CONTENTSコンテンツ

焦点は4-6月期の先へ 期待と現実
  • MRA外国為替レポート

2020年5月25日号

◆先週の市場総括


先週は経済活動再開への期待に加え、ワクチン開発に前進があったとの報道にリスク選好が強まって始まった。

その後も状況改善への期待感で基本的にリスク選好は維持されたが、一方でWHO総会などを機に米中対立の強まりが懸念材料としてさらに浮き彫りに。

週末には中国で全人代が開幕。香港に対する国家安全法導入方針から香港株が急落。米中対立がさらに激化するとの懸念から週末にかけてはリスク選好が抑制された。

米国株は週初に大きく上昇しその後は高値圏で上下動。日経平均も米国株の堅調や関西圏の緊急事態宣言解除などを材料に火曜日に大きく上昇して20,500円中心に上下し、週末にやや押されて引けは20,400円近辺。

ドル円相場は週初に107円ちょうど近辺で始まり早々に108円をつけた。その後は反落したものの底固く107円台後半で上下動。引けは107円60銭近辺。概ね株価動向に沿った値動きとなった。

ユーロドル相場は1.08近辺で始まり週初から堅調で1.10をつけた。ただ週末にかけて反落し引けは1.09近辺。ユーロ円相場はリスク選好の回復を追い風に週初から大きく上昇して118円を中心に上下動。週末は反落して117円台前半で引けた。

経済指標は景況感指数に改善の兆しが確認され、4月が大底だったとの推測が強まった。

月曜日の東京市場のドル円相場は107円10銭で始まり底固くもみ合いジリ高。夕刻には107円30銭近辺に上昇した。ユーロ円相場は115円80銭で始まり、その後は116円近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.082近辺でもみ合いの後1.08ちょうど近辺へ。

日経平均は20,100円で寄付き一時20,000円割れ。その後は持ち直し20,100円~200円で上下した。

米国政府は中国ファーウェイ社に対する輸出禁止措置を強化。パウエル議長は発言で、米国経済の回復は来年の後半までかかる、失業率は6月がピークで20%~25%に達する、FRB・議会ともに追加の対策が必要となるかもしれない、と述べた。

発表された日本のGDP(1-3月期)は前期比▲0.9%と消費税率引き上げの影響で悪化した前期▲1.8%に続きマイナス成長となった。

欧州時間に入るとフランスとドイツが、コロナ感染で影響を受けた加盟国への支援のため5,000億ユーロ規模の「コロナ復興基金」創設を提案、と伝えられた。これを材料にユーロが大幅高。ユーロドル相場は1.092へ、ユーロ円相場は117円20銭に上昇。

欧州株は大幅高。米国株も大幅高で寄付き。取引開始前に、米バイオベンチャーのモデルナ社が開発中のワクチンの初期段階の臨床試験で有効な結果が得られた、と伝えられたことを好感した。

エネルギー、資本財、金融が上昇をけん引。ダウは前週末比+912ドルの24,597ドル。VIX指数は▲2.59ポイントの29.30。米10年債利回りは0.73%に上昇。

リスク選好が強まったことで円は軟調。ドル円相場は107円50銭に上昇した後、107円台前半で上下し引けは40銭。

原油価格はワクチンに関する前向きな報道、OPECおよびロシアなどによる原油輸出が5月前半に大幅に減少したとの報道を受けて上昇。WTIは30ドルの大台を回復して31.8ドルで引け。

東京市場のドル円相場は107円30銭で始まり40銭近辺で小動きもみ合い。ユーロ円相場は117円10銭~20銭を中心に上下した後一時60銭に上昇する場面もあったが夕方には20銭。ユーロドル相場は1.092で始まり1.090~1.094で上下。

日経平均は20,650円近辺で大幅高寄り。ワクチン開発への期待、原油高を好感。輸出、金融、エネルギー主導で全面高。その後は20,500円中心に上下して引けは20,400円台前半。

欧州時間に入るとさらにユーロ高、円安。ドイツZEW景況感指数(5月)は期待指数が51.0と前月28.2から大幅に改善して予想30.0を大きく上回った。

ユーロ圏は25.2から46.0に改善。ユーロ円相場は118.10へ上昇。ドル円相場は108円をつけた。ユーロドル相場は1.097に上昇。ただその後はいずれも反落した。

米国株は3指数ともそろって4営業日ぶりに反落。前日に報じられたワクチン臨床試験に有効な結果は得られていないとの専門家の発言で期待が一服した。

NYダウは前日比▲390ドル安。VIX指数は1.23ポイント上昇し30.53。ドル円相場はジリ安となり107円70銭。ユーロ円相場は117円60銭~70銭に反落。ユーロドル相場は1.09台前半で上下し1.092で引けた。

米国の住宅着工(4月)は季節調整済み年率換算で891千戸と前月1,216千戸から大幅減。2015年2月以来の低水準となった。

水曜日の東京市場のドル円相場は107円70銭から朝方は5・10日決済の円売りで90銭台に上昇。ただその後はじり安となり夕刻には107円60銭に押し戻された。

ユーロ円相場は117円70銭から118円ちょうど近辺に上昇してもみ合い。その後は117円80銭へ。ユーロドル相場は1.094~1.095中心に上下動。

日経平均は20,400円台前日引値水準で始まった後、ジリ高となり、20,600円台後半に上昇。引けは20,600円近辺。この日、関西圏3府県の緊急事態宣言解除が決定された。

欧米市場では株価上昇。ユーロは引き続き堅調。ユーロドル相場は1.100の大台をつけた。ユーロ円相場は118円20銭に上昇。ドル円相場は107円40銭割れに反落。ただその後は米株高につれてドルが巻き戻した。

米国株は主要3指数がそろって反発。経済活動再開への期待は根強く、一部小売企業の決算も好感。アマゾン、フェースブックが堅調でナスダックが前日比+191ドルの大幅高で引けは9,376ドル。NYダウは369ドル高の24,576ドル。VIX指数は▲2.54ポイントの27.99。

ドル円相場は107円60銭に持ち直し。ユーロドル相場は1.096に反落。ユーロ円相場は118円ちょうど近辺でもみ合い。公表されたFOMC議事録では、追加緩和について全員が前向きなスタンスであることが確認された。

木曜日のドル円相場は107円60銭で始まり底固く上下動、夕刻には107円80銭近辺。ユーロドル相場は1.098からやや下落して1.096近辺でもみ合い。ユーロ円相場は118円をやや割った水準でもみ合い小動きの後、夕刻には118円20銭~30銭中心に上下。

日経平均は20,700円近辺で小幅高寄り。その後はジリ安で20,550円~600円でもみ合い、引けは20,550円近辺。米中関係の悪化や感染収束後を見極める動き。

発表された日本の貿易収支(4月)は9,300億円の赤字。輸出が前年同月比▲21%の減少と予想より弱く赤字幅が大きくなった。輸入は同7%ほどの減少。

欧州株は下落。米国株も3指数そろって小幅反落。NYダウは前日比▲102ドル安の24,474ドル。VIX指数は+1.54ポイントの29.53。

トランプ大統領は引き続き中国を批判。週次の失業保険新規申請件数は前週から減少したものの2,438千人と依然として高水準。継続受給者数は25百万人の大台に乗せた。ただ経済活動の段階的再開は下支え。

フィラデルフィア連銀製造業景気指数(5月)は▲43.1と前月56.6から改善。ただし依然として低水準。PMI景況感指数(5月)は製造業が39.8(前月36.1)、サービス業が36.9(前月26.7)といずれも改善。活動の落ち込みは4月が底だったとの見方が強まった。

欧州のPMI景況感指数(5月)もユーロ圏製造業が39.5(前月33.4)、サービス業28.7(同12.0)といずれも改善した。

金曜日の東京市場ではリスク選好が後退し株安、円高。

この日、中国では全国人民代表大会(全人代)が開幕。これまでの大会で示してきた成長率見通しは不透明要因が多いことから示されなかった。

香港に対して国家安全法の導入を検討、との報じられたことで、香港で不安感が急激に高まった。香港株は▲5%を超える大幅安。また中国の強硬姿勢に米中対立がさらに激化するとの懸念が高まった。

日経平均は20,550円で寄り付いた後、終始軟調。20,300円台前半に下落し引けは20,390円。

ドル円相場は107円60銭で始まり40銭割れに下落。ユーロ円相場は117円80銭から117円ちょうどに迫る動き。ユーロドル相場は1.095から1.089へ。日銀と財務省は中小企業支援策を発表した。

欧米市場でドル円相場は持ち直し小じっかり。107円60銭に上昇して引け。ユーロ円相場は117円30銭に持ち直し。ユーロドル相場は1.090中心に小動きもみ合い。

米国株はまちまち。NYダウは下落して始まったが持ち直し前日比ほぼ変わらず24,465ドルで引け。ナスダックは+40ドル上昇の9,324ドル。米10年債利回りは0.66%。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

引き続き景況感指数中心に大底から脱したことが確認できるか。

火曜日 シカゴ連銀景気指数(4月、前月▲4.19) ダラス連銀製造業活動指数(5月、前月▲73.7) 消費者信頼感指数(5月、予想85.5、前月86.9) 新築住宅販売(4月、季節調整済み年率換算、予想500千戸、前月627千戸)

水曜日 リッチモンド連銀製造業指数(5月、前月▲53)

木曜日 耐久財受注(4月、前月比、予想▲15%、前月▲15.3%) カンサスシティ連銀製造業指数(5月、前月▲30)

金曜日 個人所得・消費支出(4月、前月比、予想▲8.3%・▲9.7%、前月▲2.0%・▲7.5%) シカゴ購買部協会景気指数(5月、予想40.0、前月35.4) ミシガン大学消費者信頼感指数(5月、改定値、予想73.7、速報71.8)

2.欧州の経済指標

欧州でも経済活動の再開が徐々に始まり景況感主導で底打ちが確認できるか。

月曜日 ドイツIFO景況感指数(5月、予想78.2、前月74.3)

火曜日 ドイツGfk消費者信頼感指数(6月、予想▲1.8、前月▲23.4)

木曜日 ユーロ圏消費者信頼感指数(5月、予想▲22.7、前月▲18.8)

金曜日 ドイツ小売売上高(4月、前月比、予想▲7.3%、前月▲5.6%) ユーロ圏CPI(5月、前年同月比、予想+0.3%、前月+0.3%)

3.日本の経済指標

金曜日 失業率(4月、予想2.7%、前月2.5%) 有効求人倍率(同、予想1.33倍、前月1.39倍) 鉱工業生産(同、前月比、予想▲5.1%、前月▲3.7%)

※実数値の指標であり5月にはなお悪化が予想されるが、4月段階でどれほどの数字となるか。

◆今週のMRA's Eye


焦点は4-6月期の先へ 期待と現実

様々な指標から、米国では4月に景況感が大底を打ったことが確認されつつある。

先々に対する不透明感、不安感は、感染拡大のピークアウトや経済活動の段階的再開で、さらに鎮静化している。

市場や経済主体が、このままの延長線上で「悪化そのもの」が止まり、景気が再拡大し始めるのではないか、という期待を持つのは当然だ。

一方、実数値、小売や生産などの指標はまだ悪化しており、経済の水準そのものが大底を打ったわけではない。米国の雇用情勢はなおも悪化するとみられる。

FRBパウエル議長も失業率は6月がピークとなり、その水準は20%~25%に達するだろう、と述べた。「悪化のペース」が緩和ないし減速し始めたことが確認できているところまでが現状だ。

市場は最悪の事態を織り込んで、というよりも先の見えない不安感から、実体経済の悪化以上に、またそれに先行して、混乱に陥った。

その後は政府・金融当局の対応で、実体経済に相当先んじて落ち着きを取り戻した。

リスク選好が回復基調にあるなか、足元の経済指標でさらに好感すべき数字を確認できている。ただし、ここまでの展開、改善の方向感はすでに織り込み済みだろう。

景気が4-6月期に底を打ち、そこから立ち直る、というのがメインシナリオ。パウエル議長の発言もそれを裏付けている。

次は7-9月期以降の世界がどうなるか、現実と市場の期待のギャップが大きくならないか、がポイント。

すでにV字回復期待は後退している。U字回復との見方もあるが、7-9月期には早くも急速な回復局面に入るとみるのは難しそうだ。

パウエル議長は、先週、米国経済の回復は来年後半までかかる、と長丁場であるとの見方を示した。その通りだとすれば、U字回復ではなく、実態はL字に近く、極めて緩慢な回復過程が続くということになる。

しかもその途上では、感染再拡大のリスクを伴い、とくに今年の秋から年末にかけて、北半球で再び猛威を奮うリスクもある。

市場としては、そうした遠い時点でのリスクを織り込むことは今の段階では難しく、ひとまずアップサイドの流れに乗る状況が続くことになる。

気にするとすれば、もう少し短期的なリスクだ。7-9月期に、想定通り、もう一段の回復がみられるか、そのペースは期待通りか、経済活動再開によって短期的に感染再拡大がみられないか。

一方で、ワクチン開発の進捗も、市場のリスク選好に大きな影響を与えるだろう。日本に関しても同様。

来年の東京オリンピックはワクチン開発の状況次第とされており、10月にも開催の可否を判断するとの話もあることから、7-9月期の動向は極めて重要だ。

あるいは6月中に、さらに将来不安を抑制する新たな材料がみられるか。6月はまだ景気は最悪期を脱しておらず、市場は引き続き期待感だけで「食いつながなければ」ならない。

こうした状況でのリスクバイアスはダウンサイドが勝る。

トレンドとしては緩やかなアップサイドとしても、市場の織り込みが勝っている点で、リスクはダウンサイドが大きいとみておく必要があろう。

米中対立の激化は、それを後押しするリスクだ。具体的な弊害が生じなければ、嫌な雰囲気、市場のリスク選好を抑制する要因、というだけで済む。しかし具体的な制裁強化などの動きが強まるなら実害があり、心理的な悪影響では済まなくなる。

一方でアップサイドのリスクは、景気回復が想定よりも早い・強いというケースになるが、それは当面期待しにくそうだ。

金融財政政策は今のところ防戦一方であり、景気悪化を防ぐところまで、その先の回復局面を後押しし加速する段階には至っていない。日本でも先の補正予算で盛り込まれているが、発動する段階ではない。

米国では給与所得減税、中間所得層への減税が目論まれている。それはプラスだが、肝心の経済活動再開・雇用持ち直しがままならなければ、それも効果は発揮しない。

景気刺激策が効果を発揮するには、「経済活動が正常化」している必要があり、それにはなお長い時間がかかる。当面は各国のダウンサイド回避力、すなわち政策による「下支え力」や経済の底力の強弱がポイントとなりそうだ。

感染の被害状況や景気悪化のスピードは、先進国において米国が最も悪い。しかし対応のスピードや規模、経済そのものの底力・そもそものリバウンド力は、米国が他の先進国に勝っている。これまでの大きなショックとそこからの回復で、米国はV字の実績に富む。

メインシナリオは、このまま極めて緩慢な景気回復が続き、様々な下支え策によってダウンサイドリスクが抑制された状態が継続する、というもの。

リスク選好も緩やかな回復過程が続くが、アップサイドへのブレは期待しにくい。

ドル円相場は下値が固いものの、109円さらには110円の回復には時間がかかり、107円台での底固めがなお続きそうだ。

「新常態」がいかなる世界か、社会全体も市場も織り込めていない。信用市場の不安感がそれを示している。信用スプレッドはピークアウトしたが縮小は道半ば。VIXインデックスも30ポイント近辺で高止まりしている。

完全に落ち着きを取り戻すまでなお長期戦となることを、肌感覚で理解している証左だろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :107.64(+0.03)
ユーロ :117.32(▲0.52)
英ポンド :130.981(▲0.54)
豪ドル :70.362(▲0.29)
カナダドル :76.889(▲0.22)
スイスフラン :110.821(▲0.07)
ブラジルレアル :19.4523(+0.07)
中国人民元 :15.08(▲0.06)
韓国ウォン(日本円=100) :8.677(▲0.05)

【対ドルレート】
ユーロ :1.0901(▲0.005)
英ポンド :1.2173(▲0.005)
豪ドル :0.6537(▲0.003)
カナダドル :1.3996(+0.004)
スイスフラン :0.9712(+0.001)
ブラジルレアル :5.5334(▲0.019)
中国人民元 :7.1294(+0.014)
韓国ウォン :1236.9(+6.12)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :0.66(▲0.01)
米2年債 :0.17(+0.00)
日本10年債利回り :0.00(▲0.00)
日本2年債利回り :0.00(+0.02)
独10年債利回り :▲0.49(+0.01)
独2年債利回り :▲0.68(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :24,465.16(▲8.96)
NASDAQ :9,324.59(+39.71)
S&P500 :2,955.45(+6.94)
日経平均株価 :20,388.16(▲164.15)
ドイツ DAX :11,073.87(+7.94)
インド センセックス :30,672.59(▲260.31)
中国上海総合 :2,813.77(▲54.16)
ブラジル ボベスパ :82,173.20(▲853.90)
英国FT250 :16,398.86(+12.90)
ビットコイン :9181(+124.08)

【主要商品価格】
WTI :33.25(▲0.67)
Brent :35.13(▲0.93)
米ガソリン :103.82(▲0.69)
米灯油 :98.20(▲0.70)

金 :1734.68(+7.68)
銀 :17.21(+0.11)
プラチナ :835.73(▲1.92)
パラジウム :1964.98(▲71.43)
銅 :5272.00(▲142:29.5C)
アルミニウム :1498.50(▲16:25.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :833.25(▲1.75)
シカゴ とうもろこし :318.00(+0.25)
シカゴ小麦 :508.75(▲7.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。