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信用市場の安定なるか
  • MRA外国為替レポート

2020年4月13日号

◆先週の市場総括


先週は米欧で感染拡大や死者増加がピークアウトしつつあるのではないかとの見方から週初から株価が上昇。さらに木曜日にはFRBが2.3兆ドルの支援策を発表。

格付けの低い債券の購入や実質的な中小・中堅企業貸し出し策を打ち出したことで週末にかけても堅調に推移した。市場全体のリスク回避が後退した。

為替市場ではドル需要が一巡。リスク回避のもとでのドル高が一服した。ドル円相場は方向感なく上下。週初に108円40銭で始まり109円台に乗せる場面もあったが引けは週初と同じ108円台半ば。

ユーロドル相場は1.082から週末には1.094へとややユーロ高ドル安。ユーロ円相場はリスク回避が後退したことで117円40銭から一時119円に上昇するなどして引けは118円60銭。

月曜日の東京市場では株価上昇、リスク回避が後退する流れとなった。NY州で死者数が初めて前日比減少したこと、イタリア、スペインで死者数がピークアウトの兆しが見え始めたのではないか、との報道から米国株先物がアジア時間に上昇。

日経平均は17,800円で寄り付いた後、上昇して18,200円中心にもみ合い。引けにかけて一段高となり18,600円近辺で引けた。緊急事態宣言の発令が感染拡大に歯止めをかけるのでは、との期待も支えに。

ドル円相場は108円40銭で始まり108円90銭~109円ちょうどでもみ合い。その後109円30銭台に続伸した。夕刻は109円20銭。

ユーロ円相場は117円40銭で始まり70銭~80銭へ、さらに118円30銭に上昇。その後夕方には117円80銭に反落した。ユーロドル相場は1.082で始まり小動き。夕刻は1.079。

欧米市場でもリスク回避の緩和から株価は堅調。米国株は大幅高。NYダウは大幅高寄りした後にじり高。引けにかけて一段高となった。前週末比+1,627ドルの22,680ドルで引け。

米10年債利回りは上昇して0.68%。ドル円相場は109円を割ったものの底固く109円ちょうど~10銭でもみ合い、終盤に109円20銭に上昇して引け。ユーロ円相場はやや弱含み117円後半で上下した後、持ち直して117円90銭で引け。ユーロドル相場は1.079~1.080でもみ合い。

火曜日の東京市場では早朝にやや円高。ドル円相場は109円20銭で始まり、下落して108円70銭~80銭中心にもみ合い、その後は戻して90銭中心にもみ合い。

ユーロ円相場は117円90銭から117円60銭~70銭でのもみ合いへ。夕方にかけては118円40銭へ上昇。ユーロが堅調。ユーロドル相場は1.080から1.087中心のもみ合いへ。

日経平均は19,000円で孝義した後は18,600円に下落。しかし後場は反発して18,950円近辺で引けた。政府の緊急経済対策への期待も支え。

欧州株は上昇。イタリア、スペインで死亡率が低下し、行動制限の緩和が議論に。NY州クオモ知事は入院増加ペースが安定化の兆し、と述べた。ただし1日あたり死者数は最多となった。

米国株は堅調に始まったが反落し前日比小幅マイナス。NYダウは前日比▲26ドルの22,654ドル。米10年債利回りは小幅上昇して0.74%。

ドル円相場は109円10銭に上昇していたがじり安。108円70銭~80銭で引け。ドルが軟調となり、ユーロドル相場は1.091~1.092へユーロ高ドル安。ただその後は伸び悩み1.090~1.089で引けた。ユーロ円相場は118円台後半で上下し引けは118円50銭。

この日、中国政府は4月8日から武漢の閉鎖を解除すると発表した。

水曜日の東京市場のドル円相場は108円80銭で始まり、一時50銭に下落したものの持ち直し堅調。午後には109円ちょうどに上昇し夕刻は108円80銭。

ユーロ円相場は118円50銭で始まり118円ちょうどとの間を上下。夕刻にかけては118円ちょうどからじり高。ユーロドル相場は1.089で始まり1.084に下落したが欧米市場にかけてじり高。

日経平均は19,000円近辺でスタートしもみ合い。後場は堅調となり19,400円近辺で引けた。欧州では株価は軟調、一方米国では堅調。

米国では中堅企業向け融資制度を近く発表と報じられ、またサンダース候補が撤退。金融株やヘルスケア関連株がしっかり。NYダウは前日比780ドルほど上昇して23,434ドル。VIX指数は3.35ポイント低下して43.35。

米長期金利は小幅上昇し10年債利回りは0.77%。ドル円相場は109円から108円台後半で上下し引けは108円80銭~90銭。

ユーロドル相場はやや軟調1.088から1.086へ。ユーロ円相場は118円割れに下落し引けは118円20銭。

原油価格はOPECプラス会合で減産について話し合いとの報道に引け際上昇して25ドル近辺。

木曜日の東京市場の為替相場は総じて小動き。ドル円相場は108円90銭~109円ちょうどでもみ合い小動き。ユーロ円相場は118円20銭で始まり118円台前半で上下。ユーロドル相場は1.086で始まり1.089へやや強含み。

日経平均は19,300円台・前日引値近辺で寄付きもみ合い、前日とほぼ変わらず19,330円で引け。

欧米市場では株価が上昇。FRBはこの日、総額2.3兆ドルのあらたな資金供給策・信用供給策を発表した。社債購入対象を拡大し、投資不適格であるBB格に最近格下げされた社債、CLO(ローン担保証券)、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)、なども含むこととした。

また6,000億ドルを上限に、中小・中堅企業(従業員1万人以下)向けに民間銀行を通じて間接的に融資することとした(ローンの95%を買い取り)。

パウエル議長は政策を総動員する、とあらためて主張した。

米国株は寄り付き前に発表されたFRBの支援策を受けて金融株を中心に上昇。NYダウは前日比285ドル高の23,720ドル近辺で引けた。VIX指数は1.68ポイント小幅低下して41.67。米10年債利回りは小動きで0.73%。

発表された週次の新規失業保険申請件数は6,606千件となり前週に続いて6百万人以上。継続受給者数は前週の3,029千人から7,455千人へ増加した。

ミシガン大学消費者信頼感指数(4月)は71.0と前月89.1から大きく悪化。

ドルは軟調。ドル円相場は108円20銭に下落し引けは108円50銭近辺。ユーロドル相場は1.093~1.094に上昇してもみ合い。ユーロ円相場は119円ちょうどに上昇したが、その後は反落して118円台半ばで推移。

金曜日の東京市場の為替相場は欧米市場がイースター休暇に入ることから閑散小動き。欧米時間もほぼ動意なく横ばい。ドル円相場は108円50銭で始まり108円40銭近辺でもみ合い。ユーロ円相場は118円50銭~70銭で横ばい上下動。

ユーロドル相場は1.093~1.095の小幅な値幅で推移した。欧米市場は休場。

ユーロ圏財務相会合では5,400億ユーロの経済対策が合意された。欧州安定化メカニズム(ESM)を活用した与信枠の設定、共同雇用保険基金の創設、欧州投資銀行(EIB)による流動性供給など。

この日発表された米国の消費者物価指数(3月)はコア指数が前月比▲0.1%と下落。2010年初以来の前月比マイナスとなった。

◆今週の3つの注目ポイント


1.ベージュブック(地区連銀経済報告)

米国の経済指標はいよいよ悪い数字が散見され始めた。足元の状況を示す指標は5月にかけて発表となるが、実態はどうなっているか。

経済指標の数字からは悪いということはわかっても具体的なイメージ、悪化度合いはつかみにくい。

その点、ベージュブックでは定性的な判断で、現在の各地域の景気動向、企業の状況、実感などを知ることができる。そのうえで、FRBや政府によって打たれた数々の対策が有効なのかどうか、対策への期待感がうかがえるかどうかもポイント。

2.米国の経済指標

今週は実数値、景況感、双方の指標がいくつか発表される。

水曜日 小売売上高(3月、前月比、予想▲7.0%、前月▲0.5%)、 鉱工業生産(同、予想▲4.2%、前月+0.6%) NY連銀製造業景気指数(4月、予想▲35.0、前月▲21.5)

木曜日 住宅着工件数(3月、季節調整済み年率換算、予想1,307千件、前月1,599千件) フィラデルフィア連銀製造業景気指数(4月、予想▲30.0、前月▲12.7) 週次新規失業保険申請件数(予想4,606千件、前週6,606千件)

なお悪化途上の数字だが、どの程度の悪い数字となるか。市場は織り込み済みとして反応薄となるか。

3.中国の経済指標

中国では感染拡大が一巡し、経済活動・工場稼働が徐々に再開。武漢の封鎖も解除された。経済活動の再開が数字にも表れるか。

水曜日 貿易収支(3月)

金曜日 小売売上高(3月、前年同月比、予想▲10.0%、前月▲20.5%) 工業生産(同、予想▲7.0%、前月▲13.5%) 都市部固定資産投資(同、▲16.0%、▲24.5%) 失業率(同、前月6.2%) GDP(1-3月期、前年同月比、予想▲6.0%、前期+6.0%)

◆今週のMRA's Eye


信用市場の安定なるか

先週木曜日、FRBはかつてない踏み込んだ政策を打ち出した。中央銀行は金融システムの守護者としての役目、金融機関にとっての「銀行」としての役割が基本。

しかし今回打ち出した政策では、実質的に企業に対する融資、ファイナンスを行うこととした。

2.3兆ドルの緊急資金供給策には、投資不適格であるBB格に格下げとなった社債も購入対象に。またCLO(ローン担保証券)、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)も買い入れることとした。

CLOは、レバレッジドローンといわれる債務過大な低格付け企業に対するローン債権を担保とする証券。金融機関がこうした企業へのローンのリスクおよび資金負担を投資家に転嫁するものだ。

今回はこれをFRBが購入し、実質的にこれらの企業のファイナンスが継続できるようにする措置。商業用不動産ローンにもFRBが間接金融することで、ビジネスを支える不動産市場に混乱が生じないようにするものだろう。金融機関のファイナンスをつける意味もある。

また今回の政策には、6,000億ドルを上限に一般企業に間接融資する措置も打ち出した。

対象は従業員1万人以下の中小・中堅企業。市中銀行・商業銀行のこれら企業に対する融資の95%をFRBが実質的に買い取りファイナンスすることとした。

企業金融、大企業から中小企業に至るまで、幅広い企業の資金調達支援。CPや社債市場のみならず、広義の信用市場の悪化に歯止めをかける大胆な施策だ。

今回の危機でもっとも懸念されたのは、感染拡大に歯止めをかけるための経済活動の強制停止が、金融市場の混乱をもたらし、さらにそれが実体経済を悪化させる悪循環。

実際に企業業績を急速に悪化させ、あるいはそうした懸念から、すでにクレジットスプレッド、社債に対する上乗せ金利は急激に拡大。とくに低格付けの社債の引き受け手が減少している。信用市場は混乱し始めた。

また企業が破綻することで与信コストが増大した金融機関の業績も悪化する。そうした懸念は金融機関の資金調達をも困難にする。

また資金調達ができたとしても、リーマンショック後に金融システムの安定性を維持するために強化された厳密な資本規制のもとで、金融機関はリスク資産の保有を制限され、市場にあふれたリスク資産を一時的にでも保有することができない。

FRBはこうした事態に幅広く対応する画期的な施策を打ち出した。これで金融市場とくに企業金融や金融システム不安が解消に向かえば、相乗的な状況悪化には歯止めがかかるとみられる。

クレジットスプレッドは高止まりから縮小の気配がみえたが、これがさらに顕著に改善されるか。そうした動きがみえれば市場の安心感はもう少し広がるだろう。

米国株は大底から持ち直しつつある。値動きも一時ほどの暴落・暴騰を繰り返す状況から値幅は縮小した。VIX指数(予想変動率指数、恐怖指数)はまだ40ポイント台で過去の水準からみれば高めだが、じりじりと低下するようなら、さらにリスク評価の改善につながる。

根本は、感染拡大のピークアウトや経済活動の再開。

中国ではそうした動きがみられることは、サプライチェーンの正常化への期待を持たせる。

ただ米国や欧州ではこれから。5月までには動き始めるのか。信用市場の悪化に歯止めがかかり、感染拡大にピークアウトの兆しがみえ、経済活動再開への期待が高まれば、政府や金融当局の打った政策による下支え期待もあって、リスク回避はさらに後退する可能性がある。

ただ今後5月にかけて非常に悪い経済指標が相次ぐ。こうした数字で市場のマインドは悪化しないか。リスク選好も持ち直しに水を差す可能性もある。当面は、恐る恐る、リスク回避が緩和する状況が続こう。

為替市場ではドル需給の逼迫は改善した。ただ、なお手元ドル資金の重要性は低下していない。ドルは底固く推移しよう。リスク選好が大きく改善する可能性は小さく、一方で円安が進む見込みは小さい。

引き続き、ドル円相場は107円~110円を中心に方向感なく推移しそうだ。

リスクシナリオとしては、感染拡大に歯止めがかからず、米国経済の悪化が続くケース。

世界景気の後退が長期化するとの認識があらたになれば、ドル需要が強いなかでもドル円相場が105円を試す可能性がある。

逆に、感染拡大がピークアウトし、経済活動が米国のみならず欧州でも再開するとなると、中国も含めて、経済活動正常化への期待が高まってリスク選好が想定外に強まる可能性もある。その場合には予想よりも早く110円台を回復することもありうる。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.47(▲0.02)
ユーロ :118.57(+0.02)
英ポンド :134.86(▲0.32)
豪ドル :68.864(+0.08)
カナダドル :77.704(+0.07)
スイスフラン :112.247(▲0.05)
ブラジルレアル :21.2262(▲0.02)
中国人民元 :15.405(+0.01)
韓国ウォン(日本円=100) :8.946(▲0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.0937(+0.001)
英ポンド :1.2455(▲0.000)
豪ドル :0.6349(+0.001)
カナダドル :1.3956(▲0.002)
スイスフラン :0.9662(+0.000)
ブラジルレアル :休場( - )
中国人民元 :7.036(▲0.007)
韓国ウォン :1208.69(▲11.32)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :0.72(±0.0)
米2年債 :0.23(±0.0)
日本10年債利回り :0.02(+0.00)
日本2年債利回り :0.02(+0.01)
独10年債利回り :▲0.35(±0.0)
独2年債利回り :▲0.62(±0.0)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :休場( - )
NASDAQ :休場( - )
S&P500 :休場( - )
日経平均株価 :19,498.50(+152.73)
ドイツ DAX :休場( - )
インド センセックス :休場( - )
中国上海総合 :2,796.63(▲29.27)
ブラジル ボベスパ :休場( - )
英国FT250 :休場( - )
ビットコイン :6920.1(▲385.98)

【主要商品価格】
WTI :休場( - )
Brent :休場( - )
米ガソリン :休場( - )
米灯油 :休場( - )

金 :1696.65(+12.92)
銀 :15.57(+0.13)
プラチナ :750.29(▲0.47)
パラジウム :2177.56(+12.71)
銅 :休場( - )
アルミニウム :休場( - )
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :休場( - )
シカゴ とうもろこし :休場( - )
シカゴ小麦 :休場( - )

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。