景気の先行き懸念ぬぐえず総じて軟調~WHOはパンデミック宣言
- MRA商品市場レポート for PRO
2020年3月12日 第1704号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「景気の先行き懸念ぬぐえず総じて軟調~WHOはパンデミック宣言」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は高安まちまち。エネルギーは米石油統計を受けて製品が買戻しが強含んだが原油は下落、株価の下落を受けて非景気循環銘柄であるその他農産品が物色されたが、WHOがパンデミックの宣言を行ったことで、より新型コロナウイルスへの懸念が強まったことで、軒並み水準を切り下げる動きとなった。また、ドル高が進行したことも価格を下押しした。
昨日は株の下落と長期金利の上昇が同時に発生している。市場がFRBの追加緩和を織り込み、これ以上利下げの余地がないと見られている中で、トランプ政権が財政出動を伴う経済対策を行う、との見方から需給悪化観測が強まったことが背景とみられる。
国内の景況感は悪化しているが、これはコロナの影響ではなく、そもそも景気が減速局面にある中で消費税上げが行われたことが影響している。
本来であれば、Q220に世界景気が底入れし、オリンピックのインバウンド消費でこの消費税上げの影響がある程度相殺され、年末以降に回復するとのシナリオだったわけだが、コロナの影響でこれが完全に相殺された形。コロナの日本国内への影響はこれからが本番である。
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【本日の価格見通し総括】
本日は、WHOがパンデミック宣言を行ったことで、再び新型コロナウイルスの感染拡大による景気への悪影響が意識されることが景気循環系商品価格を押し下げる一方、各国政府の経済対策実施期待が高まることが価格の上昇要因となり、結局大きなレンジで荒っぽい動きが続くことになると予想される。
予定されている材料としては日本時間10時とされる米トランプ大統領の経済対策の詳細と、ECBの政策会合。
トランプ大統領は、災害救助や緊急援助などを定めたスタフォード法の下で、全米に災害宣言を出すことを検討していると伝わっている。欧州からの米国への渡航禁止も検討していると伝えられている。
スタフォード法は、1988年に制定された連邦が行う災害対応や復興に関する法律だが、地方政府・週も連携した体系的な災害救助・緊急支援の方策が示されている(詳しくは、以下のサイトから。京都府立大学青山教授の解説)。https://www.nippyo.co.jp/shop/files/downloads/SHINSAI/PDF/jihou_81_9_p48.pdf
ECBは日銀ほどではないが金融緩和の余地がほとんどない中で、資産買い入れ強化、TLTRO(的を絞った長期資金供給オペ。ユーロ圏のすべての銀行が対象)の条件緩和、マイナス金利の深堀、などが考えられる。
マイナス金利の深堀は銀行の体力を削ぐことになるため、恐らく選択されないだろう。
金融緩和は市場参加者の不安心理の除去と、借入コストの引き下げで企業支援を行うことが目的だが、今回の危機はコロナウイルスの影響拡大防止による、経済活動の強制停止によって発生しているため、金融緩和の効果は薄かろう。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
昨日、WHOはパンデミックを宣言した。WHOの枠組みではインフルエンザ以外の感染症でパンデミックを宣言することができないが、今回のコロナウイルスにはこれを適用した形。
パンデミック宣言が起きると何が異なるかというと、世界各地で連鎖的に人から人への感染が継続的に起こることがパンデミック認定の前提となるが、すでに「封じ込めが機能しない」というステージに入ったことで、新型コロナウイルスの封じ込めから、影響緩和や症状を和らげるための対症療法に移行することを意味する。このため、ワクチン開発などにより力が入れられると期待される。
その一方で、感染のリスクと予防方法を広く周知すること、感染者を発見して隔離し、治療するととともに、接触した人を追跡すること、医療体制を整え、医療従事者を感染から守ること、といった従来の対策の継続も主張しているため、状況が大きく変わることはなかろう。
本日、トランプ大統領が対策の詳細を発表する予定だが、経済の強制停止が起きる中でどのような対策も市場にとっては然程プラスにならないだろう。結局コロナウイルスが終息する、あるいは終息しないまでもどのようにウイルスと共存できるか、という方向性がみえない限り、この状況が続くと予想される。
そうなった場合、景気への影響は大きく、死者も増えた場合トランプ大統領が今回の選挙で勝利する可能性が低下し、より大きな政府を標榜している民主党の代表候補が勝利する可能性が高まる。
今のところ米景気に顕著にマイナスになると予想されるサンダース候補ではなく、バイデン候補が有利に選挙戦を進めており、コロナウイルスの状況次第ではバイデン大統領誕生の目も出てきた。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。特に中国の製造業・非製造業PMIの減速はショッキングであり、今後、中国以外の国が中国ほど苛烈ではないにせよ、感染拡大防止策を講じた場合、同様の影響が出る可能性があることは需要面での価格下落要因。
今後は、これが短期的な減速で止まるのか、長期的なものになるのかは各国政府の対応に掛かっている。
・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ているが、コロナウイルスの感染拡大でさらに改定される見通しでは2019年(2.9%)を下回る見込み。
・FRBの利下げに打ち止め感が広がっていたが、新型肺炎の影響で▲50bpの追加利下げが行われた。しかし市場はさらに3回の利下げを市場は織り込んでいる(▲75bp程度)。景気の減速が懸念されているため追加利下げは景気循環系商品価格の下支え要因に。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。
※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。
・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・中国の新型肺炎の世界的な感染拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済活動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。
・米中が通商面で再び対立(国営企業への補助禁止、人権面、知的財産権など)する可能性はあり、景気循環銘柄価格の下振れ要因に。ただし、新型肺炎の影響で当面は中国の合意不履行は問題視されない可能性が高まった。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。
(投機・投資要因)
・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
昨日の原油価格は下落した。米経済対策の期待で昨日は上昇していたが、WHOがパンデミックを宣言したことで景気への懸念が強まったこと、サウジアラビアやUAEの増産で需給緩和観測が広がったことが背景。
弊社は一貫して、「原油価格下落局面における、産油国の収入確保のための増産による価格のさらなる急落」をリスクシナリオとして挙げてきたが、これが顕在化している形。
【原油価格見通し】
原油価格は現状水準でもみ合うものと考える。コロナウイルスの感染拡大に伴う需要の強制減は継続すること、各国政府の財政出動による経済対策期待が需要面で価格を押し上げる一方、OPEC・OPECプラスの増産が4月以降に実施されること、Q120の企業決算発表で恐らく需要見通しが下方修正される可能性があること、といった強弱材料が混在するため。
今後は、1.ロシアが何らかの譲歩を行う(6月に会合がもたれる、というのがメインシナリオだが、2014年の第1次OPECショックの時は2年増産が続いたため長期化の可能性も)、2.コロナウイルスの感染拡大が終息する、といったことが相場反転の必要条件となる。
しかし、感染のピークは恐らく今月~5月頃とみられており、一部で言われている「暖かくなって終息」「抗体を獲得した人間の増加で終息」ということが仮に事実だとしても、Q220以降になると予想される。もちろん、薬効のある薬が発見されれば話は別だが。
価格見通しは3ヵ月ごとに更新であるため、次回更新は4月となるが、恐らくQ220のBrentの価格見通しは情勢に変化がなければ、Brentで35~40ドル、WTIで30~35ドルといったところが平均価格予想となる。
このように需給バランスのあるべき水準がわからない状況では、短期的に価格予想にファンダメンタルズ分析はあまり意味がない。
市場は需要減少リスク側に傾いており、現時点ではよりプットオプション動向が注目される。
Brentは40ドル、35ドルに積み上がっているが、それより下の水準は真空地帯だ。これらの攻防ラインを下回るとさらなる下落となる。この攻防線で価格はもみ合うものと考える。
ちなみにWTIは35ドル、30ドルに建玉が積み上がっているが、それ以下はBrent同様、真空地帯である。
中国は早期の可能性が高まっているが、それでも終息は政府の報道が正しいとすれば4月末の見込み。一方、中国以外の国での感染者数が増加しておりWHOも最高レベルの警戒を勧告、6月末頃の終息が市場のコンセンサスとなりつつある。しかし、年末を越える可能性も出ており予断を許さない。
唯一、参考になるデータは新規感染者数の推移のみであり、しばらくこれに左右される展開が続くと考えられる。ただし今後は、より中国以外の感染者数の増加に注目する必要がある。
トランプ大統領の中東和平案を受けて、イスラエルとパレスチナの軍事的な衝突は激しさを増している。
ただ、今回の中東和平案はトランプ政権になってからの親イスラエルによる現状変更を追認した形であり逆回転は難しい。米国のエネルギー中東依存度も低く、米国の中東政策は「雑」になりやすい。
イデオロギー的にはアラブ諸国の敗北だが、武装集団や反イスラエル勢力がこの状況を看過するとは考え難い。イスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明しており、特にシーア派三日月地帯の治安は悪化し、供給懸念が高まっているのも事実だ。
米・イラン問題は国同士の衝突リスクは低下した。しかし、イランの選挙では反米の保守派が大勝、反米機運が高まる可能性が高く中東の地政学的リスクは高まろう。
シリアとリビアに対する関与を強めているトルコの動向も、地政学的リスクを高めるため懸念されるところ。シリアへの介入はイドリブ県のクルド人を巡る対立で、シリアと全面戦争の可能性もある。リビア介入は、イスラエルのガス田からのガス輸送にかかわる権益の問題。
この他、新型コロナウイルスが中東でも拡大しており、政府への対応の不満がさらに高まって、暴動に発展する可能性が出てきた(暴動事態が感染拡大につながるため、感染拡大中は起きないだろうが、終息後に生活困窮で暴動が起きる可能性)。
米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
FOMCは、緊急利下げを行ったが市場はさらなる利下げを見込んでいる。ファイナンシャルな面で一定の価格下支え効果をもたらすだろう。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は小幅に上昇した。新型コロナウイルスの影響で企業活動が低迷していること、中国の港湾再稼働などの強弱材料が混在する中、レンジでの推移を継続している。
【石炭価格見通し】
石炭価格は中国製造業の稼働再開が域内需要の回復期待を高めているものの、新型肺炎の影響拡大は継続しており終息までは時間がかかることから、電力需要が鈍化、現状水準でもみ合うものと考える。
ただし、中国の石炭輸入は季節的に回復する可能性がある。実際、バルチック海運指数には徐々に底入れ感が出てきている。
長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・OPEC・OPECプラスの交渉が決裂、さらにサウジアラビアはOSPを大きく引き下げており、価格競争の様相を呈しており、2014年の第1次OPECショックの時と同様、長期化した場合(価格下落要因)。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・世界2位の消費国である中国の輸入減少。1-2月はコロナウイルスの影響はあったが、輸入量は1,062万バレル/日(前月1,007万バレル/日)と高い水準を維持。
しかし、コロナウイルスの影響で3月以降、各国の輸入量が減少する可能性は高く、特に輸送燃料の減少リスクは無視できない状況。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの世界的な影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。
・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。
・米国の中東への関与低下や原油価格の下落、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う不満爆発で、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。
・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。
・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。
(投機・投資要因)
・WTIはロング・ショートとも増加。しかし明確にショートの増加圧力が強い。恐らく価格下落に備え、生産者が下落リスクヘッジを掛けたためと考えられる。
Brentはロングが減少、ショートが増加。イタリアの感染拡大と、OPEC減産も影響が限定されるとの見方から弱気のポジション取りに。
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが563,904枚(前週比 +5,106枚)ショートが175,535枚(+48,203枚)ネットロングは388,369枚(▲43,097枚)
Brentはロングが340,024枚(前週比▲50,869枚)ショートが112,239枚(+9,421枚)ネットロングは227,785枚(▲60,290枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格は下落した。アジア時間も株価の調整がファイナンシャルな面で価格を下押しする中、WHOがパンデミックを宣言したことで景気への懸念がより強まったことが背景。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は、各国政府の経済対策期待や、最大消費国である中国のコロナウイルスの影響緩和が価格を押し上げるものの、金融市場の動揺は続くと見られ、WHOがパンデミック宣言をしたものの、コロナウイルスの感染拡大防止のための経済の強制停止は継続する見込みであることから、上値も重いと考える。結局低い水準でのレンジワークになると考える。
実需の手掛かり材料、特に実際の需給がどうだったか、といった統計は2ヵ月程度のかなりの時間差を以って発表されること、市場はまだパニック状態にあることから、原油と同様、オプションの建玉動向が価格動向を占う上で参考になる。
ベンチマークである銅のプットオプションは、5,500ドル、5,300ドルに、コールは5,900ドルと6,000ドルに積み上がっており、この価格帯が攻防線となる。原油価格の急落もあって、もし5,600ドルラインを割り込むと、レンジは5,300ドル~5,600ドルに切り下がると予想されるが、OPECショックで現在は下のレンジに切り下がっている。
2月の中国製造業PMIも、35.7(前月50.0)とリーマンショック時の最低水準を下回った。3月は事態の改善で徐々に稼働は戻ってこようが、時間はかかると予想される。
直近2月のデータが取得できた銅製品生産者の2月の稼働状況は、銅線生産者が34.7%(過去4年平均50.7%)、銅棒生産者40.4%(51.2%)、銅板生産者38.6%(51.8%)、銅管生産者46.5%(63.2%)と低い。
非鉄金属の取引所在庫は急速に積み上がっており、最終製品を製造している企業の稼働は上記の通り低い。非鉄金属業者が政府に対して在庫の買取を要求していることからもわかるように、当面需要が弱い状態が続き、価格も低迷すると予想される。
製造業PMIを詳細にみると、完成品在庫の水準は消費手控えでやや高く(46.0→46.1)、原材料在庫の水準は港湾の機能停止の影響で低い(47.1→33.9)。今後、港湾機能が回復する中で原材料在庫の積み増しが発生、非鉄金属価格にも上昇圧力が掛かると考えられる。
ただし、非鉄金属価格が上昇するには景気への影響が限定されることが必要条件で、さらに中国国内の詳細な情報がもたらされることや、WHOが終息宣言を出すことが必要条件となる。
しかし、中国の新規受注は29.3(前月51.4)と低迷しており、状況は厳しく、回復には時間を要するだろう。現在の感染拡大状況を勘案すると当初見込みの4~5月に終息、との見方は楽観的過ぎるかもしれない。
米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、新型コロナウイルスの影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
FOMCは、緊急利下げを行ったが市場はさらなる利下げを見込んでいる。ファイナンシャルな面で一定の価格下支え効果をもたらすだろう。
新型コロナウイルスの影響で、各国とも財政出動に動くとみられる。米国もすでに新型コロナウイルス対策で78億ドルの支出を下院で可決している。
中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。
再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・最大消費国である中国の製造業PMIは急減速し、リーマンショック時に記録した最低水準を下回った。状況は改善していると伝わっているが、回復にはまだ時間を要する見込み(価格の下落要因)。
在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。
・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。
・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。
・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。
・1-2月の中国の銅地金・製品の輸入量は2ヵ月で85万トン(前月53万トン)と前年比で+7.2%と増加、銅鉱石・精鉱 377万トン(198万トン)と前年比▲1.2%と小幅な減少となった。
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCはやや軟化したが高水準を維持。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。
・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。
・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)
・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。
(投機・投資要因)
・3月6日付のLMEロング・ショートポジションの動向はまちまちとなったが、アルミと錫以外はネットロングを減少させた。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲87.6億ドル(前週▲87.2億ドル)と売り越し幅を拡大した。買い越し額の増加率は+0.5%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲2,409千トン(前週▲2,387千トン)とCME銅、アルミ、錫以外の金属で売り越し幅を拡大している。ネット売り越しの増加率は+0.9%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は上昇、中国鉄鋼製品先物価格はまちまちだった。
豪州の供給減少を、中国のコロナウイルスの影響からの立ち直りが遅れるとの見方が上回った。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は中国の港湾が再稼働を始めるとの期待感による、鉄鉱石在庫の再積み増しの動きや、Vale、Companhia Siderurgica Nacionalの生産減少が価格を押し上げるものの、新型コロナウイルスの影響が世界的に拡大しており、鉄鋼製品の在庫積み上がりが顕著で今後鉄鋼向けの需要は減速すると見られることから、価格は現状水準でもみ合うと考える。
中国河北省の高炉稼働率は3月6日時点で72.5%(前週72.7%)と再び減速している。鉄鋼製品在庫は積み上がっているが、原材料在庫の水準が低いことが背景にあると考えられる。
2月の鉄鋼業PMIは、総合指数が36.6(前月47.1)と急低下、生産指数も31.3(46.7)と大幅に低下している。新規受注の伸びが国内外で低迷していること(新規受注 32.7(43.8)、輸出新規受注 42.5(49.7))が影響した。
その一方で、完成品在庫は57.5(45.3)と高く、原材料在庫は29.2(51.1)と非常に低い。工場が再稼働して鉄鋼製品在庫の水準が調整されれば、原材料在庫の水準が低いため、再び鉄鉱石価格に上昇圧力が掛かると考えられるが、中国工場の本格稼働は恐らく4月に入ってからと予想される。
米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
Valeは生産計画を下方修正したが、それでも2020年は同社の生産が本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。
原料炭は新型肺炎の影響に加え、鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格中期見通しはやや強気である。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・直近の中国鉄鋼業PMIは36.6(前月47.1)と急速に悪化。新規受注も新型で新規受注も32.7(43.8)に低下している。
一方、最終需要の鈍化で完成品在庫の水準は57.5(45.3)と高く、港湾の稼働停止で原材料在庫の水準は29.2(51.1)と低い。工場再稼働が起きれば、原材料在庫の不足から輸入が増加し、海上輸送鉄鉱石価格の上昇要因となる。
・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。
・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。
・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。
中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。
1-2月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の1,075万トンと減速、コロナウイルスの感染拡大の影響で企業活動が鈍化していることが確認された。
また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に増加し、前年比+33.1%の6,806万トンとなった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入増加によるものだ。
・中国の1-2月の鉄鉱石の輸入量は前年比+1.5%の1億7,684万トンとなった。鉄鋼製品在庫の増加によって生産活動が鈍化している一方、鉄鉱石の港湾在庫の在庫日数は低下しており、一定の在庫積み増し需要があると考えられるため。
中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲70万トンの1億2,625万トン(過去5年平均1億2,638万トン)、在庫日数は+1.6日の27.6日(過去5年平均 36.6日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。
・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+145.8万トンの2,509万トン(過去5年平均1,611.1万トン)とコロナウイルスの影響で製造業の工場の稼働が低迷しているためか、急速に増加している。
なお、1-2月の鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の781万トンと大幅に減速しており、やはりコロナウイルスの影響が顕在化した形に。今後は徐々に回復すると見られるが感染終息状況次第である。
・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。
・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
(投機・投資要因)
・特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
貴金属価格は総じて下落した。
金はトランプ大統領の圧力を受けてFRBが利下げを断行したが、市場はさらに▲75bpの利下げを織り込みつつあり、これ以上金利面での価格押し上げが困難とみられる一方、原油価格の下落で期待インフレ率が低下すると見られていることが、価格を下押しした。銀も同様。
PGMは金銀価格の下落に加え、株価の下落と景気への懸念から需給が緩和するとの見方が強まったことが影響した。
【貴金属価格見通し】
金価格はコロナショック・OPECショックの影響で金融市場が混乱していることから、現状の高値圏を維持すると考える。
ただし、市場は米国の利下げを相当織り込んでおり、それが実際に行われれば下げ余地がほとんどなくなるため、実質金利動向が価格を動かさなくなる可能性が出てきた。
金価格動向を占う上で実質金利の動向は重要だが、正直、実質金利の大きな変化に金価格が追い付いておらず、リスクプレミアムを適正に反映した価格での推移になっていない。
結果、実質金利が上昇したため、再びリスクプレミアムは271ドル(前日比+7ドル ※毎日回帰分析をアップデートリスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください)に上昇している。
今回の変動で分かったことだが、金融市場の混乱が発生した場合、金価格は実質金利で説明できる価格変化にはならず(というよりは、リスクプレミアムが適正に評価されない)、価格は大きく変化しない。
言葉を替えるとリスクプレミアムを織り込むには、実質金利が大きく動かない中でリスクイベントが意識されることが需要、ということだ。その観点では前回の100ドル上昇して1,800ドルを目指す可能性がある、という見通しはやや行き過ぎの可能性がある。
リスクプレミアムが大幅に上昇するのは感染拡大の長期化と大規模化によって、信用リスクの拡大につながり、終息後に改めて景況感の悪化が意識され、地政学的リスクが高まる場合が考えられる。
なお、米中合意は第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は金銀価格の上昇リスクとなる可能性がある。
ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。
銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は再び上昇を始めている。なお、金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられ、20ドル前後まで価格が上昇してもおかしくない。
特にリスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。
PGM価格は金銀価格が高値圏を維持する見込みであることから同様に高値を維持すると考えるが、新型コロナウイルスの影響拡大で景気後退懸念が強まっているため、対金銀で割安に推移しよう。
しかし、Anglo Americaのフォースマジュールの影響は小さくなく、しばらくは固有材料で価格は上昇しやすい地合いに。
中国・世界の自動車販売は前年比マイナスが続いているが、徐々に前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高い。
2月の米自動車販売は年率1,683万台(市場予想 1,671万台、前月 1,684万台)と、市場予想ほどではないが前月から若干減速した。一方、コロナウイルスの影響が出始めた中国は▲18.0%の194.1万台と減速傾向を持続。
今後、コロナウイルスの影響が拡大する中で、自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因となるだろう。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・FRBは▲0.5%の利下げを行ったが、さらに3回の利下げを市場は織り込んでいる。
ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に動く可能性。日本は追加利下げも、追加財政出動もほとんど余地がない。
・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの世界的な拡大に伴う、安全資産需要の高まり。
・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。
・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。
・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。
・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・金はロング・ショートとも減少。株価の下落でポジション解消の動き。銀はロングが減少、ショートも小幅増加している。
PGMは景気への懸念からロングの解消圧力が顕著である。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが366,173枚(前週比 ▲23,166枚)、ショートが46,440枚(▲7,034枚)、ネットロングは319,733枚(▲16,132枚)、銀が82,570枚(▲24,920枚)、ショートが34,267枚(+1,570枚)、ネットロングは48,303枚(▲26,490枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが49,931枚(前週比 ▲14,042枚)ショートが15,894枚(+2,122枚)、ネットロングは34,037枚(▲16,164枚)
パラジウムが6,936枚(▲1,553枚)、ショートが3,940枚(▲735枚)ネットロングは2,996枚(▲818枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物市場は下落した。WHOのパンデミック宣言を受けて株価が急落、非景気循環銘柄として物色されてきた穀物にも売り圧力が強まったこと、米金利上昇を受けたドル高進行が価格を下押しした形。
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格は再びコロナウイルスの影響への懸念が広がっていることが、非景気循環系商品需要を高めること、FRBの利下げによるドル安進行から価格は押し上げられると考える。
金融緩和や財政出動が起きたとしても、感染拡大防止のためのヒトやモノの移動規制は継続するとみられるため、上昇余地は限定されると考える。新型コロナウイルスの影響は世界各地で五月雨式に発生しており、影響の評価が非常に難しい。
ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシの受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、大豆も過去5年平均を大幅に上回っている。
しかし、冬場の降雨の影響で2年連続で米生産地が洪水に見舞われており、作付けが予想を下回る可能性が出てきた。
小麦は豪州火災や干ばつ、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい展開が予想されるが、最終的には帳尻が合いやすい(世界各地で生産されているため)。
今後の市場の注目は大豆、トウモロコシの作付け意向面積。米農務省の予想では、トウモロコシが9,400万エーカー(2019年 8,970万エーカー)、大豆は8,500万エーカー(7,610万エーカー)、小麦が4,500万エーカー(4,520万エーカー)と、トウモロコシの作付けが増加すると見られている。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・3月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)
・3月の米需給報告の在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ18億9,200万Bu(市場予想18億9,509万Bu、前月18億9,200万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,809万Bu、4億2,500万Bu)小麦 10億Bu(9億9,417万Bu、10億Bu)
・12月末の四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億8,900万Bu(114億7,171万Bu、22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)
(特殊要因)
・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
・米中通商交渉は部分合意、シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、二次合意も難しく中国の合意不履行を材料に両国関係が再び悪化する可能性も考えられ、シカゴ定期の下落要因に。
ただし新型肺炎の影響で、しばらくの間、中国が合意を履行しなくても問題視はされないと予想される。
・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。
・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に今年の春先以降、価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。
(投機・投資要因)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが325,870枚(前週比 +4,042枚)、ショートが320,305枚(▲8,655枚)ネットロングは5,565枚(+12,697枚)
大豆はロングが149,082枚(+834枚)、ショートが137,704枚(▲41,102枚)ネットロングは11,378枚(+41,936枚)
小麦はロングが120,563枚(▲28,347枚)、ショートが93,824枚(▲12,219枚)ネットロングは26,739枚(▲16,128枚)
◆本日のMRA's Eye
「イラン情勢の悪化」
※原油市場が動揺していますが、それに伴って様々なリスクが同時に発生する可能性が出てきました。そのため、原油価格自体のコメントではないですが、周辺材料について少しずつ解説していきたいと思います。
タイムリーに行わなければならない、市場分析やコメントは、Face Bookや弊社のHPでも更新していく予定ですので、そちらをご確認ください。
https://marketrisk.jp/
https://www.facebook.com/Market.Risk.Advisory/
イランで行われた議会選挙はイラン革命以降最低の42.57%の投票率を記録したが、当初の予想通り対米強硬派が大幅に躍進することとなった。
しかしこれは立候補者の立候補可否を判断する護憲評議会が穏健派を排除したこと、国際協調派であるロウハニ大統領が就任して以降、国内の景況感に改善が見られず、穏健派の支持層が投票に行かなかったこと、ソレイマニ司令官殺害時以降、強い反米感情を持つ国民が積極的に投票を行ったこと、などが背景にある。
この結果、穏健派であり国際協調派であるロウハニ大統領や、ザリフ外相は議会との調整が困難になり、レームダック政権となる可能性が高い。
米トランプ政権は2018年5月にイランとの核合意を離脱、世界中の国に対してイランからの原油輸出を停止しなければ制裁を行うことを決定した。中国やインドはイランからの原油輸入をしばらく継続していたが、現在はシリアやイラクなど、ごく一部の国に対してしか原油を輸出できなくなっている。
この結果、イランの国内情勢は悪化、イランの消費者物価指数は2019年4月には47.8%を記録、物価上昇が顕著になっており国民生活は厳しくなっている。また若年層の失業率を見ると2018年データが直近のデータとなるが、この時点で28.4%と高い。若年層失業率の高さはデモや反政府行動に繋がりやすい。
隣国のイラクでも反政府デモは頻発している。イラクが置かれている情勢はイランと似る。ただし国内情勢が安定していないため、電力とLNGをイランから輸入しており、米国もイランからの輸出を米国が例外措置として認めていることで何とか維持できている状況(米国もイラクの情勢不安定化は望まないため、例外的にイランからイラクへのエネルギー輸出を認めている)。
イラクでの反政府デモは、イスラム国がイラク国内で台頭した時にこの掃討にイランが助力、イスラム教シーア派のアブドルマハディ首相が誕生したが、親イラン的政策を行い、かつ、国内の景況感が改善しない中で、スンニ派住民の反発が強まっていることが背景にある(サウジアラビアもこの件に影響を与えている可能性)。
この状況でイランでもコロナウイルスの感染者が確認され、閣僚も含めて感染が報告された。感染者は2,000人を超え、死亡者も77人に達している。経済状況が非常に厳しい中で、十分な治療が施せるかどうかは分からない。
そのため今後も感染者は拡大し、その他の地域(特にイラク)に拡大することも懸念される状況。住民の不満がさらに高まることが予想される。
恐らく感染拡大中は感染を恐れてデモは行われないだろう。しかし、コロナウイルス封鎖のための行動がさらにイラン国内の経済状況を悪化させ、沈静化後のデモ拡大に繋がり、原油の供給懸念が高まる可能性はあり得る。
ただ、すでにイランの原油輸出はシリアや密輸を除けばほとんどない状態であり、価格上昇には繋がらない。また、実際にデモを行ったとしても、政府に鎮圧される可能性の方が高い。
実際、2019年12月にはガソリン価格の値上げに対する抗議デモが発生、1月にも米国との緊張が高まったときにウクライナ機を誤射、多数のイラン人が死亡したことに抗議するデモが発生した。しかしいずれも治安部隊によって速やかに鎮圧されている。
中東でも指折りの軍事力を誇るイランで、国内のデモやクーデターが体制を揺るがすことは困難、ということだろう。米国も反指導者勢力による蜂起を期待しているようだが、受け皿となる反指導者組織があるわけではなく、さらに中東情勢が混迷の度合いを深めると予想されるため、本音ではそれも避けたいのではないか。
また、イランとしても国内の混乱は国家財政の更なる悪化に繋がるためこれは避けたい。よって、国民の不満を海外(米国)に向ける方向に指導部は傾きやすくなる。今回の選挙はそういった狙いもあったと考えられる。
対米強硬派が台頭する形となった選挙だが、この場合でも米国との軍事衝突はないだろう。これは年初の米・イラン危機の時に両国とも「戦争は甚大な被害が出る」との認識で一致していると考えられるためだ。
では今後はどうなるか。米国の制裁が緩和されることはなく財政状況の悪化で治安が不安定化、欧州との関係を維持して米大統領選挙が終了するまで待つ、という選択しかありえない。核開発をさらに加速させることも、欧州のサポートが得られなくなり、北朝鮮化する可能性があるため恐らく選択肢ではなくなる。
最高指導者のハメネイ師は「米国との対話を禁じる」としているが、恐らく、米大統領選挙でトランプが勝利した場合(共和党政権が維持された場合)、やむを得ず米国との会談に臨むことになると予想される。
イランにとっては、核合意を行った民主党政権が勝利することであるが、この場合、恐らく米国はTPPに再加入すると同時に、イラン核合意にも再び参画するのではないだろうか。
確証はないが、イランは厳しい状況にあるが、穏健派であり国際協調派であるロウハニ大統領の任期が、米・イランの「手打ち」の期限となるのではないだろうか。
◆主要ニュース
・2月中国マネーサプライ M2 前年比+8.8%の203兆800億元(前月+8.4%の202兆3,100億元)
M1 +4.8%の55兆2,700億元(±0.0%の54兆5,500億元)
ファイナンス規模 8,554億元(前月5兆674億元)
・2月中国人民元建て新規融資 前年比+2.2%の9,057億元(前月+3.4%の33,400億元)
・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 +55.4%(前週+15.1%)
購入指数+5.6(▲2.7%)
借換指数+78.6%(+26.0%)
固定金利30年 3.47%(3.57%)、15年 2.90%(3.03%)
・2月米消費者物価指数 前月比+0.1%(前月+0.1%)、前年比 +2.3%(+2.5%)、コア 前月比+0.2%(+0.2%)、前年比+2.4%(+2.3%)
・2月米実質平均賃金 前年比+0.7%(前月±0.0%)、実質平均時給 +0.6%(+0.6%)
・2月米財政収支 ▲2,353億ドルの赤字(前月▲326億ドルの赤字)
・WHO、パンデミックを宣言。
・中国 習近平国家主席、新型コロナウイルスの抑え込みを宣言。武漢を往訪。
・中国政府、預金準備率の引き下げを示唆。
・英中銀、▲0.5%の緊急利下げを実施。
・サウジアラビア、G20の開催を延期。
・トルコ軍、シリアから撤退を開始。
・トルコ ババジャン元副首相、エルドアン首相の強権的な政治手法を批判し、新党立ち上げ。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・OPEC月報
世界石油需要 Q120:97.6、Q220:98.2、Q320:101.3、Q420:101.9、2020:99.8
非OPEC供給(含むNGLs) Q120:66.4、Q220:66.5、Q320:66.7、Q420:67.3、2020:66.7
Call on OPEC Q120:31.2、Q220:31.7、Q320:34.6、Q420:34.6、2020:33.0
※需要見通し下方修正でCall on OPEC減少。
・DOE月報
世界石油需要 Q120:100.5、Q220:102.2、Q320:102.9、Q420:102.7、2020:102.1
非OPEC供給(含むNGLs) Q120:66.8、Q220:68.3、Q320:68.5、Q420:68.2、2020:67.9
OPEC生産 Q120:33.8、Q220:33.9、Q320:34.5、Q420:34.5、2020:34.1
※需要見通し下方修正でCall on OPEC減少。
・3月DOE2020年価格見通し
WTI 39.19ドル(58.25ドル)、2021年 50.36(62.03ドル)
Brent 43.30ドル(64.83ドル)、55.36ドル(67.53ドル)
ガソリン 2.14ドル(2.63ドル)、2.33ドル(2.63ドル)
ディーゼル 2.54ドル(3.11ドル)、2.73ドル(3.12ドル)
灯油 2.63ドル(3.11ドル)、2.71ドル(3.12ドル)
天然ガス 1.024ドル/MMBtu(1.025ドル)、1.033ドル(1.039ドル)
電力 13.05セント(13.06セント/kwh)、13.32セント(13.32セント)
・DOE米石油統計 原油+7.7MB(クッシング+0.7MB)
ガソリン▲5.0MB
ディスティレート▲6.4MB
稼働率▲0.5%
原油・石油製品輸出 9,317KBD(前週比+180KBD)
原油輸出 3,696KBD(+110KBD)
ガソリン輸出 792KBD(+30KBD)
ディスティレート輸出 1,377KBD(+31KBD)
レジデュアル輸出 165KBD(▲21KBD)
プロパン・プロピレン輸出 1,124KBD(+1KBD)
その他石油製品輸出 1,906KBD(+46KBD)
・サウジアラビア、生産能力を1,300万バレルに引き上げへ。
・UAE、生産を400万バレル超に引き上げへ。
【メタル】
・Antaike、2月の中国道精錬所の銅生産、65万6,000トン(前月65万7,000トン)。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で60万トン程度に生産が減少すると予想していたが、それを大きく上回った。3月の生産は需要の回復で69万トンに増加を予想。
・2019年日本電気銅生産 前年比▲6.2%の149万5,359トン、亜鉛+1.1%の52万6,717万トン、電気鉛+0.9%の19万8,371トン。
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +5.08%/ ▲22.18%
2.TCM灯油 ( エネルギー )/ +3.62%/ ▲36.00%
3.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +2.69%/ ▲9.18%
4.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +1.90%/ ▲38.76%
5.TCM原油 ( エネルギー )/ +1.83%/ ▲42.45%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲7.64%/ ▲26.35%
69.S&P500 ( 株式 )/ ▲4.89%/ ▲15.15%
68.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲4.40%/ +18.85%
67.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲4.04%/ ▲34.60%
66.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲4.02%/ ▲45.99%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :23,553.22(▲1464.94)
S&P500 :2,741.38(▲140.85)
日経平均株価 :19,416.06(▲451.06)
ドル円 :104.54(▲1.10)
ユーロ円 :117.82(▲1.36)
米10年債利回り :0.87(+0.07)
独10年債利回り :▲0.74(+0.05)
日10年債利回り :▲0.07(▲0.02)
中国10年債利回り :2.62(+0.02)
ビットコイン :7,863.13(▲135.97)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :35.39(+0.3)
エネルギー :77.81(+0.14)
ベースメタル :20.92(+0.45)
貴金属 :36.04(+0.59)
穀物 :18.48(+0.09)
その他農畜産品 :30.48(+0.3)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :117.55(▲0.15)
Brent :109.87(▲1.46)
米天然ガス :58.25(+2.25)
米ガソリン :93.66(+0.44)
ICEガスオイル :69.75(+0.85)
LME銅 :16.02(▲0.23)
LMEアルミニウム :18.82(▲0.03)
金 :14.14(+0.12)
プラチナ :35.42(+0.04)
トウモロコシ :18.82(▲0.08)
大豆 :14.14(+0.12)
【エネルギー】
WTI :32.98(▲1.38)
Brent :35.79(▲1.43)
Oman :35.15(+0.08)
米ガソリン :111.03(▲4.68)
米灯油 :123.80(▲1.19)
ICEガスオイル :376.00(+7.00)
米天然ガス :1.99(+0.05)
英天然ガス :24.18(+1.17)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :35.79(▲1.43)
SPO380cst :181.70(▲17.35)
SPOケロシン :45.91(▲1.30)
SPOガスオイル :47.81(▲0.95)
ICE ガスオイル :50.47(+0.94)
NYMEX灯油 :124.57(▲0.24)
【貴金属】
金 :1635.04(▲14.36)
銀 :16.75(▲0.14)
プラチナ :864.05(▲9.97)
パラジウム :2312.38(▲106.43)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,562(▲47:10C)
亜鉛 :1,994(▲26:15.5C)
鉛 :1,797(▲40:16B)
アルミニウム :1,687(▲22:16.5C)
ニッケル :12,485(▲405:50C)
錫 :16,750(▲200:25C)
コバルト :33,081(▲5)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5508.00(▲77.00)
亜鉛 :1985.00(▲10.00)
鉛 :1767.00(▲33.50)
アルミニウム :1672.00(▲30.00)
ニッケル :12450.00(▲285.00)
錫 :16800.00(▲30.00)
バルチック海運指数 :631.00(+4.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :89.15(▲1.06)
NYMEX鉄鉱石 :89.59(▲0.56)
NYMEX原料炭スワップ先物 :158.91(+0.54)
上海鉄筋直近限月 :3,452(▲13)
上海鉄筋中心限月 :3,506(+42)
米鉄スクラップ :276(▲21.00)
【農産物】
大豆 :867.75(▲5.25)
シカゴ大豆ミール :295.90(±0.0)
シカゴ大豆油 :27.30(▲0.14)
マレーシア パーム油 :2370.00(+31.00)
シカゴ とうもろこし :379.25(▲0.75)
シカゴ小麦 :517.25(▲9.50)
シンガポールゴム :160.90(+0.30)
上海ゴム :10485.00(±0.0)
砂糖 :12.26(▲0.33)
アラビカ :111.55(▲2.70)
ロブスタ :1246.00(▲8.00)
綿花 :61.55(+0.14)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :63.88(▲1.13)
シカゴ生牛 :103.08(▲2.38)
シカゴ飼育牛 :123.33(▲4.43)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。