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ワクチン開発進捗期待で総じて上昇
  • MRA商品市場レポート

2020年5月19日 第1747号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ワクチン開発進捗期待で総じて上昇」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:原油価格は続伸。欧米のロックダウン解除進捗観測と、米国のワクチン開発進捗期待が価格を押し上げた。

需給バランスの改善観測が強まっているが、この数日、連騰しているため、本日はいったん調整売りに押されると予想。

◆非鉄金属:LME非鉄金属価格は大幅に上昇。ロックダウン解除の動きや米国のワクチン開発で良好な結果が得られたことが価格を押し上げた。

ロックダウン解除は消費国ではなく生産国でも始まること、昨日の価格上昇が顕著だったことから一旦調整売りに押されると予想。

◆鉄鋼原料:上昇。世界的な景気の回復期待で鉄鋼製品価格が上昇、それにつれる形で鉄鋼原料価格も上昇。

鉄鉱石在庫の減少は続いており、鉄鋼原料価格は高止まりするが、鉄鋼製品価格は米中対立激化観測から下落へ。

◆貴金属:金は株価上昇を受けた長期金利の上昇で、実質金利が上昇したことが価格を下押し。銀は在庫レシオの低下で上昇、プラチナは連れ高。パラジウムは株高で上昇。

株価上昇を受けた長期金利の上昇を受けて、金価格は低下。その他の金属は銀が金銀レシオの低下から上昇、パラジウムは株高で上昇の見込み。

◆穀物:トウモロコシと大豆が上昇、小麦は下落。原油価格の上昇を受けて、トウモロコシ・大豆が押し上げられた。

原油価格の上昇を受けてトウモロコシ価格が上昇するため、大豆も上昇するとみる。小麦は続落か。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、ココアや綿花、畜産品の一角が下落したが、総じて買い戻しが優勢となり水準を切り上げる展開となった。最も上昇したのがエネルギーセクター。

欧米のロックダウン解除の動きが始まっていることによる需給バランスのタイト化観測や、米国のコロナウイルスのワクチン開発で良好な結果が得られたことから経済活動が不連続に再開する(集団免疫の自然な獲得には時間がかかるが、ワクチン接種が可能になればその時間が早まる)可能性が意識されたことで、期待先行のファイナンシャルな買いが価格を押し上げたため。

ただし、コロナ問題が落ち着けば米中の通商対立が激化する可能性は極めて高く、かつ、コロナ問題も本当に解決するかどうかは不透明であるため、上昇余地も限定された。

WHOは台湾の総会へのオブザーバー参加を拒否する一方、習近平国家主席は総会で発言し、中国のWHOに対する20億ドルの拠出を表明した。これにより、同国のWHO支配がより強まり、公衆衛生面での国際的な発言権が増すことが予想される。

また、あまりニュースになっていないが、国際連合食糧農業機関の事務局長も中国から選出されており、今後、コロナを巡る問題で同時に噴出するとみられる食糧問題に関しても、中国の関与が高まることは欧米との対立要因となる(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)。

※月次の世界商品需給と期間構造
https://marketrisk.jp/category/news-contents/contents/fundamentals

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【本日の見通し総括】

本日もコロナ問題が解決に向けて進捗するとの期待から、景気循環系商品を中心に買戻しが入るものと考えられる。しかし、ワクチン開発進捗期待に伴う株価上昇を受けたファイナンシャルな買いの側面も否めず、さらに上昇するかどうかはまだ微妙な情勢。

本日予定されているイベントや統計で注目は、米ムニューシン財務長官とFRBパウエル議長の上院での議会証言。景気刺激策に関して何らかの発言があるかに注目。

統計では、先行指標という意味では独ZEW期待指数(市場予想 30.0、前月28.2)に注目しているが、小幅な改善が予想されており緩やかに景気循環銘柄価格を押し上げるだろう。

【昨日のトピックス】

昨日発表された日本のQ120GDP1次速報は前期比▲0.9%(前期▲1.9%)、前期比年率▲3.4%(▲7.3%)と、市場予想(各々▲1.1%、▲4.5%)を上回る内容となったが、2四半期連続の前期比マイナスとなり統計の上ではリセッション入りした。

言わずもがなであるが、コロナウイルスの影響拡大に伴うロックダウンの動きが、世界的に広がったことが影響したためだ。

項目別でGDPへの寄与を見ると、最もGDPにマイナスに作用したのが輸出(GDP寄与度▲1.1%)であり、次いで個人消費(▲0.4%)、民間住宅(▲0.2%)、企業設備投資(▲0.1%)となった。総じて消費税上げの影響による前期の落ち込みから回復基調にあったものの、コロナウイルスの影響拡大がこれを完全に相殺した形。

個人消費は前期比で▲0.7%の減速となったが、内訳を見ると、耐久財が+1.6%、半耐久財(耐久年数が1年未満のもの。衣類や靴、バッグなど)が▲5.7%、非耐久財(使用回数が少なく、使用期間も短いもの。飲料や食品、洗剤、化粧品など)が+1.1%、サービスが▲2.3%となった。

耐久財の回復は明らかに前期の消費税上げ後の大幅減速に伴う反動によるもの。半耐久財は外出需要の減少から衣類の販売が落ち込んだことが影響したと見られる。非耐久財の回復は外出需要の減少で、食品などの巣籠需要が増加したことが影響したようだ。

しかし、個人消費71兆円のうち、サービスの額は43兆円と極めて大きく、コロナの影響からの完全脱却が見える将来で見通せないことから当面、個人消費は低迷すると考えるべきである。

企業の設備投資も、前期比▲0.5%と前期の▲4.8%からはマイナス幅が縮小したが、依然として投資環境の厳しさを反映している。省力化投資の一巡や、コロナ問題の拡大に伴い設備投資計画を策定できない企業が増えているためと考えられる。

公共投資(公的資本形成)は前期比▲0.4%の7.5兆円と減速。やはり人手の確保が難しかったと考えられるが、今後、支持率回復のために政府も大盤振る舞いをする可能性があり、景気の押し上げ寄与が期待されるが、今までのようなインフラではなく、期せずして明らかになったITや医療分野への投資が進むのではないだろうか。

なお、Q220はフルでロックダウンの影響を受けることから、弊社の試算では前期比年率で▲20%~▲25%に減速すると予想される。

昨日、中国はWHOに対して20億ドルの供出を表明した。米国がWHOから資金を引き上げたのを好機として大規模な資金拠出を決定した。

WHOのトップはエチオピア出身のテドロス氏であり、中国人ではないため、資金面でWHOを掌握することが目的だろう。

資金拠出がなかったとしても、テドロス事務局長の出身国であるエチピアの政府債務はGDPの6割に達しており、そのうちの大半が中国からの拠出によるものである。

実質的に中国の支援がなければエチオピア経済は立ち行かないため、現状でもテドロス氏は中国政府の影響を強く受けているといっても言い過ぎではなかろう。

また、あまり報道されていないが昨年、国際連合食糧農業機関の事務局長に中国から屈冬玉氏が選出されており、世界の食糧問題に関しても中国が強い影響力を持つことになる。

仮にWHO、FAOとも中国の支配力が強まれば、世界の公衆衛生・食糧問題両面で中国の支配力が増すことになり、特にアフリカをはじめとする新興諸国への影響が増すことになる。

これに欧米諸国が反発するのは必至であり、国際機関の形骸化や中国と欧米諸国の対立激化が経済に大きな影響を与えるリスクがあるとみている。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。

中国の製造業PMIは小幅な悪化、非製造業PMIは小幅な改善となった。国内の消費活動が回復している一方、輸出向けの需要は欧米ロックダウンの影響で低迷していることが影響したと見られる。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(+3.3%→▲3.0%)ている。ただし2021年には+5.8%への急回復を見込んでいる。

ただこの通りになるためには、コロナウイルス感染拡大終息が必要条件であり、第二次感染拡大となり得る冬場までの終息がなければ、それは難しかろう。

・FRBは合計で▲150bpの緊急利下げと、ドル需要ひっ迫の状況を緩和するための無制限の量的緩和も実施、債券買い入れもジャンク債も対象とするなど、打てる手は出し惜しみなく出しているため、徐々に不安は解消しよう。

ただし、持てる金融政策のカードをほとんど切ってしまったため、今後、不測の事態が発生した場合のリスクは小さくない。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・中国の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた、世界的な経済活動の鈍化長期化。

感染拡大ペース鈍化を受けて経済活動を再開させる動きが強まっているが、このウイルスは未知の部分が多く、再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、サプライチェーンの在り方も見直される可能性があり、「ポスト・コロナ」後の商流を大きく変質させる可能性も(景気循環系商品価格の下落要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。

・コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は続伸した。ロックダウン解除の動きに加え、米モデルナが開発中のワクチン候補の林松試験で有望な結果が得られたことが、需要回復期待を強めた。また、生産者の減産も続くとみられていることも価格を押し上げた。

【原油価格見通し】

原油価格は価格下落に伴う生産調整が進捗していること、感染拡大ペースが鈍化し、欧米で経済封鎖解除の動きが段階的に進むとみられること、ワクチン開発進捗への期待先行から、価格の下値を切り上げる展開になると予想する。

ただし、コロナウイルスの感染拡大はまだ続いており、ロックダウンが全面的に解除されるわけではないこと、中国武漢では感染拡大第二波が確認されていることから需要の回復ペースは緩慢であり、上昇余地も限定されると考える。

結局、ロックダウン解除と再開を繰り返しながら、「コロナへの対応の仕方」や「医療体制の整備進捗」を受けて下値余地が徐々に限定され始め、生産調整の進捗と相まって、緩やかに価格は水準を切り上げると予想される。

一時、マイナス価格でやり取りされたWTIであるが、5月13日の統計ではクッシング在庫の減少が確認されたため、以前ほどマイナス価格でやり取りされる可能性は低下した。しかしそれでも貯蔵能力には限界があるため、再びマイナス価格となる可能性は排除できない。

米国の原油先物の受け渡しポイントは内陸のクッシングであり、輸出が容易な湾岸地区(例えばヒューストンなど)と異なり在庫の調整が行いにくい。米国は最大の産油国であると同時に、最大の消費国であるため、需要減速時の需給調整に時間がかかる。

欧州や中東は自国消費があまりなく、輸出を前提としてインフラが整備されているためこのようないことが起きにくい。

ただし、米国も減産を進めたため現在の受け渡しポイントであるクッシングの週間在庫の水準は6,244万バレル(除輸送中の原油)となり、貯蔵施設の利用率は79.3%(前週83.3%)と低下している。同時に戦略備蓄基地への在庫搬入も進んでいる。

米シェールオイルの生産者のコストは平均で45ドル近辺(30ドル~55ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度。現在の価格水準では利益を確保できない生産者が多く、減産は時間はかかるが進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末あたりではないだろうか。

特に6月は主要シェール企業の債務償還が多いため、6月危機のリスクはまだ過ぎ去っていない。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

すでに全ての産油国が追加減産を余儀なくされる見込みであるが、実際に減産を行うと稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

逆に、コロナウイルスの感染拡大防止に失敗し、「今年の冬に第二ラウンドに突入」となると需要の回復は難しく、かつ、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

さらに影響がよく分からないのが、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点。これによって株が急騰する可能性はあり、その場合エネルギーセクターにもリバランスの買いが入るため、投機的な観点から価格を押し上げる。現在、これが顕在化しつつある状況。

株価の急騰は再び実態経済と、株価の顕著な乖離をもたらすため、その後のリスク資産価格を乱高下させる要因となるため要注意だ。

逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことはリスクといえる。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきだろう。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇した。目立った個別材料に乏しい中、過去5年の最低水準での推移が続いている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで価格が下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。水準は低いが、小じっかり、ということだ。

4月の中国石炭輸入は3,095万トン(前月2,783万トン)と過去5年の同じ時期の最高水準を大きく上回っている。経済活動の再開と、季節的な在庫の積み増しの動きによるものと考えられるが、欧米の経済活動の回復の遅れや、中国国内の回復も順調とは言えないことから、早晩減速すると見る。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲3割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-3月期中国工業生産は前年比▲8.4%(1-2月期▲13.5%)と回復。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(フロー需要の減少=価格の下落要因)。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化が、中東情勢を悪化させ供給リスクにつながる場合。

・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。

<<投機・投資要因>>・WTI・Brentともロングが減少、ショートも減少した。米中対立への懸念がロングを減少させたが、生産調整進捗期待でショートの解消、特に米国原油のショート解消が大きかった。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが709,557枚(前週比 ▲13,355枚)ショートが168,538枚(▲23,762枚)ネットロングは541,019枚(+10,407枚)

Brentはロングが225,714枚(前週比▲24,195枚)ショートが69,638枚(▲3,329枚)ネットロングは156,076枚(▲20,866枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME市場は大幅に上昇した。欧米のロックダウン解除、米企業のコロナウイルスのワクチン開発で良好な知見結果が得られたことが期待先行の買戻しを誘発した。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は再び上昇余地を試す動きになると考える。欧米のロックダウン解除観測が需要面で価格を押し上げるほか、米ワクチン開発の進捗期待が金融面で価格を押し上げるため。

ただし、中国で再び感染拡大が確認され、移動制限が一部行われていること、ロックダウン解除の動きで鉱山生産も回復が見込まれることから上昇余地も限定されると考える。

また、米国が中国華為技術に対する制裁強化を決定したことで、同国の経済活動の停滞する可能性が高いことも上昇余地を限定するだろう。

しかし、ワクチンが完成するまでは結局のところ、ロックダウン解除と再開を繰り返しながら、「コロナへの対応の仕方」や「医療体制の整備進捗」を受けて下値余地が徐々に限定され始め、緩やかに価格は水準を切り上げる、という展開になるだろう。

基本的に戻りは緩やかなものになると見ているものの、稼働停止となっている鉱山の稼働が速やかに再開されるのか不明であり、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点も先々の価格上昇リスクを強めている。

逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクだろう。コロナウイルスの影響が長期化する可能性は徐々に高まっている。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・4月中国製造業PMIは50.8(前月52.0)と減速した。新規受注は国内を中心に回復しているとみられるが、欧米のロックダウンの影響で輸出需要が低迷(輸出新規受注46.4→33.5と急減速)した。

新規受注在庫レシオは前月急回復したが、今月は低下。やはり3月の同指数はエラー値だったとして処理するのが適切だろう。

・金属にもよるが、主要生産者がコロナウイルスの影響による生産調整に動いており、供給面で価格を押し上げ(労働力が集まらない、業績悪化に伴う設備投資の減額、採算性悪化に伴う減産など、理由は様々)

(アルミ)Norsk Hydro Husnesアルミプラントの増産をQ320まで先送りアルゼンチン Aluar Puetro Madrynでの生産能力の▲50%を停止

(銅)南米の鉱山生産者(供給の約2割)は需要減と感染拡大防止のため、稼働率の引き下げを余儀なくされている状況Cerro Verde、Los Bronces、Constancia、Las Bambas、Collahuasi、Antaminaなど

(錫)PT Timah、需要の減少で当面錫生産を▲20%~▲30%減らす計画

(亜鉛)NewmontのPenasquito、Pan American SilverのLa Colorada、Grupo MexicoのBuenavistaとSan Martinなどが減産を決定

・4月中国銅製品生産者稼働状況

 銅線生産者 80.0%(前月75.8%、過去4年平均 86.2%) 銅棒生産者 64.4%(59.4%、77.4%) 銅板生産者 70.6%(73.1%、74.0%) 銅管生産者 86.7%(75.7%、87.2%)

・3月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 87.2%(78.3%、90.3%) 中規模事業者 73.2%(72.1%) 小規模事業者 73.1%(42.9%)

・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

・1-4月期中国固定資産投資は前年比▲10.3%の13兆6,824億元(1-3月期▲16.1%の8兆4,145億元)とマイナス幅が縮小。

 公的部門は▲6.9%(▲12.8%)、民間部門とも▲13.3%(▲18.8%)マイナス幅を縮小。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要はマイナス=価格の下落要因)。

・1-4月期中国不動産開発投資は前年比▲3.3%の3兆3,103億元(1-3月期▲7.7%の2兆1,963億元)とマイナス幅を縮小。

ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・3月の中国の銅輸入は前年比+13.3%の44万トン(1-2月期85万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+0.5%の178万トン(377万トン)となった。

銅地金の輸入は過去5年平均程度であるが、米中通商戦争が激化を始めた昨年に比べると高い水準。銅鉱石の輸入は、過去5年の最高水準だった昨年の水準を上回った。

いずれも中国の工業活動が平常状態に戻りつつあることを確認する内容であり、価格の上昇要因。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・5月8日付のLMEロング・ショートポジションは、商品ごとに動きがまちまちとなった。

銅はロングが増加、ショートが減少し強気のポジション取りが続く。

亜鉛はロング・ショートとも減少。鉱山供給の減少でショートの買戻しが顕著。錫もロング・ショートとも減少しているがどちらかといえばポジション手仕舞の動きか。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲36.6億ドル(前週▲36.8億ドル)と売り越し幅を小幅に縮小。売り越し額の減少率は▲0.5%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,459千トン(前週▲1,452千トン)と売り越し数量を拡大。ネット売り越しの増加率は+0.5%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は小幅上昇、中国鉄鋼製品先物価格は大幅に上昇した。

鉄鉱石在庫の港湾在庫の減少は続いており、ブラジルからの供給懸念もくすぶる中、鉄鋼原料価格は上昇。鉄鋼製品価格は欧米のロックダウン解除や、米国のワクチン開発進捗観測を受けて上昇した。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は堅調な推移になると考える。世界的なロックダウン解除の動きや、インドやブラジルなどの生産国が、コロナウイルスの影響で軒並み生産や生産目標を引き下げていることが需給バランスをタイト化させるため。

ただし、中国武漢でコロナウイルス感染拡大が再確認されるなど、ワクチンの開発が終了するまでは「ロックダウン解除→ロックダウン→ロックダウン解除...」といった状態が続くと予想されることから、基本はレンジワークである。

しかし、ここにきて米国が中国に対して制裁を強化する方針を示したことで、同国の景況回復に遅れが出ることは必須であり、鉄鉱石価格を押し下げることになるだろう。

中国河北省の高炉稼働率は5月8日時点で78.6%(前週78.3%)と小幅に上昇した。需要の回復が緩慢な中で、恐らく稼働率は当面、この水準程度で推移することになるだろう。

中国の鉄鋼製品は例年通り季節的な在庫の取り崩しが継続しているが、例年よりも在庫の減少ペースが速い。生産者の供給が十分ではない中、最終需要者の稼働が回復している可能性があることを示唆している。

原料炭は中国の生産活動再開の影響もあり、過去5年の最高水準での推移を続けると考える。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年レンジを上抜けしていたが、ここにきて急速に取り崩しが進んでおり、需給環境は徐々にタイト化していると考えられる。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・4月の中国鉄鋼業PMIは45.9(前月42.2)と回復した。主に生産の回復(39.3→53.4)によるところが大きい。

しかし、需要はほとんどが国内向けとみられ(新規受注 38.5→39.9)、輸出向け新規受注は27.8(27.3)と低迷が続いている、

海外のロックダウンが続く中で、国内主導の回復にならざるを得ないが、中国政府も財政的に厳しい部分があり需要が加速するという展開は考え難い。

・1-4月期中国工業生産は前年比▲4.9%(1-3月期▲8.4%)とマイナス幅が縮小、月次ベースでは+3.9%(前月▲1.1%)と前年比プラスにまで回復(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

・1-4月期中国固定資産投資は前年比▲10.3%の13兆6,824億元(1-3月期▲16.1%の8兆4,145億元)とマイナス幅が縮小。

 公的部門は▲6.9%(▲12.8%)、民間部門とも▲13.3%(▲18.8%)マイナス幅を縮小。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要はマイナス=価格の下落要因)。

・1-4月期中国不動産開発投資は前年比▲3.3%の3兆3,103億元(1-3月期▲7.7%の2兆1,963億元)とマイナス幅を縮小。

ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・4月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲0.2%の631万9,000トンと前年比マイナスとなり、季節性に反して前月から減少した。

欧米各国がロックダウンしている影響によるものと考えられ、今後ロックダウンが徐々に解除される中で、緩やかに回復すると期待されるが実際にそうなるかどうかは不透明。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲124.2万トンの1,795.8万トン(過去5年平均 1,137.2万トン)と、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが続いている。

ただし、例年よりも取り崩しのペースは早く、鉄鋼生産者の稼働が最終需要家の回復よりも遅れている可能性があることを示唆している。

・4月の中国の鉄鉱石の輸入量は前年比+18.5%の9,571万トンとなり、過去5年レンジを大幅に上抜けした。鉄鋼製品在庫の取り崩しが進んでいること、鉄鉱石の港湾在庫の水準の低さもあって、鉄鉱石輸入の動きが活性化した様子。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲100万トンの1億1,195万トン(過去5年平均1億2,285万トン)、在庫日数は▲0.2日の26.2日(過去5年平均 30.3日)と例年と比較して在庫水準が低い状態は続いている。

鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、一定の鉄鉱石の輸入需要が価格を高止まりさせると考える。

・4月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比+22.3%の3,095万トンと増加し、過去5年レンジを超えた。中国の経済活動の再開を反映したもの。

原料炭の輸入は1-2月に前年比+47.5%の1,516万トンとなったが、3月は前年比▲8.1%の564万トンに落ち込んでいる。

中国の原料炭輸入の主要港である京唐港の石炭港湾在庫は過去5年レンジを上抜け増加していたが、急速に減少している。しかし依然として過去5年レンジを上回る水準を維持しており、輸入需要はさほど旺盛ではないとみられる。

石炭輸入動きを占う上で参考になるバルチック海運指数も再び急減速しており、過去5年レンジをした抜けした。中国の石炭調達意欲がさほど旺盛ではない可能性が高い。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は下落した。取引序盤は上昇したが、米ワクチン開発の進捗期待を受けた株高や、実質金利の上昇が価格を下押しした。

銀は金価格が下落したものの大幅な上昇。金銀在庫レシオが低下し、金銀レシオに低下圧力が掛かったことが材料となった。銀高を受けてプラチナも大幅高。

パラジウムは経済活動の再開観測と株高を受けて大きく水準を切り上げたが、引けは2,000ドルを下回った。

【貴金属価格見通し】

金銀は高値圏で推移すると考える。コロナウイルスの感染拡大ペースは鈍化しているものの、コロナウイルスの影響で地政学的リスクも高まるなど、不安要素が多いことが安全資産面で、価格下落で原油の減産が進むとみられ、原油価格が上昇に転じていることは実質金利の低下を通じて価格の上昇要因に。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は256ドル(前日比▲12ドル)。コロナ・OPECショック前の水準(250ドル程度)を取り戻した。

米政権が中国との断交も視野に入れ、華為技術に対する制裁強化を決定するなど、両国の対立懸念が再び強まっている。

なお、現在の実質金利で説明可能な価格水準は、長期金利の上昇もあって1,450~1,480ドル程度に切り下がっている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では120倍程度が妥当、となっているが実際は110倍程度となっている。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下しており、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

PGM価格は、景気の先行きは明確に悪く、少なくともQ220は悪い状態が続きそうであること、株式市場の混乱も続いているためしばらくは軟調地合いの中、神経質なレンジワークを継続することになると考える。

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な色彩が強まっているが、各国の準備金や市場取引の担保価値がみとめられている金のような安全資産としては認知されていないことによる。

パラジウムは、世界的な景気減速に伴う自動車向け需要の減速が価格を下押しするものの、コロナウイルスの感染拡大で南アフリカの鉱山がすべて停止するなど、供給途絶リスクが顕在化しているため、高値圏での推移になると考える。

ただ、Norilsk Nickelは2020年のパラジウムの需給見通しを▲20万オンスの供給不足から、+10万オンスの供給過剰に下方修正しており、上限はさらに切り下がったと考えられる。

4月の米自動車販売は年率858万台(市場予想 700万台、前月 1,137万台)と、大幅な悪化となり、例年の半分程度まで落ち込んだ。ただし、市場予想は上回っており市場ほど悲観的な状況ではないようだ。

中国の4月の自動車販売は前年比+4.4%の207万台(前月▲43.3%の143万台)と急回復した。しかし、販売の多くが商用車であり、中国政府による景気テコ入れの成果だったともいえる。

今後、中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻っている訳ではないので、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・FRBは▲1.5%の緊急利下げ、無制限の量的緩和を決定、その他の中央銀行もこれに追随しており貴金属価格の上昇要因に。

ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが277,771枚(前週比 +2,200枚)、ショートが34,943枚(+9,376枚)、ネットロングは242,828枚(▲7,176枚)、銀が44,757枚(+705枚)、ショートが18,984枚(▲2,153枚)、ネットロングは25,773枚(+2,858枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが28,253枚(前週比 ▲386枚)ショートが10,098枚(▲295枚)、ネットロングは18,155枚(▲91枚)

パラジウムが2,156枚(▲100枚)、ショートが1,766枚(+175枚)ネットロングは390枚(▲275枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はトウモロコシと大豆が上昇、小麦が下落した。トウモロコシは原油価格の上昇、大豆も原油に連れ高となった。

小麦は降雨見通しが欧米・ロシアの収穫量を改善するとの期待が強まったことが材料となった。

2020年5月14日時点の米国産穀物の輸出検証高は以下の通り。トウモロコシ 1,150.67千トン(前週▲248.61千トン)大豆 352.19千トン(▲182.42千トン)小麦 440.82千トン(+97.60千トン)

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は米国のロックダウン解除の動きが進む見通しであり、ガソリン向け需要の段階的な回復が期待されること、採算が悪化したエタノールの生産調整も進むとみられることから、徐々に水準を切り上げると考える。

ロックダウン解除に伴う精肉工場の再稼働期待から、飼料向け需要も回復するとみられることも価格を押し上げると考える。

ただし、ロックダウンが解除されても直ちに元の状態に戻るとは考えにくく、エタノール向け需要はやはり限定されることから上昇余地も限定される見込み。

大豆は国内の飼料向け需要の増加が予想されるが、米中対立の再燃による米国産大豆の輸出減速が予想されることから、上昇余地は限定されると考える。

小麦もトウモロコシに連れ高を見込むが、やはり例年通り最終的には供給は帳尻が合うと予想されるため上昇余地も限定。

懸念すべきは東アフリカ・中東地域でサバクトビバッタが激増、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

また、コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家が増えており、この作付けの遅れも価格を押し上げるだろう。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気だ。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・5月の米需給報告の生産見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 159億9,500万Bu(157億4,860万Bu、136億9,200万Bu)大豆 41億2,500万Bu(41億3,992万Bu、35億5,800万Bu)小麦 18億6,600万Bu(18億4,765万Bu、19億2,000万Bu)

・5月の米需給報告の在庫見通し(今月/市場予想/前月)トウモロコシ 20億9,800万Bu(22億7,792万Bu、24億4,500万Bu)大豆 40億5,000万Bu(43億2,240万Bu、48億万Bu)小麦 9億900万Bu(8億2,408万Bu、9億7,000万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが210,833枚(前週比 ▲2,913枚)、ショートが388,404枚(+21,568枚)ネットロングは▲177,571枚(▲24,481枚)

大豆はロングが188,262枚(+15,126枚)、ショートが85,035枚(▲5,318枚)ネットロングは103,227枚(+20,444枚)

小麦はロングが101,924枚(▲2,528枚)、ショートが97,138枚(+3,389枚)ネットロングは4,786枚(▲5,917枚)

◆本日のMRA's Eye


「鉄鉱石価格は底堅い推移」

鉄鉱石の指標価格である中国CFR62%鉄鉱石の価格が高止まりしている。これは中国の新型コロナウイルスの感染拡大終息(と、中国共産党は説明している)を受けた経済活動の段階的な再開に加え、Valeなどの大手生産者が中国と時間差でコロナウイルスの感染拡大リスクに晒されており、生産が減少、かつ、見通しも引き下げていることが影響していると考えられる。

実際、最大消費国である中国の鉄鉱石港湾在庫の水準は2月以降減少を続けており、その水準は過去5年平均を下回っている。

需給バランスを計る上で参考になる鉄鉱石の先物期間構造は、全ゾーンバックワーデーションとなっている。しかし、期先の市場参加者が限定されている(生産者に偏る)ため、定常的にバックワーデーションの状態であり、市場参加者の構成による構造的な問題である可能性が高い。

そのため、直近限月と第2限月の価格スプレッド(第2限月価格-直近限月)を比較してみると、港湾在庫が増加すると期近が下がってスプレッドが上昇、逆に減少すると低下する傾向が強い。

コロナウイルスの影響でスプレッドが緩和(上昇)した局面はあったが、足元は在庫の減少で需給はタイト化していることが伺える。しばらく鉄鉱石の価格は下支えされるだろう。

一方、鉄鋼製品の用途である鉄鋼製品の在庫水準は、過去5年と比較しても記録的な水準まで積み上がっており、需給バランスが緩和している可能性が高い、

鉄鋼製品(中国棒鋼価格)に関して同様のスプレッド分析を行うと、中国の鉄鋼製品港湾在庫の増減と、同スプレッドの間には、鉄鉱石と同様の関係があることが分かり、足元の在庫積み上がりによりこのスプレッドが縮小していること(需給が緩和)が分かる。

現在は若干例年から遅れたが在庫の取り崩しが始まっており、徐々にスプレッドはタイト化(棒鋼価格の直近限月価格が上昇)する可能性が高い。

しかし、中国の鉄鋼業PMIを見ると、感染拡大の影響低下で国内向け新規受注が輸出を上回る状態となっており、実際に鉄鋼製品の輸出水準も低く、欧米のコロナからの回復度合いを見るに、鉄鋼製品の需要回復ペースは緩慢。

また、鉄鋼製品の需要の回復ペースが遅れれば、鉄鉱石の鉄鋼製品向け需要も低下する。現在の棒鋼÷鉄鉱石価格レシオは一時11.4倍まで上昇していたが、現在は4.5倍まで低下している(過去10年平均6.3倍 この倍率が大きいと、鉄鉱石対比で鉄鋼製品価格が高いことを意味する)。

このことは鉄鋼製品生産者から見た場合、鉄鋼製品を生産する利益面でのメリットが低いことを意味する。

そのため、鉄鋼製品生産は然程増加しないとみられ、鉄鉱石価格の下押し要因となるだろう。その後、生産調整で鉄鋼製品価格は再び上昇することになると予想されるが、それが持続的なものになるかは、まさに「ポスト・コロナ」の中国経済動向によることになる。

◆主要ニュース


・Q120日本実質GDP1次速報 前期比▲0.9%(前期確定▲1.9%)、前期比年率▲3.4%(▲7.3%)

 GDPデフレータ 前年比+0.9%(+1.2%)
 民間消費支出 前期比▲0.7%(▲2.9)
 民間住宅▲4.5%(▲2.5%)
 民間企業設備投資▲0.5%(▲4.8%)
 公的固定資本形成▲0.4%(+0.5%)

・3月日本第3次産業活動指数 前月比▲4.2%(前月▲0.7%)

・4月中国新築住宅価格 前月比+0.42%(前月+0.13%)

・4月中国新築住宅価格 前年比値上がり 63都市(前月63都市)、横ばい 0都市(1都市)、値下がり 7都市(6都市)

 前月比値上がり 50都市(38都市)、横ばい 9都市(10都市)、値下がり 11都市(22都市)

・5月米NAHB住宅市場指数 37(前月 30)

・FRBパウエル議長(投票権あり・中間派

・パウエルFRB議長(投票権あり・中間派)、「米国が2度目の大恐慌に陥るリスクは大きくない。ただし、元に戻るまでかなりの時間を要し、来年末まで景気回復が長引く可能性も。FRBの手段は尽きておらず、必要ならばさらなる行動も。マイナス金利政策は引き続き、適切でも有益でもないと考えている。」

・独連銀月報、「ドイツ経済はQ220に底入れする。」

・中国習近平国家主席、「WHOはコロナ対策で非常に重要な役割を果たした。これから2年間で20億ドルをWHOに拠出する。」

・中国東北部、1億人余りに再び移動制限。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・電力取引最大手EEXは、日本のデリバティブ取引のクリアリング業務を開始。相対取引での決済需要を取り込む。

・イスラエル ネタニヤフ首相、「パレスチナ自治区のユダヤ人入植地に、イスラエルの法を適用するときが来た。今年の夏以降に併合を議論。」

【メタル】
・ザンビア政府、GlencoreのMopani銅山閉山計画を改めて拒否。

・UBS、「中国が新型コロナウイルスを巡る起源を調査するよう豪州が主張したことに対する反発で、豪州鉄鉱石や牛肉の輸入停止を主張しているが、輸入鉱石の6割を輸入している豪州のリプレースは困難。」

・Norilsk Nickel、「金属、特にステンレス鋼の世界需要は前年比▲6%と減少し、ニッケル需給は13万トンの供給過剰に。」

・WPIC、2020年のプラチナ供給は前年比▲13%の719万7,000オンス、需要は▲18%の695万オンス、需給バランスは24万7,000オンスの供給過剰。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +12.79%/ ▲50.45%
2.NYM WTI ( エネルギー )/ +11.76%/ ▲46.13%
3.NYM灯油 ( エネルギー )/ +11.15%/ ▲49.56%
4.ICE Brent ( エネルギー )/ +9.54%/ ▲46.06%
5.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +8.75%/ ▲18.23%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲8.42%/ ▲62.89%
69.インド・センセックス ( 株式 )/ ▲3.44%/ ▲27.21%
68.SHF錫 ( ベースメタル )/ ▲1.49%/ ▲6.58%
67.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲1.26%/ ▲11.04%
66.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲1.21%/ ▲21.83%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :24,597.37(+911.95)
S&P500 :2,953.91(+90.21)
日経平均株価 :20,133.73(+96.26)
ドル円 :107.31(+0.25)
ユーロ円 :117.15(+1.31)
米10年債 :0.72(+0.08)
中国10年債利回り :2.71(+0.05)
日本10年債利回り :▲0.01(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.47(+0.06)
ビットコイン :9,658.23(+416.32)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :56.11(▲18.32)
エネルギー :162.65(▲97.71)
ベースメタル :20.43(+0.39)
貴金属 :31.09(+2.25)
穀物 :25.50(▲0.61)
その他農畜産品 :38.40(▲0.11)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :512.31(▲684.59)
Brent :139.44(▲2.32)
米天然ガス :81.33(▲1.28)
米ガソリン :150.83(▲1.48)
ICEガスオイル :132.33(+5.41)
LME銅 :21.95(+0.11)
LMEアルミニウム :11.88(+0.14)
金 :14.82(▲0.07)
プラチナ :24.01(+3.42)
トウモロコシ :21.75(▲1.83)
大豆 :14.82(▲0.07)

【エネルギー】
WTI :32.89(+3.46)
Brent :35.60(+3.10)
Oman :36.00(+0.51)
米ガソリン :104.53(+7.51)
米灯油 :102.30(+10.26)
ICEガスオイル :304.25(+34.50)
米天然ガス :1.79(+0.14)
英天然ガス :11.53(▲1.06)

【貴金属】
金 :1730.87(▲12.80)
銀 :16.96(+0.35)
プラチナ :818.74(+29.27)
パラジウム :1995.77(+113.92)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,278(+83:28C)
亜鉛 :1,996(+50:1.5B)
鉛 :1,625(+25:14C)
アルミニウム :1,476(+9:34.5C)
ニッケル :12,036(+162:86C)
錫 :15,120(+84:120B)
コバルト :29,555(▲18)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5345.50(+160.00)
亜鉛 :2019.00(+53.00)
鉛 :1662.50(+61.50)
アルミニウム :1500.00(+40.00)
ニッケル :12260.00(+440.00)
錫 :15235.00(+275.00)
バルチック海運指数 :407.00(+14.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :91.86(+1.81)
SGX鉄鉱石 :91.9(+1.24)
NYMEX鉄鉱石 :91.49(+1.99)
NYMEX原料炭スワップ先物 :115(+0.01)
上海鉄筋直近限月 :3,534(+135)
上海鉄筋中心限月 :3,512(+59)
米鉄スクラップ :休場( - )

【農産物】
大豆 :845.00(+6.50)
シカゴ大豆ミール :285.10(▲2.40)
シカゴ大豆油 :27.32(+0.74)
マレーシア パーム油 :2186.00(+71.00)
シカゴ とうもろこし :320.75(+1.50)
シカゴ小麦 :497.00(▲3.25)
シンガポールゴム :135.70(▲0.10)
上海ゴム :10015.00(+170.00)
砂糖 :10.80(+0.42)
アラビカ :105.70(+0.90)
ロブスタ :1155.00(+4.00)
綿花 :57.80(▲0.45)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :57.65(▲0.23)
シカゴ生牛 :98.73(+1.73)
シカゴ飼育牛 :126.60(+1.88)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。