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米統計悪化で景気循環銘柄が売られる
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年3月30日 第1715号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計悪化で景気循環銘柄が売られる」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、景気循環系商品が売られ、非景気循環系商品が物色される流れが続いた。発表された米消費者マインド指数の悪化を受けて、景気の先行きへの懸念が強まったこと、週末の間のイベントリスクを警戒し、景気循環系商品が売られた。

「足元の景気悪化を背景に、景気循環系商品が需要の減少観測で売られる流れ」になっており、ある意味市場は正常化した、ともいえる。3月末の期末越え資金の確保に目処が立ったため、といえるだろう。

各国はコロナウイルス対策を次々と発表しているが、根本的な解決にはならない。つまり、何らかの対策が行われたとしても経済活動が改善するわけではなく、景気循環銘柄が上昇する理由がない。

通常の因果関係は、景気が良くなる→需要が増える・業績が良くなる→景気循環系商品が買われる・株が買われる、という形であるが、景気が良くなるというのは景気の循環ペースが速い(消費が増加し、生産も増加)状態を指す。

そのため、価格が上がったとしても、それがフェアかどうかは分からないが、価格が正常化される中で売られすぎが多少修正される程度だろう。

しかし、仮にコロナウイルスの影響が比較的短期で終息した場合、世界中の政府・中央銀行が「これでもか」と対策を行っているため、価格が急騰する可能性はある。

弊社がウォッチしている主要37銘柄の価格変動性を計算すると、平均で56%となっており、ヒストリカルに見ても非常に高い。

個別商品の価格変動リスクは個別に計算する必要があるが、年率30%の変動性であれば、VaRの概念を用いると、1年後の価格が7割程度の確率で±30%変化する可能性がある、ということである。

足元はこの価格上昇(下落)リスクをいかに制御するか?を考える良いタイミングであるともいえる。

※変動性のグラフはこちらから(3月26日時点のもの)

市場は正常化?景気循環銘柄売られる

※レポートのお申込みはこちらから
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

※Brent原油の期間構造
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8377.html

※主要米銀の5年
CDShttps://marketrisk.jp/news-contents/contents/9655.html

※新型コロナウイルスの新規感染者数
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8925.html

【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日の市場は、新規手掛かり材料に乏しいが、3月末を意識した決算対策のドル資金確保が一巡したとみられることから、景気の状況悪化を意識して景気循環銘柄が売られ、非景気循環銘柄が物色される流れになると考える。

しかし市場は新規の手掛かり材料待ちの状態であり、それほど大きく価格水準が上昇するわけではないと考える。

予定されている材料で注目しているのは、3月のユーロ圏景況観指数と3月のユーロ圏消費者信頼感指数の改定。

ユーロ圏景況観指数は、鉱工業信頼感指数(40%)、サービス業信頼感(30%)、消費者信頼感(20%)、建設信頼感(5%)、実質貿易信頼感(5%)で構成されている。

アンケートのサンプルは製造業55,000社、ユーロ圏の24,000世帯。先行きの景況観を予測する上で有効な指標だ。

市場予想は鉱工業信頼感指数が▲12.6(前月▲6.1)、サービス業が▲5.0(+11.2)、消費者信頼感が速報で▲11.6となっている。恐らく市場予想を下回る悪化となる見込みであり、景気循環銘柄価格の下押し要因となるだろう。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

コロナウイルスの影響が拡大し、今は世界中が感染拡大防止に動き、確実に景気が悪化する方向に進んでいる。

Q220の米GDP見通しは、▲20%~▲50%とリーマンショックを超える大幅な減速となるのが確実な情勢であり、今はモノの停止で済んでいるが、これから人の整理が始まる可能性が高い。

日本と異なり、雇用の調整が迅速な米国では、すでに失業者が出始めており、新規失業保険申請件数が300万件を超えた(前週28万件)。しかし、雇用市場の流動性が高い米国は、コロナウイルスの影響が終息すれば速やかに雇用が回復する可能性は高い。

アベノミクス以降、日本は飲食・サービス、小売業などを中心に雇用者(パート含む)が増加してきたが、そもそも景気が減速する見通しでのコロナショック発生であり、さらにオリンピックも1年先送りされたことから、雇用が失われた場合の開腹には時間が掛ることになると予想される。

その意味で、月曜日ではないが、火曜日に発表される日本の雇用関連統計は注目したい。今のところ市場予想では失業率2.4%(前月2.4%)、有効求人倍率が1.47倍(1.49倍)が見こまれており、そこまで大きな減速にはならないと見られているが、この数値は今後の企業の設備投資などにも影響するため、注目する必要があろう。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。特に中国の製造業・非製造業PMIの減速はショッキングであり、今後、中国以外の国が中国ほど苛烈ではないにせよ、感染拡大防止策を講じた場合、同様の影響が出る可能性があることは需要面での価格下落要因。

今後は、これが短期的な減速で止まるのか、長期的なものになるのかは各国政府の対応に掛かっている。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ているが、コロナウイルスの感染拡大でさらに改定される見通しでは2019年(2.9%)を下回り、リセッション入りする可能性は高まっている。

・FRBは合計で▲150bpの緊急利下げと、ドル需要ひっ迫の状況を緩和するための無制限の量的緩和も実施、米国の持っていた金融緩和のカードはほとんどなくなった。徐々に金融面での価格下支え効果は薄れる見込み。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・中国の新型肺炎の世界的な感染拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた世界的な経済活動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。

・米中が通商面で再び対立(国営企業への補助禁止、人権面、知的財産権など)する可能性はあり、さらに新型肺炎問題が終息したのちに、ウイルス問題を受けて対立が激化する可能性も排除できず。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

(投機・投資要因)

・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。

・コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

昨日の原油価格は大幅に下落した。サウジアラビアがロシアとの減産協議を行っていないと発言したことや、米統計の悪化、週末のイベントリスクを控えた手じまい売りで株価が急落したことに押された形。

【原油価格見通し】

原油価格は買戻しが入っているが、結局しばらく現状水準で低迷すると考える。

各国の経済対策への期待が価格を押し上げるものの、最大消費国である米国をはじめ、各国の国境封鎖の動きが強まる見込みで、これからさらに原油消費が減る可能性が高く、価格のドライバーである需要が弱いため。

弊社の予想では原油市場の需給は1,300万バレル程度の供給過剰に陥る可能性があると見ている(IEAは2,000万バレルの「需要減少」を見込んでおり、需給バランスの悪化は弊社以上に大きなものになる可能性)。

ただし、足元の下落は3月末決算を睨んだドル資金確保の動きが強まっているため、ここを乗り切れば4月に一旦上昇すると予想される。

しかし、最低でも1ヵ月は交通制限が継続する見込みであり、需要面が価格を下押しする一方、4月からはOPEC・非OPECの増産が始まること、IMFが4月に発表する経済見通しは高い確率で大幅に下方修正され、市場参加者の需要見通しが下方修正されることはほぼ必須の状態であること、Q120の企業決算が発表されるが恐らく高い確率で下方修正であり、株価が再び下落する可能性があること(リバランスの売りが原油市場でも出てくる)、といった売り材料が重なるため、4月に再び底値を探る動きになると考える。

今後は、1.コロナウイルスの感染拡大が終息ないしは緩和する、2.ロシアが何らかの譲歩を行う(6月に会合がもたれる、というのがメインシナリオだが、2014年の第1次OPECショックの時は2年増産が続いたため、6月に議論し、12月に減産実施というのがセカンドシナリオ、サードシナリオは2014年と同様に長期化)3.四半期決算末(目先3月)を無事に乗り越えて株などのその他の資産価格が上昇する、といったことが相場反転の条件となる。

中国以外の国の感染拡大のピークは今月~5月頃とみられている。一部で言われている「暖かくなって終息」「抗体を獲得した人間の増加で終息」ということが仮に達成できても、Q220以降になると予想される。もちろん、薬効のある薬が発見されれば話は別だ。

弊社の価格見通しは3ヵ月ごとに更新であるため、次回更新は4月上旬となるが、恐らくQ220のBrentの価格見通しは情勢に変化がなければ、Brentで25~35ドル、WTIで20~30ドルといったところが平均価格予想となる。

このように需給バランスのあるべき水準がわからない状況では、短期的に価格予想にファンダメンタルズ分析はあまり意味がない。ただしオプション取引は低迷しており、現在の価格水準以下ではさほどオプションが積み上がっていない。逆に言えば「ここまで下落したので、さらに下落したとしても20ドル程度しか余地がない」と判断している可能性がある。

逆に上昇側は、Brentが30ドル、35ドルにコールオプションが積み上がっており、この水準が抵抗線となる。WTIは然程積み上がっていないが、30ドルが抵抗線。

※Brent・WTIの期間構造はこちらから。
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8377.html

※コロナウイルス感染拡大状況のアップデートはこちらから。
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/8925.html

この状況でもイランと米国の対立は続いているが、コロナウイルスの感染拡大による死者の急増で、さすがに米国もイランに対する人道的な支援は肯定しており、不謹慎かもしれないがこれを契機に両国の関係が改善する可能性も出てきた。

しかし、基本的にはイランの国内情勢の悪化への不満を米国にぶつける流れには変わりがなく、前回の選挙結果を見てもその動きは今後も続くだろう。

シリアとトルコの対立による、難民(場合によると感染者)の欧州流入による、欧州経済の混乱もリスクであり、ガス権益を巡るトルコ・リビア・その他中東諸国との対立も域内の混乱発生のリスクを高めよう。

この他、新型コロナウイルスが中東・アフリカでも拡大しており、政府への対応の不満がさらに高まって、暴動に発展する可能性が出てきた。暴動自体が感染拡大につながるため感染拡大中は起きないだろうが、終息後に生活困窮で暴動が起きる可能性は高い。

特にアフリカ北東部~中東東部では、サバクトビバッタの被害が深刻になっている。

米中対立は通商問題が棚上げになっているが、コロナウイルスを巡る応酬が続いており、悪化する可能性が出てきた。コロナウイルス問題終了後の両国の対立が強まる可能性は、リスクシナリオとして想定しておくべき状況になった。

FOMCは、緊急利下げに加えて無制限の量的緩和も行った。これにより金融面で価格は下支えされる可能性がある一方、さらなる事態の悪化があった場合の政策面での余地はなくなった。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は上昇した。生産者側の減産観測が強まっていることが価格を押し上げた。ただし主要用途である電力向けは、在庫の積み上がりもあるため上昇は限定された。

【石炭価格見通し】

石炭価格は中国製造業の稼働再開が域内需要の回復期待を高めているものの、新型コロナウイルスの影響拡大は世界的に継続しており、終息までは時間がかかることから、電力需要が鈍化、現状水準でもみ合うものと考える。

足元、需要減少と供給減少、市場規模縮小に伴う流動性の低下から特にNEWC市場には投機資金が入り難いことから、価格の変動性は弊社がウォッチしている主要商品の中で最も低い、10%台、API Coalに関しても3番目に低い水準となっている。いかに、NEWCの変動性が低いかが分かる。

ただし、長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC・OPECプラスの交渉が決裂、さらにサウジアラビアはOSPを大きく引き下げており、価格競争の様相を呈しており、2014年の第1次OPECショックの時と同様、長期化した場合(価格下落要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入減少。1-2月はコロナウイルスの影響はあったが、輸入量は1,062万バレル/日(前月1,007万バレル/日)と高い水準を維持。

しかし、コロナウイルスの影響で3月以降、各国の輸入量が減少する可能性は高く、特に輸送燃料の減少リスクは無視できない状況。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

・米国の中東への関与低下や原油価格の下落、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う不満爆発で、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。

・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショートとも減少、価格急落でショートの買戻し圧力が強く、ショートの解消による買戻しが大きかった。

Brentはサウジ・ロシアの増産観測と域内景気の減速懸念からロングが減少、ショートが増加している。

ポジションが増加しているのは、ある意味「ドル資産確保」の動きから一歩踏み出しているともいえ、市場参加者は少し落ち着きを取り戻しているのかもしれない。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが578,366枚(前週比 +5,547枚)ショートが142,353枚(+9,771枚)ネットロングは436,013枚(▲4,224枚)

Brentはロングが212,047枚(前週比▲35,476枚)ショートが154,955枚(▲14,063枚)ネットロングは57,092枚(▲21,413枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は高安まちまちとなった。米統計の悪化を受けて需要面での見通しは暗いままだが、コロナウイルスの感染が拡大する中で生産者の生産強制停止の動きが強まっており、供給面が価格を下支えした。

基本、自噴してくる石油と異なり、鉱物資源は密閉空間である坑道に入って、人の力を使って掘り起こすため今回のような感染症の場合、供給途絶要因になることが明らかになった。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、各国の経済対策の強化と、コロナウイルスの感染拡大防止のための鉱山生産の減少が始まっていることを受けて徐々に下値を固める動きになると考える。

ただし、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う経済活動の鈍化と、四半期末を睨んだドル確保の動きがまだ続くと見られることがファイナンシャルな面で価格を下押しするため、上値も抑えられると考える。

3月末決算を無事乗り切り、4月は一旦価格は上昇するだろうが、米雇用統計や企業決算などが悪化することは必定であり、IMFも見通しを下方修正する可能性が高いことを考えると、再び4月に下落すると予想される。

ある意味希望的観測もあるが、その後、経済対策期待の顕在化やコロナウイルス対策の進捗で、徐々に水準を切り上げる展開になると予想している。

Bloombergの調査では、新型コロナウイルスが生産に影響を与えるとした銅生産者は全体の17%に達し、これにEscondida鉱山やSpence鉱山も加わった場合、24%に達すると見られている。亜鉛も同様に影響を受けるが10%程度の供給が影響を受けると見られている。

価格を決定するのは需要動向だが、原油におけるOPEC減産の効果のように、価格に下支え効果をもたらすと整理するのが妥当だろう。

ただし、鉱山の再稼働が遅れ、コロナウイルスの影響が限定された場合、鉱山を直ちに再稼働できるわけではないため、こうした生産停止の動きは需要回復時の価格急騰をもたらす可能性がある。

価格動向を占う上で、オプションの重要性について指摘していたが、ほとんど建玉が立っておらず参考にならなくなった。

2月の中国製造業PMIも、35.7(前月50.0)とリーマンショック時の最低水準を下回った。3月は事態の改善で徐々に稼働は戻ってこようが、時間はかかると予想される。

直近2月のデータが取得できた銅製品生産者の2月の稼働状況は、銅線生産者が34.7%(過去4年平均50.7%)、銅棒生産者40.4%(51.2%)、銅板生産者38.6%(51.8%)、銅管生産者46.5%(63.2%)と低い。

非鉄金属の取引所在庫は急速に積み上がっており、最終製品を製造している企業の稼働は上記の通り低い。非鉄金属業者が政府に対して在庫の買取を要求していることからもわかるように、当面需要が弱い状態が続き、価格も低迷すると予想される。

製造業PMIを詳細にみると、完成品在庫の水準は消費手控えでやや高く(46.0→46.1)、原材料在庫の水準は港湾の機能停止の影響で低い(47.1→33.9)。今後、港湾機能が回復する中で原材料在庫の積み増しが発生、非鉄金属価格にも上昇圧力が掛かると考えられる。

ただし、非鉄金属価格が上昇するには景気への影響が限定されることが必要条件で、さらに中国国内の詳細な情報がもたらされることや、WHOが終息宣言を出すことが必要条件となる。

しかし、中国の新規受注は29.3(前月51.4)と低迷しており、状況は厳しく、回復には時間を要するだろう。現在の感染拡大状況を勘案すると当初見込みの4~5月に終息、との見方は楽観的過ぎるかもしれない。

米中対立は通商問題が棚上げになっているが、コロナウイルスを巡る応酬が続いており、悪化する可能性が出てきた。コロナウイルス問題終了後の両国の対立が強まる可能性は、リスクシナリオとして想定しておくべき状況になった。

FOMCは、緊急利下げに加えて無制限の量的緩和も行った。これにより金融面で価格は下支えされる可能性がある一方、さらなる事態の悪化があった場合の政策面での余地はなくなった。

中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは急減速し、リーマンショック時に記録した最低水準を下回った。状況は改善していると伝わっているが、回復にはまだ時間を要する見込み(価格の下落要因)。

在庫指数はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-2月期中国工業生産は前年比▲13.5%(1-12月期+6.9%)と大幅に減速(フロー需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国固定資産投資は前年比▲24.5%の3兆3,323億元(1-12月期+5.4%の55兆1,478億元)と減速。公的部門は▲23.1%(+6.8%)と大幅に減速、民間部門も▲26.4%(+4.7%)と大幅な減速となった(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国不動産開発投資は前年比▲16.3%の1兆115億元(1-12月期+9.9%の13兆2,194億元)と減速(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・1-2月の中国の銅地金・製品の輸入量は2ヵ月で85万トン(前月53万トン)と前年比で+7.2%と増加、銅鉱石・精鉱 377万トン(198万トン)と前年比▲1.2%と小幅な減少となった。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCはやや軟化したが高水準を維持。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

(投機・投資要因)

・3月20日付のLMEロング・ショートポジションは、すべてのロング・ショートが減少しており、ポジション解消の動きが強まる形となった。3月末の決算を睨んだポジション調整に、ドル資金調達の動きが強まったことが背景。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲66.7億ドル(前週▲79.2億ドル)と売り越し幅を縮小した。対策期待、というよりはポジション解消取引の結果、ショートの買戻し圧力の方が大きかったためと見られる。売り越し額の減少率は▲15.8%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲2,038千トン(前週▲2,193千トン)とアルミ・ニッケル・錫は売り越し幅が増加したが、その他は買戻しが入った。ネット売り越しの減少率は▲7.1%%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は変わらず、中国鉄鋼製品先物価格は小幅に下落した。

コロナウイルスの感染拡大で、生産者も消費者も活動を低下させる動きとなっている。週末は需要減少の方が意識されて価格に下押し圧力が掛かった。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の工場の稼働再開と、生産国がコロナウイルス対策の影響で鉱山の稼働を停止したり、輸送を停止したりということが顕在化し始めていることが価格を押し上げるものの、景気が減速する可能性が高いことから、現状水準でもみ合うものと考える。

またこれに加えて、中国の鉄鋼製品の在庫積み上がりが顕著で、今後鉄鋼向けの需要は減速すると見られることから、徐々に水準を切り下げる展開になると予想される。

中国河北省の高炉稼働率は3月20日時点で73.7%(前週73.0%)と上昇を続けている。徐々に中国国内の工場が稼働を始めていることを示唆する数値であり、景気の先行きは若干明るくなってきた。

2月の鉄鋼業PMIは、総合指数が36.6(前月47.1)と急低下、生産指数も31.3(46.7)と大幅に低下している。新規受注の伸びが国内外で低迷していること(新規受注 32.7(43.8)、輸出新規受注 42.5(49.7))が影響した。

その一方で、完成品在庫は57.5(45.3)と高く、原材料在庫は29.2(51.1)と非常に低い。工場が再稼働して鉄鋼製品在庫の水準が調整されれば、原材料在庫の水準が低いため、再び鉄鉱石価格に上昇圧力が掛かると考えられるが、中国工場の本格稼働は恐らく4月に入ってからと予想される。

米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、しばらくは米中合意の履行が新型コロナウイルスの影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

Valeは生産計画を下方修正したが、それでも2020年は同社の生産が本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は豪州の供給停止が価格を押し上げているものの、新型肺炎の影響に加え、鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格中期見通しは強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは36.6(前月47.1)と急速に悪化。新規受注も新型で新規受注も32.7(43.8)に低下している。

一方、最終需要の鈍化で完成品在庫の水準は57.5(45.3)と高く、港湾の稼働停止で原材料在庫の水準は29.2(51.1)と低い。工場再稼働が起きれば、原材料在庫の不足から輸入が増加し、海上輸送鉄鉱石価格の上昇要因となる。

・1-2月期中国工業生産は前年比▲13.5%(1-12月期+6.9%)と大幅に減速(フロー需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国固定資産投資は前年比▲24.5%の3兆3,323億元(1-12月期+5.4%の55兆1,478億元)と減速。公的部門は▲23.1%(+6.8%)と大幅に減速、民間部門も▲26.4%(+4.7%)と大幅な減速となった(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国不動産開発投資は前年比▲16.3%の1兆115億元(1-12月期+9.9%の13兆2,194億元)と減速(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

1-2月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の1,075万トンと減速、コロナウイルスの感染拡大の影響で企業活動が鈍化していることが確認された。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に増加し、前年比+33.1%の6,806万トンとなった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入増加によるものだ。

・中国の1-2月の鉄鉱石の輸入量は前年比+1.5%の1億7,684万トンとなった。鉄鋼製品在庫の増加によって生産活動が鈍化している一方、鉄鉱石の港湾在庫の在庫日数は低下しており、一定の在庫積み増し需要があると考えられるため。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲260万トンの1億2,115万トン(過去5年平均1億2,727万トン)、在庫日数は▲0.6日の29.9日(過去5年平均 35.8日)と依然として在庫水準は低い。

鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られ、価格を押し上げると考える。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲77.6万トンの2,490.5万トン(過去5年平均 1,487.4万トン)とコロナウイルスの影響で在庫が急増していたが、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが始まっている。ただし、依然として在庫水準が高いことに変わりはない。

なお、1-2月の鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の781万トンと大幅に減速しており、やはりコロナウイルスの影響が顕在化した形に。今後は徐々に回復すると見られるが感染終息状況次第である。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は小幅に下落した。長期金利低下に伴う実質金利低下が価格を支えたが、週末のイベントを控えた手じまい売りが上値を抑えた。銀は小幅高。

PGMは投機商品的な色彩が強まっているプラチナが小幅上昇、需要減少の懸念が強まっているパラジウムが下落した。

【貴金属価格見通し】

金銀は新型コロナウイルスへの影響が拡大し、3月末の決算を控えたドル確保のための売りが一巡したと見られ、低金利政策を背景に買戻しが入ると考える。

金価格動向を占う上で実質金利の動向は重要だが、実質金利の大きな変化に金価格が追い付いておらず、リスクプレミアムを適正に反映した価格での推移になり難い。

現在のリスクプレミアムは187ドル(前日比▲41ドル ※毎日回帰分析をアップデートリスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください)と下落。

米中の対立による、安全資産需要の高まりはあり得るが今のところ「共通の敵」への対処が必要であり、今現在、米中対立が安全資産需要を高めることにはならないと考える。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は上昇を続け、100倍を超えている。金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、直近1年データを元にすると87倍程度、この10年データを元にした分析結果である80倍であることを考えると、やはり現在の金価格は割高であり、銀価格は割安である。

リスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。ただし、金価格が急落する局面では、過去の例をみると金以上に銀が売られるリスクは高い。

弊社は短期の価格動向分析として、生産コスト分析はあまり意味がないと考えているが、市場参加者の中には生産コストを意識して取引している向きもあるため全く無視するわけにもいかない。

Silver Instituteの過去データを参考にすると、現在10ドル/オンス程度まで低下していると考えられ、その点からも下げ余地は限定されることになる。

PGM価格は、景気の先行きは明確に良くなく、株式市場の混乱も続いているためしばらくは軟調地合いの中、神経質なレンジワークを継続することになると考える。

ただし、キャッシュ市場が徐々に落ち着きを取り戻す中では、金の換金売り圧力も弱まるため、徐々に下値を固める展開になると予想する。

なお、需要が減少することはほぼ間違いがないが、南アフリカの鉱山が稼働停止となるなど供給面の懸念も強まっており、特にパラジウムは需給がタイトだ。

Norilsk Nickelは2020年のパラジウムの需給見通しを▲90万オンスの供給不足から、▲20万オンスの供給不足に下方修正した。しかし引き続き、大規模な供給不足に変わりはなく、価格は高値を維持しよう。

2月の米自動車販売は年率1,683万台(市場予想 1,671万台、前月 1,684万台)と、市場予想ほどではないが前月から若干減速した。

一方、コロナウイルスの影響で経済活動がほぼ停止した中国の2月の自動車販売は前年比▲79.1%の31.0万台となり、年初来の累計も前年比▲42.0%の223.8万台と減少傾向を持続している。

今後、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

S&Pは2020年の自動車販売見通しを前年比▲2.9%(前回見通し▲0.9%)に引き下げている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは▲1.0%の追加利下げを行い、無制限の量的緩和を決定、貴金属価格の上昇要因に。ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

また、日米欧も財政出動に舵を切り始めており、需給要因による長期金利の上昇が金銀価格を下押しする見込み。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な拡大に伴う、安全資産需要の高まり。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・金はロングが上昇、ショートが減少。COMEXがコロナウイルスの影響で現物の確保ができず、現物の受け渡しに影響が出るとの見方で、ショート筋がスクイーズされた形。

銀はロングが減少、ショートが増加。換金売りに押された。

プラチナも換金売り圧力でロングが大幅に減少、パラジウムはロング・ショートとも減少した。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが317,928枚(前週比 +523枚)、ショートが29,562枚(▲5,927枚)、ネットロングは288,366枚(+6,450枚)、銀が53,077枚(▲8,138枚)、ショートが19,390枚(+143枚)、ネットロングは33,687枚(▲8,281枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが33,207枚(前週比 ▲4,611枚)ショートが10,911枚(+740枚)、ネットロングは22,296枚(▲5,351枚)

パラジウムが2,677枚(▲1,206枚)、ショートが2,386枚(▲242枚)ネットロングは291枚(▲964枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はまちまち。

トウモロコシは、エタノール価格の下落とエタノール向けの需要減少観測で下落。大豆は小幅上昇した。

小麦は小幅上昇。前日は生産増加が見込まれたロシアだが、ロシア農業省はQ220の穀物輸出を700万トンに制限することを提案。

国内供給の維持が目的。新型コロナウイルスの影響で、世界的に小麦の供給に懸念が出る可能性が高まっていることを受けた措置。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は、コロナウイルス対策を巡る影響が穀物ごとに異なるため、まちまちになると見る。

トウモロコシは輸送燃料需要の減少観測が価格を押し下げ、大豆はDDGSの供給減少で飼料向け需要の増加が予想されることから上昇すると見る(しかしこれは、輸送需要が回復すれば逆回転する)。

小麦は欧州各国の国境封鎖の動きで、食品向け小麦の供給懸念が価格を押し上げると考える。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシの受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、大豆も過去5年平均を大幅に上回っている。

供給面では、冬場の降雨の影響で2年連続で米生産地が洪水に見舞われており、作付けが予想を下回る可能性が出てきた。

小麦は豪州火災や干ばつ、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい展開が予想されるが、最終的には帳尻が合いやすい(世界各地で生産されているため)。

今後の市場の注目は大豆、トウモロコシの作付け意向面積。米農務省の予想では、トウモロコシが9,400万エーカー(2019年 8,970万エーカー)、大豆は8,500万エーカー(7,610万エーカー)、小麦が4,500万エーカー(4,520万エーカー)と、トウモロコシの作付けが増加すると見られている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・3月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・3月の米需給報告の在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ18億9,200万Bu(市場予想18億9,509万Bu、前月18億9,200万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,809万Bu、4億2,500万Bu)小麦 10億Bu(9億9,417万Bu、10億Bu)

・12月末の四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億8,900万Bu(114億7,171万Bu、22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意、シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、二次合意も難しく中国の合意不履行を材料に両国関係が再び悪化する可能性も考えられ、シカゴ定期の下落要因に。

ただし新型肺炎の影響で、しばらくの間、中国が合意を履行しなくても問題視はされないと予想される。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に今年の春先以降、価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが266,809枚(前週比 ▲20,120枚)、ショートが300,335枚(▲4,904枚)ネットロングは▲33,526枚(▲15,216枚)

大豆はロングが146,201枚(▲3,964枚)、ショートが85,854枚(▲30,695枚)ネットロングは60,347枚(+26,731枚)

小麦はロングが97,437枚(▲1,848枚)、ショートが62,621枚(▲22,163枚)ネットロングは34,816枚(+20,315枚)

◆本日のMRA's Eye


「Wショックでとうもろこし価格も下落」

2019年のトウモロコシ・大豆を中心とする穀物価格は、米中の通商協議の動向に左右される展開となり首脳会談や実務者協議に一喜一憂、昨年12月に向けては米中通商合意期待が高まり、それに伴う穀物輸出増加観測が価格を押し上げた。しかし年明け以降は一貫して水準を切り下げる展開となっている。

新型コロナウイルス感染拡大防止のための政策がヒトやモノの移動を制限し、米国の穀物輸出にも影響が出るのではとの見方が広がったことや、株急落に伴うリスク回避のドル高が進行したこと、景気循環銘柄である株や原油、非鉄金属などのセクターが売られる中で穀物にも換金売りが重なった、といった複数の要因が重なったことによるものだ。

しかし、トウモロコシと大豆の価格推移を見てみると、トウモロコシの下落率が大きい。これは、コロナウイルス対策による輸送燃料需要の減少観測に加えて、第2次OPECショックによって原油・ガソリン価格が下落、エタノール価格もこれに連れる形で急落していることが影響しているためと考えられる。

トウモロコシは米国において、重要なエタノールの原料である。直近の米農務省の需給報告では、米国の2019-2020穀物年度のエタノール向け需要は、飼料需要の37.9%に次ぐ38.6%と、輸出需要を除けば国内向け需要のほぼ半分を占めている。

エタノールは主にガソリンに添加することを目的としているため、エタノール需要は米国の輸送需要に左右される。弊社ではトウモロコシをはじめとする穀物は「非景気循環銘柄」として位置付けてはいるものの、正確には純粋な景気循環銘柄ではなくなっている。

トウモロコシのエタノール向け需要を占う上で重要な、米国のガソリン需要動向(出荷動向)を直近の米石油統計で見てみると、過去5年平均を上回って底堅く推移しておりまだ減速感は見られていない。ただし生産は減少傾向にあり今後の需要の急速な減速を見込んでいるようだ。

しかし、これからコロナウイルスの感染防止のために人やモノの移動制限が米国内でも強化されることは間違いがなく、輸送燃料需要には顕著な下押し圧力が掛かることが予想される。仮に米経済がリセッション入りということになれば、1~2ヵ月の需要減少ではなく、需要の減少が長期にわたるためエタノール価格は低迷が予想される。

この場合、トウモロコシ価格も同様に低水準での推移となるだろう。その結果、競合飼料である大豆や小麦の価格にも下押し圧力が掛かることになる。

ただ、現在のエタノール価格の下落は大手エタノール生産者の経営に非常に大きな痛手となっている。エタノール向けトウモロコシのクラッシュマージンは、データ取得が可能な2010年以降で最低水準まで低下しており、エタノール生産者は価格リスクヘッジを行っていなければ操業赤字の状態で、このままの価格水準が続けば多数の生産者が破綻することになる。

その結果、エタノール供給が減少し、エタノール価格は下支えされると考えられるが、相当痛みを伴った価格上昇になると考えられる。報道ベースでは米再生可能エネルギー協会は、今年の年末までに20億ガロンの生産能力が停止する(全米の生産能力は150億ガロン)との見通しを示している。

今のところ米国のエタノール在庫は、在庫水準、在庫日数ともに過去5年の最高水準であり、直ちにエタノールが不足して価格が上昇する、というリスクシナリオが顕在化する可能性は高くなく、価格はしばらく低迷するというのがメインシナリオだ。

コロナウイルスの影響とは無縁、と思われがちな非景気循環銘柄である穀物であるが、その影響を回避することは難しい。今後はより、景気循環銘柄である原油やガソリン、エタノール価格動向に注目する必要があるだろう。

◆主要ニュース


・3月東京消費者物価指数 前年比+0.4%(前月+0.4%)
 除く生鮮+0.4%(+0.5%)
 除く生鮮エネルギー+0.7%(+0.7%)

・1-2月期中国工業セクター利益 前年比▲38.3%の4,107億元
(1-12月期▲3.3%の6兆1,996億元)
 12月▲6.3%の5,884億元(前月+5.4%の5,939億元)

・2月米個人所得 前月比 +0.6%(前月+0.6 %)
 個人支出+0.2%(+0.2%)
 実質支出+0.1%(+0.1%)
 PCEデフレータ 前月比+0.1%(+0.1%)、前年比+1.8%(+1.7%)
 コアデフレータ 前月比+0.2%(+0.2%)、前年比+1.8%(+1.7%)
 貯蓄率 8.2%(7.9%)

・3月米ミシガン大学消費者マインド指数改定 89.2(速報比▲6.8、前月101.0)
 現況指数 103.7(▲8.8、114.8)
 先行指数 79.7(▲5.6、92.1)
 1年期待インフレ率 2.2%(▲0.1%、2.4%)
 5年期待インフレ率 2.3%(±0.0%、2.3%)

・トランプ大統領、2兆ドルの景気対策法案に署名、成立。

・FRB、4月2日~3日の米財務省証券購入を1日600億ドルに減額へ。

・米アトランタ連銀、ダラス連銀総裁、「コロナウイルス感染拡大終了後に、消費者や企業への制限措置が解除されれば米経済は力強く回復。現在考えられている悪影響よりも、一部はさほどひどくない可能性がある。

Q220のGDPは年率で▲20%台の減少が見込まれ、失業率は10%台の半ばでピークを付け、その後は年末までに7-8%まで低下する。」

・ECBラガルド総裁、コロナウイルス感染者との濃厚接触があり、先週自主隔離を行っていたことが明らかに。今週は執務室に出勤。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数624(前週比▲40)、 ガスリグ 102(前週比▲4)。

・サウジアラビアエネルギー相、「減産を巡り、ロシアと協議はしていない。」

・S&P、メキシコをコロナウイルスと原油安でBBBに格下げ。ネガティブウォッチ。

・イスラエル野党連合トップのガンツ元軍参謀長、ネタニヤフ首相の政権に一転、参加する見通し。2021年9月までネタニヤフ首相が続投し、それ以降はガンツ氏が引き継ぐ見込み。新型コロナウイルスへの対応が急務であり、ガンツ氏は国難を乗り切るために連立に合意した模様。

【メタル】
・チリ Codelco、2019年銅生産は前年比▲5.3%の159万トンに。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.SHF錫 ( ベースメタル )/ +7.96%/ ▲13.51%
2.NYM RBOB ( エネルギー )/ +5.50%/ ▲66.21%
3.日経平均 ( 株式 )/ +3.88%/ ▲18.04%
4.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +2.77%/ ▲18.22%
5.TGE小豆 ( 穀物 )/ +2.31%/ +6.12%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ ▲7.80%/ ▲17.01%
69.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲7.07%/ ▲18.17%
68.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲7.06%/ ▲10.68%
67.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲7.00%/ ▲40.59%
66.DME Oman ( エネルギー )/ ▲6.89%/ ▲60.92%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :21,636.78(▲915.39)
S&P500 :2,541.47(▲88.60)
日経平均株価 :19,389.43(+724.83)
ドル円 :107.94(▲1.64)
ユーロ円 :120.26(▲0.63)
米10年債利回り :0.67(▲0.17)
独10年債利回り :▲0.47(▲0.11)
日10年債利回り :0.02(+0.02)
中国10年債利回り :2.60(+0.01)
ビットコイン :6,683.67(▲61.02)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :56.39(+0.42)
エネルギー :104.34(+0.15)
ベースメタル :41.96(+0.26)
貴金属 :81.40(▲2.22)
穀物 :29.28(+0.05)
その他農畜産品 :43.06(+1.53)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :179.70(▲0.01)
Brent :135.69(+0.2)
米天然ガス :68.95(▲1.54)
米ガソリン :221.75(+2.61)
ICEガスオイル :94.86(▲0.02)
LME銅 :46.94(+0.08)
LMEアルミニウム :24.55(+0.04)
金 :22.39(▲0.02)
プラチナ :88.29(▲0.6)
トウモロコシ :30.25(▲0.08)
大豆 :22.39(▲0.02)

【エネルギー】
WTI :21.51(▲1.09)
Brent :24.93(▲1.41)
Oman :26.35(▲1.95)
米ガソリン :57.37(+2.99)
米灯油 :106.85(+1.82)
ICEガスオイル :300.25(▲3.50)
米天然ガス :1.63(▲0.00)
英天然ガス :18.46(▲1.39)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :24.93(▲1.41)
SPO380cst :163.67(▲3.18)
SPOケロシン :31.96(+0.32)
SPOガスオイル :38.41(+0.12)
ICE ガスオイル :40.30(▲0.47)
NYMEX灯油 :106.58(+0.64)

【貴金属】
金 :1628.16(▲3.18)
銀 :14.47(+0.06)
プラチナ :744.77(+5.64)
パラジウム :2265.37(▲74.54)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :4,786(▲4:11.5C)
亜鉛 :1,862(+14:13.5C)
鉛 :1,700(+33:10C)
アルミニウム :1,539(▲1:32.5C)
ニッケル :11,282(▲6:57C)
錫 :14,320(+230:35B)
コバルト :29,652(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :4815.00(+1.00)
亜鉛 :1874.00(+9.50)
鉛 :1692.00(±0.0)
アルミニウム :1552.50(+12.50)
ニッケル :11420.00(+205.00)
錫 :14280.00(+205.00)
バルチック海運指数 :556.00(▲13.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :88.29(▲0.04)
NYMEX鉄鉱石 :88.49(▲0.11)
NYMEX原料炭スワップ先物 :160(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,438(▲7)
上海鉄筋中心限月 :3,342(▲9)
米鉄スクラップ :257(+2.00)

【農産物】
大豆 :881.50(+1.25)
シカゴ大豆ミール :323.10(+0.20)
シカゴ大豆油 :26.85(+0.35)
マレーシア パーム油 :2487.00(+67.00)
シカゴ とうもろこし :346.00(▲2.75)
シカゴ小麦 :571.25(+2.25)
シンガポールゴム :132.60(▲2.90)
上海ゴム :9495.00(▲90.00)
砂糖 :11.10(▲0.23)
アラビカ :115.85(▲8.80)
ロブスタ :1209.00(▲32.00)
綿花 :51.33(▲1.45)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :58.45(▲4.45)
シカゴ生牛 :100.95(▲4.50)
シカゴ飼育牛 :120.60(▲10.20)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。