、大統領選後の冬場は南半球が夏になり、供給制限が緩和される見込みであることを考えると、年後半は需給両面で価格が下落するリスクは小さくないと考えている。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

ただし、コロナウイルスへの中国の対応(情報隠ぺい)を受けて、欧米の中国に対する今までの積年の不満が、香港・新疆ウイグル自治区問題、台湾問題で爆発しており、今後、欧米が協調して中国からのデカップリングを進める可能性は高い。むしろメインシナリオだろう。

特に、反中に転じたバイデン候補が勝利した場合、欧州と連携して中国包囲網を強めると予想される。

結果、貿易量の減少を通じて非鉄金属価格には下押し圧力が掛かることになる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・6月中国製造業PMIは50.9(前月50.6)と改善した。内訳を見ると生産が回復、新規受注も50.9→51.4と改善、輸出向けの新規受注も大きく改善(35.3→42.6)しており、ロックダウン解除による国内の経済活動の回復と、海外市場の稼働再開が影響したことが鮮明となった。

これに伴い、原材料・完成品在庫とも水準を切り下げており、新規受注の増加と合わせた両要因で、新規受注・在庫レシオは水準を切り上げることになった。

中国国内の原材料・完成品需給はタイト化が予想され、特に鉱物資源価格の上昇要因となる。

・6月中国銅線生産者 97.1%(前月101.7%、過去4年平均 87.1%) 銅棒生産者 77.8%(80.4%、76.1%) 銅板生産者 63.5%(65.9%、70.8%) 銅管生産者 86.2%(83.4%、85.6%)

・5月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 90.9%(前月90.3%) 中規模事業者 73.3%(65.9%) 小規模事業者 73.1%(73.1%)

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・5月の中国の銅輸入は前年比+20.8%の44万トン(4月+12.6%の46万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比▲8.3%の169万トン(+22.2%の203万トン)となった。

銅地金の輸入は過去5年の最高水準を上回っていたが今月は減速、鉱石輸入も5年平均程度まで減速している。上海銅プレミアムの低下を見るに、中国の銅地金・鉱石輸入はいったん一巡したとみられる。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・7月3日付のLMEロング・ショートポジションは、亜鉛と錫を除いて引き続き総じてショートの買戻しが顕著だった。その他、鉛と錫を除き、ロングの積み増しも進んだ。需給両面で価格が上昇し易くなっていることを示唆。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は34.3億ドル(前週20.5億ドル)と、買い越し幅を拡大している。アルミ・亜鉛以外は買い越しに。買い越し幅の増加率は+67.1%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで424千トン(前週101千トン)と買い越し幅を拡大した。買い越し枚数の増加率は+318.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品先物価格は下落した。

中国政府を中心に景気刺激のためのインフラ投資への期待が高まっているほか、南米全域に広がるコロナ感染に伴う鉱山のロックダウン、供給途絶への懸念が強まっていることが引き続き材料となっている。

個別のニュースとしては、スウェーデンのLKABは最北端のNorrbottenにあるMalmberget精鉱プラントを一時的に停止したことが伝えられた。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。中国鉄鉱石在庫が日数ベースで過去5年の最低水準で推移していること、中国政府のインフラ投資が今後も継続する見込みであることから、中国国内の足元の鉄鋼原料需給並びに今後の需給見通しがタイト化しているため。

中国のインフラ投資(公的需要)、米国の1兆ドルインフラ投資、ブラジルの供給懸念も価格の押し上げ材料。足元、ブラジルなどの主要生産国からの供給面のほうが強く意識されつつある状況。

なお、足元のバルチック海運指数の上昇が続いており、過去5年の上限レンジを上回っている。

同指数は石炭輸送状況の影響を強く受けるが、足元、ブラジル・豪州の中国向け鉄鉱石輸出が過去5年レンジを上回って高水準で推移しており、鉄鉱石在庫積み増しの動きの影響が大きくなっている可能性がある。

ただし、鉄鋼製品在庫の水準は例前年比でみても高く、貿易統計に見る鉄鋼製品輸出は440万トンと過去5年の最低水準を大きく下回っており、外需の回復には時間がかかりそうな状況。

中国河北省の高炉稼働率は7月3日時点で78.9%(前週79.3%)と小幅に低下しており、鉄鋼製品生産の回復は頭打ちとなっていることをうかがわせる内容。

コロナウイルス感染拡大や、人権問題をめぐって欧米と中国の対立が強まっており、両者の対立は交易量の減少を通じて鉄鋼製品価格・鉄鉱石価格を下押ししすることになる。

原料炭は中国の生産活動回復が継続している影響もあるが、中国の国内生産の増加もあり、低調な推移になると考える。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均程度での推移が続いており、鉄鉱石よりは需給が緩和している。

インドネシア・豪州の中国向け石炭輸出は増加しており、バルチック海運指数の押し上げ要因となっている。しかし、中国生産者の在庫の積み増しが進んでいることを考えると早晩頭打ちとなるだろう。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・6月の鉄鋼業PMIは49.3(前月50.9)と前月から悪化した。生産は引き続き高水準であるが(56.4→57.5)、新規受注が急減速(52.9→46.4)したことが影響した。輸出向け新規受注の水準も低下しており、鉄鋼製品の国内外向けの需要は急減速しているといえる。

鉄鋼業は中国政府の公共投資を受けて公的需要が増加していたと見られるが、それが一服したためと考えられる。やはり、中国もそこまで財政的にゆとりはないということだろう。

結果、完成品在庫・原材料在庫とも指数が上昇しており、今後、鉄鋼製品価格や鉄鉱石価格の下押し要因になると予想される。

・1-5月期の中国工業生産は前年比▲2.8%(1-4月期▲4.9%)、4月+4.4%(前月+3.9%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

ただし回復ペースは市場予想を下回っている。

・1-5月期の中国固定資産投資は前年比▲6.3%の19兆9,194億元(1-4月期▲10.3%の13兆6,824億元)と回復基調を持続(ストック需要の回復=価格の上昇要因)

しかし、公的セクター▲1.9%(▲6.9%)は回復しているものの、より規模の大きな民間セクターの回復は▲9.6%(▲13.3%)と遅れており、回復力は然程強くない。

・1-5月期の中国不動産開発投資は前年比▲0.3%の4兆5,920億元(1-4月期▲3.3%の3兆3,103億元)とマイナス幅を縮小(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

ただし、前年比マイナスは続いており回復力は弱い。

・5月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲23.3%の440万1,000トン(前月▲0.2%の631万9,000トン)大幅に減速した。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+12.3万トンの1,471.7万トン(過去5年平均 1,040万トン)となった。例年よりも在庫水準は高く、今週も例年と異なり在庫が増加している。需要の減速がみられている可能性があるため、来週以降の鉄鋼製品在庫の動向に注目したい。

・5月の中国の鉄鉱石の輸入量は前年比+3.9%の8,703万トン(前月+18.5%の9,571万トン)と前年比プラスとなったが、過去5年レンジを下回り、過去5年平均程度まで落ち込んだ。しかし、ブラジル・豪州の週間鉄鉱石輸出は中国向けが増加しており、恐らく6月の統計は強めの数字となろう。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+30万トンの1億1,005万トン(過去5年平均1億1,961.6万トン)、在庫日数は+0.1日の22.0日(過去5年平均 29.0日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイト。

・5月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比▲19.7%の2,205万7,000トン(前月+22.3%の3,095万トン)と減速し、過去5年平均程度まで落ち込んだ。中国の石炭国内生産が増加しているためとみられる。

原料炭の輸入は4月は前年比▲15.4%の628万トン(前年比▲8.1%の564万トン)と急減速した。おそらく国内生産が増加したことによるもの。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は小幅に下落続落した。コロナの影響への懸念後退から株価が再び上昇、それを受けて長期金利が上昇したため、実質金利が上昇したことが背景。

銀価格はもみ合った結果、前日比小幅プラスで引けた。プラチナは前日比マイナス。パラジウムは株価上昇を受けて前日比プラスで引けた。

【貴金属価格見通し】

金銀は再び上昇基調を強めると考えられる。FRBが実質金利をマイナスにする緩和策を容認していることもあり、かつ、2022年までは現状の政策が維持される見込みであること、景況感とは乖離して上昇している株価下落への備え、といった観点で需要が高まると予想されるため。

また、米中対立激化がほぼ確実な情勢になっていることや、コロナ不況を背景とした新興国経済の混乱も安全資産需要を高めることになる。

コロナウイルス対策で各国とも財政支出を拡大しており、アルゼンチンで発生したようなデフォルト発生が意識されることが安全資産需要を高めることも、価格を押し上げると考える。

ただしFOMCメンバーがYCCに関して否定的なスタンスであるため、現時点では政策金利絡みでの価格上昇余地は限定されることになろう。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は224ドル(前日比+1ドル)。

一方、現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,550~1,580ドルまで上昇しており、緊急時の換金による下落余地が限定されている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では110倍程度が妥当、となっているが現在は96.1に低下している。

過去1年平均を基準にすると95倍程度が妥当であり、この水準への回帰の動きがみられていることから、銀の金に対しての上げ余地はあるとみられる。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることも、割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになると予想する。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、自動車セクターの回復は緩やかなものにとどまる見通しであることから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

6月の米自動車販売は年率1,305万台(市場予想 1,309万台、前月 1,221万台)と、市場予想には届かなかったが大幅な改善となった。ただし、経済活動が再開されているが、プレ・コロナの水準に戻るには相当の時間がかかる見込みであり、PGM価格の押し上げ効果は限定的なものとなろう。

中国の5月の自動車販売は前年比+14.7%の219万台(前月+4.4%の207万台)と前月比プラスとなった。景気テコ入れ(ただしその多くがEV車向け)の動きや、密を回避するための手段としての自動車の有用性が再確認されていることなどが材料とみられる。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが337,030枚(前週比 +8,088枚)、ショートが69,672枚(+7,400枚)、ネットロングは267,358枚(+688枚)、銀が80,741枚(+1,995枚)、ショートが42,916枚(+1,771枚)、ネットロングは37,825枚(+224枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが27,680枚(前週比 +955枚)ショートが10,365枚(▲512枚)、ネットロングは17,315枚(+1,467枚)

パラジウムが3,251枚(+217枚)、ショートが1,737枚(▲178枚)ネットロングは1,514枚(+395枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はトウモロコシと大豆が大幅に下落、小麦が上昇した。

ニュースでは生産地の天候見通しの改善が材料とされていたが、一昨日200日移動平均線を上抜けできなかったことや、コロナのワクチン関連での進捗を受けた株価の上昇を受けて、景気循環系商品が物色され、非景気循環系・非インフレ系商品が売られる流れに乗った、と考えるほうが妥当だろう。大豆も同様。

なお、米需給報告はトウモロコシ・大豆・小麦とも強気な内容だったが、小麦は週前半から材料となっている、黒海周辺国からの供給不足への懸念が材料視されたと考える。

昨晩発表の米需給報告は以下の通り。

生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億Bu(150億4,085万Bu、前月159億9,500万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,430万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億2,400万Bu(18億4,372万Bu、18億7,700万Bu)

在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 24億4,800万Bu(27億3,052万Bu、33億2,300万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,389万Bu、3億9,500万Bu)小麦 9億4,200万Bu(9億5,019万Bu、9億2,500万Bu)

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格はロックダウン解除後のガソリン出荷が再び回復基調にあることが統計で確認されたこと、生産地の乾燥気候を受けて投機の買戻しも入りやすく、堅調な推移になると予想。

大豆も飼料向け需要の回復と、中国の合意履行遵守期待、トウモロコシの上昇を受けて堅調。

小麦は北米の冬小麦の作柄が良好ではなく、そもそも取引所在庫の水準が低い中、ウクライナやロシアの供給懸念が強まっていること、競合飼料であるトウモロコシも米石油製品出荷の回復で上昇し易くなっていることから、上昇余地を探る展開に。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、現在はインド・パキスタン・イランにまたがる地域で猛威を振るっている。

懸念はアフリカ西部にバッタが飛来する可能性がある点。こうなると影響がアフリカ北部全域に広がることになり、食料危機を通じて北アフリカの治安が不安定化するリスクは無視できず。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億Bu(150億4,085万Bu、前月159億9,500万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,430万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億2,400万Bu(18億4,372万Bu、18億7,700万Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 24億4,800万Bu(27億3,052万Bu、33億2,300万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,389万Bu、3億9,500万Bu)小麦 9億4,200万Bu(9億5,019万Bu、9億2,500万Bu)

・6月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 52億2,400万Bu(49億5,862万Bu、79億5,300万Bu)大豆 13億8,600万Bu(13億9,113万Bu、22億5,300万Bu)小麦 10億4,400万Bu(9億8,661万Bu、14億1,200万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが256,472枚(前週比 ▲13,802枚)、ショートが363,711枚(▲64,007枚)ネットロングは▲107,239枚(+50,205枚)

大豆はロングが218,135枚(+14,579枚)、ショートが67,626枚(▲13,059枚)ネットロングは150,509枚(+27,638枚)

小麦はロングが116,056枚(+2,524枚)、ショートが130,325枚(+2,169枚)ネットロングは▲14,269枚(+355枚)

◆本日のMRA's Eye


「石炭価格の低迷続く」

アジア太平洋地区の石炭価格の指標であるグローバルコール・ニューキャッスル炭価格は、競合燃料である天然ガス生産の増加と、コロナウイルスの影響景気の減速の影響で低迷しており、過去5年の最低水準での推移が続いている。

しかし、中国の港湾在庫の水準は過去5年の最低水準近辺となっており、かつ、中国の経済活動がロックダウン解除の動きで回復していることから、今後輸入増加で価格が上昇する可能性はある。

石炭価格はその他の商品と同様、需要と供給のバランスによって変動するが、中国の製造業PMI(需要の指標)は順調に回復しており、冬場の再ロックダウンのリスクを考えると、「夏場に稼ぐ」動きが強まると予想される。

結果、それが持続可能かどうかは別にして、夏場の中国の経済活動が活性化し、石炭価格を需要面で押し上げる可能性はあるだろう。

ただ同時に、中国6大電力会社の石炭在庫は高い水準を維持していること、コロナウイルスの感染拡大第二波襲来の可能性もあるため、このまま輸入が増加するかは微妙な状況。

欧州では石炭からガスへのシフトが起きており、欧州諸国の石炭輸入は過去5年の最低水準で推移している。さらに欧州は環境分野で世界をリードするとの政策的意図の下、石炭の使用量をさらに削減する方針であり、余剰石炭はアジア太平洋地区に流入する可能性が高い。

しかし欧州と北米は夏場の気温が平年よりも高くなる、との見通しが出ており、天然ガス価格が上昇している。一時的に石炭+排出権の取引が過熱し、石炭価格を押し上げる可能性はある。

ただし大きな流れで見た場合、欧州の石炭からガスへの動きは恐らく変わらないため、結果的にアジア太平洋地区の石炭需給は緩和した状態が続くと予想される。

以上の状況を踏まえ、弊社は2020年のニューキャッスル炭の予想価格を前回から引き引き下げ、58.53ドル/トン(▲6.69ドル/トン)とした。

ただし、世界的な(特に欧州中心の)環境規制強化方針を受けた、石炭鉱山生産の減速が加速した場合や、石炭から天然ガスへのシフトが進み、天然ガス価格が上昇した場合は石炭需要が減少するものの、逆説的だが天然ガス価格上昇が、石炭価格を押し上げる可能性があると考えている。

◆主要ニュース


・6月日本国内企業物価指数 前月比+0.6%(前月▲0.5%)前年比▲1.6%(▲2.8%)

・6月中国マネーサプライ M2 前年比+11.1%の213兆4,900億元(前月+11.1%の210兆200億元)
 M1 +6.5%の60兆4,300億元(+6.8%の58兆1,100億元)
 ファイナンス規模 3兆4,300億元(3兆1,907億元)
 国内企業全体の総財務残高 271兆8,000億元(268兆4,000億元)

・6月中国人民元建て新規融資 前年比+8.8%の18,100億元(前月+25.2%の14,821億元)

・6月米生産者物価指数 前月比▲0.2%(前月+0.4%)、前年比▲0.8%(▲0.8%)
 除く食品エネルギー 前月比▲0.3%(▲0.1%)、前年比+0.1%(+0.3%)
 除く食品エネルギー・貿易 前月比+0.3%(+0.1%)、前年比▲0.1%(▲0.4%)

・6月OECD景気先行指数
 OECD 97.1(前月 95.3)
 ユーロ圏 97.2(94.8)
 アジア 97.1(96.9)
 G7 96.7(94.9)
 日本 98.2(98.1)
 ドイツ 98.4(95.1)
 米国 95.7(94.3)
 中国 99.3(99.3)
 インド 91.4(90.5)
 ロシア 97.2(92.7)

・ダラス連銀カプラン総裁(投票権あり・中間派)、「皆がマスクをすれば、成長を加速できる。」

・米トランプ大統領、「第二段階の米中貿易合意は、現時点では公算が小さい。」

・ドイツ政府幹部、「英国が昨年EU離脱合意の中で交わした約束を守っていない。将来の通商関係を巡る交渉が破断に終わる事態に、関係者は備えるべきだ。」

・米政府、フランスが決めた米テクノロジー大手を対象としてデジタル税に対抗する25%の報復関税を発表。13億ドル相当の化粧品やせっけん、ハンドバッグなどが対象に。

・イタリア、新型コロナ非常事態宣言を31日以降も継続の公算。

・ギリアド・サイエンシズ、レムデシビルがコロナウイルスでの死亡率を62%引き下げる可能性があると発表。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数181(前週比▲4)
 ガスリグ 75(前週比▲1)。

・IEA月報
 世界石油需要 Q120:94.0、Q220:82.9、Q320:94.3、Q420:97.1、2020:92.1
 非OPEC供給(含むNGLs) Q120:66.8、Q220:61.4、Q320:61.0、Q420:61.5、2020:62.6
 Call on OPEC Q120:27.2、Q220:21.5、Q320:33.3、Q420:35.6、2020:29.5
※2020年の需要見通し上方修正、2021年はほぼ前月と変わらず。

・リビア国営石油NOC、不可抗力宣言を解除し、生産再開。

【メタル】
・チリ北部のAntofagastaのZaldivarとCentinela鉱山の労働者、賃金を巡りストライキに向けた投票へ。ストライキを実施する場合、政府の調停期間終了後に。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME木材 ( その他農産品 )/ +8.02%/ +32.99%
2.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +2.69%/ ▲3.56%
3.NYM RBOB ( エネルギー )/ +2.61%/ ▲24.43%
4.LMEアルミ 3M ( ベースメタル )/ +2.43%/ ▲6.32%
5.NYM WTI ( エネルギー )/ +2.35%/ ▲33.59%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲5.79%/ ▲56.00%
69.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲5.38%/ ▲4.00%
68.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲3.06%/ ▲12.19%
67.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲1.95%/ ▲35.71%
66.中国CSI300 ( 株式 )/ ▲1.81%/ +16.03%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :26,075.30(+369.21)
S&P500 :3,185.04(+32.99)
日経平均株価 :22,290.81(▲238.48)
ドル円 :106.93(▲0.27)
ユーロ円 :120.83(▲0.14)
米10年債 :0.64(+0.03)
中国10年債利回り :3.02(▲0.05)
日本10年債利回り :0.03(▲0.00)
独10年債利回り :▲0.47(▲0.00)
ビットコイン :9,235.1(▲1.94)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :28.37(▲0.68)
エネルギー :38.87(▲2.86)
ベースメタル :20.73(+0.47)
貴金属 :16.73(+0.1)
穀物 :27.58(▲0.99)
その他農畜産品 :30.05(▲0.17)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :36.18(▲11.74)
Brent :33.18(+0.5)
米天然ガス :71.22(+0.43)
米ガソリン :46.49(▲8.31)
ICEガスオイル :34.33(▲1.36)
LME銅 :19.18(▲0)
LMEアルミニウム :18.27(▲0.21)
金 :10.07(+0.57)
プラチナ :21.28(+0.53)
トウモロコシ :26.49(+2.84)
大豆 :10.07(+0.57)

【エネルギー】
WTI :40.55(+0.93)
Brent :43.24(+0.89)
Oman :44.14(+0.94)
米ガソリン :128.31(+3.26)
米灯油 :124.12(+1.73)
ICEガスオイル :364.50(±0.0)
米天然ガス :1.81(+0.03)
英天然ガス :13.67(▲0.84)

【貴金属】
金 :1798.70(▲4.85)
銀 :18.72(+0.07)
プラチナ :827.53(▲10.15)
パラジウム :1969.31(+20.01)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,320(▲20:2.5B)
亜鉛 :2,157(+12:11C)
鉛 :1,851(+23:9C)
アルミニウム :1,669(▲18:29.5C)
ニッケル :13,108(▲370:38C)
錫 :16,958(▲370:122B)
コバルト :28,453(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6429.00(+132.00)
亜鉛 :2189.00(+40.50)
鉛 :1855.00(+24.50)
アルミニウム :1689.00(+40.00)
ニッケル :13560.00(+355.00)
錫 :17200.00(▲50.00)
バルチック海運指数 :1,810.00(±0.0)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :106.12(+0.87)
SGX鉄鉱石 :105.08(▲0.18)
NYMEX鉄鉱石 :105.59(+0.98)
NYMEX原料炭スワップ先物 :116.29(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,620(▲40)
上海鉄筋中心限月 :3,703(▲17)
米鉄スクラップ :休場( - )

【農産物】
大豆 :891.50(▲6.75)
シカゴ大豆ミール :290.80(▲4.30)
シカゴ大豆油 :28.11(▲0.08)
マレーシア パーム油 :2467.00(+12.00)
シカゴ とうもろこし :340.50(▲10.75)
シカゴ小麦 :535.75(+9.50)
シンガポールゴム :休場( - )
上海ゴム :10700.00(±0.0)
砂糖 :11.76(▲0.08)
アラビカ :96.15(▲1.55)
ロブスタ :1167.00(±0.0)
綿花 :64.71(+1.37)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :45.98(+0.13)
シカゴ生牛 :100.00(+0.75)
シカゴ飼育牛 :135.75(+1.23)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。