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各国の協調コロナ対策で急反発~米国は国家非常事態を宣言
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年3月16日 第1706号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「各国の協調コロナ対策で急反発~米国は国家非常事態を宣言」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は景気循環系商品に買戻しが入り、非景気循環系商品や安全資産に売りが入る展開となった。

景気の先行きへの懸念が強まる中で、米国は欧州との渡航制限に踏み切ったことがリスク資産の急落をひきおこしたが、金曜日にはトランプ大統領が国家非常事態を宣言、コロナウイルス対策に多額の予算を計上し、IT技術も駆使して封じ込めに取り組む表明をしたことで、24時間前とは完全に米国の空気が変わったため。

また、事前に調整があったと思われるが、欧州も税制出動に動き、シェンゲン協定はあるものの国境封鎖によって、短期的な景気減速を甘受しつつも感染拡大防止に舵を切る方針であることも評価された。

しかし、商品価格の動きをみると、原油は低迷し、銅をはじめとする非鉄金属は今回の株暴騰局面でもさほど反応しておらず、需給バランスの悪化が続くとの冷静な見方を維持している。

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【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日は、米国の国家非常事態宣言をはじめ、世界各国がコロナウイルス対策に本格的に取り組む姿勢を見せていることで安心感が広がり、特に株式市場には買戻しが圧力が強まると予想される。

しかし、週末の騰落率をみると、S&P500が+9.3%の上昇となっているが、原油はBrentで+1.9%、LME銅で+0.3%に留まっており、今回の株価の上昇を以って「リスク回避が弱まった」のは事実であるが、景気自体が良くなったわけではないことは確実である。

場合によると金曜日に株価が上昇したものの、商品市場が然程反応していないことを材料に、再び株価が調整する可能性も十分にあり得る。そもそも論だが、2020年はコロナ・第二次OPECショックによる株式市場の大混乱がなかったとしても、Q220が景気の底となる見込みだった。

それがさらに悪くなっている訳で、商品市場の需給バランスがタイト化していないことを考えると、ここから商品価格や株価が急反発、というのは「売られすぎの修正」程度にとどまるはずだ。

期待で動きやすい株の動きは、原油や銅などと俯瞰してみておく必要があり、さすがにここまでの株価下落は行き過ぎだったとは思うが、さらにグングンと上昇していくような経済環境ではない、ということである。

長期的に見れば株は「買い」なのだろうが、まだ安心して投資家が買いを入れる状況ではないということだろう。

月曜日に予定されている重要な材料としては、1-2月の中国の工業生産・小売売上高・固定資産投資に注目している。これは「今後日米欧の市場で起きること」の先行指標である。

市場予想は、エネルギー・工業金属のフロー需要に影響する工業生産が前年比▲3.0%、エネルギーのフロー需要の指標である小売売上高が前年比▲4.0%、工業金属のストック需要の指標である固定資産投資が▲2.0%となっている。

しかし、先日発表された製造業・非製造業PMIと比較すると「やや楽観的」な見通しといえ、さらに悪化して、景気循環系商品価格が下落する、と予想する。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

昨日は、今回の株価下落に伴う市場混乱をもたらした、米トランプ大統領の「欧州入国禁止決定」から事情が一変、国家非常事態を宣言し、災害救助や緊急援助を求めたスタフォード法に基づき、連邦政府による州・自治体への支援を強化することを決定。

さらに非常事態によるウイルス対応として500億ドルの利用が可能になった。すでに83億ドルのワクチン開発予算は成立済であり、今回の混乱の源泉であるコロナウイルス対策に本格的に切り込んできた。

また、どれだけの感染者がいるか把握するために、1ヵ月以内に500万件/日の検査を可能にし、Googleと連携して米国民が「ドライブスルー形式」で利用できる罹患検査会場の情報提供と、検査のためのスクリーニングを受けるためのWebサイト開設する計画。ここではフォローアップされていないが、恐らく感染者の追跡などもIT技術を駆使して行われることになるだろう。

一旦、危機モードに舵を切った場合、米国の動きは極めて速い。大統領選挙があるからということもあるが、このような状態になると挙国一致で素早く動けるのが米国の強さといえるだろう。24時間前とは完全にモードが切り替わった感じだ。

そして欧州も財政出動が可能な体制に移行し、シェンゲン協定で定める人やモノの移動の自由も一時的に凍結、感染拡大防止と封じ込めに本格的に舵を切った。

立ち直りの方向にある中国も、預金準備率の引き下げなどによって資金繰り支援を行う方向であり、各国とも「共通の敵」であるコロナウイルス撲滅に向けて舵を切った。

日本は他国に比べれば衛生観念が高いため、国に強制されなくとも感染拡大は終息するのでは、と予想はされる。

しかし、この状況だとオリンピックが予定通り開催されるのは難しく、仮に中止、ということになれば国内への影響は無視できない。残念ながら財政的なゆとりも、金融面でのゆとりもなくやれることが限られるため、経済に関しては海外頼みになってしまうかもしれない。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。特に中国の製造業・非製造業PMIの減速はショッキングであり、今後、中国以外の国が中国ほど苛烈ではないにせよ、感染拡大防止策を講じた場合、同様の影響が出る可能性があることは需要面での価格下落要因。

今後は、これが短期的な減速で止まるのか、長期的なものになるのかは各国政府の対応に掛かっている。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ているが、コロナウイルスの感染拡大でさらに改定される見通しでは2019年(2.9%)を下回る見込み。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっていたが、新型肺炎の影響で▲50bpの追加利下げが行われた。しかし市場はさらに3回の利下げを市場は織り込んでいる(▲75bp程度)。景気の減速が懸念されているため追加利下げは景気循環系商品価格の下支え要因に。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・中国の新型肺炎の世界的な感染拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済活動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。

・米中が通商面で再び対立(国営企業への補助禁止、人権面、知的財産権など)する可能性はあり、景気循環銘柄価格の下振れ要因に。ただし、新型肺炎の影響で当面は中国の合意不履行は問題視されない可能性が高まった。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

昨日の原油価格は上昇したのちに下落した。ここまでの急落を受けてさすがに安値拾いの買いが入る中、米国が緊急事態を宣言、コロナウイルス対策費用の積み増しと検査の拡充、ITのフル活用などの対策を打ち出したことで、株価が上昇したことがリスク選好を回復させた。

しかし、コロナ対策が拡充されたとしても解決したわけではないこと、サウジの増産合戦はこれからであり、需給バランスの改善はまだ先であること、米金利上昇に伴うドル高進行で引けにかけては水準を切り下げた。

昨日の原油価格の動向をみると、期近が上昇したが期先が下落した。基本、期先の価格は、現物価格+倉庫の保管コスト+金利、で決定されるため、長期金利の上昇や、保管コストの上昇が価格を押し上げる。

しかし過去の例を見ると、コンタンゴの状態だと現物を保有して期先を売る、取引が増えるため、期近の価格低下が長期化すると、期先の価格が時間差を以って低下するケースが多い。

【原油価格見通し】

原油価格は軟調地合いの中、荒っぽい値動きを続けると考える。各国が協調して新型コロナウイルス対策に乗り出したことは、センチメントの改善で原油価格の上昇要因となるが、第2次OPECショックによる増産開始はこれからであり、米国・欧州の航空便減便もこれからで、輸送燃料需要の減少で、需給バランスは緩和した状態が続くため、低い水準での推移が続くと考える。

IEAの見通しでは米国の渡航規制発令前の水準で、●●バレルの減少と見込まれているが、これを上回ることは必須であり、原油価格の上昇はファンダメンタルズ面からは肯定できない。

今後は、1.ロシアが何らかの譲歩を行う(6月に会合がもたれる、というのがメインシナリオだが、2014年の第1次OPECショックの時は2年増産が続いたため長期化の可能性も)、2.コロナウイルスの感染拡大が終息する、といったことが相場反転の必要条件となる。

しかし、感染のピークは恐らく今月~5月頃とみられており、一部で言われている「暖かくなって終息」「抗体を獲得した人間の増加で終息」ということが仮に事実だとしても、Q220以降になると予想される。もちろん、薬効のある薬が発見されれば話は別だ。

弊社の価格見通しは3ヵ月ごとに更新であるため、次回更新は4月となるが、恐らくQ220のBrentの価格見通しは情勢に変化がなければ、Brentで30~40ドル、WTIで25~35ドルといったところが平均価格予想となる(米国の欧州に対する移動制限発動で、下限レンジを引き下げ)。

このように需給バランスのあるべき水準がわからない状況では、短期的に価格予想にファンダメンタルズ分析はあまり意味がない。

市場は需要減少リスク側に傾いており、現時点ではよりプットオプション動向が注目される。

Brentは40ドル、35ドル、30ドル、25ドルに積み上がっており、この水準では防戦売買でもみ合いやすい。しかし、オプション建玉の量が少ないことから、然程強い防波堤にはならないだろう。

ちなみにWTIは35ドル、30ドル、25ドル、20ドルに建玉が積み上がっているが、Brent同様、建玉の積み上がりは大きくない。

中国は早期の可能性が高まっているが、それでも終息は政府の報道が正しいとすれば4月末の見込み。一方、中国以外の国での感染者数が増加しておりWHOも最高レベルの警戒を勧告、6月末頃の終息が市場のコンセンサスとなりつつある。しかし、年末を越える可能性も出ており予断を許さない。

唯一、参考になるデータは新規感染者数の推移のみであり、しばらくこれに左右される展開が続くと考えられる。ただし今後は、より中国以外の感染者数の増加に注目する必要がある。

トランプ大統領の中東和平案を受けて、イスラエルとパレスチナの軍事的な衝突は激しさを増している。

ただ、今回の中東和平案はトランプ政権になってからの親イスラエルによる現状変更を追認した形であり逆回転は難しい。米国のエネルギー中東依存度も低く、米国の中東政策は「雑」になりやすい。

イデオロギー的にはアラブ諸国の敗北だが、武装集団や反イスラエル勢力がこの状況を看過するとは考え難い。イスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明しており、特にシーア派三日月地帯の治安は悪化し、供給懸念が高まっているのも事実だ。

米・イラン問題は国同士の衝突リスクは低下した。しかし、イランの選挙では反米の保守派が大勝した。しかもコロナウイルスの感染拡大で、イラン国内は危機的な状況にあり、米が実効支配しているIMFに50億ドルの支援要請をせざるを得なくなった。IMFがこれに応じなければ、反米感情は一気に高まることになるだろう。

直近ではイラクのバグダッドにミサイルが着弾、米国人が2名死亡しており、米エスパー国防長官は空母2隻の派遣を決定、予断を許せない状態となった。

シリアとリビアに対する関与を強めているトルコの動向も、地政学的リスクを高めるため懸念されるところ。シリアへの介入はイドリブ県のクルド人を巡る対立で、シリアと全面戦争の可能性もある。リビア介入は、イスラエルのガス田からのガス輸送にかかわる権益の問題。

この他、新型コロナウイルスが中東でも拡大しており、政府への対応の不満がさらに高まって、暴動に発展する可能性が出てきた(暴動事態が感染拡大につながるため、感染拡大中は起きないだろうが、終息後に生活困窮で暴動が起きる可能性)。

米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

FOMCは、緊急利下げを行ったが市場はさらなる利下げを見込んでいる。ファイナンシャルな面で一定の価格下支え効果をもたらすだろう。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に上昇した。新型コロナウイルスの影響で企業活動が低迷していること、中国の港湾再稼働などの強弱材料が混在する中、レンジでの推移を継続している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は中国製造業の稼働再開が域内需要の回復期待を高めているものの、新型肺炎の影響拡大は継続しており終息までは時間がかかることから、電力需要が鈍化、現状水準でもみ合うものと考える。

ただし、中国の石炭輸入は季節的に回復する可能性がある。実際、バルチック海運指数には徐々に底入れ感が出てきている。

長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPEC・OPECプラスの交渉が決裂、さらにサウジアラビアはOSPを大きく引き下げており、価格競争の様相を呈しており、2014年の第1次OPECショックの時と同様、長期化した場合(価格下落要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入減少。1-2月はコロナウイルスの影響はあったが、輸入量は1,062万バレル/日(前月1,007万バレル/日)と高い水準を維持。

しかし、コロナウイルスの影響で3月以降、各国の輸入量が減少する可能性は高く、特に輸送燃料の減少リスクは無視できない状況。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

・米国の中東への関与低下や原油価格の下落、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う不満爆発で、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。

・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショートとも増加。価格の急落を受けて水準が大きく切り下がり、先行き見通しが分かれたため。

Brentは欧州のコロナウイルス感染拡大でロングが大きく減る中、OPECショックでショートも増加した。

ポジション動向を見るに、原油市場はまだ冷静に対応しているとの印象。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが587,567枚(前週比 +23,663枚)ショートが200,170枚(+24,635枚)ネットロングは387,397枚(▲972枚)

Brentはロングが292,349枚(前週比▲47,675枚)ショートが138,994枚(+26,755枚)ネットロングは153,355枚(▲74,430枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は上昇後下落し、前日比プラスで引けた者もあれば、マイナス圏に沈んだものもあった。

最大消費国である中国の感染拡大が一巡して終息に向かう中、中国の需要回復観測が強まる一方、その他の地域での需要減速観測が強まり、また、米国がコロナウイルス対策に予算を付けて本腰を入れ始めたことで、株が上昇、金利が上昇、ドル指数が上昇したため引けにかけて水準を切り下げる動きとなった。

新型コロナウイルスの感染拡大地域と価格の推移をみると、やはり世界の50%のシェアを占める中国の情勢改善が銅価格を押し上げており、原油価格とは異なる動きとなっている。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は、最大消費国である中国の新型コロナウイルス問題が終息に向かっていることから、同国の需要が増加する見込みであり上昇圧力が掛かる展開が予想される。

しかし、米国が非常事態宣言を行うなど、他の国の需要減速は必須の状況で、中国の輸出需要も低迷すると考えられることから上値も重く、現状の低水準での推移になると考える。ただし、各国が協調してコロナウイルス対策に乗り出すことになったため、この2ヵ月見られた混乱は徐々に終息すると予想される。

実需の手掛かり材料、特に実際の需給がどうだったか、といった統計は2ヵ月程度のかなりの時間差を以って発表されること、市場はまだパニック状態にあることから、原油と同様、オプションの建玉動向が価格動向を占う上で参考になる。

ベンチマークである銅のプットオプションは、5,500ドル、5,300ドルに、コールは5,900ドルと6,000ドルに積み上がっており、この価格帯が攻防線となる(ただしいずれも大したロットではない)。

原油価格の急落もあって5,600ドルラインを割り込んだため、レンジは5,300ドル~5,600ドルに切り下がっている。

2月の中国製造業PMIも、35.7(前月50.0)とリーマンショック時の最低水準を下回った。3月は事態の改善で徐々に稼働は戻ってこようが、時間はかかると予想される。

直近2月のデータが取得できた銅製品生産者の2月の稼働状況は、銅線生産者が34.7%(過去4年平均50.7%)、銅棒生産者40.4%(51.2%)、銅板生産者38.6%(51.8%)、銅管生産者46.5%(63.2%)と低い。

非鉄金属の取引所在庫は急速に積み上がっており、最終製品を製造している企業の稼働は上記の通り低い。非鉄金属業者が政府に対して在庫の買取を要求していることからもわかるように、当面需要が弱い状態が続き、価格も低迷すると予想される。

製造業PMIを詳細にみると、完成品在庫の水準は消費手控えでやや高く(46.0→46.1)、原材料在庫の水準は港湾の機能停止の影響で低い(47.1→33.9)。今後、港湾機能が回復する中で原材料在庫の積み増しが発生、非鉄金属価格にも上昇圧力が掛かると考えられる。

ただし、非鉄金属価格が上昇するには景気への影響が限定されることが必要条件で、さらに中国国内の詳細な情報がもたらされることや、WHOが終息宣言を出すことが必要条件となる。

しかし、中国の新規受注は29.3(前月51.4)と低迷しており、状況は厳しく、回復には時間を要するだろう。現在の感染拡大状況を勘案すると当初見込みの4~5月に終息、との見方は楽観的過ぎるかもしれない。

米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、新型コロナウイルスの影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

FOMCは、緊急利下げを行ったが市場はさらなる利下げを見込んでいる。ファイナンシャルな面で一定の価格下支え効果をもたらすだろう。

新型コロナウイルスの影響で、各国とも財政出動に動くとみられる。米国もすでに新型コロナウイルス対策で78億ドルの支出を下院で可決している。

中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは急減速し、リーマンショック時に記録した最低水準を下回った。状況は改善していると伝わっているが、回復にはまだ時間を要する見込み(価格の下落要因)。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・1-2月の中国の銅地金・製品の輸入量は2ヵ月で85万トン(前月53万トン)と前年比で+7.2%と増加、銅鉱石・精鉱 377万トン(198万トン)と前年比▲1.2%と小幅な減少となった。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCはやや軟化したが高水準を維持。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・3月6日付のLMEロング・ショートポジションの動向はまちまちとなったが、アルミと錫以外はネットロングを減少させた。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲87.6億ドル(前週▲87.2億ドル)と売り越し幅を拡大した。買い越し額の増加率は+0.5%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲2,409千トン(前週▲2,387千トン)とCME銅、アルミ、錫以外の金属で売り越し幅を拡大している。ネット売り越しの増加率は+0.9%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は横ばい、中国鉄鋼製品先物価格はまちまちだった。

中国人民銀行が預金準備率を▲1%引き下げたことや各国の財政出動期待、そもそも鉄鉱石在庫の水準が低下していることから週末にかけて先物価格は上昇し。

原料炭は豪州クイーンズランドの豪雨と悪天候により、Dalrymple Bay Coal Terminal(DBCT)やHay Pointからの出荷が3月15日まで延期されていることが上昇要因となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は中国政府の預金準備率引き下げや各国の対策期待、中国の港湾の再稼働による輸入増加観測、Vale、Companhia Siderurgica Nacionalの生産減少が価格を押し上げるものの、新型コロナウイルスの影響が世界的に拡大しており、鉄鋼製品の在庫積み上がりが顕著で今後鉄鋼向けの需要は減速すると見られることから、価格は現状水準でもみ合うと考える。

中国河北省の高炉稼働率は3月6日時点で72.5%(前週72.7%)と再び減速している。鉄鋼製品在庫は積み上がっているが、原材料在庫の水準が低いことが背景にあると考えられる。

2月の鉄鋼業PMIは、総合指数が36.6(前月47.1)と急低下、生産指数も31.3(46.7)と大幅に低下している。新規受注の伸びが国内外で低迷していること(新規受注 32.7(43.8)、輸出新規受注 42.5(49.7))が影響した。

その一方で、完成品在庫は57.5(45.3)と高く、原材料在庫は29.2(51.1)と非常に低い。工場が再稼働して鉄鋼製品在庫の水準が調整されれば、原材料在庫の水準が低いため、再び鉄鉱石価格に上昇圧力が掛かると考えられるが、中国工場の本格稼働は恐らく4月に入ってからと予想される。

米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

Valeは生産計画を下方修正したが、それでも2020年は同社の生産が本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は豪州の供給停止観測が価格を押し上げているものの、新型肺炎の影響に加え、鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格中期見通しはやや強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは36.6(前月47.1)と急速に悪化。新規受注も新型で新規受注も32.7(43.8)に低下している。

一方、最終需要の鈍化で完成品在庫の水準は57.5(45.3)と高く、港湾の稼働停止で原材料在庫の水準は29.2(51.1)と低い。工場再稼働が起きれば、原材料在庫の不足から輸入が増加し、海上輸送鉄鉱石価格の上昇要因となる。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

1-2月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の1,075万トンと減速、コロナウイルスの感染拡大の影響で企業活動が鈍化していることが確認された。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に増加し、前年比+33.1%の6,806万トンとなった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入増加によるものだ。

・中国の1-2月の鉄鉱石の輸入量は前年比+1.5%の1億7,684万トンとなった。鉄鋼製品在庫の増加によって生産活動が鈍化している一方、鉄鉱石の港湾在庫の在庫日数は低下しており、一定の在庫積み増し需要があると考えられるため。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+5万トンの1億2,630万トン(過去5年平均1億2,660万トン)、在庫日数は+0.1日の27.7日(過去5年平均 36.7日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+102.7万トンの2,611.7万トン(過去5年平均1,586.7万トン)とコロナウイルスの影響で製造業の工場の稼働が低迷しているため、急速に増加している。

なお、1-2月の鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の781万トンと大幅に減速しており、やはりコロナウイルスの影響が顕在化した形に。今後は徐々に回復すると見られるが感染終息状況次第である。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

貴金属価格は総じて下落した。米国の非常事態宣言を受けて株価が急騰、財政支出増加に伴う長期金利の上昇で実質金利が上昇したため。銀は暴落した。

PGMは株価の上昇が一定の価格上昇要因にはなるものの、世界的な景気減速懸念と金銀価格の下落の影響は大きく、続落する形となった。

【貴金属価格見通し】

週明け月曜日はさすがに前日の下落幅が大きかったことから買戻しが入るが、米国の財政出動を伴う対策で株価が上昇、長期金利の上昇しているため軟調な推移となりやすい。

ただし、コロナウイルスの影響拡大で株価が調整し、場合によると信用リスクにつながる可能性があることや、この状況で中東情勢が不安定(イランvs米国の対立再燃、トルコvsシリア問題を背景とする難民の欧州流入→欧州の政情混乱、など)になっていることから安全資産需要も根強く、結果的に高値圏を維持することになるだろう。

金価格動向を占う上で実質金利の動向は重要だが、実質金利の大きな変化に金価格が追い付いておらず、リスクプレミアムを適正に反映した価格での推移になり難い。

現在のリスクプレミアムは214ドル(前日比▲11ドル ※毎日回帰分析をアップデートリスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください)。

今回の変動で分かったことだが、市場が大きく混乱した場合、リスクプレミアムが適正に評価されない。言葉を替えるとリスクプレミアムを織り込むには、実質金利が大きく動かない中でリスクイベントが意識されることが需要、ということだろう。

その観点では前回の100ドル上昇して1,800ドルを目指す可能性がある、という見通しはやや行き過ぎであった。

リスクプレミアムが大幅に上昇するのは感染拡大の長期化と大規模化によって、信用リスクの拡大につながり、終息後に改めて景況感の悪化が意識され、地政学的リスクが高まる場合が考えられる。

なお、米中合意は第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は金銀価格の上昇リスクとなる可能性がある。

ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は上昇を続け、ほぼ100倍となった。金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、直近1年データを元にすると87倍程度、この10年データを元にした分析結果である80倍であることを考えると、やはり現在の金価格は割高であり、銀価格は割安である。

リスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。

PGM価格は一旦下値余地を探る動きになると考える。貴金属のベンチマークである金が長期金利の上昇で低下していること、米国の欧州に対する渡航制限、欧州ではシェンゲン条約がありつつもスペイン、ポーランド、オーストリアが国境封鎖に動いており、景気が減速する可能性が高まっているため、自動車販売が減少するとの見方が強まっていることが背景。

今回のパラジウムのラジウムは投機のロングポジションはほとんど解消しており、ショートも現物の確保が難しい中で、新規に投機筋が売りポジションを抱えるとは考え難く、今回の下落は需要面の弱さを反映したものと推察される。

「パラジウムと比較すれば」プラチナの方がロング・ショートとも投機のポジションは積み上がっているため、こちらは投機の動きに振らされたと見るべきだろう。結果的に下げ幅は限定されている。

しかし、コロナウイルス禍終息後は、再びパラジウムには上昇圧力が掛かるのではないか。

2月の米自動車販売は年率1,683万台(市場予想 1,671万台、前月 1,684万台)と、市場予想ほどではないが前月から若干減速した。一方、コロナウイルスの影響が出始めた中国は▲18.0%の194.1万台と減速傾向を持続。

今後、コロナウイルスの影響が拡大する中で、自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは▲0.5%の利下げを行ったが、さらに3回の利下げを市場は織り込んでいる。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に動く可能性。日本は追加利下げも、追加財政出動もほとんど余地がない。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な拡大に伴う、安全資産需要の高まり。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・金・銀はロング・ショートとも減少。金利低下余地が限定される中でむしろ下落観測が強まっている。どちらかといえばロングの解消圧力が強い。

PGMはコロナウイルスの感染拡大に伴う景気への懸念と、リスク回避の換金売りでポジション解消圧力が強まっている状況。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが336,290枚(前週比 ▲29,883枚)、ショートが36,759枚(▲9,681枚)、ネットロングは299,531枚(▲20,202枚)、銀が75,117枚(▲7,453枚)、ショートが30,170枚(▲4,097枚)、ネットロングは44,947枚(▲3,356枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが46,268枚(前週比 ▲3,663枚)ショートが13,021枚(▲2,873枚)、ネットロングは33,247枚(▲790枚)

パラジウムが6,270枚(▲666枚)、ショートが3,481枚(▲459枚)ネットロングは2,789枚(▲207枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は高安まちまち。トウモロコシと小麦はテクニカルな買戻しが入ったが、大豆は南米の生産増加観測なども手伝い、ドル高進行もあって水準を切り下げた。

コロナウイルスの感染拡大の影響は、需要はさほど変わらないが、供給面の評価(生産・輸送への影響)が天候・政策絡みで非常に評価がし難く、ドル指数動向などを背景にテクニカルな動きが強まり安い。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は、米国の欧州に対する渡航制限で景気への懸念が強まり、対欧州通貨でドルが強含み、結果、ドル指数が強含み推移する可能性が高いことから軟調な推移になると考える。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシの受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、大豆も過去5年平均を大幅に上回っている。

供給面では、冬場の降雨の影響で2年連続で米生産地が洪水に見舞われており、作付けが予想を下回る可能性が出てきた。

小麦は豪州火災や干ばつ、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい展開が予想されるが、最終的には帳尻が合いやすい(世界各地で生産されているため)。

今後の市場の注目は大豆、トウモロコシの作付け意向面積。米農務省の予想では、トウモロコシが9,400万エーカー(2019年 8,970万エーカー)、大豆は8,500万エーカー(7,610万エーカー)、小麦が4,500万エーカー(4,520万エーカー)と、トウモロコシの作付けが増加すると見られている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・3月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・3月の米需給報告の在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ18億9,200万Bu(市場予想18億9,509万Bu、前月18億9,200万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,809万Bu、4億2,500万Bu)小麦 10億Bu(9億9,417万Bu、10億Bu)

・12月末の四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億8,900万Bu(114億7,171万Bu、22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意、シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、二次合意も難しく中国の合意不履行を材料に両国関係が再び悪化する可能性も考えられ、シカゴ定期の下落要因に。

ただし新型肺炎の影響で、しばらくの間、中国が合意を履行しなくても問題視はされないと予想される。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に今年の春先以降、価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが314,792枚(前週比 ▲11,078枚)、ショートが299,940枚(▲20,365枚)ネットロングは14,852枚(+9,287枚)

大豆はロングが155,272枚(+6,190枚)、ショートが123,804枚(▲13,900枚)ネットロングは31,468枚(+20,090枚)

小麦はロングが125,698枚(+5,135枚)、ショートが93,663枚(▲161枚)ネットロングは32,035枚(+5,296枚)

◆本日のMRA's Eye


「サバクトビバッタの大量発生リスク」

※原油市場が動揺していますが、それに伴って様々なリスクが同時に発生する可能性が出てきました。そのため、原油価格自体のコメントではないですが、周辺材料について解説していきたいと思います。

東アフリカからペルシャ湾の湾岸で、サバクトビバッタが大量発生している。サバクトビバッタは体長も大きく、飛翔による移動距離も100キロから150キロといわれ、広範にわたる蝗害(こうがい)を引き起こしやすい。

サバクトビバッタやトノサマバッタなどが蝗害を引き起こすバッタとして挙げられており、中国の三国志に出てくる蝗害はほとんどが大規模な洪水や旱魃の後にトノサマバッタの群生相(群れることなく生きている孤独相とは習性が異なり、幼虫の頃から群れる)が形成されることによって発生しており、王朝が滅びる切っ掛けになったこともあった。

今回のサバクトビバッタの発生は、2018年にサガーとメクヌというサイクロンが、10月にはルバンが発生してアラビア半島を襲撃、サバクトビバッタの生息地である砂漠の周縁地域に水分がもたらされた結果、餌となる植物が増加したことが始まりである。

しかし通常は、気候変動の変化や、政府の駆除の強化によって翌年まで被害が拡大することはないのだが、2019年12月に過去最強のサイクロン「キャー」が発生、土壌に水分をもたらしサバクトビバッタの生育環境に適した状況になったこと、サバクトビバッタの繁殖地域であるイエメンの内戦が継続していることにより、駆除が十分に行えなかったことが今回の大量発生につながったようだ。

FAO(国際連合食料農業機関)ではサバクトビバッタの動向を逐次詳報しており、現在深刻な被害になっているのはケニア。しかし、今後スーダンやエチオピア、イエメン、パキスタン・インドに被害が拡大すると予想されている。

今のところ6月頃に終息すると見られているものの、春先の繁殖期にさらに個体数が増加すると予想されている。

なお、これらのバッタがヒマラヤを超えることはできないため、影響が中国に及ぶことはないと考えられる。過去に中国で発生している蝗害は、前述の通りトノサマバッタが引き起こしているためサバクトビバッタとは関係がない。ネットでは中国にバッタが侵入して食糧危機に、というものもあるが、可能性はゼロではないが過去の歴史やバッタの生態を考えると、そこまでのリスクにはならないと考える。

しかし世界各地で新型コロナウイルスの影響が拡大し、経済活動が停滞し、原油価格も下落、中東・北アフリカ諸国の財政状況が悪化している局面で、バッタによる食料問題が発生することは、このタイミングでは非常に問題である。食品価格が上昇するだけでなく、確保できなくなる可能性もあり、これらの地域の住民の不満を高め反政府行動や武力蜂起のリスクを高めるためだ。

今のところ一次産品の供給に大きな影響を与える地域での蝗害発生ではないため、世界経済への影響は限定されると考えるのが適当である。しかし、アラブの春の時に政権に対する不満の連鎖が拡大、中東地域の安定性が損なわれたことは忘れてはならない。

気象庁の2月の見通しでは、2020年は夏頃までエルニーニョもラニーニャも発生しない見通しとなっているため、中東地域が多雨となり再びバッタの発生を助長する可能性は高くないと予想されるが、2018年の2回のサイクロンも、エルニーニョもラニーニャでもないときに発生していることを考えると、そのリスクはゼロではない。

今のところ新型コロナウイルスの終息は6月末とみる向きが多いようだが、その頃に蝗害が重なることになれば、食品価格の高騰とともに中東・北アフリカ地域の地政学的リスクが高まり、原油価格にも波及することは十分にあり得る。今年はウイルス以外にも、中東・東アフリカのバッタ動向にも注目する必要があろう。

◆主要ニュース


・2月独卸売物価指数 前月比▲0.9%(前月+1.0%)、前年比+0.8%(▲0.3%)

・2月独消費者物価指数改定 前月比+0.6%(速報比変わらず、前月▲0.8%)、前年比+1.7%(±0.0%、+1.6%)

・2月対中直接投資 前年比▲25.6%の468.3億元(1月+4.0%の875.7億元)

・2月インド貿易収支 ▲98億5,000万ドルの赤字(前月▲151億7,000万ドルの赤字)、輸出 前年比+2.9%(▲1.7%)、輸入+2.5%(▲0.7%)

・3月米ミシガン大学消費者マインド指数速報 95.9(前月101.0)
 現況指数 112.5(114.8)
 先行指数 85.3(92.1)
 1年期待インフレ率 2.3%(2.4%)、5年期待インフレ率 2.3%(2.3%)

・米トランプ大統領、国家非常事態を宣言。災害救助や緊急援助を求めたスタフォード法に基づき、連邦政府による州・自治体への支援を強化。非常事態によるウイルス対応として500億ドルの利用が可能になる。すでに83億ドルのワクチン開発予算は成立済。1ヵ月以内に500万件/日の検査を可能にし、Googleと連携して米国民が「ドライブスルー形式」で利用できる罹患検査会場と、検査のためのスクリーニングを受けるためのWebサイト開設する計画。

・EU、財政刺激を可能にできる危機条項を発動する用意。

・日銀、新型コロナウイルス感染症対策本部を設置、黒田総裁が本部長。

・金融庁、LIBOR参照残高は6,500兆円、LIBOR公表後の代替手当はほぼ皆無。貸し出しなどの運用が164兆円、預金・債券などの調達が35兆円、デリバティブの想定元本が6,300兆円、21年に満期を迎えるものが、運用は60%、調達とデリバティブが各々50%。

・中国人民銀行、預金準備率を▲1%引き下げ。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数683(前週比+1)、ガスリグ 107(前週比▲2)。

・米大統領、原油を大量購入し、戦略備蓄の積み上げを表明。業界支援の一環か。

・米エスパー国防長官、米空母2隻を中東配備。イランけん制で。

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ +13.91%/ ▲28.51%
2.S&P500 ( 株式 )/ +9.29%/ ▲16.09%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +6.03%/ ▲13.64%
4.DME Oman ( エネルギー )/ +4.23%/ ▲49.14%
5.インド・センセックス ( 株式 )/ +4.04%/ ▲17.33%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲10.51%/ ▲45.20%
69.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲7.39%/ ▲21.07%
68.銀 ( 貴金属 )/ ▲6.96%/ ▲17.54%
67.日経平均 ( 株式 )/ ▲6.08%/ ▲26.32%
66.SHF 銀 ( 貴金属 )/ ▲6.01%/ ▲13.59%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :23,185.62(+1985.00)
S&P500 :2,711.02(+230.38)
日経平均株価 :17,431.05(▲1128.58)
ドル円 :107.62(+2.98)
ユーロ円 :119.53(+2.49)
米10年債利回り :0.96(+0.16)
独10年債利回り :▲0.54(+0.20)
日10年債利回り :0.05(+0.11)
中国10年債利回り :2.67(+0.05)
ビットコイン :5,434.1(▲291.25)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :41.05(+1.58)
エネルギー :82.25(+1.61)
ベースメタル :26.07(+2.67)
貴金属 :55.06(+2.08)
穀物 :19.47(+0.16)
その他農畜産品 :35.06(+1.56)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :116.70(+0.08)
Brent :110.77(+0.08)
米天然ガス :60.15(+0.8)
米ガソリン :114.28(+0.08)
ICEガスオイル :74.99(+7.53)
LME銅 :21.53(+2.59)
LMEアルミニウム :21.12(+1.51)
金 :14.49(+0.03)
プラチナ :53.43(+0)
トウモロコシ :20.40(▲0.14)
大豆 :14.49(+0.03)

【エネルギー】
WTI :31.73(+0.23)
Brent :33.85(+0.63)
Oman :34.29(+1.39)
米ガソリン :89.92(+0.17)
米灯油 :113.74(▲2.24)
ICEガスオイル :336.50(▲39.50)
米天然ガス :1.87(+0.03)
英天然ガス :23.98(▲0.05)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :33.85(+0.63)
SPO380cst :194.62(+15.83)
SPOケロシン :42.21(+0.72)
SPOガスオイル :44.59(+0.72)
ICE ガスオイル :45.17(▲5.30)
NYMEX灯油 :117.41(+0.08)

【貴金属】
金 :1529.83(▲46.32)
銀 :14.72(▲1.10)
プラチナ :763.28(▲3.40)
パラジウム :1812.82(▲39.26)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,548(+148:17.5C)
亜鉛 :2,003(+61:16.5C)
鉛 :1,787(+42:6C)
アルミニウム :1,696(+38:19C)
ニッケル :12,620(+720:55C)
錫 :16,400(+175:0B)
コバルト :31,676(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5453.50(+18.50)
亜鉛 :1982.00(+35.00)
鉛 :1752.00(▲13.00)
アルミニウム :1690.00(+28.50)
ニッケル :12305.00(+425.00)
錫 :15800.00(▲265.00)
バルチック海運指数 :631.00(▲2.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :90.24(+1.02)
NYMEX鉄鉱石 :90.13(+0.65)
NYMEX原料炭スワップ先物 :159.84(±0.0)
上海鉄筋直近限月 :3,452(▲34)
上海鉄筋中心限月 :3,511(+7)
米鉄スクラップ :267(+8.00)

【農産物】
大豆 :846.75(▲8.25)
シカゴ大豆ミール :295.90(▲2.70)
シカゴ大豆油 :26.11(▲0.04)
マレーシア パーム油 :2302.00(±0.0)
シカゴ とうもろこし :370.75(+1.00)
シカゴ小麦 :514.75(+6.50)
シンガポールゴム :158.00(▲1.60)
上海ゴム :10380.00(±0.0)
砂糖 :11.70(+0.08)
アラビカ :107.05(▲2.10)
ロブスタ :1215.00(▲11.00)
綿花 :60.49(+0.79)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :56.38(▲4.50)
シカゴ生牛 :95.58(▲4.50)
シカゴ飼育牛 :113.00(▲5.83)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。