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やや弱めの米統計と米中対立懸念で下落
  • MRA商品市場レポート

2020年5月22日 第1750号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「やや弱めの米統計と米中対立懸念で下落」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:原油価格は上昇。欧州のPMIの改善が価格を押し上げたが、米製造業PMIが市場予想を下回ったことや、週間新規失業保険申請件数が市場予想を上回ったこと、米中対立を材料に下落に転じた。

米中対立が激化しており、香港や台湾を巡って対立が再燃する可能性があることから、本日は軟調推移を予想。

◆非鉄金属:全人代を控えた期待先行と、欧州のPMIの改善が価格を押し上げたが、米製造業PMIが市場予想を下回ったことや、週間新規失業保険申請件数が市場予想を上回ったこと、米中対立を材料に下落した。

全人代での経済対策期待はあるものの、米中対立の可能性は高く本日も調整売りに押される展開を予想。

◆鉄鋼原料:鉄鉱石は小動き、原料炭は小幅下落、鉄鋼製品は小幅上昇。供給不安と経済対策期待でまちまち。

鉄鋼原料材料の需給バランスは供給懸念でタイト化しており、中国の在庫積み圧力の高まりで高値圏維持。鉄鋼製品は米中対立の激化から軟調推移。

◆貴金属:金は10年物価連動債の入札結果を受けた実質金利の上昇で下落。銀・プラチナも連れ安。パラジウムは金安・株安に押された。

期待インフレ率の低下が価格を下押しするが、株安や原油高の影響もあって下落余地は限定。

◆穀物:トウモロコシ・大豆は米中対立による輸出減少懸念で下落、小麦は干ばつの影響で北米の生産減少が懸念されていることが買い材料となった。

米中対立懸念でトウモロコシ・大豆は軟調、小麦は供給懸念で堅調地合いを維持か。

※より詳細な説明は以下をご参照下さい。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、エネルギーやその他農産品の一角が物色されたが、下落する商品が目立った。弊社が日々ウォッチしている70品目のうち、下落したのは41品目に及ぶ。

欧州のPMIが前月から改善したものの、米国時間に発表された統計が市場予想を下回るものが多く、ロックダウン解除に伴う景気への過剰な期待が剥落したことや、コロナを契機に米中の対立が激化していることが、市場参加者のリスク回避姿勢を強めたため。

また、昨日実施された米10年物価連動債の入札で、最高落札利回りがマイナスとなるなどデフレ懸念が強まったことも、基本的にインフレ資産である商品価格全体の下押し要因となったようだ。

※月次の世界商品需給と期間構造
https://marketrisk.jp/category/news-contents/contents/fundamentals

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【本日の見通し総括】

本日の商品市場は、週末であること、市場の注目度が高い全人代の内容を見極めたいとする向きが多いことから、ここまで期待先行で物色されてきた工業金属やエネルギーの調整圧力が強まる展開を予想する。

本日から開幕した全人代だが、市場の注目は経済成長の設定。6%の成長目標の設定は不可能と考えられるが、市場の予想通り目標設定を見送るかどうか。

また、仮にそうだった場合、どのような景気刺激策を打ち出してくるかに焦点が当たる。通常、インフラ投資で工業金属価格の上昇要因となるが、今回のコロナで明らかになったIT分野や医療といったセクターへのテコ入れが増加する可能性もあり得る。

この場合、株価にはプラスかもしれないが、商品価格への影響は株価上昇を通じたファイナンシャルな影響に限定される。

また、コロナを契機に対立を強めている米国(+欧州)への対応に関して、どのような方針を示すか。これまでの報道を見るに、コロナを契機に香港や台湾、ウイグル人に対する弾圧を強める見通しであり、より孤立化を強める見込み。

この場合、親中国と反中国に分かれ、先々の経済圏分断の可能性が高まることになる。それと付随して、軍事費をどうするかも焦点。保守の文在寅大統領は中国に肩入れする見通しで、日本の島嶼への実効支配の動きが強まる可能性も。

【昨日のトピックス】

昨日発表された日本の5月の貿易統計は、大幅に減速下がほぼ市場予想通りの結果となった。欧米のロックダウンの影響が明確に統計に反映された形。

輸出数量の減速は特に米国が顕著(前年比▲36.8%、前月▲15.9%)で、次いで欧州の減速も小さくなかった(▲24.7%、▲9.1)。

一方、アジア向けは▲11.8%(前月▲10.5%)と減速が下げ止まった。これは中国向けの輸出が▲2.4%(▲10.3%)と回復したことによるもの。今後、欧米の段階的なロックダウン解除の動きから、輸出は回復が見込まれる。

逆に輸入数量は、+1.3%(▲2.5%)とプラスに転じている。これはマスクや不織布などの医療関連品の輸入が増加したと考えられる。特に中国(+11.3%、▲5.8%)からの輸入回復が顕著だった。

今後輸入に関しても各国の製造業の稼働が再開すること、経済活動の回復でエネルギーの輸入増加が見込まれることから同様に回復すると予想される。ただ、冬場に向けて流行再発の可能性は高いと見られており、戻りのペースは緩慢なものになるだろう。

また、昨日は先行きを占う指標としてPMIが多数発表された。日本の製造業PMIは38.4(前月改定 41.9)、サービス業が25.3(21.5)と、製造業が悪化し、サービス業がやや回復した。巣籠消費で特定業種が回復したが、輸出の低迷で製造業の減速が継続しているためと考えられる。

日本もロックダウンが解除の方向に進んでいるため、特に落ち込みが顕著だったサービス業の回復が見込まれるが、製造業の回復にはやや時間がかかるだろう。

一方、欧州のPMIは独製造業PMIが市場予想を下回ったが、前月からはすべて改善している。ユーロ圏の製造業PMIは39.5(市場予想38.0、前月33.4)、サービス業が28.7(25.0、12.0)、独製造業が36.8(39.4、34.5)、サービス業が31.4(26.0、16.2)となった。

米国の製造業PMIは39.8(40.0、36.1)、サービス業PMIは36.9(32.5、26.7)とやはり前月からは改善しているが、製造業の改善は市場期待ほどではなかった。

どの国もそもそもの発射台が低い、ということもあり回復までの道のりは長い。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(+3.3%→▲3.0%)ている。ただし2021年には+5.8%への急回復を見込んでいる。

ただこの通りになるためには、コロナウイルス感染拡大終息が必要条件であり、第二次感染拡大となり得る冬場までの終息がなければ、それは難しかろう。

・FRBは合計で▲150bpの緊急利下げと、ドル需要ひっ迫の状況を緩和するための無制限の量的緩和も実施、債券買い入れもジャンク債も対象とするなど、打てる手は出し惜しみなく出しているため、徐々に不安は解消しよう。

ただし、持てる金融政策のカードをほとんど切ってしまったため、今後、不測の事態が発生した場合のリスクは小さくない。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・中国の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた、世界的な経済活動の鈍化長期化。

感染拡大ペース鈍化を受けて経済活動を再開させる動きが強まっているが、このウイルスは未知の部分が多く、再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、サプライチェーンの在り方も見直される可能性があり、「ポスト・コロナ」後の商流を大きく変質させる可能性も(景気循環系商品価格の下落要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。コロナウイルスの影響もあって、EUと英国が離脱を巡って建設的な議論はほとんどできていない状況で、移行期間中の条件合意が困難となっている。

今後は2020年12月末の移行期間までに条件で折り合えず、延期するのか、ハードブレグジットになるかが材料視されることになろう(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウンの動きを受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は上昇後、下落した。先行きの景況感を示す指標であるPMIが欧州で改善したことが価格を押し上げた。

しかし、米製造業PMIが市場予想を下回ったこと、中国が全人代で香港に対する規制を強化(一国二制度の崩壊)を打ち出していることに対する反発を米国が強めており、両国の対立が景気を下押しするとの懸念が強まったことから、下落に転じた。

【原油価格見通し】

原油価格は価格下落に伴う生産調整が進捗していること、感染拡大ペースが鈍化し、欧米で経済封鎖解除の動きが段階的に進むとみられること、ワクチン開発進捗への期待先行から、価格の下値を切り上げる展開になると予想する。

ただし、コロナウイルスの感染拡大はまだ続いており、ロックダウンが全面的に解除されるわけではないこと、中国武漢では感染拡大第二波が確認されていることから需要の回復ペースは緩慢であり、上昇余地も限定されると考える。

ロックダウン解除と再開を繰り返しながら、「コロナへの対応の仕方」や「医療体制の整備進捗」を受けて下値余地が徐々に限定され始め、生産調整の進捗と相まって、緩やかに価格は水準を切り上げると予想される。

一時、マイナス価格でやり取りされたWTIであるが、クッシング在庫の減少が続き、混乱のリスクは低下している。しかしそれでも貯蔵能力には限界があるため、再びマイナス価格となる可能性は排除できない。

米国の原油先物の受け渡しポイントは内陸のクッシングであり、輸出が容易な湾岸地区(例えばヒューストンなど)と異なり在庫の調整が行いにくい。米国は最大の産油国であると同時に、最大の消費国であるため、需要減速時の需給調整に時間がかかる。

直近の米石油統計では、クッシングの週間在庫の水準は5,686万バレル、タンクへの貯蔵量(輸送中の原油を除く)は5,477万バレルとなり、貯蔵施設の利用率は72.0%(前週79.3%)と低下した。同時に戦略備蓄基地への在庫搬入も進んでいる。

欧州や中東は自国消費があまりなく、輸出を前提としてインフラが整備されているためこのようないことが起きにくい。

なお、原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で45ドル近辺(30ドル~55ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末あたりではないだろうか。

特に6月は主要シェール企業の債務償還が多いため、6月危機のリスクはまだ過ぎ去っていない。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を余儀なくされる見込みであるが、実際に減産を行うと稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

逆に、コロナウイルスの感染拡大防止に失敗し、「今年の冬に第二ラウンドに突入」となると需要の回復は難しく、かつ、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

さらに影響がよく分からないのが、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点。これによって株が急騰する可能性はあり、その場合エネルギーセクターにもリバランスの買いが入るため、投機的な観点から価格を押し上げる。現在、これが顕在化しつつある状況。

株価の急騰は再び実態経済と、株価の顕著な乖離をもたらすため、その後のリスク資産価格を乱高下させる要因となるため要注意だ。

逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことはリスクといえる。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきだろう。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。目立った個別材料に乏しい中、過去5年の最低水準での推移が続いている。

貿易統計では中国の輸入増加が確認されているが、中国の豪州に対する圧力強化で豪州炭価格には下押し圧力が掛かりやすい環境になることが予想される。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで価格が下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。水準は低いが、小じっかり、ということだ。

4月の中国石炭輸入は3,095万トン(前月2,783万トン)と過去5年の同じ時期の最高水準を大きく上回っている。経済活動の再開と、季節的な在庫の積み増しの動きによるものと考えられるが、欧米の経済活動の回復の遅れや、中国国内の回復も順調とは言えないことから、早晩減速すると見る。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲3割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTI・Brentともロングが減少、ショートも減少した。米中対立への懸念がロングを減少させたが、生産調整進捗期待でショートの解消、特に米国原油のショート解消が大きかった。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが709,557枚(前週比 ▲13,355枚)ショートが168,538枚(▲23,762枚)ネットロングは541,019枚(+10,407枚)

Brentはロングが225,714枚(前週比▲24,195枚)ショートが69,638枚(▲3,329枚)ネットロングは156,076枚(▲20,866枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場は下落した。欧州の製造業PMIは低水準ながらも改善が確認され、経済活動の戻りが意識されて価格を押し上げていたが、米製造業PMIは市場予想を下回ったこと、全人代で中国が香港に対する一国二制度を終わらせる可能性が出てきており、これに対して米政府が強く反発していることで、両国の対立激化が懸念されたことが価格を押し下げた。

ここまでの価格上昇は中国の活動再開と供給懸念が背景であるが、やや期待先行の部分も否めず、今後調整圧力が強まる可能性は高い。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、感染者数の減少を背景とした経済活動の再開、ワクチン開発への期待、鉱山供給の減少が価格を押し上げるものの、米中の対立や感染再拡大への懸念が価格を下押しするため、レンジワークである。

ただ、目先は中国と米国の対立が市場の材料となっており、ここまでの上昇も実際の需給タイト化によるものであったが、後半は期待先行で投機の買いが入っていたことも否めないため、目先は下値余地を探る動きになるだろう。

米国が中国華為技術に対する制裁強化を決定したが、中国が撤廃をもくろむ香港の一国二制度の廃止に対しても制裁が科される可能性が高く、ウイグル自治区への弾圧も国際非難の的になると予想され、経済活動の妨げになると予想される。

影響がなんとも言えないのが、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点。これは景気が回復すれば先々の価格上昇リスクを強めることになる。

逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだろう。コロナウイルスの影響が長期化する可能性は徐々に高まっている。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・4月中国製造業PMIは50.8(前月52.0)と減速した。新規受注は国内を中心に回復しているとみられるが、欧米のロックダウンの影響で輸出需要が低迷(輸出新規受注46.4→33.5と急減速)した。

新規受注在庫レシオは前月急回復したが、今月は低下。やはり3月の同指数はエラー値だったとして処理するのが適切だろう。

・金属にもよるが、主要生産者がコロナウイルスの影響による生産調整に動いており、供給面で価格を押し上げ(労働力が集まらない、業績悪化に伴う設備投資の減額、採算性悪化に伴う減産など、理由は様々)

(アルミ)Norsk Hydro Husnesアルミプラントの増産をQ320まで先送りアルゼンチン Aluar Puetro Madrynでの生産能力の▲50%を停止

(銅)南米の鉱山生産者(供給の約2割)は需要減と感染拡大防止のため、稼働率の引き下げを余儀なくされている状況Cerro Verde、Los Bronces、Constancia、Las Bambas、Collahuasi、Antaminaなど

(錫)PT Timah、需要の減少で当面錫生産を▲20%~▲30%減らす計画

(亜鉛)NewmontのPenasquito、Pan American SilverのLa Colorada、Grupo MexicoのBuenavistaとSan Martinなどが減産を決定

・5月中国銅製品生産者稼働状況

 銅線生産者 103.1%(前月100.4%、過去4年平均 89.8%) 銅棒生産者 80.3%(83.3%、78.9%) 銅板生産者 64.8%(68.3%、72.2%) 銅管生産者 82.7%(84.4%、75.4%)

・3月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 87.2%(78.3%、90.3%) 中規模事業者 73.2%(72.1%) 小規模事業者 73.1%(42.9%)

・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

・1-4月期中国固定資産投資は前年比▲10.3%の13兆6,824億元(1-3月期▲16.1%の8兆4,145億元)とマイナス幅が縮小。

 公的部門は▲6.9%(▲12.8%)、民間部門とも▲13.3%(▲18.8%)マイナス幅を縮小。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要はマイナス=価格の下落要因)。

・1-4月期中国不動産開発投資は前年比▲3.3%の3兆3,103億元(1-3月期▲7.7%の2兆1,963億元)とマイナス幅を縮小。

ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・3月の中国の銅輸入は前年比+13.3%の44万トン(1-2月期85万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+0.5%の178万トン(377万トン)となった。

銅地金の輸入は過去5年平均程度であるが、米中通商戦争が激化を始めた昨年に比べると高い水準。銅鉱石の輸入は、過去5年の最高水準だった昨年の水準を上回った。

いずれも中国の工業活動が平常状態に戻りつつあることを確認する内容であり、価格の上昇要因。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・5月15日付のLMEロング・ショートポジションは、商品ごとに動きがまちまちとなった。

銅・ニッケルはロングが減少、ショートが増加、米中対立への懸念や南米生産者の稼働再開報道が材料となった模様。

亜鉛はロング・ショートとも減少しているが、ショートの減少が顕著。TCの低下にみられるように鉱石供給が低迷しており、製錬品供給への懸念が強まっているとみられる。

鉛はロングが増加、ショートが減少。中国工場稼働再開と、スクラップ供給懸念が材料。アルミは減産が進んでいないことからショートの積み上がりが大きい。錫のポジションは小動き。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲39.2億ドル(前週▲36.6億ドル)と売り越し幅を小幅に拡大。売り越し額の増加率は+7.2%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,538千トン(前週▲1,459千トン)と売り越し数量を拡大。ネット売り越しの増加率は+5.4%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップはまちまち、原料炭スワップ先物は小幅に続落、中国鉄鋼製品先物価格は上昇した。

全人代を控え、景気刺激への期待が高まっていることが鉄鋼製品価格を押し上げたが、鉄鉱石は在庫減少とブラジルの供給減少観測で高値圏での推移となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は堅調な推移になると考える。コロナウイルスの影響緩和による経済活動の再開に加え、生産者側の生産再開に影響が出ていることから需給がタイトな状態が続くため。

ただし、中国武漢でコロナウイルス感染拡大が再確認されるなど、ワクチンの開発が終了するまでは「ロックダウン解除→ロックダウン→ロックダウン解除...」といった状態が続くと予想され、基本はレンジワークである。

しかし、ここにきて米国が中国に対して制裁を強化する方針を示したことで(コロナ、香港、ウイグル自治区問題、etc...)、同国の景況回復に遅れが出ることは必須であり、鉄鉱石価格を押し下げることになるだろう。

その一方、コロナ問題に対する中国の対応に対して豪政府が不満を表明したことで、中国政府がこれに反発、豪州産の鉄鉱石を購入しない可能性を示唆した。中国全体の需要が減少するわけではなく、ブラジルやインドの鉱石需要が増加するだろうが、豪州産の鉱石価格には下押し圧力が掛かることになるだろう(反対にブラジル鉱石価格は上昇)。

政策要因に振らされる形で、先々の鉄鉱石価格は乱高下しやすい。

中国河北省の高炉稼働率は5月15日時点で78.6%(前週78.3%)と小幅に上昇した。需要の回復が緩慢な中で、恐らく稼働率は当面、この水準程度で推移することになるだろう。

中国の鉄鋼製品は例年通り季節的な在庫の取り崩しが継続しているが、例年よりも在庫の減少ペースが速い。生産者の供給が十分ではない中、最終需要者の稼働が回復している可能性があることを示唆している。

原料炭は中国の生産活動再開の影響もあり、過去5年の最高水準での推移を続けると考える。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年レンジを上抜けしていたが、ここにきて急速に取り崩しが進んでおり、現在は過去5年平均を下回った。需給環境は徐々にタイト化していると考えられる。

先行指標であるバルチック海運指数は、4月以降低迷していたが、直近は持ち直しの動きを見せており、今後、輸入が増加して海上輸送市場の需給をタイト化させ、価格が上昇する可能性が高まっている。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・4月の中国鉄鋼業PMIは45.9(前月42.2)と回復した。主に生産の回復(39.3→53.4)によるところが大きい。

しかし、需要はほとんどが国内向けとみられ(新規受注 38.5→39.9)、輸出向け新規受注は27.8(27.3)と低迷が続いている、

海外のロックダウンが続く中で、国内主導の回復にならざるを得ないが、中国政府も財政的に厳しい部分があり需要が加速するという展開は考え難い。

・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

・1-4月期中国固定資産投資は前年比▲10.3%の13兆6,824億元(1-3月期▲16.1%の8兆4,145億元)とマイナス幅が縮小。

 公的部門は▲6.9%(▲12.8%)、民間部門とも▲13.3%(▲18.8%)マイナス幅を縮小。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要はマイナス=価格の下落要因)。

・1-4月期中国不動産開発投資は前年比▲3.3%の3兆3,103億元(1-3月期▲7.7%の2兆1,963億元)とマイナス幅を縮小。

ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・4月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲0.2%の631万9,000トンと前年比マイナスとなり、季節性に反して前月から減少した。

欧米各国がロックダウンしている影響によるものと考えられ、今後ロックダウンが徐々に解除される中で、緩やかに回復すると期待されるが実際にそうなるかどうかは不透明。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲124.2万トンの1,795.8万トン(過去5年平均 1,137.2万トン)と、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが続いている。

ただし、例年よりも取り崩しのペースは早く、鉄鋼生産者の稼働が最終需要家の回復よりも遅れている可能性があることを示唆している。

・4月の中国の鉄鉱石の輸入量は前年比+18.5%の9,571万トンとなり、過去5年レンジを大幅に上抜けした。鉄鋼製品在庫の取り崩しが進んでいること、鉄鉱石の港湾在庫の水準の低さもあって、鉄鉱石輸入の動きが活性化した様子。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲100万トンの1億1,195万トン(過去5年平均1億2,285万トン)、在庫日数は▲0.2日の26.2日(過去5年平均 30.3日)と例年と比較して在庫水準が低い状態は続いている。

鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、一定の鉄鉱石の輸入需要が価格を高止まりさせると考える。

・4月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比+22.3%の3,095万トンと増加し、過去5年レンジを超えた。中国の経済活動の再開を反映したもの。

原料炭の輸入は1-2月に前年比+47.5%の1,516万トンとなったが、3月は前年比▲8.1%の564万トンに落ち込んでいる。

中国の原料炭輸入の主要港である京唐港の石炭港湾在庫は過去5年レンジを上抜け増加していたが、急速に減少している。しかし依然として過去5年レンジを上回る水準を維持しており、輸入需要はさほど旺盛ではないとみられる。

石炭輸入動きを占う上で参考になるバルチック海運指数も再び急減速しており、過去5年レンジをした抜けした。中国の石炭調達意欲がさほど旺盛ではない可能性が高い。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は下落した。長期国債利回りは米統計が悪い内容であることを確認して低下したものの、昨日行われた10年物価連動債の入札で、最高落札利回りが7年ぶりに▲0.47%とマイナスとなり、デフレ懸念が意識されたことが材料。

金価格の下落を受けてここまで上昇を続けてきた銀・プラチナも水準を切り下げ、株価が下落したこともあってパラジウムも大きく下落した。

なお、先物がないためPGMセクターの需給動向を占う上で参考にしているロジウムの価格は前日比+1.46%と上昇している。

【貴金属価格見通し】

金銀は一旦調整売りに押されると考える。長期金利の低下余地が限定される一方、10年物価連動債の入札結果を見るに、期待インフレ率が低下する可能性が出てきたため。

ただし、原油価格に持ち直しの動きが出ていることが、先々の期待インフレ率の低下を抑制すると考えられるため、下落余地も限定され、結局高値圏で推移するとみる。

また、米中の対立が再燃しており、地政学的なリスクが高まること、コロナウイルス対策で各国とも財政支出を拡大しており、信用危機が意識されることが安全資産需要を高めることも、価格を押し上げると考える。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は248ドル(前日比▲1ドル)。なお、現在の実質金利で説明可能な価格水準は1,450~1,480ドル程度。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意下さい。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では120倍程度が妥当、となっているが実際は110倍程度となっている。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

また、金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることから割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な色彩が強まっているが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のような安全資産としては認知されていないことによる。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになろう。

パラジウムは価格は、景気の先行きが明確に悪く少なくともQ220は景況感の低迷が続く見込みであること、株式市場の混乱も続いているため、工業向け需要低迷がから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

ただ、Norilsk Nickelは2020年のパラジウムの需給見通しを▲20万オンスの供給不足から、+10万オンスの供給過剰に下方修正しており、上限は切り下がったと考えられる。

4月の米自動車販売は年率858万台(市場予想 700万台、前月 1,137万台)と、大幅な悪化となり、例年の半分程度まで落ち込んだ。ただし、市場予想は上回っており市場ほど悲観的な状況ではないようだ。

中国の4月の自動車販売は前年比+4.4%の207万台(前月▲43.3%の143万台)と急回復した。しかし、販売の多くが商用車であり、中国政府による景気テコ入れの成果だったともいえる。

今後、中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻っている訳ではないので、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・FRBは▲1.5%の緊急利下げ、無制限の量的緩和を決定、その他の中央銀行もこれに追随しており貴金属価格の上昇要因に。

ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが277,771枚(前週比 +2,200枚)、ショートが34,943枚(+9,376枚)、ネットロングは242,828枚(▲7,176枚)、銀が44,757枚(+705枚)、ショートが18,984枚(▲2,153枚)、ネットロングは25,773枚(+2,858枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが28,253枚(前週比 ▲386枚)ショートが10,098枚(▲295枚)、ネットロングは18,155枚(▲91枚)

パラジウムが2,156枚(▲100枚)、ショートが1,766枚(+175枚)ネットロングは390枚(▲275枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はトウモロコシが小幅下落、大豆が大幅に下落、小麦が上昇した。

トウモロコシ・大豆は米統計悪化を受けたリスク回避のドル高と、米中対立激化に伴う中国向け輸出の減少観測が価格を下押しした。

小麦は作付けの遅れと冬小麦の作柄の悪化が材料視されている。クロップツアーでは、カンザス南中部の単収が49.5Bu/エーカー、中央部が47.6Bu/エーカー、東カンザスでは46.5Bu/エーカーと推定され、供給懸念が意識されている。

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は米国のロックダウン解除の動きが進む見通しであり、ガソリン向け需要の段階的な回復が期待されること、採算が悪化したエタノールの生産調整も進むとみられることから、徐々に水準を切り上げると考える。

ロックダウン解除に伴う精肉工場の再稼働期待から、飼料向け需要も回復するとみられることも価格を押し上げよう。

ただし、ロックダウンが解除されても直ちに元の状態に戻るとは考えにくく、エタノール向け需要はやはり限定されることから上昇余地も限定される見込み。

大豆は国内の飼料向け需要の増加が予想されるが、米中対立の再燃による米国産大豆の輸出減速が予想されることから、上昇余地は限定されると考える。

小麦は北米の冬小麦の作柄が悪化していること、トウモロコシに連れ高を見込むが、やはり例年通り最終的には供給は帳尻が合うと予想されるため上昇余地も限定。

懸念すべきは東アフリカ・中東地域でサバクトビバッタが激増、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

また、コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家が増えており、この作付けの遅れも価格を押し上げるだろう。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気だ。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・5月の米需給報告の生産見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 159億9,500万Bu(157億4,860万Bu、136億9,200万Bu)大豆 41億2,500万Bu(41億3,992万Bu、35億5,800万Bu)小麦 18億6,600万Bu(18億4,765万Bu、19億2,000万Bu)

・5月の米需給報告の在庫見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 20億9,800万Bu(22億7,792万Bu、24億4,500万Bu)大豆 40億5,000万Bu(43億2,240万Bu、48億万Bu)小麦 9億900万Bu(8億2,408万Bu、9億7,000万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが210,833枚(前週比 ▲2,913枚)、ショートが388,404枚(+21,568枚)ネットロングは▲177,571枚(▲24,481枚)

大豆はロングが188,262枚(+15,126枚)、ショートが85,035枚(▲5,318枚)ネットロングは103,227枚(+20,444枚)

小麦はロングが101,924枚(▲2,528枚)、ショートが97,138枚(+3,389枚)ネットロングは4,786枚(▲5,917枚)

◆主要ニュース


・4月日本貿易収支季節調整前 ▲9,304億円の赤字(前月54億円の黒字)
 輸出 前年比▲21.9%の5兆2,023億円(▲11.7%の6兆3,581億円)
 輸入 ▲7.2%の6兆1,327億円(▲5.0%の6兆3,526億円)

 米国向け
  輸出 ▲37.8%の8,798億円(▲16.5%の1兆1,821億円)
  輸入 +1.6%の6,986億円(+1.3%7,452億円)

 欧州向け
  輸出 ▲28.0%の4,835億円(▲11.1%の6,337億円)
  輸入 ▲6.8%の6,747億円(▲9.7%の6,709億円)

 アジア向け
  輸出 ▲11.4%の3兆1,297億円(▲9.4%の3兆4,530億円)
  輸入 +2.2%の3兆1,568億円(▲4.0%の3兆303億円)

 中国向け
  輸出 ▲4.1%の1兆1,822億円(▲8.7%の1兆1,906億円)
  輸入 +11.7%の1兆7,348億円(▲4.5%1兆4,319億円)

・4月日本全国スーパー売上高 前年比▲4.5%の1兆162億円(前月+0.8%の1兆339億円)

・5月日本製造業PMI速報 38.4(前月改定 41.9)サービス業 25.3(21.5)、コンポジット 27.4(25.8)

・5月ユーロ圏製造業PMI速報 39.5(前月改定 33.4)サービス業 28.7(12.0)、コンポジット 30.5(13.6)

・5月独製造業PMI速報 36.8(前月改定 34.5)サービス業 31.4(16.2)、コンポジット 31.4(17.4)

・4月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 ▲43.1(前月▲56.6)
 新規受注 ▲25.7(▲70.9)
 受注残 ▲13.7(▲13.5)
 在庫水準 +11.7(▲10.2)
 雇用者数 ▲15.3(▲46.7)
 6ヵ月先景況指数 49.7(43.0)

・米週間新規失業保険申請件数 2,438千件(前週 2,687千件)
 失業保険継続受給者数 25,073千人(22,548千人)

・5月米製造業PMI速報 39.8(前月改定 36.1)、サービス業 36.9(26.7)、コンポジット 36.4(27.0)

・4月米景気先行指標総合指数 前月比 ▲4.4%(前月改定▲7.4%)

・4月米中古住宅販売 前月比▲17.8%の433万戸(前月▲8.5%の527万戸)

・クラリダFRB副議長(投票権あり・中間派)、「財政・金融政策両面で追加支援が必要になる可能性。」

・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁(投票権あり・中間派)、「米国には追加の経済対策を行う余裕がある。」

・インド観測史上最大のサイクロン、「アンファン」、84名が死亡、550万世帯の電力供給に影響。バングラディシュでは240万人が避難所に避難

・米トランプ大統領、「中国の香港でも抑圧強化する治安法制をめぐり、実行されれば非常に強く対処する。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE天然ガス稼働在庫 2,503BCF(前週比+81BCF)
 東部 469BCF(+17BCF)
 中西部 576BCF(+22BCF)
 山間部 124BCF(+7BCF)
 太平洋地区253BCF(+13BCF)
 南中央 1,081BCF(+22BCF)

・石油史上最大のETF取り扱いファンドであるUSOは3ヵ国の規制当局からの介入で、現在、原油先物を購入できないことに。

【メタル】
・Harbor Intelligence、「アルミ価格は6月に1,700ドルまで上昇する可能性。エネルギー(原油)価格が上昇しているため。」

・Morgan Stanley、「鉄鉱石価格はブラジルの鉄鉱石供給の減少で120ドルを試す可能性。」

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.TCMガソリン ( エネルギー )/ +4.92%/ ▲45.95%
2.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +4.35%/ ▲16.91%
3.TCM灯油 ( エネルギー )/ +2.78%/ ▲47.51%
4.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +2.62%/ ▲25.16%
5.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ +2.10%/ ▲28.21%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲14.01%/ ▲70.16%
69.ビットコイン ( その他 )/ ▲5.54%/ +26.52%
68.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲3.69%/ ▲13.45%
67.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.44%/ ▲21.88%
66.プラチナ ( 貴金属 )/ ▲3.40%/ ▲13.34%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :24,474.12(▲101.78)
S&P500 :2,948.51(▲23.10)
日経平均株価 :20,552.31(▲42.84)
ドル円 :107.61(+0.08)
ユーロ円 :117.83(▲0.23)
米10年債 :0.67(▲0.01)
中国10年債利回り :2.66(▲0.01)
日本10年債利回り :0.00(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.50(▲0.03)
ビットコイン :9,056.92(▲531.63)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :40.71(▲0.2)
エネルギー :90.04(▲1.44)
ベースメタル :19.32(+0.73)
貴金属 :28.34(+2.13)
穀物 :24.21(▲0.37)
その他農畜産品 :35.81(▲0.56)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :167.30(▲7.3)
Brent :83.60(▲0.01)
米天然ガス :70.84(▲1.47)
米ガソリン :76.99(+0.23)
ICEガスオイル :108.75(▲1.54)
LME銅 :17.94(+0.09)
LMEアルミニウム :12.87(+1.88)
金 :15.58(+0.76)
プラチナ :27.61(+4.14)
トウモロコシ :18.82(+0)
大豆 :15.58(+0.76)

【エネルギー】
WTI :33.92(+0.43)
Brent :36.06(+0.31)
Oman :37.68(+0.53)
米ガソリン :104.51(+0.13)
米灯油 :98.90(▲0.16)
ICEガスオイル :296.50(▲3.00)
米天然ガス :1.71(▲0.06)
英天然ガス :9.27(▲1.51)

【貴金属】
金 :1727.00(▲21.18)
銀 :17.11(▲0.45)
プラチナ :837.65(▲29.49)
パラジウム :2036.41(▲64.84)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,414(+53:26.5C)
亜鉛 :1,994(▲23:3B)
鉛 :1,671(▲9:16C)
アルミニウム :1,515(+28:27.5C)
ニッケル :12,827(+419:65C)
錫 :15,470(+134:290B)
コバルト :29,690(▲6)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5390.00(▲55.50)
亜鉛 :1969.00(▲75.50)
鉛 :1654.00(▲40.00)
アルミニウム :1521.00(+6.00)
ニッケル :12420.00(▲290.00)
錫 :15405.00(▲60.00)
バルチック海運指数 :477.00(+24.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :96.86(+0.91)
SGX鉄鉱石 :92.18(▲0.31)
NYMEX鉄鉱石 :91.2(+0.07)
NYMEX原料炭スワップ先物 :112.54(▲0.25)
上海鉄筋直近限月 :3,553(+23)
上海鉄筋中心限月 :3,548(+9)
米鉄スクラップ :335(+5.00)

【農産物】
大豆 :835.00(▲11.75)
シカゴ大豆ミール :282.50(▲3.00)
シカゴ大豆油 :27.11(▲0.25)
マレーシア パーム油 :2276.00(+58.00)
シカゴ とうもろこし :317.75(▲1.75)
シカゴ小麦 :516.00(+2.25)
シンガポールゴム :136.30(+0.80)
上海ゴム :10125.00(▲55.00)
砂糖 :10.98(▲0.21)
アラビカ :104.75(▲0.90)
ロブスタ :1157.00(+3.00)
綿花 :58.06(▲0.15)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :59.35(+2.48)
シカゴ生牛 :98.80(+0.40)
シカゴ飼育牛 :126.03(+0.03)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。