WTI 衝撃のマイナス価格で軒並み安
- MRA商品市場レポート
2020年4月21日 第1731号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「WTI 衝撃のマイナス価格で軒並み安」
【昨日と本日の各セクターショートコメント】
◆エネルギー:原油価格はWTIが大暴落し、一時▲40ドルまで売られた。Brentも下落。北米は需要減少と生産調整の遅れで在庫を保管する場所がなく、処理コスト混みで売られた。ETFの狼狽売りも下げを加速。
本日は昨日のパニックから一転、一旦買戻しが入ると考えるが、北米の貯蔵スペース不足は継続しているため、期近には強い下押し圧力が掛かる。裁定取引の影響もあってBrent価格も下落へ。
◆非鉄金属:概ね上昇。中国の電力消費が回復するなど、事前予想よりも中国の立ち直りが早いと見られていることや、供給減少観測が材料に。
引き続き足元の需給タイト感が強まるため上昇するが、原油価格急落に伴う実質金利の上昇や株価の調整が下押しするため上値も重い。
◆鉄鋼原料:鉄鉱石価格は上昇。ValeのQ120の減産や2020年ガイダンスの引き下げが材料。原料炭・鉄鋼製品価格は在庫水準の高さから軟調。
生産者の生産調整と在庫水準(在庫日数)の低さから鉄鉱石は高止まり、原料炭は在庫高でやや軟調、鉄鋼製品は中国景気回復期待で底堅い。
◆貴金属:総じて堅調。米株の調整を受けた安全資産需要の高まりで。ただしPGMは株安で軟調。
原油価格急落を受けたエネルギーセクターの業績悪化を受けて株安で上昇も、実質金利の上昇が価格を下押し。PGMは株の調整で軟調。
◆穀物:トウモロコシ価格は原油価格の急落と生産地の気象改善で下落、大豆も連れ安。シカゴ小麦は在庫の低さと黒海周辺の供給減少観測で強い。
原油価格がテクニカルな要因で下落していることから、トウモロコシ価格も下落。大豆も連れ安。小麦は巣籠消費需要と供給懸念で堅調。
※より詳細な説明は以下をご参照ください。
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場はエネルギーセクター、特に北米の液体石油セクターが売られ、株などのその他の商品も連れ安となった。
株下落を受けて貴金属が物色され、経済活動の再開と供給懸念で非鉄金属、気温低下の影響で天然ガス、その他農産品が物色された。
昨日、なんと言っても大きいニュースは、WTIが「逆オイルショック」でマイナス価格で取引されたこと。ただこれはWTI以外の北米原油価格も同様であり、本当に米国の原油・石油製品需給が緩和していることを再認識することとなった(詳しくは本日のMRA's Eye(有料レポート)で詳述しています)。
北米原油の価格下落が加速したもう1つの背景には、このコラムでも指摘したが、原油ETFの仕組みを知らないまま(コンタンゴの時に発生するロールオーバー損発生の仕組みを知らないまま)に投資をしていた投資家の狼狽売りが入ったことも、下げを加速させたと見ている。
特にダブルアップ系の商品(値上がり・値下がり損益が2倍になる)ではこの傾向が強い。
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【本日の価格見通し総括】
本日は昨日の原油市場の混乱もあり、多くの商品に換金売りが入る展開が予想される。しかし、原油の価格もとりあえず今晩で限月交代となるため、一旦落ち着くことになるだろう。
今後、という意味では明日以降、限月交代したWTIの価格がどうなるかに焦点が当たる。仮に減産が進まず在庫スペースが足りず、という状態が解消しなければ、再び限月交代(5月19日)前後に価格が急落することは十分にあり得る。
予定されている材料としては、独ZEW景況観期待指数(市場予想▲42.0、前月▲49.5)、現状指数(▲77.5、▲43.1)に注目しているが、欧州の情勢も悪化している可能性が高く、やはり景気循環系商品には下押し圧力が掛かることになるだろう。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
昨日発表された3月の日本の貿易統計は、輸出が前年比▲11.7%(市場予想▲9.4%、前月▲1.0%)と市場予想を下回った。
輸入金額は▲5.0%(▲8.7%、▲13.9%)と11ヵ月連続で前年比マイナス。前月からの大幅な回復は、2月が中国からの輸入が大幅に減少したことが影響している。
輸出数量は前年比▲11.2%(前月▲2.4%)と減少、輸入数量は▲2.5%(▲17.3%)とマイナス幅が縮小している。地域別に輸出状況を見ると輸出の減少率は米国が最も大きく▲15.9%(▲4.5%)。明らかにロックダウンの動きによるものだ。ロックダウンで先行した中国の輸入が▲10.4%(▲2.6%)であることを考えると、米国の輸入はまだ減少するだろう。欧州向けも同様と予想される。
今後の貿易活動の再開は、ロックダウンの解除動向に左右されることになるが、先行する中国の経済活動は、電力消費が前年比+1.5%と増加したり、工業生産が市場予想程の悪化にならないなど、回復基調にあるため、この通りであるならば2~3ヵ月後から欧米も立ち直る可能性は高い(同時に中国の輸出も低迷するため、中国の回復も緩やかに)。
しかし、中国は新規感染者数を過少申告していた他、一度陰性になった人間が再度感染するといった事象も一部の国で確認されており未知の部分が多く、この後、欧米に感染の第二波、第三波が訪れる可能性も否定できない。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
<<マクロ要因>>
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。
中国の製造業・非製造業PMIは大幅な改善となったが、アンケートの取り方が「前月からの商況の変化」であるため、これを額面通りは評価し難い。もう数ヵ月この統計を見ていく必要があるだろう。
それ以上に、今後発表される欧米のPMIの悪化度合いが重要に。
・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(+3.3%→▲3.0%)ている。ただし2021年には+5.8%への急回復を見込んでいる。
ただこの通りになるためには、コロナウイルス感染拡大終息が必要条件であり、第二次感染拡大となり得る冬場までの終息がなければ、それは難しかろう。
・FRBは合計で▲150bpの緊急利下げと、ドル需要ひっ迫の状況を緩和するための無制限の量的緩和も実施、債券買い入れもジャンク債も対象とするなど、打てる手は出し惜しみなく出しているため、徐々に不安は解消しよう。
ただし、持てる金融政策のカードをほとんど切ってしまったため、今後、不測の事態が発生した場合のリスクは小さくない。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。
※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。
・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。
<<特殊要因>>
・中国の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けた、世界的な経済活動の鈍化長期化(景気循環系商品価格の下落要因、世界の経済構造変化も)。
・米中が通商面で再び対立(国営企業への補助禁止、人権面、知的財産権など)する可能性はあり、さらに新型コロナウイルスの感染拡大が終息したのちに、ウイルス問題を受けて対立が激化する可能性も排除できず。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
<<投機・投資要因>>
・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。
・コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は米国原油が大暴落して、マイナス価格で引けた。全米の在庫保管スペースがなくなったと見られ、それに原油ETFの仕組みを知らずに投資をしていた個人投資家などの狼狽売りが入ったことが影響した(詳しくは本日のMRA's Eyeをご参照ください)。
ただ、WTIは現物の受け渡しを前提とする先物であるため、貯蔵スペース問題などの特殊要因が価格を極端に押し下げた感は否めない。全米ではほとんどの原油価格がマイナスでやり取りされている。
ただ、現在WTIの第二限月価格は20ドル台であり、欧州原油やドバイも20ドル台であることから、世界の需給バランスを反映した価格はこちらと考えるべきである。
【原油価格見通し】
原油価格は世界的な減産の動きと、IMFの見通し悪化をとりあえず織り込んだ形であり、コロナウイルスの感染拡大ペースの減速から、徐々に水準を切り上げる展開を予想する。
ただし、景気回復ぺースは緩やかにならざるを得ず、上昇余地も限定されると見る。
一大産油国であり、消費国でもある米国の貯蔵スペース枯渇の問題が顕在化したことから、しばらく米国原油は低い水準、それこそ「処理コスト混みの価格」であるマイナス価格で取引される可能性が高まってきた。
この状態が続くと生産者の破綻が相次ぐことになるため、米政府が戦略備蓄として原油を受け入れる可能性はある。ただ、それでも全米の在庫を引き受けるだけのゆとりがないことは事実だ。
現在の戦略備蓄貯蔵能力は7億1,350万バレル、戦略備蓄量は6億3,497万バレル。数字の上では7,853万バレルの備蓄が可能だ。米エネルギー省はこの4月、7,700万バレルの貯蔵スペースを開放する方針を示しているが、貯蔵設備までの輸送の問題もあり、この問題が片付くにはしばらく時間が掛るだろう。
現在の価格水準が継続すれば米国やカナダも2割程度、自動的に減産が行われる可能性は高く、結果的に全世界で2割程度の減産になると見ている。
米シェールオイルの生産者のコストは50ドル近辺、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度。現在の価格水準ではほとんどの生産者が利益を確保できない。
価格下落リスクヘッジをしている生産者も、引き受け手がいない原油を保有している訳にも行かないため、操業を停止するところが出てくるだろう。纏まった数の企業破綻が起きるとすれば、ヘッジ期間の目処である3、6、9、12月末。
今後を占う上で重要なのが、どのタイミングでコロナウイルス問題が終息するか、OPECプラスの減産幅縮小が始まるか、である。
6月以降の減産規模の縮小については、需要動向が価格を決定するため、減産計画は実態に合わせて随時見直しされるだろう。ただ、世界ではコロナウイルスの新規感染者の増加ペースが減速を始めていることから、6月会合で減産規模は縮小されると予想される。
ただ、この時の減産規模や時期を誤ると、価格が大きく上昇するリスクがある。すでに非OPECプラス諸国が減産を余儀なくされる見込みであり、実際に減産を行うと稼働再開には時間が掛るため、四半期末を越えたタイミングでの感染終息は、価格上昇リスクを高めやすい。米シェール企業でも増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかるためだ。
逆に、コロナウイルスの感染拡大防止に失敗し、「今年の冬に第二ラウンドに突入」となると需要の回復は難しく、かつ、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、▲760万バレルの減産では価格維持に不十分となる可能性も充分にあり得る。
さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。
コロナウイルスの感染拡大動向が価格動向の鍵を握ることは間違いがない。
さらに影響がよく分からないのが、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点。これによって株が急騰する可能性はあり、その場合エネルギーセクターにもリバランスの買いが入るため、投機的な観点から価格を押しあげよう。
株価の急騰は再び実態経済と、株価の顕著な乖離をもたらすため、その後のリスク資産価格を乱高下させる要因となるため要注意だ。
逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことはリスクといえる。コロナウイルスの影響が長期化する可能性は徐々に高まっている。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は下落した。中国の港湾在庫の増加や、原油価格の急落に伴いさすがに連れ安となったようだ。
【石炭価格見通し】
石炭価格はしばらく下値余地を探る動きになると考えている。
季節的に夏場前の不需要期であること、中国の港湾在庫が急増しており過去5年平均を上回ったことが背景。
ただし早晩夏場のピークに差し掛かることや、中国の工場再稼働も緩やかながら始まっていることを考えると今後、季節的な価格上昇はあると考える。とはいえ、回復のペースは緩慢であり上昇余地も限定。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲3割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。
世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善
・1-3月期中国工業生産は前年比▲8.4%(1-2月期▲13.5%)と回復。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(フロー需要の減少=価格の下落要因)。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。
<<特殊要因>>
・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化が、中東情勢を悪化させ供給リスクにつながる場合。
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。
・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。
<<投機・投資要因>>
・WTIは4月14日時点でロングが増加、ショートも増加したがネットロングは増加。Brentはロングが増加、OPEC減産見通しでショートが減少。
いずれも需給タイト化を意識した、強気のポジション取りに。
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが700,474枚(前週比 +44,703枚)ショートが189,805枚(+18,929枚)ネットロングは510,669枚(+25,774枚)
Brentはロングが232,362枚(前週比+2,751枚)ショートが120,908枚(▲5,088枚)ネットロングは111,454枚(+7,839枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME市場は高安まちまちだが、総じて堅調な推移となった。中国の経済統計の改善に伴う経済活動の回復期待や、コロナウイルスの感染拡大に伴う生産者の減産進捗が材料となり、買戻しが続いた。
4月上旬の中国の電力消費が「コロナウイルスの発生がない」前年よりも増加しているなど、想定以上に中国景気が回復している可能性が高まっていることが非鉄金属価格を押し上げている。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は底堅い推移になると考える。企業活動の現在の状況を正確に把握することは困難であるが、最大消費国である中国の経済活動が再開し、上海在庫の減少継続が確認されていること、チリ・ペルーなどの生産国でもコロナウイルスの感染拡大が確認され、鉱山生産が減少していることから。
この時期の上海在庫減少はある意味季節性通りではあるが、鉛やニッケル、錫などの在庫減少ペースは例年よりも早い。生産者の稼働の遅れと、消費者の工場稼働に差が生じているためと考えられる。
ただし、原油価格の急落で実質金利には上昇圧力が掛かりやすくなっており、ファイナンシャルな面で価格の上昇は抑制される。
また、価格が持続的な上昇になるためには需要の回復が必須。ここまでの価格上昇はどちらかといえば3月末を越えたことで、売りポジションを拡大していた投機の買戻しの動きが強まったことによる、テクニカルな上昇の側面が強い。
今のところ、それでも7月~8月頃に世界経済は再稼働を始めるという、希望的観測も含めた見通しがメインシナリオとなっているが、経済活動の抑制状態が続いている状況に変わりはなく、あと数ヵ月は通常状態よりも需要が抑制された状態が続くと見られるため、再び非鉄金属価格は下落に転じるだろう。
結局、下値余地が徐々に限定され始め、緩やかに価格は水準を切り上げるが当面、上昇余地は限定される、ということだ。
基本的に戻りは緩やかなものになると見ているものの、稼働停止となっている鉱山の稼働が速やかに再開されるのか不明であり、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点も先々の価格上昇リスクを強めている。
逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクだろう。コロナウイルスの影響が長期化する可能性は徐々に高まっている。
長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。
具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。
再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・3月の中国製造業PMIは52.0(前月35.7)と大幅な改善となり、好不況の閾値である50を回復。ただし、統計の強制的な不連続性発生により、統計が安定して評価できるようになるには数ヵ月を要する見込み。
生産活動が回復(27.8→54.1)、新規受注も回復しているが(29.3→52.0)、輸出新規受注の回復が緩慢であることを勘案すると(28.7→46.4)、やはり国内向けの回復によるもの。
新規受注在庫レシオも急回復しており、ファンダメンタルズ的には非鉄金属価格を押し上げ(ただし輸出需要の回復が緩慢であり影響は限定)。
・金属にもよるが、主要生産者がコロナウイルスの影響による生産調整に動いており、供給面で価格を押し上げ(労働力が集まらない、業績悪化に伴う設備投資の減額、採算性悪化に伴う減産など、理由は様々)
(アルミ)Norsk Hydro Husnesアルミプラントの増産をQ320まで先送りアルゼンチン Aluar Puetro Madrynでの生産能力の▲50%を停止
(銅)南米の鉱山生産者(供給の約2割)は需要減と感染拡大防止のため、稼働率の引き下げを余儀なくされている状況Cerro Verde、Los Bronces、Constancia、Las Bambas、Collahuasi、Antaminaなど
(錫)PT Timah、需要の減少で当面錫生産を▲20%~▲30%減らす計画
(亜鉛)NewmontのPenasquito、Pan American SilverのLa Colorada、Grupo MexicoのBuenavistaとSan Martinなどが減産を決定
・3月銅製品生産者稼働状況
銅線生産者 75.8%(前月34.7%、過去4年平均 82.9%) 銅棒生産者 53.6%(25.9%、75.3%) 銅板生産者 32.6%(59.8%、74.4%) 銅管生産者 76.9%(39.1%、83.3%)
・1-3月期中国工業生産は前年比▲8.4%(1-2月期▲13.5%)と回復。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(フロー需要の減少=価格の下落要因)。
・1-3月期中国固定資産投資は、前年比▲16.1%の8兆4,145億元(1-2月期▲24.5%の3兆3,323億元)と減速感が改善。公的部門は▲12.8%(▲23.1%)とマイナスながらも前月からマイナス幅が縮小、民間部門も▲18.8%(▲26.4%)とマイナス幅が縮小した。
ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・1-3月期中国不動産開発投資は前年比▲7.7%の2兆1,963億元(1-2月期▲16.3%の1兆115億元)とやはりマイナス幅が縮小した。
ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・3月の中国の銅輸入は前年比+13.3%の44万トン(1-2月期85万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+0.5%の178万トン(377万トン)となった。
銅地金の輸入は過去5年平均程度であるが、米中通商戦争が激化を始めた昨年に比べると高い水準。銅鉱石の輸入は、過去5年の最高水準だった昨年の水準を上回った。
いずれも中国の工業活動が平常状態に戻りつつあることを確認する内容であり、価格の上昇要因。
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
<<特殊要因>>
・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。
・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)
<<投機・投資要因>>
・4月10日付のLMEロング・ショートポジションは、総じてロングの買戻しが入り、ネット買い越し幅を拡大下。合わせて生産調整(強制的な鉱山生産停止)が起きている金属のショートが買い戻される動きが続いた。
結果、ネットロングはすべての商品で増加しており、錫はネット買い越しに転じている。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲50.0億ドル(前週▲53.1億ドル)と売り越し幅を縮小した。売り越し額の減少率は▲5.9%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,728千トン(▲1,851千トン)とCME銅以外の売り越し幅が減少した。ネット売り越しの減少率は▲6.7%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅上昇、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は下落した。
ValeのQ120の生産がガイダンスを下回り、2020年の目標も変更されたため。
ValeのQ120の鉄鉱石生産が前年比▲18.2%の5,960万トンとなり、6,300万トン~6,800万トンの生産目標も下回った。ある京唐港の港湾在庫の水準が高いこともあり、水準を小幅に切り下げた。
2020年の鉄鉱石ガイダンスも、3億1,000万トン~3億3,000万トン(従来見通し3億4,000万トン~3億5,500万トン)に下方修正された。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は中国の工場の稼働再開と、インドなどの生産国がコロナウイルス対策の影響で鉱山の稼働を停止したり、輸送を停止したりということが顕在化し始めていることが価格を押し上げるが、コロナウイルスの影響で景気減速は必定であり、現状水準でもみ合うものと考える。
中国河北省の高炉稼働率は4月3日時点で78.5%(前週77.8%)と上昇を続けており、中国の工場稼働が回復していることが伺える。
今後、中国以外の国でコロナウイルスの影響が拡大することを考えると、鉄鋼業の景況感の回復にはやはり時間がかかることになると予想される。
中国の鉄鋼製品は例年通り季節的な在庫の取り崩しが始まったが、例年よりも在庫の減少ペースが速い。生産者の供給が十分ではない中、最終需要者の稼働が回復している可能性があることを示唆している。
原料炭は新型コロナウイルスの影響で世界の経済活動が鈍化、鉄鋼需要の伸びも欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。
中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年のレンジを上抜けしており、足元の需給も緩和している。
しかし、生産側も同様に影響を受けていること、世界的な石炭生産制限の流れを受けて、鉄鉱石とは異なり原料炭価格の中長期見通しは強気である。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・3月の中国鉄鋼業PMIは42.2と前月の36.6から大幅に改善。
生産が回復したことと(31.3→39.3)、原材料在庫が積み上がったこと(29.2→44.9)によるもの。
受注は国内は改善したがむしろ海外向けは減速(新規受注 32.7→38.5、輸出新規受注 42.5→27.3)しており、需要面が価格を下押ししやすい。
・1-3月期中国工業生産は前年比▲8.4%(1-2月期▲13.5%)と回復。ただし前年比マイナスの状態は変わらず(フロー需要の減少=価格の下落要因)。
・1-3月期中国固定資産投資は、前年比▲16.1%の8兆4,145億元(1-2月期▲24.5%の3兆3,323億元)と減速感が改善。公的部門は▲12.8%(▲23.1%)とマイナスながらも前月からマイナス幅が縮小、民間部門も▲18.8%(▲26.4%)とマイナス幅が縮小した。
ただし前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・1-3月期中国不動産開発投資は前年比▲7.7%の2兆1,963億元(1-2月期▲16.3%の1兆115億元)とやはりマイナス幅が縮小した。
ただし、前年比マイナスの状態は変わらず(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・3月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比+2.3%の647万6,000トンと回復した。ただし前年の水準は米中対立の影響で過去5年の中でもほぼ下限に近く、中国外のロックダウンによる需要減少が顕在化した形。
中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲99.3万トンの2,275.9万トン(過去5年平均1,383.4万トン)とコロナウイルスの影響で在庫が急増していたが、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが始まっている。
ただし、例年よりも取り崩しのペースは早く、鉄鋼生産者の稼働が最終需要家の回復よりも遅れている可能性があることを示唆している。
・3月の中国の鉄鉱石の輸入量は前年比▲0.6%の8,591万トンとなり、過去5年水準を下回った。鉄鋼製品在庫の高さもあって、鉄鉱石輸入の動きは鈍い。
しかし、在庫日数ベースの港湾在庫の水準は低く一定の在庫積み増し需要があると考えられる。
中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+40万トンの1億1,905万トン(過去5年平均1億2,613万トン)、在庫日数は+0.1日の28.4日(過去5年平均 30.9日)と依然として在庫水準は低い。
鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、一定の鉄鉱石の輸入需要が価格を高止まりさせると考える。
・3月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比+18.5%の2,783万トンと増加し、過去5年レンジを超えた。中国の経済活動の再開を反映したもの。
ただし、石炭輸入動きを占う上で参考になるバルチック海運指数は回復してはいるものの昨年の水準を下回っている。これは主要用途である電力向けの石炭在庫の水準が高いこと、コロナからの回復が緩慢であることを示唆している。
・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
<<特殊要因>>
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。
<<投機・投資要因>>
・特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金銀価格は上昇した。原油価格が下落する中、実質金利が上昇したものの、株価の調整を受け、安全資産需要が高まったため。銀、プラチナも同様。
パラジウムは株価の下落で水準を切り下げる展開となった。
【貴金属価格見通し】
金銀は高値圏で推移すると考える。コロナウイルスの感染拡大ペースは鈍化しているものの、中国の感染者数が再び増加を始めるなど、不安要素が多いこと、価格への影響はさほど大きくないと見られるがOPECプラス+αの減産合意で、原油価格の下落余地が限定され始め、実質金利が低下しやすいことが材料。
現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は251ドル(前日比▲1ドル)。コロナ・OPECショック前の水準(250ドル程度)を取り戻した。
現在の実質金利で説明可能な価格水準は1,450ドル程度と、昨日から若干切り下がった。
※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください。
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では、金在庫の急増もあって115倍程度が妥当である。関係性が薄れているとはいえCOMEX銀在庫が過去最高水準で推移しているため、しばらくは100倍を超える状態が続くと考えられる。
コロナ・OPECショックによる相場急変で、金価格と銀価格の過去の関係性が完全に崩壊してしまっており、新しい関係性が構築されるまでには時間が掛りそうだ。
PGM価格は、景気の先行きは明確に悪く、少なくともQ220は悪い状態が続きそうであること、株式市場の混乱も続いているためしばらくは軟調地合いの中、神経質なレンジワークを継続することになると考える。
プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な色彩が強まっているが、各国の準備金や市場取引の担保価値がみとめられている金のような安全資産としては認知されていないことによる。
銀価格は上記の通り当面低迷する可能性が高いため、プラチナ価格も低迷するだろう。
パラジウムは、世界的な景気減速に伴う自動車向け需要の減速が価格を下押しするものの、コロナウイルスの感染拡大で南アフリカの鉱山がすべて停止するなど、供給途絶リスクが顕在化しているため、高値圏での推移になると考える。
ただ、Norilsk Nickelは2020年のパラジウムの需給見通しを▲90万オンスの供給不足から、▲20万オンスの供給不足に下方修正しており、上限は切り下がったと考えられる。
3月の米自動車販売は年率1,137万台(市場予想 1,270万台、前月 1,683万台)と、急速に悪化している。明らかにコロナウイルスによる消費手控えの影響によるものである。
中国の3月の自動車販売は前年比▲43.3%の143万台(前月代▲79.1%の31.0万台)となり、コロナウイルスの感染拡大防止に伴うロックダウンの影響を強く受けた。
今後、中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻っている訳ではないので、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。
今後、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・FRBは▲1.5%の緊急利下げ、無制限の量的緩和を決定、貴金属価格の上昇要因に。
ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、
<<特殊要因>>
・中国の新型ウイルスの世界的な拡大に伴う、安全資産需要の高まり。
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(金銀価格の上昇要因)。
・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。
・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。
・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
<<投機・投資要因>>
・金銀は、ロング・ショートともが増加し、キャッシュ化の動きが鎮静化。
プラチナはロング・ショートとも減少、パラジウムは小幅な変化に留まった。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが286,617枚(前週比 +6,737枚)、ショートが34,116枚(+3,178枚)、ネットロングは252,501枚(+3,559枚)、銀が48,003枚(+1,532枚)、ショートが17,449枚(+695枚)、ネットロングは30,554枚(+837枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが29,126枚(前週比 ▲1,433枚)ショートが11,330枚(▲208枚)、ネットロングは17,796枚(▲1,225枚)
パラジウムが2,101枚(+39枚)、ショートが1,285枚(▲56枚)ネットロングは816枚(+95枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物市場はまちまち。トウモロコシは大幅に下落。米中西部の天候改善観測や、原油価格の大暴落が引き金となった。大豆もトウモロコシに連れ安。
小麦はコロナウイルスの影響と天候要因で黒海地域の生産者の供給減少が意識された。
2020年4月16日次点の米穀物の週間輸出検証高は以下の通り。
トウモロコシ 683.85千トン(前週比▲492.66千トン)大豆 539.82千トン(+65.59千トン)小麦 469.92千トン(▲190.46千トン)
【穀物価格見通し】
穀物価格は高安まちまちになると考える。
トウモロコシは作付け意向面積の増加と、コロナウイルスの感染拡大に伴うエタノール向け需要の減少や原油価格の暴落が価格を下押しするが、同時にエタノール生産者の大幅な減産が見込まれていることが価格を下支え。
大豆はコロナウイルスの影響による輸出減速観測や、トウモロコシのエタノール向け需要の減少に伴う飼料向け需要の増加から、競合関係にある大豆ミール需要も減少すると見られ軟調に。
小麦はそもそもシカゴの受け渡し可能在庫水準が低く、かつ、コロナウイルスの感染拡大や干ばつの影響で、ロシアがQ220の輸出を制限するとの見方による供給懸念や、欧州・北アフリカ消費者の巣籠需要で高値圏を維持すると考える。
懸念すべきは東アフリカ・中東地域でサバクトビバッタが激増、深刻な食糧危機をもたらしており、これに伴う食品需要が増加する場合。
【価格変動要因の整理】
<<マクロ要因>>
・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)
・4月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)
・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)
<<特殊要因>>
・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。
・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
<<投機・投資要因>>
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが231,417枚(前週比 +3,799枚)、ショートが304,711枚(+21,318枚)ネットロングは▲73,294枚(▲17,519枚)
大豆はロングが177,134枚(+12,780枚)、ショートが80,210枚(+8,957枚)ネットロングは96,924枚(+3,823枚)
小麦はロングが107,952枚(+2,117枚)、ショートが74,175枚(+4,080枚)ネットロングは33,777枚(▲1,963枚)
◆本日のMRA's Eye
「原油価格は年末高騰の可能性も」
WTIが一時、衝撃の▲40ドルを付けた。これまで商品市場で意識されてきたのは、「●●がショートポジションを保有しているが、在庫を持っていないはずだ」という「スクイーズ」が意識されるときだろう。
足元、本日限月交代を迎えるWTIの直近限月の価格は、第二限月比で38ドルの見たことのないディスカウントとなっており、今までの常識を完全に超えた。
背景には、1.需要の減少、2.生産調整の遅れ、3.それに伴う需給の緩和、が教科書的なところであるが、それ以上に「余剰製品を保管する在庫のキャパシティ」リスクが顕在化した形だ。
また、原油価格の下落を受けて、原油ETFの構造を知らない投資家が、大量にETFの買いを入れていたが(これは日本でも同様)、この急落を受けて投げ売りを出したことも下げを助長したと見られる。
WTIは米国の原油の指標と説明されているが、正確には、「オクラホマ州クッシングで受け渡しされる原油の価格」であり、クッシングの在庫動向に価格が左右される。現在、クッシングの在庫水準は大幅に上昇しており、先週水曜日時点の米石油統計ではクッシング在庫は5,497万バレルとなり、クッシングの貯蔵キャパシティ(2019年9月末時点7,609万バレル)の72.2%まで上昇していた。
過去、2016年のイラン制裁解除後、2016年3月11日に92.4%を付けたのが最高水準だったが、この時WTIは30ドル割れまで下落した。しかし、現在の水準はマイナス圏。これはすなわち、統計数字には表れていないが、すでにタンクのキャパシティが限界に達している可能性があることを示唆している。
米国でロックダウンの動きが始まった3月中旬のタンク使用率は50.5%だったが、わずか1ヵ月で20%以上上昇したことになる。この間、米国の原油生産は大きく減少しておらず、このペースで在庫が増加すれば後1ヵ月半程度で100%を上回り、保存ができないことになる。
実際、先週の在庫統計でクッシングの原油在庫は572万バレル増加している。同じペースで増加するなら、1ヵ月でタンクは限界に達することになるが、値動きを見るにすでに上限を超えたのだろう。その結果、本来価値があるはずの原油は「お金を払わなければ受け取ってもらえないもの」となってしまい、価格が急落したわけだ。
価格リスクヘッジを行っている生産者も、生産した原油の引き取り手がないようであれば原油の保管に問題が出るため、生産を止めるか、生産した原油を冗談ではなく、砂漠に撒いて捨てるということが起きかねない。
この状態を回避するため、米政府が戦略備蓄として原油を受け入れる可能性はある。ただ、それでも全米の在庫を引き受けるだけのゆとりがないことは事実だ。
現在の戦略備蓄貯蔵能力は7億1,350万バレル、戦略備蓄量は6億3,497万バレル。数字の上では7,853万バレルの備蓄が可能だ。米エネルギー省はこの4月、7,700万バレルの貯蔵スペースを開放する方針を示しているが、貯蔵設備までの輸送の問題もあり、この問題が片付くにはしばらく時間が掛るだろう。
この、保管場所がなくなったことで発生する価格下落の動きは全米に広がっており、ほとんどの原油が▲30ドル~▲60ドルで値付けされる異常事態となっている。
今のところコロナウイルスの感染拡大が、1~2週間で終息するとは思えない。そのため、減産が進まなければこの動きは続くことになると予想される。
しかし、WTIの第二限月の価格は20ドル台をまだつけており、この1ヵ月で生産調整が進むと市場は見ているようだ。しかし本日限月交代した後の、現在の第二限月価格の動きにより注目する必要がある。
仮に限月交代後も原油価格が下落すれば、体力のない生産者が破綻し、減産が強制的に起きる可能性が出てきた。この場合、エネルギーセクターの連鎖的な破綻に繋がるリスクも排除できない。
FRBがジャンク債を買い支えると表明しているが、トップラインの維持が困難な中ではそれもかなわないのではないか。それ以上に、米銀がエネルギーセクター向けの貸倒引当金の積み増しを余儀なくされ、その他の信用市場に波及するリスクも無視できなくなってきた。
エネルギーの価格リスク量測定や、エネルギー取引のシステムも通常は、「マイナスにならない」という前提で作られており、価格評価モデルには対数正規分布が使割れることが多いため、このモデルも見直ししなければならなくなるだろう。
また、コスト(税金)を支払いながら普及している再生可能エネルギーも、原油を用いたほうが経済合理性の観点からもこれらのエネルギー元を凌駕しているため、再生可能エネルギーの利用にブレーキがかかる可能性もある。
世界のエネルギー市場が重要な局面を迎えていることは間違いがないが、それと同時に産油国にも深刻な状態にあるといえる。
まだドバイは20ドルを超える価格で取引されているため米国ほどではないが、この「財政均衡価格を激しく下回る状態」が続けば、産油国の破綻や暴動も起きかねない。まさに「お金をもらって原油を買ってもらう」状態となる。
また、特にこのコラムでも指摘しているが、食料危機への懸念が強まる北アフリカ諸国、コロナ感染拡大が続くイラン、場合によると王族も大勢感染している可能性があるサウジアラビアなどの体制維持懸念は、逆に今後の「供給懸念」を強める。
オイルマネーを背景に強気の外交を続けてきたムハンマド皇太子も、立場が悪化するのではないか。
しかし、産油国の情勢・体制不安につながる場合、数ヵ月後に原油が急騰するという逆のリスクが顕在化する可能性も忘れてはならない。
◆主要ニュース
・3月日本貿易収支季節調整前 49億円の黒字(前月1兆1,088億円の黒字)
輸出 前年比▲11.7%の6兆3,579億円(▲1.0%の6兆3,213億円)
輸入▲5.0%の6兆3,529億円(▲14.0%の5兆2,125億円)
米国向け
輸出 ▲16.5%の1兆1,821億円(▲2.6%の1兆2,698億円)
輸入+1.3%7,453億円(▲5.9%の6,431億円)
欧州向け
輸出▲11.1%の6,337億円(▲7.7%の6,091億円)
輸入▲9.7%の6,710億円(▲8.2%の6,275億円)
アジア向け
輸出▲9.4%の3兆4,530億円(+1.7%の3兆3,714億円)
輸入▲4.0%の3兆301億円(▲24.0%の2兆1,430億円)
中国向け
輸出▲8.7%の1兆1,906億円(▲0.4%の1兆1,360億円)
輸入▲4.5%1兆4,318億元(▲47.1%の6,734億円)
・3月日本コンビニエンスストア売上高 前年比▲5.8%(前月+2.6%)
・2月独生産者物価指数 前月比▲0.8%(前月▲0.4%)、前年比▲0.8%(▲0.1%)
・2月ユーロ圏経常収支季節調整済 402億ユーロの黒字
(前月318億ユーロの黒字)
・2月ユーロ圏貿易収支(季節調整済) 258億ユーロの黒字
(前月 182億ユーロの黒字)
調整前 230億ユーロの黒字(13億ユーロの黒字)
・3月シカゴ連銀製造業活動 ▲4.19(前月 0.06)
・中国5年貸し出しプライムレートを4.65%(▲10bp)、短期プライムレートを3.85%(▲20bp)引き下げ。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・WTI、初のマイナス価格で取引され、マイナス圏で引け。
【メタル】
・3月中国プライマリアルミ生産 前年比+90千トンの2,970千トン
(前月3,036千トン)
・ペルー Teck Antamina銅・亜鉛鉱山、コロナウイルスの感染者発生により操業停止、フォースマジュール宣言。
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +9.75%/ ▲12.11%
2.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +7.05%/ ▲43.16%
3.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ +3.52%/ ▲11.13%
4.SHFニッケル ( ベースメタル )/ +2.91%/ ▲9.76%
5.CBT小麦 ( 穀物 )/ +2.86%/ ▲1.79%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲305.97%/ ▲161.63%
69.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲10.16%/ ▲55.58%
68.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲8.94%/ ▲61.26%
67.NYM灯油 ( エネルギー )/ ▲7.16%/ ▲56.23%
66.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲5.97%/ ▲60.64%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :23,650.44(▲592.05)
S&P500 :2,823.16(▲51.40)
日経平均株価 :19,669.12(▲228.14)
ドル円 :107.62(+0.08)
ユーロ円 :116.90(▲0.05)
米10年債 :0.61(▲0.04)
中国10年債利回り :2.58(+0.03)
日本10年債利回り :0.02(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.45(+0.02)
ビットコイン :6,868.11(▲192.03)
【MRAコモディティ恐怖指数】
ベースメタル :29.34(▲1.22)
貴金属 :48.47(▲2.01)
穀物 :20.83(▲1.61)
その他農畜産品 :46.73(▲0.43)
【主要商品ボラティリティ】
Brent :113.18(+3.42)
米天然ガス :74.74(+1.9)
米ガソリン :184.65(▲4.22)
ICEガスオイル :67.20(▲0.28)
LME銅 :33.30(▲3.12)
LMEアルミニウム :21.71(+0.63)
金 :15.42(▲2.17)
プラチナ :43.34(▲1.97)
トウモロコシ :16.52(+1.9)
大豆 :15.42(▲2.17)
【エネルギー】
WTI :-37.63(▲55.90)
Brent :25.57(▲2.51)
Oman :23.52(▲1.16)
米ガソリン :66.83(▲4.24)
米灯油 :88.78(▲6.85)
ICEガスオイル :261.75(▲13.75)
米天然ガス :1.92(+0.17)
英天然ガス :13.80(▲1.56)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :25.57(▲2.51)
SPO380cst :143.25(▲10.29)
SPOケロシン :26.17(▲2.37)
SPOガスオイル :32.40(▲2.39)
ICE ガスオイル :35.13(▲1.85)
NYMEX灯油 :92.12(▲2.84)
【貴金属】
金 :1695.65(+12.83)
銀 :15.32(+0.14)
プラチナ :774.18(▲2.47)
パラジウム :2171.22(+4.90)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,190(▲4:20.5C)
亜鉛 :1,952(+5:11C)
鉛 :1,672(▲1:21C)
アルミニウム :1,490(▲30:38.5C)
ニッケル :12,334(+367:79C)
錫 :15,197(+30:17C)
コバルト :29,678(▲14)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5174.00(▲36.00)
亜鉛 :1945.00(▲6.00)
鉛 :1683.50(+6.50)
アルミニウム :1505.00(±0.0)
ニッケル :12495.00(+425.00)
錫 :15165.00(▲10.00)
バルチック海運指数 :751.00(+25.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :84.89(+0.36)
NYMEX鉄鉱石 :84.43(+0.26)
NYMEX原料炭スワップ先物 :134.59(▲0.55)
上海鉄筋直近限月 :3,541(▲15)
上海鉄筋中心限月 :3,379(▲21)
米鉄スクラップ :273(▲8.00)
【農産物】
大豆 :826.50(▲6.00)
シカゴ大豆ミール :285.60(▲2.60)
シカゴ大豆油 :25.98(▲0.31)
マレーシア パーム油 :2290.00(+5.00)
シカゴ とうもろこし :314.25(▲8.00)
シカゴ小麦 :548.75(+15.25)
シンガポールゴム :139.00(+0.20)
上海ゴム :9830.00(+60.00)
砂糖 :10.06(▲0.31)
アラビカ :113.65(▲2.40)
ロブスタ :1140.00(▲11.00)
綿花 :54.03(+1.26)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :40.60(+2.68)
シカゴ生牛 :93.53(▲1.13)
シカゴ飼育牛 :118.33(▲1.20)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。