CONTENTSコンテンツ

FOMCを控えて様子見~DOEは需給見通しを上方修正
  • MRA商品市場レポート

2020年6月10日 第1763号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「FOMCを控えて様子見~DOEは需給見通しを上方修正」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:下落後上昇。OPEC減産解除で下落したが、ロックダウン解除の動きが強まったことやDOEが需給が7月以降供給不足に転じるとの見通しを示したことで。

需給改善観測で価格は堅調も、FOMCを控えて様子見気分強く、アジア~NY時間の前場にかけてもみ合い推移を予想。

◆非鉄金属:中国統計の減速を受けてアジア時間は軟調な推移も、LME銅指定倉庫在庫の減少と株高で買戻しが入り、高安まちまち。

今晩のFOMCを控えて様子見気分強く、一旦手じまい売りに押される展開を予想。

◆鉄鋼原料:鉄鉱石は下落、原料炭は横ばい、鉄鋼製品価格は中心限月価格が下落した。目立った材料なく、先物は調整的な取引が主体だったと考えられる。

中国の貿易統計は減速しており、足元株価が調整していることからアジア時間は調整圧力が継続する展開を予想。

◆貴金属:金は上昇、その他は下落。株調整を受けた長期金利の低下を受けて金価格は上昇、銀プラチナはFOMC前の利益確定の動きに押された。パラジウムは株安が影響して下落。

本日はFOMC待ちで様子見気分強く、もみ合いを予想。

◆穀物:シカゴ市場は軟調。いずれも作柄の改善が売り材料となった。

FOMCを控えて様子見気分が強まるため、多商品と同様レンジワークを予想。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーや、人民元建て商品、債券、金属セクターが前日比プラスとなり、貴金属や畜産品、株などが下落した。

固有の材料はエネルギーにおいてDOEが需給見通しを上方修正(7月以降は供給不足に)を示した程度であり、あとは人民元安進行などが材料となったが、総じて今晩のFOMCを控えて様子見気分が強く、いったんポジション調整の売り(ないしは買戻し)が入ったと考えるのが妥当だろう。

特に顕著に株価が上昇しており、S&P500はとうとうコロナ前の水準を回復した。結局大規模な金融緩和と財政出動、ロックダウン解除に伴う経済活動再開の期待が相場を押し上げている、といっても言い過ぎではない。その意味でもプレ・コロナとポスト・コロナでは市場の振る舞いが変わったといえる。

なお、世界のコロナウイルスの感染者数とその増加ペースは緩やかではあるが、加速している。

しかし、ここまでの株価上昇が長期金利の低下によって支えられていることも事実であり、今晩、結果発表が予定されているFOMCの結果を待ちたいとして様子見気分が強まっている状況。

※ニュース解説は、不定期ですがFBでも行っていますので、ご興味のある方はフォローをお願いします。https://www.facebook.com/Market.Risk.Advisory/

※レポートのお申込みはこちらから
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

※商品市場分析入門のお求めはこちらから
https://www.amazon.co.jp/dp/447810445X/

【本日の見通し総括】

本日はアジア時間から米国時間にかけて、ポジション調整取引が主体となり、もみ合うものと考える。市場の最大の関心事はFOMCであり、FRBの経済見通しと現状認識、金融政策の方向性に関して、FBRパウエル議長がどのようなコメントをするかである。

ここまでのリスク資産価格の上昇は金融緩和や財政出動による、政策的な影響が強かったことは自明である。

しかし、米長期金利は株価の戻りやロックダウン解除の動きから、3月の底値である0.54%から0.83%に緩やかに上昇しており、「このまま上昇が続くのかどうか」「それをFRBが許容するのかどうか」がポイントとなる。

銅・金レシオから判断される株価水準は明らかに行き過ぎであり、恐らく株調整・金調整が同時に発生して早晩行き過ぎが修正されると考えているが、両者が同時に下落するのは、長期金利が上昇するときである。その手掛かり材料が供給されるかどうか。

このほか、OECD経済見通しにも注目したい。

【昨日のトピックス】

昨日の統計に直接関係ないが、再びマイナス価格になる可能性があるという意味で、少し欧州の天然ガス状況に注目する必要があると考えている。シェールオイル増産に伴う随伴ガスの増加や、LNGプロジェクトの稼働、コロナショックによる経済活動の停止で、天然ガス・LNG価格は大幅に下落している。

LNGは欧州に余剰天然ガスが集積する構図となっているが、欧州の天然ガス在庫は積み上がっており、足元、貯蔵設備の稼働率は74.5%に達している。これは同じ時期の過去5年の最高水準を10%程度上回る水準だ。

このペースが続くのであれば、10月・11月の在庫のピーク時を待たず、8月・9月頃にキャパシティが限界に達する。この場合、ガス価格がマイナスとなることもあり得るだろう。

もちろん、ガス価格が低下すれば石炭からガスへのシフトが進むと見られ、天然ガス・LNGプロジェクトも頓挫するものが増えると見られるため、キャパシティを超える状態は回避されるというのがメインシナリオであるが。秋にかけての景気再減速があればその限りではない。

なお、パリ協定で定めた目標を今回のコロナ禍発生時期に達成することとなったが、「これだけの厳しい経済的な代償を支払わなければ達成できない目標」であることを痛感することとなった。

今後は、1.これだけの代償を支払う必要があるならば、比較的炭素の少ないLNGを使う、あるいは消費構造が変わることで今後、割安な化石燃料を使った方がよいとする経済面にフォーカスした動きと、2.目標を達成するには今までのような再生可能エネルギーの導入ペースでは遅い、という動きが再びせめぎあうことになるだろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(+3.3%→▲3.0%)ている。ただし2021年には+5.8%への急回復を見込んでいる。

ただこの通りになるためには、コロナウイルス感染拡大終息が必要条件であり、第二次感染拡大となり得る冬場までの終息がなければ、それは難しかろう。

・FRBは合計で▲150bpの緊急利下げと、ドル需要ひっ迫の状況を緩和するための無制限の量的緩和も実施、債券買い入れもジャンク債も対象とするなど、打てる手は出し惜しみなく出しているため、徐々に不安は解消しよう。

ただし、持てる金融政策のカードをほとんど切ってしまったため、今後、不測の事態が発生した場合のリスクは小さくない。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。感染拡大ペース鈍化を受けて経済活動を再開させる動きが強まっているが、このウイルスは未知の部分が多く、再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。中国は全人代で、実質的に一国二制度を廃止する方向に舵を切っており、欧米諸国の反発は必至。

ハイテク分野や宇宙軍創設、自国ファースト政策による自国回帰など、米中の対立はコロナ前から加熱しており、コロナが最終的に引き金となった。

今後、米中が歩み寄るシナリオよりも、米中ブロック経済圏化への移行の可能性のほうが高く、貿易活動の停滞で景気循環銘柄価格の下押し要因に。

また、完成品に関してはブロック経済圏化に伴いサプライチェーンが大幅に見直される可能性が高く、コスト上昇で価格は上昇する可能性。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。コロナウイルスの影響もあって、EUと英国が離脱を巡って建設的な議論はほとんどできていない状況で、移行期間中の条件合意が困難となっている。

今後は2020年12月末の移行期間までに条件で折り合えず、延期するのか、ハードブレグジットになるかが材料視されることになろう(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウンの動きを受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は下落後上昇した。ここまでの上昇ペースが速かったことで調整売り圧力が強まる形となったが、ニューヨーク州やニュージャージー州などのロックダウン解除の動きで需要が増加すると見られたことや、DOEのエネルギー需給見通しが、上方修正されたことが影響した。

DOEは7月から原油市場は供給不足に陥るとの見通しを示しており、OPECの減産継続やロックダウンの解除が需給バランスを急速にタイト化させる見通しが示されている。このことも価格押し上げに寄与した。

【原油価格見通し】

原油価格はOPECの減産幅縮小観測を受けて、一旦調整圧力が強まると考えられる。ただし、市場参加者は株価の楽観を受けてリスクテイク意欲を強めているため、調整幅も限定されるだろう。

テクニカルなレジスタンスラインを上抜けしたことから、このレジスタンスラインが逆にサポートラインとして意識されるとみられる。Brentで38ドル、WTIで34ドル程度。

今後もしばらくの間は、年初からこれまでの経済活動の遅れの取り戻しと、冬場の再ロックダウンを意識して、夏場の経済活動が想定以上に力強くなる可能性はあり、上昇リスクが高まっている。

DOEは需給見通しを引き上げ、7月以降の経済活動が急速に回復するとしている。それと同時に供給も減少するため、需給バランスは7月から供給不足に陥るとの見通しを示した。

しかし、米中対立やコロナの影響継続、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、プレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、常に価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべき時期にあると考える。

実際、DOEは2019年対比で元の水準に戻るのは2022年以降と想定しており、やはり原油価格の戻りは制限されると考える。

一時、マイナス価格でやり取りされたWTIであるが、当局の投機取引に対する規制強化やクッシング在庫の減少もあり、再びマイナスとなる可能性は低下した。

今回のマイナス価格は米国の原油先物の受け渡しポイントが内陸のクッシングにあることが影響しており、今回のような事態発生を回避するには輸出が容易な湾岸地区(例えばヒューストンなど)に受け渡しポイントを移すべきである。

欧州や中東は自国消費があまりなく、輸出を前提としてインフラが整備されているためこのようないことが起きにくい。

なお、原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で45ドル近辺(30ドル~55ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末あたりではないだろうか。

特に6月は主要シェール企業の債務償還が多いため、6月危機のリスクはまだ過ぎ去っていない。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

逆に、コロナウイルスの感染拡大防止に失敗し、「今年の冬に第二ラウンドに突入」となると需要の回復は難しく、かつ、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に続落した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きとなっている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで価格が下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。水準は低いが、小じっかり、ということだ。

5月の中国石炭輸入は2,206万トン(前月3,095万トン)と過去5年平均程度まで急速に減少した。国内の経済活動の回復が一旦頭打ちとなったことや、国内生産が高水準(過去5年レンジを上回る)の増加が要因とみられる。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲3割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTIはロング・ショートとも増加したが、ロングが顕著に増加している。経済活動再開に伴う需要増加観測が支え。ショートの増加は価格上昇によるものとみられるが小幅。

Brentはロング・ショートとも増加しているが、ショートの増加が大きい。節目の40ドルに近付いていたことや、価格上昇に伴うOPECプラス減産解除観測が背景とみられる。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが729,172枚(前週比 +27,938枚)ショートが160,842枚(+2,182枚)ネットロングは568,330枚(+25,756枚)

Brentはロングが239,591枚(前週比+5,392枚)ショートが68,109枚(+7,106枚)ネットロングは171,482枚(▲1,714枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場はまちまちとなった。アジア時間はこれまでの上昇ペース加速を背景に軟調な推移となったが、LME指定倉庫在庫の減少を受けて水準を切り上げた。

ただし、株価が調整する中で指定倉庫在庫の増加がみられたアルミや亜鉛、上昇ペースが速かったニッケルに調整売りが出た。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は経済活動の再開と、生産者の生産停止ないしは減産の影響で需給がタイトであること、雇用統計改善による市場参加者のマインド改善、それに伴いリスクテイクの指標である株価の上昇により割安セクターの再物色が起きていることから、上昇余地を探る動きになると考える。

ただし、中国上海の銅現物プレミアムは5月上旬をピークに急速に低下していること、LME指定倉庫在庫とロックダウンの影響を背景とした回帰分析は、銅キャッシュで5,800ドル程度が上限であること(LME指定倉庫在庫の減少継続で水準が切り上がり)を示唆していることから、米金利上昇に伴うドル高進行で、徐々に上値が重くなると見ている。

今のところ、在庫水準から説明可能な銅レンジは現状5,300~5,800ドル程度(在庫水準で説明可能なレンジは変化。この数日の銅在庫減少継続で水準切り上がり)とみられるため、短期的な上昇リスクもさることながら、下落リスクも警戒すべきである。

下値の目途としては、過剰流動性の供給と、ドルスワップ契約の拡充による決算期末のリスクが後退しているため、3月と同様の決算危機が発生しないという前提では、危機後に価格が初めて安定した4月上旬の水準が想定される。

具体的には銅が5,200ドル、亜鉛が1,900ドル、鉛が1,700ドル、アルミが1,460ドル、ニッケルが11,750ドル、錫が15,500ドル程度が下値の目途となる。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

中国政府による香港・台湾・ウイグル自治区問題の支配は露骨に進んでおり、コロナ問題での不満もあり、欧米諸国がこれを看過するとは考え難く、すでに米国は制裁強化を決定、これに対する報復を中国は決定している。

また、コロナウイルス問題も習近平国家主席のメンツ維持のため、情報隠ぺい工作に走ったことも事実であり、情報開示の遅れが死者の増加につながった、との見方をする欧米諸国は少なくない。

今後、世界的に中国とのビジネスが停滞する可能性は高まり、世界の工場のポジションにまだある中国の鉱物資源需要を減じることになるだろう。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき需要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・5月中国製造業PMIは50.6(前月50.8)と2ヵ月連続で減速した。新規受注は国内を中心に回復しているとみられるが、輸出受注の減速を受け、生産が減速したことが影響したようだ。

しかし、新規受注在庫レシオは回復基調を持続しており、中国の完成品及び原材料需給はタイト化していると見られる。主に中国国内のインフラ投資と思われる需要が増加していることによるものと考えられ、生産活動がやや減速する中で完成品、原材料ともに在庫水準が低下したことが、レシオ上昇に寄与した。

また、欧米の経済活動再開も、非鉄金属価格にはプラスに作用され、「冬場の再ロックダウンリスク」を意識して、夏場が想定以上に需要増加で価格が上昇する可能性が出てきた。

・金属にもよるが、主要生産者がコロナウイルスの影響による生産調整が徐々に解除に向かう見通しであり、価格の下落要因に(影響を受けてきた主要鉱山は以下の通り)

(アルミ)Norsk Hydro Husnesアルミプラントの増産をQ320まで先送りアルゼンチン Aluar Puetro Madrynでの生産能力の▲50%を停止

(銅)南米の鉱山生産者(供給の約2割)は需要減と感染拡大防止のため、稼働率の引き下げを余儀なくされている状況Cerro Verde、Los Bronces、Constancia、Las Bambas、Collahuasi、Antaminaなど

(錫)PT Timah、需要の減少で当面錫生産を▲20%~▲30%減らす計画

(亜鉛)NewmontのPenasquito、Pan American SilverのLa Colorada、Grupo MexicoのBuenavistaとSan Martinなどが減産を決定

・6月中国銅線生産者 97.1%(前月101.7%、過去4年平均 87.1%) 銅棒生産者 77.8%(80.4%、76.1%)

・5月中国銅板生産者 64.8%(68.3%、72.2%) 銅管生産者 82.7%(84.4%、75.4%)

・4月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 90.3%(前月87.2%) 中規模事業者 65.9%(73.2%) 小規模事業者 73.1%(73.1%)

・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

・1-4月期中国固定資産投資は前年比▲10.3%の13兆6,824億元(1-3月期▲16.1%の8兆4,145億元)とマイナス幅が縮小。

 公的部門は▲6.9%(▲12.8%)、民間部門とも▲13.3%(▲18.8%)マイナス幅を縮小。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要はマイナス=価格の下落要因)。

・1-4月期中国不動産開発投資は前年比▲3.3%の3兆3,103億元(1-3月期▲7.7%の2兆1,963億元)とマイナス幅を縮小。

ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・5月の中国の銅輸入は前年比+20.8%の44万トン(4月+12.6%の46万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比▲8.3%の169万トン(+22.2%の203万トン)となった。

銅地金の輸入は過去5年の最高水準を上回っていたが今月は減速、鉱石輸入も5年平均程度まで減速している。上海銅プレミアムの低下を見るに、中国の銅地金・鉱石輸入はいったん一巡したとみられる。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・5月29日付のLMEロング・ショートポジションは、総じてショートの巻き戻しが大きかった印象。新規でロングを詰めるほどの需要の強まりがない中で、ロックダウン時に増加したショートの買戻しがまだ発生した形。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲27.2億ドル(前週▲31.4億ドル)と売り越し幅を縮小。売り越し額の減少率は▲13.6%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,002千トン(前週▲1,221千トン)と売り越し数量を縮小。ネット売り越しの減少率は▲17.9%。

---≪鉄鋼原料≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇した。長期金利が低下したことで実質金利に低下圧力が掛かったことや、株が調整したことが材料となった。

銀・プラチナは下落。金対比で前期末(3月末)からの上昇率が大きかったことから、FOMCを控えて利益確定の動きが強まった。

パラジウムは株価が調整したことを受けて水準を切り下げ。パラジウムと同様に需給がタイトで先物が上場されていないロジウムは上昇している。

【貴金属価格見通し】

金銀には調整圧力が掛かると予想する。米雇用統計が予想外の改善となり、米経済活動の回復期待が高まっていることが株高・金利高を誘発し、実質金利を押し上げるため。

ただし、依然として失業率は高く経済統計も回復しているとは言え、プレ・コロナの水準に回復しているわけではないことから、FRBの緩和は継続する見込みであり、株価の上昇も期待先行である部分は否めず、米中の対立も継続は高値圏での推移になると考える。

ロックダウン解除が各国で続き、統計が「予想ほど悪くない」ことで株式市場での楽観を生んでいることが金価格を下押しする一方、原油価格が上昇していることによる実質金利低下圧力、中国の香港国家安全法制定方針を受けた米中の対立激化がほぼ確実になっていることが、安全資産需要を高めるため。

米中対立は激化が不可避の様相だが、両国の対立は世界各地での「親中・反中」の踏み絵を突き付けることになる。これはかなり高い確率で近い将来起きるシナリオであり、もはやメインシナリオとみるべきだ。

コロナウイルス対策で各国とも財政支出を拡大しており、アルゼンチンで発生したようなデフォルト発生が意識されることが安全資産需要を高めることも、価格を押し上げると考える。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は249ドル(前日比変わらず)。現在の実質金利で説明可能な価格水準は1,450~1,480ドル程度。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では115倍程度が妥当、となっているが実際は100倍程度となっている。

過去1年平均を基準にすると95倍程度が妥当であり、この水準への回帰の動きがみられていることから、銀の金に対しての上げ余地はあるとみられる。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることも、割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な色彩が強まっているが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のような安全資産としては認知されていないことによる。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになろう。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、少なくともQ220は景況感の低迷が続く見込みであることから、工業向け需要低迷がから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

5月の米自動車販売は年率873万台(市場予想 1,104万台、前月 858万台)と、市場予想に到底届かないほどの低迷となった。足元、経済活動が再開されているが、米国の経済活動の正常化は、想定以上の時間がかかると考えるべきであり、PGM向けの需要の伸びは低迷しよう。

中国の4月の自動車販売は前年比+4.4%の207万台(前月▲43.3%の143万台)と急回復した。しかし、販売の多くが商用車であり、中国政府による景気テコ入れの成果だったともいえる。

今後、中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻っている訳ではないので、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・FRBは▲1.5%の緊急利下げ、無制限の量的緩和を決定、その他の中央銀行もこれに追随しており貴金属価格の上昇要因に。

ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇した。長期金利が低下したことで実質金利に低下圧力が掛かったことや、株が調整したことが材料となった。

銀・プラチナは下落。金対比で前期末(3月末)からの上昇率が大きかったことから、FOMCを控えて利益確定の動きが強まった。

パラジウムは株価が調整したことを受けて水準を切り下げ。パラジウムと同様に需給がタイトで先物が上場されていないロジウムは上昇している。

【貴金属価格見通し】

金銀には調整圧力が掛かると予想する。米雇用統計が予想外の改善となり、米経済活動の回復期待が高まっていることが株高・金利高を誘発し、実質金利を押し上げるため。

ただし、依然として失業率は高く経済統計も回復しているとは言え、プレ・コロナの水準に回復しているわけではないことから、FRBの緩和は継続する見込みであり、株価の上昇も期待先行である部分は否めず、米中の対立も継続は高値圏での推移になると考える。

ロックダウン解除が各国で続き、統計が「予想ほど悪くない」ことで株式市場での楽観を生んでいることが金価格を下押しする一方、原油価格が上昇していることによる実質金利低下圧力、中国の香港国家安全法制定方針を受けた米中の対立激化がほぼ確実になっていることが、安全資産需要を高めるため。

米中対立は激化が不可避の様相だが、両国の対立は世界各地での「親中・反中」の踏み絵を突き付けることになる。これはかなり高い確率で近い将来起きるシナリオであり、もはやメインシナリオとみるべきだ。

コロナウイルス対策で各国とも財政支出を拡大しており、アルゼンチンで発生したようなデフォルト発生が意識されることが安全資産需要を高めることも、価格を押し上げると考える。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は249ドル(前日比変わらず)。現在の実質金利で説明可能な価格水準は1,450~1,480ドル程度。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では115倍程度が妥当、となっているが実際は100倍程度となっている。

過去1年平均を基準にすると95倍程度が妥当であり、この水準への回帰の動きがみられていることから、銀の金に対しての上げ余地はあるとみられる。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることも、割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な色彩が強まっているが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のような安全資産としては認知されていないことによる。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになろう。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、少なくともQ220は景況感の低迷が続く見込みであることから、工業向け需要低迷がから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

5月の米自動車販売は年率873万台(市場予想 1,104万台、前月 858万台)と、市場予想に到底届かないほどの低迷となった。足元、経済活動が再開されているが、米国の経済活動の正常化は、想定以上の時間がかかると考えるべきであり、PGM向けの需要の伸びは低迷しよう。

中国の4月の自動車販売は前年比+4.4%の207万台(前月▲43.3%の143万台)と急回復した。しかし、販売の多くが商用車であり、中国政府による景気テコ入れの成果だったともいえる。

今後、中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻っている訳ではないので、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・FRBは▲1.5%の緊急利下げ、無制限の量的緩和を決定、その他の中央銀行もこれに追随しており貴金属価格の上昇要因に。

ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが272,196枚(前週比 ▲15,952枚)、ショートが53,162枚(+2,928枚)、ネットロングは219,034枚(▲18,880枚)、銀が64,997枚(+3,472枚)、ショートが27,773枚(+3,437枚)、ネットロングは37,224枚(+35枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが28,645枚(前週比 ▲1,279枚)ショートが7,053枚(+152枚)、ネットロングは21,592枚(▲1,431枚)

パラジウムが2,632枚(▲40枚)、ショートが2,232枚(+280枚)ネットロングは400枚(▲320枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はまちまち。

トウモロコシ価格は下落した。生産地の降雨予報と作柄の改善が材料となった。大豆も作柄が改善していることが売り材料となった。小麦も作柄が改善していることが売り材料となった。

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は米国のロックダウン解除の動きがエタノール向けの需要を増加させることが価格を押し上げるが、生産地の作柄が予想外に改善していることが価格の上昇を抑制するため、結局もみ合うものと考える。

大豆は国内の飼料向け需要の増加が予想されるが、米中対立の再燃による米国産大豆の中国向けの輸出減速が予想されること、作柄の改善を受けて軟調な推移に。

小麦は北米の冬小麦の作柄が悪化していること、トウモロコシに連れ高を見込む。ショートの水準が過去5年レンジを下回っており、買戻しが入りやすい。

だが例年通り最終的には供給は帳尻が合うと予想されるため、上昇余地も限定。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、7月頃に終息の見込み。ただし西アフリカに飛来する、との指摘もあり予断を許さず。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気だ。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・5月の米需給報告の生産見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 159億9,500万Bu(157億4,860万Bu、136億9,200万Bu)大豆 41億2,500万Bu(41億3,992万Bu、35億5,800万Bu)小麦 18億6,600万Bu(18億4,765万Bu、19億2,000万Bu)

・5月の米需給報告の在庫見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 20億9,800万Bu(22億7,792万Bu、24億4,500万Bu)大豆 40億5,000万Bu(43億2,240万Bu、48億万Bu)小麦 9億900万Bu(8億2,408万Bu、9億7,000万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが235,871枚(前週比 +12,510枚)、ショートが455,309枚(+11,873枚)ネットロングは▲219,438枚(+637枚)

大豆はロングが178,933枚(▲3,169枚)、ショートが107,097枚(+3,854枚)ネットロングは71,836枚(▲7,023枚)

小麦はロングが117,497枚(+8,139枚)、ショートが112,940枚(+4,130枚)ネットロングは4,557枚(+4,009枚)

◆本日のMRA's Eye


「OPEC減産延長とOSP引き上げ~JCCは再び対ドバイで割高に」

OPEC・OPECプラスは会合を前倒し実施し、1ヵ月の減産期間延長を決定した。OPECプラス自体は原油需要が弱いと見ており、減産期間の延長は既定路線とみられていたためあまりサプライズはなかった。

今回問題になったのは、イラクをはじめとする複数国が減産を遵守していなかった点。ただし、毎回、減産が行われている時はこの抜け駆け増産が問題になるが、今回もこの問題が噴出した形だ。

需要の回復やOPECプラスの減産継続を受けて足元、原油価格の上昇が顕著であり、このペースで価格が上昇した場合、シェールオイルをはじめとする非OPECプラスの増産が始まる可能性があるため、恐らく7月時点で予定通り▲770万バレルへの減産規模縮小が行われると予想される。

原油価格のドライバーである需要動向は、夏場は過熱しそうだが、需要規模が大きな北半球の冬場にコロナウイルスの感染再拡大を受けて再びロックダウン(ないしはそれに準ずる経済活動の制限)があるものと予想される。

そのため、価格維持のためにOPECプラスは再び減産規模を拡大すると予想される。通常の生産体制に復帰するのは2021年後半以降になると見ておくのが妥当だろう。

この状況で、サウジアラムコ(サウジアラビア)は7月積みの公式販売価格を大幅に引き上げ、アラブライト、アラブミディアムとも+0.2ドルのプレミアムに引き上げた。

通常OSP価格は2ヵ月前のドバイの1-3ヵ月スプレッド水準(期間構造)を参考に決定されるが、4月の第二次OPECショック以降のサウジアラビアの生産やOSP決定を巡る対応は大きくブレている。

4月は技術的に追加減産が厳しく、減産を断ったロシアに対する報復でサウジアラビアは増産とOSPの大幅引き下げを決定、5月はOPECプラスで減産したもののシェア維持(ないしは生産した原油の受け渡し先確保)のためにOSPの低水準を維持。

6月はロックダウン解除の動きを受けて従来通りのOSP水準に戻したが、7月は「需要の回復は緩やかであるが、ロックダウン解除と需要期であることから需要は底堅い」とみて、期間構造を上回る水準に引き上げた。

恐らくだが、ムハンマド皇太子の意向が反映されているものと考えられる。今後もこうしたサウジアラビアの対応で日本が輸入している原油価格は、市場価格以上に左右されることになるだろう。

日本に輸入される原油の指標であるJCCは、最大輸入相手国であるサウジアラビアの価格決定方式(ドバイとオマーンの平均)+OSP+船賃+保険その他の費用で決定される。

過去、リビア危機やOPECショックなどの特殊な事情が発生した時にこの数式からJCCが乖離するケースが散見されているが、足元もJCCがドバイに対して割高に推移している。

直近の両者の価格乖離は2018年11月5日に米国がイランに対する禁輸措置を発動した頃から始まっており、恐らくイラン以外の国からの調達を進めることに伴い、船賃や保険料に影響が出たものと考えられる(OSPで説明が可能な水準を超える乖離の背景)。

4月のOSPからマイナスとなるため、3週間後に日本に到着する5月通関分(通関統計は6月末発表)からJCCとドバイの乖離は縮小すると見られるが、7月積みが通関される8月分(9月統計発表)からは再びJCCがドバイ対比で割高となる見込みだ。

この結果、JCCベースで値付けされる電気やガスなどの価格は冬場に割高となる可能性が高い。

◆主要ニュース


・4月日本毎月勤労統計 現金給与総額 前年比▲0.6%(前月+0.1%)、実質賃金総額▲0.7%(▲0.3%)

・5月日本マネーストックM2 前年比+5.1%(前月+3.7%)、M3 前年比+4.1%(+3.0%)

・5月日本工作機械受注速報 前年比▲52.8%の512億6,000万円
(前月▲48.3%の561億4,300万円)
 外需▲49.8%の330億5,500万円(▲46.3%の349億9,400万円)

・4月独経常収支 77億ユーロの黒字(前月256億ユーロの黒字)
 貿易収支35億ユーロの黒字(174億ユーロの黒字)
 輸出 前月▲24.0%(▲11.7%)、輸入▲16.5%(▲5.0%)

・Q120ユーロ圏実質GDP確定 前期比▲3.6%(改定値比+0.2%、前期確定+0.1%)
 前年比▲3.1%(+0.1%、+1.0%)

・5月米NFIB中小企業楽観指数 94.4(前月 90.9)

・4月米JOLT求人異動調査 5,046千人(前月改定 6,011千人)

・4月米卸売在庫改定 前月比+0.3%(速報比▲0.1%、前月▲1.0%)
 小売在庫 ▲3.6%(+1.2%)
 卸売売上高 ▲16.9%(▲5.1%)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米在庫統計市場予想 原油▲1,013KB(前週▲2,077KB)
 ガソリン▲319KB(+2,795KB)
 ディスティレート+3,409KB(+9,934KB)
 稼働率+0.43%(+0.50%)

・API石油統計 原油在庫+8.42MB、クッシング▲2.29MB
 ガソリン▲2.91MB、ディスティレート+4.27MB

・米California Resources資金繰り回避まであと数日しか残されておらず、デフォルトの可能性。

・リビア シャララ油田、再び閉鎖。

・DOE月報
 世界石油需要 Q120:100.8、Q220:92.6、Q320:92.0、Q420:93.8、2020:94.8
 非OPEC供給(含むNGLs) Q120:67.1、Q220:62.0、Q320:62.1、Q420:62.5、2020:63.4
 OPEC生産 Q120:33.6、Q220:30.6、Q320:29.8、Q420:31.3、2020:31.3

※需要・供給とも見通し下方修正も、OPEC見通しの下方修正大きく需給バランスはQ320から供給不足に。

・5月DOE2020年、2021年価格見通し(前月)
 WTI 35.14ドル(29.34ドル)、43,88ドル(41.12ドル)
 Brent 38.02ドル(33.04ドル)、47.88ドル(45.62ドル)
 ガソリン 2.07ドル(1.86ドル)、2.18ドル(2.16ドル)
 ディーゼル 2.45ドル(2.35ドル)、2.49ドル(2.16ドル)
 灯油 2.43ドル(2.45ドル)、2.50ドル(2.51ドル)
 天然ガス 10.46ドル(10.45ドル)、10.67ドル(10.66ドル)
 電力 13.08ドル(13.04セント)、13.46ドル(13.41セント)

【メタル】
・Citi、3ヵ月の銅価格見通しを5,750ドルに引き上げ。Q320を5,400ドル(5,000ドル)、Q420を5,800ドル(5,500ドル)に引き上げ。

・Norilsk Nickel、ディーゼルオイルで汚染した土壌を8月までに回収の計画。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.NYM灯油 ( エネルギー )/ +2.98%/ ▲43.07%
2.ICEココア ( その他農産品 )/ +2.94%/ ▲2.20%
3.CME生牛 ( 畜産品 )/ +2.34%/ ▲22.75%
4.CME牛乳 ( 畜産品 )/ +2.09%/ +6.42%
5.NYM WTI ( エネルギー )/ +1.96%/ ▲36.23%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲8.78%/ ▲62.54%
69.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲7.87%/ +33.73%
68.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲4.37%/ ▲37.60%
67.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲3.56%/ ▲11.77%
66.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲2.75%/ +0.42%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,272.30(▲300.14)
S&P500 :3,207.18(▲25.21)
日経平均株価 :23,091.03(▲87.07)
ドル円 :107.76(▲0.67)
ユーロ円 :122.20(▲0.26)
米10年債 :0.83(▲0.05)
中国10年債利回り :2.81(▲0.00)
日本10年債利回り :0.02(▲0.03)
独10年債利回り :▲0.31(+0.01)
ビットコイン :9,749.6(+46.73)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :36.46(+0.01)
エネルギー :53.43(▲0.62)
ベースメタル :22.49(+0.13)
貴金属 :27.98(+0.37)
穀物 :26.25(+1.52)
その他農畜産品 :40.77(▲0.47)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :58.52(▲2.48)
Brent :54.86(+0.03)
米天然ガス :48.36(▲1.39)
米ガソリン :58.14(▲2)
ICEガスオイル :68.06(+0.1)
LME銅 :19.29(▲0.04)
LMEアルミニウム :15.10(+0.18)
金 :12.89(▲0.02)
プラチナ :30.32(▲0.09)
トウモロコシ :15.16(+1.96)
大豆 :12.89(▲0.02)

【エネルギー】
WTI :38.94(+0.75)
Brent :41.18(+0.38)
Oman :42.23(+0.43)
米ガソリン :121.03(+1.53)
米灯油 :115.47(+3.34)
ICEガスオイル :329.00(▲1.00)
米天然ガス :1.77(▲0.02)
英天然ガス :11.64(▲1.12)

【貴金属】
金 :1715.33(+16.80)
銀 :17.53(▲0.24)
プラチナ :836.50(▲1.53)
パラジウム :1953.80(▲55.28)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,704(+26:23.5C)
亜鉛 :2,012(▲3:10C)
鉛 :1,747(▲8:21C)
アルミニウム :1,593(▲4:27C)
ニッケル :12,879(▲131:75C)
錫 :16,730(+200:200B)
コバルト :29,589(▲5)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5767.00(+50.00)
亜鉛 :2017.00(▲23.00)
鉛 :1760.00(▲2.00)
アルミニウム :1603.00(▲2.00)
ニッケル :12910.00(▲160.00)
錫 :16910.00(+185.00)
バルチック海運指数 :698.00(+19.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :104.57(+4.10)
SGX鉄鉱石 :103.38(▲0.67)
NYMEX鉄鉱石 :102.98(▲0.43)
NYMEX原料炭スワップ先物 :110.43(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,600(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,603(▲25)
米鉄スクラップ :320(+4.00)

【農産物】
大豆 :863.25(▲1.50)
シカゴ大豆ミール :287.10(▲1.30)
シカゴ大豆油 :28.23(+0.13)
マレーシア パーム油 :2415.00(+10.00)
シカゴ とうもろこし :327.50(▲6.25)
シカゴ小麦 :504.50(▲7.00)
シンガポールゴム :145.50(▲1.50)
上海ゴム :10365.00(±0.0)
砂糖 :12.00(+0.06)
アラビカ :97.80(▲1.10)
ロブスタ :1221.00(▲29.00)
綿花 :60.52(▲0.29)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :48.08(▲0.50)
シカゴ生牛 :96.33(+2.20)
シカゴ飼育牛 :134.25(+1.18)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。