FRBの政策維持と全人代への期待で上昇
- MRA商品市場レポート
2020年5月21日 第1749号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「FRBの政策維持と全人代への期待で上昇」
【昨日と本日の各セクターショートコメント】
◆エネルギー:原油価格は上昇。経済活動再開への期待や、米国の需給環境の改善が確認されたことが材料。
需給バランス改善確認で上昇してきたが、ここまでの上昇ペースが顕著であり、22日からの全人代を控えて一旦調整売りで下落すると予想。
◆非鉄金属:全人代での追加景気刺激策への期待や、中国の工場稼働の回復が確認されていること、主要金属の在庫減少継続で大幅に上昇。
前日の上昇が顕著であり、22日の全人代を控えて本日は一旦調整売りで下落。
◆鉄鋼原料:鉄鉱石は上昇、原料炭・鉄鋼製品は小幅安。目立った新規手掛かり材料に乏しい中、全人代を控えて小動きとなった。
鉄鋼原料材料の需給バランスはタイト化しており、中国の在庫積み圧力の高まりで高値圏維持。鉄鋼製品は米中対立の激化から軟調推移。
◆貴金属:金はFOMC議事録を受けた長期金利の小幅低下と、原油価格の上昇による期待インフレ率の上昇で上昇、割安に放置されていた銀とプラチナには引き続き買いが入った。パラジウムは株高もあって上昇。
本日は原油価格が一旦調整するとみるため、貴金属にも一旦利食い売りが入るものと予想。
◆穀物:トウモロコシは米石油統計を受けて上昇後、テクニカルな売りで下落。大豆は食用油価格の上昇に連れ高、小麦は北米の減産観測で大幅に上昇。
エタノール向け需要の回復観測でトウモロコシは堅調、大豆も食用油需要で上昇、小麦も供給不安から上昇か。
※より詳細な説明は以下をご参照ください。
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は景気循環系の商品を中心に物色されて総じて堅調。これまでロックダウンやコロナの影響で物色されてきたその他農産品(オレンジジュースなど)や畜産セクター、その他の商品とほぼ相関性のないビットコインが下落した。
昨日はFRBが金融緩和を当面継続することをFOMC議事録で確認できたこと(すでに認知済の材料ではあるが)や、ロックダウン解除やワクチン開発進捗への期待、中国全人代を控えた中国の対策期待が積極的に材料視された。
インフレ資産全体に影響を及ぼす原油価格が、昨日の米石油統計での需給バランスタイト化観測を受けて上昇していることも、価格にプラスの効果をもたらしている。
しかし、コロナの影響が確かに減速しているものの、そもそも夏場はコロナの影響が弱まることは以前から指摘されていたこと、ロックダウンによって感染拡大が抑制されたこともまた事実で、市場がやや楽観的過ぎる感は否めない。
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【本日の見通し総括】
本日も景気への楽観が強まっていることからリスク資産に買戻しが入る展開を予想。ただし、「ワクチン開発」「ロックダウン解除で経済が元に戻ること」への「期待」を先行して織り込んでいる感は否めず、現在の感染者数減少もロックダウンの影響(景気悪化というコストを払って成立している)であることを考えると、弊社としては現時点での価格上昇継続には懐疑的。
実際に需要が戻り、供給が間に合わずに価格が上昇するのはQ320以降になるのではないか。
とはいえ、環境が改善しているのも事実。本日はフォワードルッキングな指標として、ユーロ圏製造業PMI(市場予想 38.0、前月33.4)、サービス業PMI(25.0、12.0)、独製造業PMI(39.4、34.5)、独サービス業PMI(26.0、16.2)に注目しているが、いずれも改善見通し。
欧州から数週間遅れて対策を行った米国についても、製造業PMIが39.5(前月36.1)、サービス業PMIが32.3(26.7)と改善見込みだが、製造業の回復ペースがやや頭打ちに。
また、米国のISM製造業指数の先行指標であるフィラデルフィア連銀指数にも注目しているが、こちらも▲40.0(▲56.6)と改善幅は限定の見込み。
【昨日のトピックス】
22日から全人代が開幕となるが、今回の全人代で最大の注目は経済成長率の目標をどう設定するかだろう。
中国共産党は2020年のGDPを10年前から2倍にするとの目標を掲げている。これを達成しようとした場合、6%を目標にしなければならないがQ120のGDP成長は前年比▲6.8%であり、その目標を設定した場合達成は不可能だろう。
そのため市場では目標を設定しないのではないか、と予想されている。仮にやや低めの目標を設定したとしても、この1~2ヵ月の中国の統計を見るに、やはり公的需要で景気が支えられていることは間違いがない。
しかし、胡錦涛政権が実施した4兆元の経済対策の時からGDP規模は3倍弱に膨らんでおり、その頃に比べると政府債務も増加しているため公共投資で大盤振る舞いすることは難しい。
経済効果が大きい住宅セクターはバブル回避のため、今後、景気刺激に使わないと政府が表明していることからやれることは相当限られることになるだろう。
この状況で、選挙を睨んでか(本当に頭にきてか)米トランプ政権は中国との対立を強めている。華為技術に対する制裁強化と期間延長は既に実施済である。
中国から利益を得てきたとの噂が絶えないバイデン一家も、反中に舵を切っており、今年の米大統領選挙の結果がどのようになっても、対中政策が厳しくなることはほぼ間違いがない。これまで景気減速時のけん引役として期待されていた中国であるが、徐々にその「立ち位置」が変わりつつあることは意識すべきだろう。
その一方で一貫しているとみられるのは国防費の拡充。中国の国力が構造的に成長するのは2030年頃まで。この頃までに米国と対等以上の軍事力を有している必要があるため、恐らく予算が厳しい中でも軍事費は拡充されるだろう。
米国は既に中国と対立する方向に舵を切っているため、軍事力を拡充している中国が日本の島しょの実効支配を強めるのはほぼ間違いない。これに、「コロナ対策で国民からの評価を得た」韓国、文在寅政権が反日の動きを強めれば、今度は竹島近辺も不安定化することになる。
今回の全人代は「ポスト・コロナ」以降の東アジアのパワーバランスにも影響を及ぼすため、重要な会議になることは間違いない。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
<<マクロ要因>>
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。
ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、本格解除には至らず、改善余地も限定される公算。
・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(+3.3%→▲3.0%)ている。ただし2021年には+5.8%への急回復を見込んでいる。
ただこの通りになるためには、コロナウイルス感染拡大終息が必要条件であり、第二次感染拡大となり得る冬場までの終息がなければ、それは難しかろう。
・FRBは合計で▲150bpの緊急利下げと、ドル需要ひっ迫の状況を緩和するための無制限の量的緩和も実施、債券買い入れもジャンク債も対象とするなど、打てる手は出し惜しみなく出しているため、徐々に不安は解消しよう。
ただし、持てる金融政策のカードをほとんど切ってしまったため、今後、不測の事態が発生した場合のリスクは小さくない。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。
※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。
・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。
<<特殊要因>>
・中国の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた、世界的な経済活動の鈍化長期化。
感染拡大ペース鈍化を受けて経済活動を再開させる動きが強まっているが、このウイルスは未知の部分が多く、再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。
・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、サプライチェーンの在り方も見直される可能性があり、「ポスト・コロナ」後の商流を大きく変質させる可能性も(景気循環系商品価格の下落要因)。
・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。コロナウイルスの影響もあって、EUと英国が離脱を巡って建設的な議論はほとんどできていない状況で、移行期間中の条件合意が困難となっている。
今後は2020年12月末の移行期間までに条件で折り合えず、延期するのか、ハードブレグジットになるかが材料視されることになろう(下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
<<投機・投資要因>>
・ロックダウンの動きを受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。
コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。
・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は続伸した。景気の先行きへの楽観とロックダウン解除の動き、米石油統計での原油在庫、クッシング在庫の減少が材料となった。
昨日発表された米石油統計は、市場予想比で原油が強気、製品が弱気な内容だった。原油は朝方発表のAPI統計と同様、▲5.0MB(市場予想+18.1MB、前週▲0.7MB)と減少、原油生産の減少(▲0.1MBD)、稼働率の上昇(+0.3%)が影響した。
4月に問題となったクッシング在庫も▲5.6MB(前週▲3.0MB)と減少し、タンクキャパシティへの懸念は後退している。
また、石油製品出荷はほぼすべての製品で前週比回復しており、全製品の出荷は前年比▲19.0%の1,613万バレル(前週▲22.8%の1,551万バレル)と回復している。米国の需給は需給両面でタイト化の方向にあると考えられる。
【原油価格見通し】
原油価格は価格下落に伴う生産調整が進捗していること、感染拡大ペースが鈍化し、欧米で経済封鎖解除の動きが段階的に進むとみられること、ワクチン開発進捗への期待先行から、価格の下値を切り上げる展開になると予想する。
ただし、コロナウイルスの感染拡大はまだ続いており、ロックダウンが全面的に解除されるわけではないこと、中国武漢では感染拡大第二波が確認されていることから需要の回復ペースは緩慢であり、上昇余地も限定されると考える。
ロックダウン解除と再開を繰り返しながら、「コロナへの対応の仕方」や「医療体制の整備進捗」を受けて下値余地が徐々に限定され始め、生産調整の進捗と相まって、緩やかに価格は水準を切り上げると予想される。
一時、マイナス価格でやり取りされたWTIであるが、クッシング在庫の減少が続き、混乱のリスクは低下している。しかしそれでも貯蔵能力には限界があるため、再びマイナス価格となる可能性は排除できない。
米国の原油先物の受け渡しポイントは内陸のクッシングであり、輸出が容易な湾岸地区(例えばヒューストンなど)と異なり在庫の調整が行いにくい。米国は最大の産油国であると同時に、最大の消費国であるため、需要減速時の需給調整に時間がかかる。
直近の米石油統計では、クッシングの週間在庫の水準は5,686万バレル、タンクへの貯蔵量(輸送中の原油を除く)は5,477万バレルとなり、貯蔵施設の利用率は72.0%(前週79.3%)と低下した。同時に戦略備蓄基地への在庫搬入も進んでいる。
欧州や中東は自国消費があまりなく、輸出を前提としてインフラが整備されているためこのようないことが起きにくい。
なお、原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で45ドル近辺(30ドル~55ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。
場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末あたりではないだろうか。
特に6月は主要シェール企業の債務償還が多いため、6月危機のリスクはまだ過ぎ去っていない。
生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。
すでに全ての産油国が追加減産を余儀なくされる見込みであるが、実際に減産を行うと稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。
さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。
足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。
逆に、コロナウイルスの感染拡大防止に失敗し、「今年の冬に第二ラウンドに突入」となると需要の回復は難しく、かつ、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。
さらに影響がよく分からないのが、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点。これによって株が急騰する可能性はあり、その場合エネルギーセクターにもリバランスの買いが入るため、投機的な観点から価格を押し上げる。現在、これが顕在化しつつある状況。
株価の急騰は再び実態経済と、株価の顕著な乖離をもたらすため、その後のリスク資産価格を乱高下させる要因となるため要注意だ。
逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことはリスクといえる。
原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきだろう。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は小幅に上昇した。目立った個別材料に乏しい中、過去5年の最低水準での推移が続いている。
【石炭価格見通し】
石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで価格が下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。水準は低いが、小じっかり、ということだ。
4月の中国石炭輸入は3,095万トン(前月2,783万トン)と過去5年の同じ時期の最高水準を大きく上回っている。経済活動の再開と、季節的な在庫の積み増しの動きによるものと考えられるが、欧米の経済活動の回復の遅れや、中国国内の回復も順調とは言えないことから、早晩減速すると見る。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲3割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。
世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善
・1-3月期中国工業生産は前年比▲8.4%(1-2月期▲13.5%)と回復。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(フロー需要の減少=価格の下落要因)。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。
<<特殊要因>>
・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化が、中東情勢を悪化させ供給リスクにつながる場合。
・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。
<<投機・投資要因>>・WTI・Brentともロングが減少、ショートも減少した。米中対立への懸念がロングを減少させたが、生産調整進捗期待でショートの解消、特に米国原油のショート解消が大きかった。
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが709,557枚(前週比 ▲13,355枚)ショートが168,538枚(▲23,762枚)ネットロングは541,019枚(+10,407枚)
Brentはロングが225,714枚(前週比▲24,195枚)ショートが69,638枚(▲3,329枚)ネットロングは156,076枚(▲20,866枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME市場は大幅に上昇した。ロックダウン解除やワクチン開発期待から全体的に市場参加者の楽観が強まっているほか、全人代の開幕を控え、景気刺激への期待が高まったことが材料となった。
実際、ベンチマークの銅に関しては、銅線生産者の稼働は平時の稼働状況を上回り100%超えとなっており、その他の金属製品の加工工場の稼働率も回復している。
ただ、景気回復期待を織り込んだ形での上昇であり、やや上昇しすぎの感は否めない。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は再び上昇余地を試す動きになると考える。欧米のロックダウン解除観測が需要面で価格を押し上げるほか、米ワクチン開発の進捗期待が金融面で価格を押し上げるため。
ただし、中国で再び感染拡大が確認され、移動制限が一部行われていること、ロックダウン解除の動きで鉱山生産も回復が見込まれることから上昇余地も限定されると考える。
また、米国が中国華為技術に対する制裁強化を決定したことで、同国の経済活動の停滞する可能性が高いことも上昇余地を限定するだろう。
しかし、ワクチンが完成するまでは結局のところ、ロックダウン解除と再開を繰り返しながら、「コロナへの対応の仕方」や「医療体制の整備進捗」を受けて下値余地が徐々に限定され始め、緩やかに価格は水準を切り上げる、という展開になるだろう。
基本的に戻りは緩やかなものになると見ているものの、稼働停止となっている鉱山の稼働が速やかに再開されるのか不明であり、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点も先々の価格上昇リスクを強めている。
逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクだろう。コロナウイルスの影響が長期化する可能性は徐々に高まっている。
長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。
具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。
再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・4月中国製造業PMIは50.8(前月52.0)と減速した。新規受注は国内を中心に回復しているとみられるが、欧米のロックダウンの影響で輸出需要が低迷(輸出新規受注46.4→33.5と急減速)した。
新規受注在庫レシオは前月急回復したが、今月は低下。やはり3月の同指数はエラー値だったとして処理するのが適切だろう。
・金属にもよるが、主要生産者がコロナウイルスの影響による生産調整に動いており、供給面で価格を押し上げ(労働力が集まらない、業績悪化に伴う設備投資の減額、採算性悪化に伴う減産など、理由は様々)
(アルミ)Norsk Hydro Husnesアルミプラントの増産をQ320まで先送りアルゼンチン Aluar Puetro Madrynでの生産能力の▲50%を停止
(銅)南米の鉱山生産者(供給の約2割)は需要減と感染拡大防止のため、稼働率の引き下げを余儀なくされている状況Cerro Verde、Los Bronces、Constancia、Las Bambas、Collahuasi、Antaminaなど
(錫)PT Timah、需要の減少で当面錫生産を▲20%~▲30%減らす計画
(亜鉛)NewmontのPenasquito、Pan American SilverのLa Colorada、Grupo MexicoのBuenavistaとSan Martinなどが減産を決定
・5月中国銅製品生産者稼働状況
銅線生産者 103.1%(前月100.4%、過去4年平均 89.8%) 銅棒生産者 80.3%(83.3%、78.9%) 銅板生産者 64.8%(68.3%、72.2%) 銅管生産者 82.7%(84.4%、75.4%)
・3月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 87.2%(78.3%、90.3%) 中規模事業者 73.2%(72.1%) 小規模事業者 73.1%(42.9%)
・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。
・1-4月期中国固定資産投資は前年比▲10.3%の13兆6,824億元(1-3月期▲16.1%の8兆4,145億元)とマイナス幅が縮小。
公的部門は▲6.9%(▲12.8%)、民間部門とも▲13.3%(▲18.8%)マイナス幅を縮小。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要はマイナス=価格の下落要因)。
・1-4月期中国不動産開発投資は前年比▲3.3%の3兆3,103億元(1-3月期▲7.7%の2兆1,963億元)とマイナス幅を縮小。
ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・3月の中国の銅輸入は前年比+13.3%の44万トン(1-2月期85万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+0.5%の178万トン(377万トン)となった。
銅地金の輸入は過去5年平均程度であるが、米中通商戦争が激化を始めた昨年に比べると高い水準。銅鉱石の輸入は、過去5年の最高水準だった昨年の水準を上回った。
いずれも中国の工業活動が平常状態に戻りつつあることを確認する内容であり、価格の上昇要因。
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
<<特殊要因>>
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。
・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)
<<投機・投資要因>>
・5月15日付のLMEロング・ショートポジションは、商品ごとに動きがまちまちとなった。
銅・ニッケルはロングが減少、ショートが増加、米中対立への懸念や南米生産者の稼働再開報道が材料となった模様。
亜鉛はロング・ショートとも減少しているが、ショートの減少が顕著。TCの低下にみられるように鉱石供給が低迷しており、製錬品供給への懸念が強まっているとみられる。
鉛はロングが増加、ショートが減少。中国工場稼働再開と、スクラップ供給懸念が材料。アルミは減産が進んでいないことからショートの積み上がりが大きい。錫のポジションは小動き。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲39.2億ドル(前週▲36.6億ドル)と売り越し幅を小幅に拡大。売り越し額の増加率は+7.2%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,538千トン(前週▲1,459千トン)と売り越し数量を拡大。ネット売り越しの増加率は+5.4%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は小幅に下落、中国鉄鋼製品先物価格も下落した。
全人代を控え、景気刺激への期待が高まっているものの全人代を控えて鉄鋼原料と製品は小動きとなった。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は堅調な推移になると考える。世界的なロックダウン解除の動きや、インドやブラジル、豪州の生産国が、コロナウイルスの影響で軒並み生産や生産目標を引き下げていることが需給バランスをタイト化させるため。
ただし、中国武漢でコロナウイルス感染拡大が再確認されるなど、ワクチンの開発が終了するまでは「ロックダウン解除→ロックダウン→ロックダウン解除...」といった状態が続くと予想されることから、基本はレンジワークである。
しかし、ここにきて米国が中国に対して制裁を強化する方針を示したことで、同国の景況回復に遅れが出ることは必須であり、鉄鉱石価格を押し下げることになるだろう。
また、コロナ問題に対する中国の対応に対して豪政府が不満を表明したことで、中国政府がこれに反発、豪州産の鉄鉱石を購入しない可能性を示唆した。中国全体の需要が減少するわけではなく、ブラジルやインドの鉱石需要が増加するだろうが、豪州産の鉱石価格には下押し圧力が掛かることになるだろう(反対にブラジル鉱石価格は上昇)。
中国河北省の高炉稼働率は5月8日時点で78.6%(前週78.3%)と小幅に上昇した。需要の回復が緩慢な中で、恐らく稼働率は当面、この水準程度で推移することになるだろう。
中国の鉄鋼製品は例年通り季節的な在庫の取り崩しが継続しているが、例年よりも在庫の減少ペースが速い。生産者の供給が十分ではない中、最終需要者の稼働が回復している可能性があることを示唆している。
原料炭は中国の生産活動再開の影響もあり、過去5年の最高水準での推移を続けると考える。
中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年レンジを上抜けしていたが、ここにきて急速に取り崩しが進んでおり、現在は過去5年平均を下回った。
需給環境は徐々にタイト化していると考えられる。バルチック海運指数をみるに石炭輸入は鈍化していたが、今後輸入が加速する可能性がある。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・4月の中国鉄鋼業PMIは45.9(前月42.2)と回復した。主に生産の回復(39.3→53.4)によるところが大きい。
しかし、需要はほとんどが国内向けとみられ(新規受注 38.5→39.9)、輸出向け新規受注は27.8(27.3)と低迷が続いている、
海外のロックダウンが続く中で、国内主導の回復にならざるを得ないが、中国政府も財政的に厳しい部分があり需要が加速するという展開は考え難い。
・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。
・1-4月期中国固定資産投資は前年比▲10.3%の13兆6,824億元(1-3月期▲16.1%の8兆4,145億元)とマイナス幅が縮小。
公的部門は▲6.9%(▲12.8%)、民間部門とも▲13.3%(▲18.8%)マイナス幅を縮小。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要はマイナス=価格の下落要因)。
・1-4月期中国不動産開発投資は前年比▲3.3%の3兆3,103億元(1-3月期▲7.7%の2兆1,963億元)とマイナス幅を縮小。
ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・4月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲0.2%の631万9,000トンと前年比マイナスとなり、季節性に反して前月から減少した。
欧米各国がロックダウンしている影響によるものと考えられ、今後ロックダウンが徐々に解除される中で、緩やかに回復すると期待されるが実際にそうなるかどうかは不透明。
中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲124.2万トンの1,795.8万トン(過去5年平均 1,137.2万トン)と、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが続いている。
ただし、例年よりも取り崩しのペースは早く、鉄鋼生産者の稼働が最終需要家の回復よりも遅れている可能性があることを示唆している。
・4月の中国の鉄鉱石の輸入量は前年比+18.5%の9,571万トンとなり、過去5年レンジを大幅に上抜けした。鉄鋼製品在庫の取り崩しが進んでいること、鉄鉱石の港湾在庫の水準の低さもあって、鉄鉱石輸入の動きが活性化した様子。
鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。
中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲100万トンの1億1,195万トン(過去5年平均1億2,285万トン)、在庫日数は▲0.2日の26.2日(過去5年平均 30.3日)と例年と比較して在庫水準が低い状態は続いている。
鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、一定の鉄鉱石の輸入需要が価格を高止まりさせると考える。
・4月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比+22.3%の3,095万トンと増加し、過去5年レンジを超えた。中国の経済活動の再開を反映したもの。
原料炭の輸入は1-2月に前年比+47.5%の1,516万トンとなったが、3月は前年比▲8.1%の564万トンに落ち込んでいる。
中国の原料炭輸入の主要港である京唐港の石炭港湾在庫は過去5年レンジを上抜け増加していたが、急速に減少している。しかし依然として過去5年レンジを上回る水準を維持しており、輸入需要はさほど旺盛ではないとみられる。
石炭輸入動きを占う上で参考になるバルチック海運指数も再び急減速しており、過去5年レンジをした抜けした。中国の石炭調達意欲がさほど旺盛ではない可能性が高い。
・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
<<特殊要因>>
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。
<<投機・投資要因>>
・特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金価格は上昇した。米国の長期金利がFOMC議事録を受けて小幅に低下したことや、原油価格の上昇に伴う期待インフレ率の低下で実質金利が低下したことから。
銀は、銀金在庫レシオの低下が続いており、金が高値圏を維持する中で割安感からの代替安全資産需要が増加、大幅な上昇に。プラチナも連れ高。
パラジウムは金価格の上昇と、株価の上昇を受けて昨日は主要貴金属セクターの中で最も上昇した。なお、先物市場に上場されていないロジウム価格も上昇しており、工場の稼働が回復している可能性が高いことを示唆している。
【貴金属価格見通し】
金銀は高値圏で推移すると考える。コロナウイルスの感染拡大ペースは鈍化しているものの、コロナウイルスの影響で地政学的リスクも高まるなど、不安要素が多いことが安全資産面で、価格下落で原油の減産が進むとみられ、原油価格が上昇に転じていることは実質金利の低下を通じて価格の上昇要因に。
現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は262ドル(前日比変わらず)。コロナ・OPECショック前の水準(250ドル程度)を取り戻した。
米政権が中国との断交も視野に入れ、華為技術に対する制裁強化を決定するなど、両国の対立懸念が再び強まっている。
なお、現在の実質金利で説明可能な価格水準は、長期金利の上昇もあって1,450~1,480ドル程度に切り下がっている。
※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください。
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では120倍程度が妥当、となっているが実際は110倍程度となっている。
なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。
また、金価格の上昇余地がそろそろ限界では、との見方が強まっていることから割安な大体安全資産として銀が物色される可能性は高い。
プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な色彩が強まっているが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のような安全資産としては認知されていないことによる。
しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになろう。
パラジウムは価格は、景気の先行きが明確に悪く少なくともQ220は景況感の低迷が続く見込みであること、株式市場の混乱も続いているため、工業向け需要低迷がから実需面は価格を下押ししやすい。
その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。
ただ、Norilsk Nickelは2020年のパラジウムの需給見通しを▲20万オンスの供給不足から、+10万オンスの供給過剰に下方修正しており、上限は切り下がったと考えられる。
4月の米自動車販売は年率858万台(市場予想 700万台、前月 1,137万台)と、大幅な悪化となり、例年の半分程度まで落ち込んだ。ただし、市場予想は上回っており市場ほど悲観的な状況ではないようだ。
中国の4月の自動車販売は前年比+4.4%の207万台(前月▲43.3%の143万台)と急回復した。しかし、販売の多くが商用車であり、中国政府による景気テコ入れの成果だったともいえる。
今後、中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻っている訳ではないので、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。
そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・FRBは▲1.5%の緊急利下げ、無制限の量的緩和を決定、その他の中央銀行もこれに追随しており貴金属価格の上昇要因に。
ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、
<<特殊要因>>
・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。
・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。
・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。
・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。
・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。
・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
<<投機・投資要因>>
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが277,771枚(前週比 +2,200枚)、ショートが34,943枚(+9,376枚)、ネットロングは242,828枚(▲7,176枚)、銀が44,757枚(+705枚)、ショートが18,984枚(▲2,153枚)、ネットロングは25,773枚(+2,858枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが28,253枚(前週比 ▲386枚)ショートが10,098枚(▲295枚)、ネットロングは18,155枚(▲91枚)
パラジウムが2,156枚(▲100枚)、ショートが1,766枚(+175枚)ネットロングは390枚(▲275枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物市場はトウモロコシが小幅下落、大豆が上昇、小麦が大幅に上昇した。
トウモロコシは米石油統計でのエタノール生産増加・在庫減少を受けて上昇したが、テクニカルな売りに押された。
大豆はパーム油や大豆油などの食用油価格の回復を受けて圧搾需要が増加する、とみられたことが価格を押し上げている。
小麦は作付けの遅れと冬小麦の作柄の悪化が材料視されている。クロップツアーでっは、カンザスの北西部の単収が51.7Bu/エーカー、北中部が41.1Bu/エーカーと干ばつの影響を受けて供給への懸念が意識されていることが材料。
ネブラスカ州の冬小麦の単収は50.8Bu/エーカー(57.0Bu/エーカー)、コロラド州も32.5(49.0)と悪化が見込まれている。
【穀物価格見通し】
トウモロコシ価格は米国のロックダウン解除の動きが進む見通しであり、ガソリン向け需要の段階的な回復が期待されること、採算が悪化したエタノールの生産調整も進むとみられることから、徐々に水準を切り上げると考える。
ロックダウン解除に伴う精肉工場の再稼働期待から、飼料向け需要も回復するとみられることも価格を押し上げよう。
ただし、ロックダウンが解除されても直ちに元の状態に戻るとは考えにくく、エタノール向け需要はやはり限定されることから上昇余地も限定される見込み。
大豆は国内の飼料向け需要の増加が予想されるが、米中対立の再燃による米国産大豆の輸出減速が予想されることから、上昇余地は限定されると考える。
小麦は北米の冬小麦の作柄が悪化していること、トウモロコシに連れ高を見込むが、やはり例年通り最終的には供給は帳尻が合うと予想されるため上昇余地も限定。
懸念すべきは東アフリカ・中東地域でサバクトビバッタが激増、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている
また、コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家が増えており、この作付けの遅れも価格を押し上げるだろう。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気だ。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)
・5月の米需給報告の生産見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 159億9,500万Bu(157億4,860万Bu、136億9,200万Bu)大豆 41億2,500万Bu(41億3,992万Bu、35億5,800万Bu)小麦 18億6,600万Bu(18億4,765万Bu、19億2,000万Bu)
・5月の米需給報告の在庫見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 20億9,800万Bu(22億7,792万Bu、24億4,500万Bu)大豆 40億5,000万Bu(43億2,240万Bu、48億万Bu)小麦 9億900万Bu(8億2,408万Bu、9億7,000万Bu)
・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)
<<特殊要因>>
・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。
・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
<<投機・投資要因>>
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが210,833枚(前週比 ▲2,913枚)、ショートが388,404枚(+21,568枚)ネットロングは▲177,571枚(▲24,481枚)
大豆はロングが188,262枚(+15,126枚)、ショートが85,035枚(▲5,318枚)ネットロングは103,227枚(+20,444枚)
小麦はロングが101,924枚(▲2,528枚)、ショートが97,138枚(+3,389枚)ネットロングは4,786枚(▲5,917枚)
◆本日のMRA's Eye
「銅価格の反発も期待先行か~米中対立再燃で上値重く」
銅価格は上昇を続け、3月末の危機的な状況(ドルが調達できないためにドル建て資産に換金売りが殺到し、LME銅価格にも下押し圧力が強まった)を脱し、昨日は大幅な上昇となった。
価格が上昇するためには、1.需要の回復、2.生産調整、3.ファイナンシャルに売られ過ぎた状態の解消(買戻し)、1~3のがすべて重なる、といったことが起きる必要があるのは、このコラムで繰り返し指摘させていただいている通り。
1.に関しては、中国のコロナウイルス感染拡大が収束したことで製造業の稼働が回復が確認されている。製造業PMIの内数である生産指数は54.1と、2018年5月以来の高水準となっている。ただ、「前月と比較した場合の商況のヒアリング結果」であるためこの実績は多少割り引く必要がある。
また、現物需給の指標である現物プレミアムは今年の1月に底入れした後、上海では上昇に転じている。
しかし、実際に価格が上昇を始めるのはまだ先になるかもしれない。6ヵ月先の景気に連動する指標を集計して算出されるOECD景気先行指標を参考にすると中国の先行指標は回復基調にあるものの、プレ・コロナの水準を回復するに至っていない。つまり、10月時点でまだ景況感が回復していない可能性が高いことを示唆している。
しかしそうであっても、製造業の生産活動は、ロックダウン時から劇的に回復していると考えるべきだろう。
2.については特に南米での減産が顕著であり、世界全体で見た時にコロナの影響で生産に何らかの影響が出ている鉱山生産は▲88万9,000トンに上る。
その他のスクラップや定修の影響を加味すると、全体で▲1,456千トン程度の生産能力に影響が出ていることになる。この影響は小さくない。
このように需要面・供給面とも需給タイト化に寄与する状況になってはいるが、銅市場の需給が供給不足に転じるには至っていないと考えられる。
過去、このコラムでも分析に用いたが、需給バランスの前年比は価格の上昇率に対する説明力が高いが、今年の年末にかけて供給過剰幅が大幅に拡大する見通しとなっている。
このことは過去の例(2013年~2016年)を参考にすると、銅価格は前年比▲20%程度(4,800ドル程度)で推移してもおかしくないことを示唆している。ただ、価格の低下に伴う生産調整がまだ進捗すると見られ、この供給過剰幅を縮小させることが予想されるため実際にはもう少し高い水準での推移になると予想される。
ただし、2021年以降は顕著な供給不足になると予想されること、かつ、環境金属(電気自動車など、家電化の進捗)としての銅需要は増加することが予想されるため、今後中期的な銅価格上昇リスクは充分に警戒する必要があろう。
もう少し短期的な視点に立つと、LME指定倉庫在庫の水準と銅価格の間には高い逆相関の関係がみられており、そのときの「コロナの感染拡大状況」と在庫水準の組み合わせで価格レンジが決定されると考えている。
1.は何もない平常の状態(5,600ドル~)、2.がロックダウンが解除された状態(終息ではなく収束 5,300~5,600ドル)、3.が部分的なロックダウン解除(4,900~5,300ドル)、4.が決済や信用危機が意識された場合(~4,800ドル)、と、4つのステージに分類される(前回分析からメッシュを1つ増やし、4.のエリアを追加した)。
現在は2.のエリアにあるが、やや期待先行であること、欧米がロックダウンを解除しても、中国が再びロックダウンとなる可能性もあることから、早晩、3.のレンジに戻るものとみている。
仮に6月に再び四半期決算が意識された場合、4.のシステマティックリスクが顕在化した状態に陥る可能性はある。ただ、FRBや各国中央銀行の連携によってドル資金の融通はかなり緩和してきており、そのリスクは小さいと考えている。
恐らく、時間経過とともに2.が定着すると予想される。これは、コロナウイルスの影響で世界的に需要が減少しているが、徐々に回復すると期待されること、密な環境になりやすい鉱山の生産が減産を余儀なくされており、かつ、スクラップ供給の減少から需給がタイト化しており、生産再開が即時にできるわけではないこと、が理由である。
◆主要ニュース
・3月日本機械受注総額 前月比 +3.0%の2兆2,890億円(前月▲6.9%の2兆2,218億円)、前年比+0.9%(▲7.7%)
船舶電力を除く民需 前月比▲0.4%の8,547億円(+2.3%の8,585億円)、前年比▲0.7%(▲2.4%)
・4月日本東京マンション販売 前年比▲51.7%の686戸(前月▲35.8%の2,142戸)
・4月日本コンビニエンスストア売上高 前年比▲10.6%(前月▲5.8%)
・3月ユーロ圏経常収支季節調整済 274億ユーロの黒字(前月378億ユーロの黒字)
・4月ユーロ圏消費者物価指数 前月比+0.3%(前月+0.5%)前年比+0.3%(+0.7%)、コア指数 +0.9%(+1.0%)
・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲2.6%(前週+0.3%)
購入指数+6.4%(+10.6%)
借換指数▲6.3%(▲3.3%)
固定金利30年 3.41%(3.43%)、15年 2.88%(2.92%)
・FOMC議事録、「パンデミックによる影響は中期的に経済活動に対して尋常でない不確実性と顕著なリスクを生み出した。経済の下支えに向け、あらゆる手段の活用にコミットすることで一致。利上げを検討するに際しては、一定水準の失業率やインフレ率を達成する必要がある。マイナス金利に関しては議論せず。」
・米トランプ大統領、「中国の無能さが世界中で大量殺戮を起こした。」
・独仏、新型ウイルスの影響に対する支援として、5,000憶ユーロの復興基金の創設を提案、貸付ではなく、供与の形で各国に配分。
・米財務省、イランのマハン航空の代理店業務をしているとして、中国の上海に拠点を置く1社を制裁対象に追加。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲5.0MB(クッシング▲5.6MB)
ガソリン+2.8MB
ディスティレート+3.8MB
稼働率+1.5
原油・石油製品輸出 7,732KBD(前週比▲277KBD)
原油輸出 3,403KBD(+87KBD)
ガソリン輸出 464KBD(▲135KBD)
ディスティレート輸出 983KBD(+13KBD)
レジデュアル輸出 145KBD(+12KBD)
プロパン・プロピレン輸出 892KBD(▲78KBD)
その他石油製品輸出 1,735KBD(▲172KBD)
・米政府、イランのラマハニファズリ内相が、内務省の法的秩序警備軍に武力行使を認めたことにより、少なくとも23人の未成年を含むデモ参加者が殺害されたと、武力行使にかかわた法秩序警備軍首脳部7人と同軍が経済する組織と幹部を制裁対象に追加。
・イラン ハメネイ師、「ヨルダン川西岸地区もガザ地区と同様、武装化すべきである。パレスチナ人が経験している困難を軽減できる唯一のものは力である。譲歩してもこの強奪者の邪悪な、狼ににた構造の残忍さは少しも軽減されない。」
・パレスチナ アッバス大統領、イスラエルとの通信停止を指示、米国・イスラエルとのあらゆる合意を破棄。
【メタル】
・IAI 4月アルミ生産
世界 5,255千トン(前月5,464千トン)
日量 175.2千トン(176.3千トン)
北米 333千トン(342千トン)
南米 71千トン(91千トン)
西欧州 277千トン(287千トン)
東・中央欧州 342千トン(354千トン)
中東 483千トン(499千トン)
アジア 333千トン(348千トン)
中国 2,978千トン(3,095千トン)
オセアニア 155千トン(160千トン)
アフリカ 133千トン(138千トン)
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.欧州排出権 ( 排出権 )/ +6.48%/ ▲13.58%
2.TCMガソリン ( エネルギー )/ +5.17%/ ▲48.48%
3.TCM灯油 ( エネルギー )/ +4.52%/ ▲48.93%
4.DME Oman ( エネルギー )/ +3.97%/ ▲44.90%
5.パラジウム ( 貴金属 )/ +3.82%/ +8.00%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲4.42%/ ▲18.18%
69.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.49%/ ▲65.30%
68.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.22%/ ▲19.10%
67.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ ▲2.19%/ +28.55%
66.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲1.67%/ ▲15.70%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :24,575.90(+369.04)
S&P500 :2,971.61(+48.67)
日経平均株価 :20,595.15(+161.70)
ドル円 :107.53(▲0.18)
ユーロ円 :118.07(+0.42)
米10年債 :0.68(▲0.01)
中国10年債利回り :2.67(▲0.06)
日本10年債利回り :0.01(±0.0)
独10年債利回り :▲0.47(▲0.01)
ビットコイン :9,588.55(▲101.69)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :40.90(▲2.06)
エネルギー :91.48(▲7.88)
ベースメタル :18.60(▲1.95)
貴金属 :26.21(+0.8)
穀物 :24.58(▲0.15)
その他農畜産品 :36.38(▲0.83)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :174.60(▲25.27)
Brent :83.61(▲0.44)
米天然ガス :72.31(▲2.17)
米ガソリン :76.76(▲26.87)
ICEガスオイル :110.29(▲0.58)
LME銅 :17.85(▲4.46)
LMEアルミニウム :10.99(+0.11)
金 :14.82(+0.01)
プラチナ :23.46(+2.51)
トウモロコシ :18.81(▲1.98)
大豆 :14.82(+0.01)
【エネルギー】
WTI :33.49(+0.99)
Brent :35.75(+1.10)
Oman :37.15(+1.42)
米ガソリン :104.38(▲0.14)
米灯油 :99.06(+1.70)
ICEガスオイル :299.50(+9.25)
米天然ガス :1.77(▲0.06)
英天然ガス :10.78(▲0.39)
【貴金属】
金 :1748.18(+3.13)
銀 :17.56(+0.21)
プラチナ :867.14(+30.52)
パラジウム :2101.25(+77.37)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,361(+17:27.5C)
亜鉛 :2,016(▲1:5B)
鉛 :1,680(+24:16.5C)
アルミニウム :1,487(▲12:32.5C)
ニッケル :12,408(+59:73C)
錫 :15,336(+111:147B)
コバルト :29,696(▲6)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5445.50(+92.50)
亜鉛 :2044.50(+15.50)
鉛 :1694.00(+13.00)
アルミニウム :1515.00(+26.50)
ニッケル :12710.00(+230.00)
錫 :15465.00(+45.00)
バルチック海運指数 :453.00(+26.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :96.49(+1.15)
SGX鉄鉱石 :92.49(±0.0)
NYMEX鉄鉱石 :91.13(+0.48)
NYMEX原料炭スワップ先物 :112.79(▲0.07)
上海鉄筋直近限月 :3,530(▲22)
上海鉄筋中心限月 :3,539(▲18)
米鉄スクラップ :330(▲7.00)
【農産物】
大豆 :846.75(+4.25)
シカゴ大豆ミール :285.50(+0.90)
シカゴ大豆油 :27.36(+0.27)
マレーシア パーム油 :2218.00(▲12.00)
シカゴ とうもろこし :319.50(▲1.75)
シカゴ小麦 :513.75(+15.00)
シンガポールゴム :135.50(+0.50)
上海ゴム :10180.00(+55.00)
砂糖 :11.19(+0.34)
アラビカ :105.65(▲1.40)
ロブスタ :1154.00(▲3.00)
綿花 :58.21(▲0.99)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :56.88(+0.23)
シカゴ生牛 :98.40(▲0.38)
シカゴ飼育牛 :126.00(▲1.43)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。