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市場は徐々に正常化?非鉄金属が軟調
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年3月24日 第1711号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「市場は徐々に正常化?非鉄金属が軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、その他農産品や穀物、貴金属、穀物、債券、エネルギーが上昇したが、主に非鉄金属が下落した。

FRBが無制限に量的緩和を行うことを決定、さすがに多少なりとも市場に安心感が広がるのでは、との見方が強まったものの、米経済対策法案の成立が難航していると伝えられたことで、景気循環系商品には売り圧力が強まる形となった。

ただ、株価と金価格の動向、ドル円のベーシスコストの動向を見るに、3月末決算を控えたドル資金確保の動きが一巡し始めた可能性が高く、非景気循環銘柄が物色され、景気循環銘柄が売られる流れとなった。

エネルギーに関しては売られてもおかしくないが、ここまでの下落幅が大きかったことや若干ドル安が進行したことで、主に実需筋とみられる安値拾いの買いが入ったことによる上昇とみられる。

価格上昇率の1位がビットコインであることを見ると、市場がそれなりに安定を取り戻しつつある中で、「景気にも何にも連動しないもの」が物色されたといえる。

※レポートのお申込みはこちらから
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

【本日の価格見通し総括】

FRBのなりふり構わない対策の実施で、徐々に金融市場が安定を取り戻しつつあること、各国政府・中央銀行も積極的な金融緩和や財政出動の実施を決定しており、先行きへの過度な懸念がやや後退していることから、広く買戻しが入るものと考えられる。

本日の予定されている統計としては、過去の指標はあまり参考にならないため、3月の米国・ユーロ圏・独PMIに注目している。

米製造業PMIは43.5(前月50.7)、サービス業PMIは42.0(49.4)、ユーロ圏製造業PMIは39.0(49.2)、サービス業PMIが29.5(52.6)、独製造業PMIが39.9(48.0)、サービス業PMIが43.0(52.5)が予想されている。

このアンケートが実施されている3月上旬は、各国の対応がそこまで加速していないためそこまでコロナウイルスの影響を織り込んでいるとは考え難いが、中国の製造業やサービス業のPMIの落ち込みを見るに、市場予想を下回る減速になる可能性があることは注意すべきだろう。

恐らく今日は、「市場の安定化」から買戻しが入るものの、景気循環系商品価格の上昇余地は限定されると考える。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

FRBは米国債は住宅ローン担保証券(MBS)の購入金額をこれまで合計7,000億ドルを上限としていたが、これを撤廃、「無限に」購入することを表明した。期間も設定していない。

これほどなりふり構わない対策を打ち出しているのは、資金が目詰まりを起こし、経済が破綻するリスク回避するためである。しかしここまでの対策実施が逆に市場参加者の不安心理を煽っている面は否めない。

しかし、ここまでFRBを追い込んだのはやはりMBS(ムハンマド・ビン・サルマン皇太子)が、「ロシア憎し」で実施した「原油市場での量的緩和」であろう。原油価格がここまで急落しなければ、エネルギーセクターのクレジット見直しもなく、それに伴う金融不安へのリスクはそこまで想定しなくてよかった。

シェールオイル企業は一定のリスクヘッジを行っているため、ヘッジ期間(おそらく6月末、12月末まではヘッジが行われている企業は多い)であれば急に破綻することはない。しかし、そこを過ぎると急速に収支が悪化するため、破綻、と言ことは起こり得る。

そしてこうした企業の債券を保有しているのは、銀行ではなくファンドや地域金融機関(邦銀、信金信組を含む)であり、これらの事業体への悪影響の方が大きい。

投資家は、保有する債券の価値が大きく下がった場合、一定のルールに従ってロスカットを余儀なくされることがある。今のところ売られているのは「値段が付く、比較的流動性の高い商品」である、値が付きやすいという意味ではジャンク債もどちらかといえば値が付きやすい商品に分類される。

問題は、CLOはCDOといった仕組み商品である。リーマンショックの反省から、過度なレバレッジが効いている商品はさほどないと思われるが、値段が付きやすい商品の売却が一巡したタイミングで(3月末の決算を越えたタイミングで)、ポートフォリオの見直し・再構築のために再び売り圧力が強まる可能性がある。

ボルカー・ルール適用後、大手投資銀行や証券会社がこのような仕組み商品を保有することはなくなったが、主にファンドがこれらの商品に投資をしており、実態はブラックボックスである。

FRBのなりふり構わない対応を見ていると、こうしたファンドのネガティブな情報を有しているのではないか?と勘繰りたくなっても仕方がない。

まずは3月末を無事に乗り越えることができるか?が目先の最大の関心事だが、次に考えるべきは次の四半期で、値段が付きにくい商品の処理が始まった時なのではないだろうか。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。特に中国の製造業・非製造業PMIの減速はショッキングであり、今後、中国以外の国が中国ほど苛烈ではないにせよ、感染拡大防止策を講じた場合、同様の影響が出る可能性があることは需要面での価格下落要因。

今後は、これが短期的な減速で止まるのか、長期的なものになるのかは各国政府の対応に掛かっている。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ているが、コロナウイルスの感染拡大でさらに改定される見通しでは2019年(2.9%)を下回る見込み。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっていたが、新型肺炎の影響で▲50bpの追加利下げが行われた。しかし市場はさらに3回の利下げを市場は織り込んでいる(▲75bp程度)。景気の減速が懸念されているため追加利下げは景気循環系商品価格の下支え要因に。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・中国の新型肺炎の世界的な感染拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済活動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。

・米中が通商面で再び対立(国営企業への補助禁止、人権面、知的財産権など)する可能性はあり、景気循環銘柄価格の下振れ要因に。ただし、新型肺炎の影響で当面は中国の合意不履行は問題視されない可能性が高まった。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

昨日の原油価格は上昇した。特段新規の材料があったわけではないが、一旦10ドル台にWTIが突っ込んだこともあり、さすがに割安感が出たこと、ドルが若干売られ、ドルのベーシスコストも縮小したことで買戻しが入ったため。

【原油価格見通し】

原油価格はしばらく現状水準で低迷すると考える。世界各国が国境封鎖に動く中、最大消費国である米国もすでに国境封鎖を始めているが、場合によると1~2ヵ月はその状態が継続する可能性が出てきたことから、需要面が価格を下押しする一方、供給面では4月からサウジアラビアをはじめとする産油国の増産合戦が始まるため。

ただし、足元の下落は3月末のドル確保のためのドル資産売却の動きも重なっていると見られ、3月末を越えれば一旦上昇すると見ている。

4月に入ってからは一旦上昇するが、4月からはOPEC・非OPECの増産が始まること、IMFが4月に発表する経済見通しは高い確率で大幅に下方修正され、市場参加者の需要見通しが下方修正されることはほぼ必須の状態であること、Q120の企業決算が発表されるが恐らく高い確率で下方修正であり、株価が再び下落する可能性があること(リバランスの売りが原油市場でも出てくる)、といった売り材料が重なるため、4月に再び底値を探る動きになると考える。

今後は、1.ロシアが何らかの譲歩を行う(6月に会合がもたれる、というのがメインシナリオだが、2014年の第1次OPECショックの時は2年増産が続いたため、6月に議論し、12月に減産実施というのがセカンドシナリオ、サードシナリオは2014年と同様に長期化)、2.コロナウイルスの感染拡大が終息ないしは緩和する、3.四半期決算末(目先3月)を無事に乗り越えて株などのその他の資産価格が上昇する、といったことが相場反転の条件となる。

日本国内の感染のピークは今月~5月頃とみられているが、欧米はこれから。

一部で言われている「暖かくなって終息」「抗体を獲得した人間の増加で終息」ということが仮に事実だとしても、Q220以降になると予想される。もちろん、薬効のある薬が発見されれば話は別だ。

弊社の価格見通しは3ヵ月ごとに更新であるため、次回更新は4月となるが、恐らくQ220のBrentの価格見通しは情勢に変化がなければ、Brentで25~35ドル、WTIで20~30ドルといったところが平均価格予想となる。

このように需給バランスのあるべき水準がわからない状況では、短期的に価格予想にファンダメンタルズ分析はあまり意味がない。

市場は需要減少リスク側に傾いており、現時点ではよりプットオプション動向が注目される。

Brentは25ドル、22.5ドル、20ドルに積み上がっており、この水準では防戦売買でもみ合いやすい。しかし、オプション建玉の量が少ないことから、然程強い防波堤にはならないだろう。

ちなみにWTIは25ドル、20ドル、17ドルに建玉が積み上がっているが、Brent同様、建玉の積み上がりは大きくない。

この状況でもイランと米国の対立は続いているが、コロナウイルスの感染拡大による死者の急増で、さすがに米国もイランに対する人道的な支援は肯定しており、不謹慎かもしれないがこれを契機に両国の関係が改善する可能性も出てきた。

しかし、基本的にはイランの国内情勢の悪化への不満を米国にぶつける流れには変わりがなく、前回の選挙結果を見てもその動きは今後も続くだろう。

シリアとトルコの対立による、難民(場合によると感染者)の欧州流入による、欧州経済の混乱もリスクであり、ガス権益を巡るトルコ・リビア・その他中東諸国との対立も域内の混乱発生のリスクを高めよう。

この他、新型コロナウイルスが中東・アフリカでも拡大しており、政府への対応の不満がさらに高まって、暴動に発展する可能性が出てきた。暴動自体が感染拡大につながるため感染拡大中は起きないだろうが、終息後に生活困窮で暴動が起きる可能性は高い。

特にアフリカ北東部~中東東部では、サバクトビバッタの被害が深刻になっている。

米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

FOMCは、緊急利下げをさらに行った。これにより金融面で価格は下支えされる可能性がある一方、さらなる事態の悪化があった場合の政策面での余地はなくなった。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。新型コロナウイルスの影響で企業活動が低迷していること、中国の港湾再稼働などの強弱材料が混在する中、レンジでの推移を継続している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は中国製造業の稼働再開が域内需要の回復期待を高めているものの、新型コロナウイルスの影響拡大は世界的に継続しており、終息までは時間がかかることから、電力需要が鈍化、現状水準でもみ合うものと考える。

ただし、中国の石炭輸入は季節的に回復する可能性がある。実際、バルチック海運指数には徐々に底入れ感が出てきている。

長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC・OPECプラスの交渉が決裂、さらにサウジアラビアはOSPを大きく引き下げており、価格競争の様相を呈しており、2014年の第1次OPECショックの時と同様、長期化した場合(価格下落要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入減少。1-2月はコロナウイルスの影響はあったが、輸入量は1,062万バレル/日(前月1,007万バレル/日)と高い水準を維持。

しかし、コロナウイルスの影響で3月以降、各国の輸入量が減少する可能性は高く、特に輸送燃料の減少リスクは無視できない状況。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

・米国の中東への関与低下や原油価格の下落、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う不満爆発で、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。

・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショートとも減少、価格急落でショートの買戻し圧力が強く、ショートの解消による買戻しが大きかった。

Brentはサウジ・ロシアの増産観測と域内景気の減速懸念からロングが減少、ショートが増加している。

ポジションが増加しているのは、ある意味「ドル資産確保」の動きから一歩踏み出しているともいえ、市場参加者は少し落ち着きを取り戻しているのかもしれない。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが572,819枚(前週比 ▲14,748枚)ショートが132,582枚(▲67,588枚)ネットロングは440,237枚(+52,840枚)

Brentはロングが247,523枚(前週比▲44,826枚)ショートが169,018枚(+30,024枚)ネットロングは78,505枚(▲74,850枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落した。世界中で国境の一時封鎖の動きが強まる中、中国の最大貿易相手経済圏である欧州が、国境封鎖の動きを強めており同地域向けの需要が減少すると見られたことや、ドル資産確保の動きが継続していることが背景。

また、事態が落ち着いてきたと見られていた中国が、実は4万人超の感染者を感染者としてカウントしていなかったとする香港紙の報道を受け、本当に中国の感染拡大が鎮静化しているのか?と、その数字に対する懸念が広がったことも価格を押し下げた。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う経済活動の鈍化と、四半期末を睨んだドル確保の動きが、ドル高を進行させていることがファイナンシャルな面で価格を下押しするため、軟調な推移になると考える。

ただし、最大消費国である中国の新型コロナウイルス問題が終息に向かっていること(これについては疑義も出始めた)、コロナウイルスの影響で鉱山側の生産活動にも鈍化の動きが見られることから徐々に下値を固める展開になると予想する。

実需の手掛かり材料、特に実際の需給がどうだったか、といった統計は2ヵ月程度のかなりの時間差を以って発表されること、市場はまだパニック状態にあることから、原油と同様、オプションの建玉動向が価格動向を占う上で参考になる。

しかし、5,000ドルを切ったレベルではコールもプットも建玉がなく、予想通り5,000ドルを切ったあたりから銅の下落は加速している。3月末の決算を乗り越える、需要面で明るい兆しが見える(コロナ対策の進捗など)、といった材料が出てこなければ、大きな上昇にはならないだろう。

2月の中国製造業PMIも、35.7(前月50.0)とリーマンショック時の最低水準を下回った。3月は事態の改善で徐々に稼働は戻ってこようが、時間はかかると予想される。

直近2月のデータが取得できた銅製品生産者の2月の稼働状況は、銅線生産者が34.7%(過去4年平均50.7%)、銅棒生産者40.4%(51.2%)、銅板生産者38.6%(51.8%)、銅管生産者46.5%(63.2%)と低い。

非鉄金属の取引所在庫は急速に積み上がっており、最終製品を製造している企業の稼働は上記の通り低い。非鉄金属業者が政府に対して在庫の買取を要求していることからもわかるように、当面需要が弱い状態が続き、価格も低迷すると予想される。

製造業PMIを詳細にみると、完成品在庫の水準は消費手控えでやや高く(46.0→46.1)、原材料在庫の水準は港湾の機能停止の影響で低い(47.1→33.9)。今後、港湾機能が回復する中で原材料在庫の積み増しが発生、非鉄金属価格にも上昇圧力が掛かると考えられる。

ただし、非鉄金属価格が上昇するには景気への影響が限定されることが必要条件で、さらに中国国内の詳細な情報がもたらされることや、WHOが終息宣言を出すことが必要条件となる。

しかし、中国の新規受注は29.3(前月51.4)と低迷しており、状況は厳しく、回復には時間を要するだろう。現在の感染拡大状況を勘案すると当初見込みの4~5月に終息、との見方は楽観的過ぎるかもしれない。

米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、新型コロナウイルスの影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

FOMCは、緊急利下げをさらに行った。これにより金融面で価格は下支えされる可能性がある一方、さらなる事態の悪化があった場合の政策面での余地はなくなった。

中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは急減速し、リーマンショック時に記録した最低水準を下回った。状況は改善していると伝わっているが、回復にはまだ時間を要する見込み(価格の下落要因)。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-2月期中国工業生産は前年比▲13.5%(1-12月期+6.9%)と大幅に減速(フロー需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国固定資産投資は前年比▲24.5%の3兆3,323億元(1-12月期+5.4%の55兆1,478億元)と減速。公的部門は▲23.1%(+6.8%)と大幅に減速、民間部門も▲26.4%(+4.7%)と大幅な減速となった(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国不動産開発投資は前年比▲16.3%の1兆115億元(1-12月期+9.9%の13兆2,194億元)と減速(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・1-2月の中国の銅地金・製品の輸入量は2ヵ月で85万トン(前月53万トン)と前年比で+7.2%と増加、銅鉱石・精鉱 377万トン(198万トン)と前年比▲1.2%と小幅な減少となった。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCはやや軟化したが高水準を維持。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

(投機・投資要因)

・3月13日付のLMEロング・ショートポジションは、錫を除けばすべてのロング・ショートが減少しており、ポジション解消の動きが強まる形となった。これまでのショートの積み上がりが大きかったため、結果、ネット売り越し幅を削る金属が増えた。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲79.2億ドル(前週▲87.6億ドル)と売り越し幅を縮小した。買い越し額の減少率は▲9.7%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲2,193千トン(前週▲2,409千トン)とCME銅と鉛以外の金属で売り越し幅を縮小した。ネット売り越しの減少率は+9.0%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は小幅に上昇した。

中国の高炉の稼働率は回復しているものの、米国、欧州での製造活動の強制停止が広がる中、需要の減少懸念が強まったことが背景。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は中国政府の預金準備率引き下げや各国の対策期待、中国の港湾の再稼働による輸入増加観測、Vale、Companhia Siderurgica Nacionalの生産減少が価格を押し上げるものの、新型コロナウイルスの影響が世界的に拡大しており、中国の鉄鋼製品の在庫積み上がりが顕著で、今後鉄鋼向けの需要は減速すると見られることから、価格は現状水準でもみ合うと考える。

中国河北省の高炉稼働率は3月20日時点で73.7%(前週73.0%)と上昇を続けている。徐々に中国国内の工場が稼働を始めていることを示唆する数値であり、景気の先行きは若干明るくなってきた。

2月の鉄鋼業PMIは、総合指数が36.6(前月47.1)と急低下、生産指数も31.3(46.7)と大幅に低下している。新規受注の伸びが国内外で低迷していること(新規受注 32.7(43.8)、輸出新規受注 42.5(49.7))が影響した。

その一方で、完成品在庫は57.5(45.3)と高く、原材料在庫は29.2(51.1)と非常に低い。工場が再稼働して鉄鋼製品在庫の水準が調整されれば、原材料在庫の水準が低いため、再び鉄鉱石価格に上昇圧力が掛かると考えられるが、中国工場の本格稼働は恐らく4月に入ってからと予想される。

米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、しばらくは米中合意の履行が新型コロナウイルスの影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

Valeは生産計画を下方修正したが、それでも2020年は同社の生産が本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は豪州の供給停止が価格を押し上げているものの、新型肺炎の影響に加え、鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格中期見通しは強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは36.6(前月47.1)と急速に悪化。新規受注も新型で新規受注も32.7(43.8)に低下している。

一方、最終需要の鈍化で完成品在庫の水準は57.5(45.3)と高く、港湾の稼働停止で原材料在庫の水準は29.2(51.1)と低い。工場再稼働が起きれば、原材料在庫の不足から輸入が増加し、海上輸送鉄鉱石価格の上昇要因となる。

・1-2月期中国工業生産は前年比▲13.5%(1-12月期+6.9%)と大幅に減速(フロー需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国固定資産投資は前年比▲24.5%の3兆3,323億元(1-12月期+5.4%の55兆1,478億元)と減速。公的部門は▲23.1%(+6.8%)と大幅に減速、民間部門も▲26.4%(+4.7%)と大幅な減速となった(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

・1-2月期中国不動産開発投資は前年比▲16.3%の1兆115億元(1-12月期+9.9%の13兆2,194億元)と減速(ストック需要の減少=価格の下落要因)。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。

1-2月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の1,075万トンと減速、コロナウイルスの感染拡大の影響で企業活動が鈍化していることが確認された。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に増加し、前年比+33.1%の6,806万トンとなった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入増加によるものだ。

・中国の1-2月の鉄鉱石の輸入量は前年比+1.5%の1億7,684万トンとなった。鉄鋼製品在庫の増加によって生産活動が鈍化している一方、鉄鉱石の港湾在庫の在庫日数は低下しており、一定の在庫積み増し需要があると考えられるため。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲255万トンの1億2,375万トン(過去5年平均1億2,716万トン)、在庫日数は▲0.6日の27.1日(過去5年平均 36.8日)と依然として在庫水準は低い。

鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られ、価格を押し上げると考える。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲43.7万トンの2,256.8万トン(過去5年平均1,544.6万トン)とコロナウイルスの影響で在庫が急増していたが、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが始まっている。ただし、依然として在庫水準が高いことに変わりはない。

なお、1-2月の鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の781万トンと大幅に減速しており、やはりコロナウイルスの影響が顕在化した形に。今後は徐々に回復すると見られるが感染終息状況次第である。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金銀価格は上昇した。FRBの無制限の量的緩和決定が実質金利をやや押し下げたこと、米景気対策法の成立が難航していることを受けた株安を受けて。「株安・実質金利低下」という金価格の上昇要因に素直に反応した。市場が徐々に正常化しているともいえる。

PGMも金銀価格の上昇と、南アフリカがすべての鉱山を3週間停止すると報じられたことを受けて供給懸念が強まったため、売られすぎもあって買戻しが入った。

【貴金属価格見通し】

金銀は新型コロナウイルスへの影響が拡大し、3月末の決算を控えたドル確保のための狼狽売りがすべての市場で続いているが、徐々に落ち着きを取り戻しつつあり、低金利政策を背景に買戻しが入ると考える。

金価格動向を占う上で実質金利の動向は重要だが、実質金利の大きな変化に金価格が追い付いておらず、リスクプレミアムを適正に反映した価格での推移になり難い。

現在のリスクプレミアムは216ドル(前日比+1ドル ※毎日回帰分析をアップデートリスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください)と上昇。ただし実質金利とプレミアムの関係が落ち着くまでにはまだ時間が掛るだろう。

リスクプレミアムが大幅に上昇するのは感染拡大の長期化と大規模化によって、信用リスクの拡大につながり、終息後に改めて景況感の悪化が意識され、地政学的リスクが高まる場合が考えられる。

米中の対立による、安全資産需要の高まりはあり得るが今のところ「共通の敵」への対処が必要であり、今現在、米中対立が安全資産需要を高めることにはならないと考える。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は上昇を続け、100倍を超えている。金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、直近1年データを元にすると87倍程度、この10年データを元にした分析結果である80倍であることを考えると、やはり現在の金価格は割高であり、銀価格は割安である。

リスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。ただし、金価格が急落する局面では、過去の例をみると金以上に銀が売られるリスクは高い。

弊社は短期の価格動向分析として、生産コスト分析はあまり意味がないと考えているが、市場参加者の中には生産コストを意識して取引している向きもあるため全く無視するわけにもいかない。

Silver Instituteの過去データを参考にすると、現在10ドル/オンス程度まで低下していると考えられ、その点からも下げ余地は限定されることになる。

PGM価格は、景気の先行きは明確に良くなく、株式市場の混乱も続いているためしばらくは軟調地合いの中、神経質なレンジワークを継続することになると考える。

ただし、キャッシュ市場が徐々に落ち着きを取り戻す中では、金の換金売り圧力も弱まるため、徐々に下値を固める展開になると予想する。

なお、需要が減少することはほぼ間違いがないが、南アフリカの鉱山が稼働停止となるなど供給面の懸念も強まっており、特にパラジウムは需給がタイトだ。

Norilsk Nickelは2020年のパラジウムの需給見通しを▲90万オンスの供給不足から、▲20万オンスの供給不足に下方修正した。しかし引き続き、大規模な供給不足に変わりはなく、価格は高値を維持しよう。

2月の米自動車販売は年率1,683万台(市場予想 1,671万台、前月 1,684万台)と、市場予想ほどではないが前月から若干減速した。

一方、コロナウイルスの影響で経済活動がほぼ停止した中国の2月の自動車販売は前年比▲79.1%の31.0万台となり、年初来の累計も前年比▲42.0%の223.8万台と減少傾向を持続している。

今後、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

S&Pは2020年の自動車販売見通しを前年比▲2.9%(前回見通し▲0.9%)に引き下げている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは▲1.0%の利下げを行い、無制限の量的緩和を決定、貴金属価格の上昇要因に。ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

また、日米欧も財政出動に舵を切り始めており、需給要因による長期金利の上昇が金銀価格を下押しする見込み。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な拡大に伴う、安全資産需要の高まり。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・金・銀はロング・ショートとも減少。ドル確保のための換金売りに押されている。PGMも同様。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが317,405枚(前週比 ▲18,885枚)、ショートが35,489枚(▲1,270枚)、ネットロングは281,916枚(▲17,615枚)、銀が61,215枚(▲13,902枚)、ショートが19,247枚(▲10,923枚)、ネットロングは41,968枚(▲2,979枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが37,818枚(前週比 ▲8,450枚)ショートが10,171枚(▲2,850枚)、ネットロングは27,647枚(▲5,600枚)

パラジウムが3,883枚(▲2,387枚)、ショートが2,628枚(▲853枚)ネットロングは1,255枚(▲1,534枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はまちまち。

トウモロコシは米国の輸送制限方針を受けたエタノール向け需要の減少と、エタノール価格の下落を受けて軟調。

大豆はエタノール向けのトウモロコシ需要が減少することで、副産物として得られるDDG(飼料)供給が減少、大豆需要が増加すると見られたことが材料となった。

小麦は連日の暴騰。FAOがコロナウイルスのパニック拡大で、各国の国境封鎖の動きが強まる中、食品価格が上昇して食品インフレになると見方を示したことで。

小麦をパンやパスタなど、欧州では主食であり、これらの国々が国境封鎖を実施する見通しであるため、パニック買いが起きている。は大豆やトウモロコシと異なり、人が食べる重要な穀物である。

2020年3月19日発表の米穀物輸出検証高はトウモロコシが816.63千トン(▲168.58千トン)、大豆が570.64千トン(+76.03千トン)、小麦が349.37千トン(▲119.22千トン)となった。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は、基本的に、3月末の決算資金確保のドル需要の高まりが価格を押し下げるが、まちまちになると見る。

トウモロコシは輸送燃料需要の減少観測が価格を押し下げ、大豆はDDGSの供給減少で飼料向け需要の増加が予想されることから上昇、小麦は欧州各国の国境封鎖の動きで食品向けの供給懸念が価格を押し上げると考える。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシの受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、大豆も過去5年平均を大幅に上回っている。

供給面では、冬場の降雨の影響で2年連続で米生産地が洪水に見舞われており、作付けが予想を下回る可能性が出てきた。

小麦は豪州火災や干ばつ、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい展開が予想されるが、最終的には帳尻が合いやすい(世界各地で生産されているため)。

今後の市場の注目は大豆、トウモロコシの作付け意向面積。米農務省の予想では、トウモロコシが9,400万エーカー(2019年 8,970万エーカー)、大豆は8,500万エーカー(7,610万エーカー)、小麦が4,500万エーカー(4,520万エーカー)と、トウモロコシの作付けが増加すると見られている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・3月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・3月の米需給報告の在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ18億9,200万Bu(市場予想18億9,509万Bu、前月18億9,200万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,809万Bu、4億2,500万Bu)小麦 10億Bu(9億9,417万Bu、10億Bu)

・12月末の四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億8,900万Bu(114億7,171万Bu、22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意、シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、二次合意も難しく中国の合意不履行を材料に両国関係が再び悪化する可能性も考えられ、シカゴ定期の下落要因に。

ただし新型肺炎の影響で、しばらくの間、中国が合意を履行しなくても問題視はされないと予想される。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に今年の春先以降、価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが286,929枚(前週比 ▲27,863枚)、ショートが305,239枚(+5,299枚)ネットロングは▲18,310枚(▲33,162枚)

大豆はロングが150,165枚(▲5,107枚)、ショートが116,549枚(▲7,255枚)ネットロングは33,616枚(+2,148枚)

小麦はロングが99,285枚(▲26,413枚)、ショートが84,784枚(▲8,879枚)ネットロングは14,501枚(▲17,534枚)

◆本日のMRA's Eye


「景気先行指標としての中国」

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、南極大陸を除く全ての大陸で新型コロナウイルスの感染者が確認された。米国でも市中感染が確認されている。コロナウイルスは高齢者以外が感染した場合の致死率はさほど高くないが、高齢者が感染した場合の致死率が高いため、各国も厳しい対応を選択せざるを得なくなっている。

暖かくなれば感染は終息するとの楽観論もある一方、真夏のブラジルや常夏のシンガポールでの感染拡大を考えるとその確証はない。

これまで2020年1-3月期に新型コロナウイルス禍が終了し、2020年4-6月期からV字回復というシナリオを描いていたアナリストも多かったと思うが、それはコロナウイルスの感染拡大が中国に留まり、その他の国への影響は限定されるという前提に基づくものである。

言葉を変えると、今回の問題で大規模な感染拡大とそれに伴う経済活動の停止が起きないことが前提になっている。IMFも今回のウイルスの世界GDPへの影響を試算しているが、2020年のGDP成長は2019年を下回る可能性が高いと悲観的な見方を示しており、リセッション入りの可能性は高くなってきた。

リーマンショックは「金融危機」であり、金融政策や財政政策によって事態の収拾が可能だった。また、リーマンショック時はヒトやモノの移動は制限されていなかった。

しかし、今回の新型コロナウイルスは感染拡大防止のためにヒトやモノの移動の制限をせざるを得ず、信用リスクに波及する可能性があるため、リーマンショックを超えるリスクになる可能性がある。

2月末に2月の中国製造業・非製造業PMIが発表された。数値は過去最悪で、製造業PMIが35.7(市場予想45.0、前月50)、非製造業PMIが29.6(同50.5、54.1)とリーマンショック時を下回った。気になるのはサービス業や個人消費の先行指標である非製造業PMIの落ち込みが顕著であることだ。

中国以外の国や地域は、中国の春節から1ヵ月の時間差をもって感染が拡大しているため、1月、2月に中国で起きたことがこれから世界中で起きる可能性が高い。今回の新型コロナウイルスの影響を特に顕著に受けるのが運輸や、飲食サービス、宿泊業などの対人ビジネスだが、いずれも先進国でGDPへの影響が大きい個人消費に直接波及する業種である。

また、国際的な水平分業が進む中、部材が調達できず製品を製造できずに破綻するという信用リスクへの拡大シナリオもあり得る。この場合、リーマンショック時に経験した信用リスク危機に拡大することを想定しなければならなくなる。

製造業の破綻が相次いだ場合、供給不足によって不況であるにも関わらず物価が上昇する「スタグフレーション」となることもあり得る。

商品価格の上昇は原油や銅などの比較的装置産業化した一次産品の供給では問題が顕在化しにくいが、部品や自動車などの完成品は多くの人が工場という閉鎖空間に集合して製造しなければならないため(テレワークなどの在宅勤務による対応が難しい商品)、供給懸念が顕在化して需給がひっ迫し、価格を押し上げる可能性が高い。

中国政府の発表によれば、新型コロナウイルスの影響は徐々に改善傾向に向かっており、4月末に終息させることができると自信を示している。

しかし、中国ほど苛烈な都市封鎖を民主主義の先進国ができるとは考え難いため、その他の地域での事態終息は1カ月ではなく、早く終息したとしても、2カ月程度遅れて6月~7月頃になるのではないだろうか(各国政府の対策が有効に講じられて、連鎖倒産などの信用リスクが顕在化しないという前提に基づく)。

仮に各国が中国と同様の経路を経て景気減速から回復に至るとするならば、中国の動静は今後を占う上では重要な手掛かりになるだろう。その場合、銅価格と、ばら積み不定期船の運賃を指数化したバルチック海運指数が参考になる。

中国は銅の最大消費国であり、バルチック海運指数は世界的なばら積み船の賃料の指標であるが、その大半が鉄鉱石と石炭であり、仕向け地は中国であるためだ。

実際、LME銅価格と原油価格の年初からの騰落率を比較すると、原油価格の下落が顕著である一方、銅の下落は限定されている。中国の銅消費シェアは2018年時点で50.2%、エネルギーの消費シェアは13.6%と、圧倒的に銅を含む非鉄金属の消費シェアの方が高い。言葉を替えると、銅は中国の動向をより強く反映し、原油はその他の地域や国の動向を反映しているといえる。

銅が中国経済の動向を示す「ドクター・カッパー」と言われている所以だ。原油はOPECが生産調整を行うことで価格が上昇することもあり得るが、過去の例を見るに需要減速時のOPEC減産の効果は限定される。やはり、価格が上昇に転じるには需要の回復が必要条件となる。

通常、価格が下落すると需要が喚起されて消費行動が加速するが、今回のコロナショックでは、感染拡大防止のために強制的に経済活動を停止させているため、価格が下落したとしても需要の押し上げ効果は限定されると考えられる。また、金融緩和や財政出動もその効果が出るためには、経済活動の抑制の枷が外れることが必要条件となる。

中国の輸入動向が価格に大きな影響を与えるバルチック海運指数は、昨年8月をピークに急速に低下し現在、過去5年の最低水準近辺で推移している。中国の経済構造の変化に加えて、景気の循環的な減速、石炭需要の季節性・暖冬傾向が追い打ちをかけ、石炭の輸入需要は減速、バルチック海運指数にも顕著な低下圧力が掛かっていた。

そこに、新型コロナウイルスの影響が加わったため、バルチック海運指数は過去5年の最低水準での推移となっていた。しかし、昨年から1ヵ月程度遅れて同指数には上昇圧力が掛かり始めた。これは港湾の再稼働で輸入需要が回復した可能性があることを示唆している。

一方で港湾在庫の水準は高いため、今後この指数が上昇するには国内の工場の稼働が回復することが必要条件となるが、バルチック海運指数の上昇基調に転じればそれは中国国内の状況が改善していることを示唆する。

中国の景況感を示す指標として製造業・非製造業PMIが重要であるのは前述の通りであるが、統計発表のタイミングは月末であるため「今の状況を知る指標」としては使い難い。その観点から、当面、比較的リアルタイムで中国の国内動向を類推することができる指標として、この2つには注目しておきたいところだ。

◆主要ニュース


・2月日本コンビニエンスストア売上高 前年比+2.6%(前月+0.4%)

・3月ユーロ圏消費者信頼感速報 ▲11.6(前月改定 ▲6.6)

・2月シカゴ連銀製造業活動 0.16(前月 ▲0.33)

・FRB、米国債とMBSを必要なだけ購入、終了期限を設けず。

・ドイツ、7,500億ユーロの財政パッケージを承認。イタリア支援計画を支持する用意。コロナ対策で3人以上の集会を禁止。

・米景気対策法案、上院で動議可決に必要な票を得られず。

・G20、緊急電話会談を実施へ。

・英国、3週間のロックダウンへ。海外を旅行中の英国人に即時帰国を呼びかけ。

・米トランプ大統領、コロナウイルス対策への協力で北朝鮮に親書を送ったことを確認、イランへの支援も表明。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ロシア ベロウソフ第1副首相、「原油危機を招いた責任はアラブ諸国にある。」

・イラン、米国のコロナウイルス対策支援を拒否。

【メタル】
・Rusal、主要な欧州のアルミナ工場の部分停止を検討。

・トヨタ自動車、国内5工場の稼働を停止。

・Norilsk Nickel、2020年のパラジウムの需給バランスは▲20万オンスの供給不足(従来見通し▲90万オンスの供給不足)。

・南アフリカ、すべての鉱山を21日間停止へ。

・Glencore、ニューカレドニアのKoniamboニッケル鉱山の生産を削減。

・Freeport、コロナウイルスの影響で銅とモリブデンの生産を削減へ。

・BHP Billiton、チリの施設への入場を15日間制限。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +7.41%/ ▲10.39%
2.NYM WTI ( エネルギー )/ +6.02%/ ▲61.05%
3.銀 ( 貴金属 )/ +5.13%/ ▲25.70%
4.プラチナ ( 貴金属 )/ +5.05%/ ▲33.33%
5.パラジウム ( 貴金属 )/ +4.97%/ ▲11.37%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲27.14%/ ▲74.02%
69.インド・センセックス ( 株式 )/ ▲13.15%/ ▲37.02%
68.CBTエタノール ( エネルギー )/ ▲10.08%/ ▲35.78%
67.TGEトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲6.01%/ ▲17.33%
66.TCM天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲5.57%/ ▲22.56%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :18,591.93(▲582.05)
S&P500 :2,237.40(▲67.52)
日経平均株価 :16,887.78(+334.95)
ドル円 :111.23(+0.30)
ユーロ円 :119.31(+0.74)
米10年債利回り :0.79(▲0.06)
独10年債利回り :▲0.38(▲0.05)
日10年債利回り :0.07(▲0.01)
中国10年債利回り :2.62(▲0.06)
ビットコイン :6,414.57(+442.65)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :52.88(+2.1)
エネルギー :110.33(+6.06)
ベースメタル :39.86(+1.55)
貴金属 :69.52(+3.68)
穀物 :27.95(+0.43)
その他農畜産品 :39.77(+0.91)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :177.49(+3.73)
Brent :134.77(+1.65)
米天然ガス :65.79(+4.05)
米ガソリン :175.53(+27.08)
ICEガスオイル :90.11(▲0.07)
LME銅 :43.82(+2.63)
LMEアルミニウム :24.46(+1.75)
金 :22.46(+0.94)
プラチナ :76.03(+4.39)
トウモロコシ :30.19(▲0.13)
大豆 :22.46(+0.94)

【エネルギー】
WTI :23.78(+1.35)
Brent :27.54(+0.56)
Oman :27.68(▲1.27)
米ガソリン :44.11(▲16.43)
米灯油 :104.14(+3.51)
ICEガスオイル :299.00(▲2.00)
米天然ガス :1.61(+0.01)
英天然ガス :21.62(▲0.62)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :27.54(+0.56)
SPO380cst :171.25(+3.44)
SPOケロシン :29.81(▲2.01)
SPOガスオイル :38.35(▲0.05)
ICE ガスオイル :40.13(▲0.27)
NYMEX灯油 :104.93(+1.37)

【貴金属】
金 :1553.23(+54.58)
銀 :13.27(+0.65)
プラチナ :644.42(+30.98)
パラジウム :1724.34(+81.62)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :4,627(▲242:9C)
亜鉛 :1,823(▲69:8.5C)
鉛 :1,629(▲59:20C)
アルミニウム :1,568(▲37:32C)
ニッケル :11,142(▲308:87C)
錫 :13,700(▲825:275B)
コバルト :29,669(▲22)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :4601.00(▲99.00)
亜鉛 :1818.00(▲27.00)
鉛 :1616.00(▲19.00)
アルミニウム :1560.00(▲17.00)
ニッケル :10915.00(▲415.00)
錫 :13180.00(▲375.00)
バルチック海運指数 :617.00(▲8.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :85.89(▲3.23)
NYMEX鉄鉱石 :88.55(▲1.02)
NYMEX原料炭スワップ先物 :160.37(+0.76)
上海鉄筋直近限月 :3,392(▲48)
上海鉄筋中心限月 :3,421(▲84)
米鉄スクラップ :237(+1.00)

【農産物】
大豆 :884.00(+21.50)
シカゴ大豆ミール :333.60(+8.40)
シカゴ大豆油 :26.14(+0.50)
マレーシア パーム油 :2348.00(+10.00)
シカゴ とうもろこし :343.50(▲0.25)
シカゴ小麦 :562.50(+23.25)
シンガポールゴム :139.80(▲6.80)
上海ゴム :9440.00(▲315.00)
砂糖 :11.04(+0.13)
アラビカ :121.25(+1.55)
ロブスタ :1233.00(+15.00)
綿花 :52.15(▲1.53)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :64.58(+3.00)
シカゴ生牛 :101.65(+3.00)
シカゴ飼育牛 :125.23(+4.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。