OPEC減産規模縮小で原油急落
- MRA商品市場レポート
2020年4月10日 第1724号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「OPEC減産規模縮小で原油急落」
【昨日と本日の各セクターショートコメント】
◆エネルギー:OPECプラス会合で▲1,000万バレル減産で合意したが、市場の期待を下回ったために下落。
本日は昨日の下落幅が大きく一旦上昇。しかし、G20エネルギー相会合でOPECプラスの要求を呑んで減産するとは考え難く引けにかけて下落か。
◆非鉄金属:前日売られたこともありFRBの追加資金供給策を受けた株高で上昇。
感染拡大ぺース減速と減産の影響が価格を押し上げるものの、経済封鎖状態も広く継続している状態であり上値重く、もみ合い。
◆鉄鋼原料:上昇。武漢の封鎖が解除されたことや、中国高炉の稼働率上昇が材料になった。
新規手掛かり材料に乏しいが、中国の工場再稼働とそれに伴う在庫日数の低下で在庫積み圧力で堅調。原料炭、鉄鋼製品は小動き。
◆貴金属:FRBの追加対策実施を受けた実質金利の低下を受けて軒並み上昇。需要減少見通しでパラジウムは小幅安で引ける。
FRBの緩和は織り込んだが、金銀プラチナは本日のG20エネルギー相会合の結果次第。減産があれば上昇なければ下落。パラジウムは株式市場の安定で上昇か。
◆穀物:上昇。FRBの追加対策実施を受けた実質金利の低下による、ドル安進行が価格を押し上げ。
OPECプラス+αの減産合意あれば原油価格上昇で、エタノール上昇→トウモロコシ上昇。しかし、減産でエタノール向け需要が減少することから結局下落に。大豆、小麦もトウモロコシをフォローの公算。
※より詳細な説明は以下をご参照ください。
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は、総じてインフレ系資産が物色され、その他農産品などの非景気循環・非インフレ銘柄が売られた。また、OPECプラス会合の減産規模が市場予想を下回ったことで、エネルギーセクターは大きく売られることとなった。
印象として、中国関連の銘柄(非鉄金属)には上昇圧力が掛かり、米国中心の商品(エネルギー)は軟調、といった地合いが継続している。
ただ、コロナウイルスの感染拡大の影響を緩和するため経済対策は、1.足元の対策、2.終息後の対策、の2つに大別されるが、現在1.に関して大量に資金が投入されている。
企業の破綻回避と失業者対策が主体であり、これらの対策が景気を押し上げるわけではない。2.につなぐための政策、といえる。
しかしこれはコロナがいつ、どのような形で終息するかに依拠するため、1.の効果は結局、いろいろな資産価格の下支え要因に留まってしまうようだ(ある意味健全ではあるが)。
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https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html
【本日の価格見通し総括】
本日は欧米市場はグッドフライデーのため休場であり、動意薄い展開が予想される。その中でG20エネルギー相会議に注目が集まる。
OPECプラスは▲1,000万バレルの減産を決定したが、非OPECプラスがこれに対してどの程度賛同し、減産に応じるかが焦点(詳しくはエネルギーの項目をご参照ください)。
原油価格がこれを受けて上昇に転じれば、多くのリスク資産価格に上昇圧力が掛かることになるが、追加減産に応じなければ、インフレ系の資産を中心に下落することになると予想される。
【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】
昨日発表の米週間新規失業保険申請件数は、現在の米国の雇用環境を示す即時性のある指標として注目されているが、市場予想を上回る661万人の失業保険申請者の増加が確認された。
コロナウイルスの感染拡大防止のための措置が、米国内での解雇の動きを加速させているのは明らかである。米国は雇用市場の流動性が高まっているため、このような時の企業の動きは速い。
ただし、日本のように雇用制度が硬直化していないため、人材の登用も早く、仮に経済が立ち直れば比較的早いペースで雇用が回復するだろう。ただ、このペースで失業者が増加すると、早晩失業率は10%に達するのは明らかであり、消費にも影響が及び、景気循環系商品、特にエネルギーの価格を下押しする要因となり得る。
今回、失業保険申請件数の増加が多かった上位3州を見てみると、トップがカリフォルニア州で前週比+87万1,992件の増加。主にサービス業での解雇によるもの。
2位が現在苛烈な封鎖が行われているニューヨーク州で、飲食サービス、小売り、医療、福祉関連業の解雇が多い。
3位がミシガン州で、製造業、建設業、小売、総務、汚物処理、医療サービスなど幅広い業種に影響が及んだ。
対人接客系ビジネスの環境悪化が顕著であり、日本も同様の状態になることが予想される。
【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】
(マクロ要因)
・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。
中国の製造業・非製造業PMIは大幅な改善となったが、アンケートの取り方が「前月からの商況の変化」であるため、これを額面通りは評価し難い。もう数ヵ月この統計を見ていく必要があるだろう。
それ以上に、今後発表される欧米のPMIの悪化度合いが重要に。
・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ているが、コロナウイルスの感染拡大でさらに改定される見通しでは2019年(2.9%)を下回り、リセッション入りする可能性は高まっている。
・FRBは合計で▲150bpの緊急利下げと、ドル需要ひっ迫の状況を緩和するための無制限の量的緩和も実施、米国の持っていた金融緩和のカードはほとんどなくなった。徐々に金融面での価格下支え効果は薄れる見込み。
・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。
※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。
・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。
(特殊要因)
・中国の新型肺炎の世界的な感染拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた世界的な経済活動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。
・米中が通商面で再び対立(国営企業への補助禁止、人権面、知的財産権など)する可能性はあり、さらに新型肺炎問題が終息したのちに、ウイルス問題を受けて対立が激化する可能性も排除できず。
・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。
・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。
・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。
(投機・投資要因)
・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。
・コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油市場動向総括】
原油価格は下落した。OPECプラス会合で▲1,000万バレルの減産合意が伝わり、市場では▲2,000万バレルの減産を予想する声が多かったため、減産規模が市場予想を下回ったため、価格水準を大きく切り下げた。
また、米週間新規失業保険申請件数が市場予想を大幅に上回ったことも、需要減少観測を強める形となった。
なお、報道では▲1,000万バレルの減産は6月までとし、7月からは▲800万バレル、来年から再来年の4月までは▲600万バレル減産することで決定した。
弊社は▲1,000万バレルのOPECプラス単体減産でも困難と考えていたが、あっさり合意に至った。それだけ原油が余っているということなのだろう。
【原油価格見通し】
原油価格は昨日の下落幅が大きかったことから、一旦反動で上昇すると考える。たださらに上昇するかは、G20のエネルギー会合で追加減産で合意できるかどうかだが、基本的にサウジのような王政の国ではないため、そう簡単にOPECプラスの要求を呑むとは思えない。
ただし、価格下落に伴う自主的な減産はあると見られ、最終的に非OPECプラスで▲500万バレル程度までの減産は可能ではないかと見ている。
ちなみに米国はアンチトラスト法で、原油価格押し上げのための減産が認められていないが、州政府の要請に基づいて生産目標を引き下げることは可能なようだ。
仮に中央・地方政府が指示をしなかったとしても、現在の価格水準が維持されれば、生産コストの高い米シェールオイル生産者の減産(破綻も含む)はあり得る。平均生産コストは50ドル近辺であり完全にコスト割れだからだ。
全ての生産者が価格下落リスクヘッジを実施できている訳ではないため、現在の価格水準が継続するなら、3分の1程度の生産者は生産停止に追い込まれると見ている。結果、生産量ベースで▲250万バレル程度の「自主減産」になる可能性はある(IEAの見通しとほぼ同じ)。
ただ、シェールオイル企業の多くは下落リスクヘッジを行っていることから、ヘッジ期間の目処である6月末、12月末までは大規模な減産や連鎖破綻はないだろう。
しかし、米石油統計での石油製品出荷の落ち込みを見るに、一時的に原油需要は全世界で▲2,000万~▲3,000万バレル減少していると見られ、これらの大幅減産があったとしても価格に一定の下支え効果をもたらす程度ではないか、
やはり需要動向が価格を決定するため、これらの減産計画は実態に合わせて随時見直しされると見ている(減産しすぎによる価格急騰、ウイルス感染拡大抑制失敗による長期需要低迷などがあり得るため。これは誰にも分らない)。
ただ、コロナウイルスの新規感染者数が減少を始めていることから、6月会合で減産規模は縮小されるだろう。場合によると▲800万バレル以上の減産規模縮小となる可能性もある。
影響が良く分からないのが、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点。これによって株が急騰する可能性はあり、その場合エネルギーセクターにもリバランスの買いが入るため、投機的な観点から価格を押しあげよう。
株価の急騰は再び実態経済と、株価の顕著な乖離をもたらすため、その後のリスク資産価格を乱高下させる要因となるため要注意だ。
逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことはリスクといえる。
この状況でも米国とイランの対立は続いている。米国はイランに対してコロナ対策支援を申し出ているが、イランは今までの経緯もあってこれを拒否しているため、緊張状態は続くと予想する。
しかし、大統領選挙を控える米国・イランが国内の窮状を受けて歩み寄る可能性はあり得る(実際、米国側から人道的な理由でイランに対する制裁を緩和する動きが見られている)。
ただ、原油価格がしばらく低迷する可能性は高く、さらにコロナウイルスの感染拡大と、それを受けた食品価格の高騰(特に小麦)は、域内の対政権不満を高めることになる。
感染拡大中の暴動はないと見るが、終息後に政権への不満が爆発する可能性があり、その場合は顕著な供給リスクとなるだろう。
【石炭市場動向総括】
石炭先物市場は小幅に上昇した。中国の企業活動の回復が始まっているものの、中国の主要消費者である電力会社の在庫水準が高いことや、景気の回復ペースは緩やかなものになるとの見方から地合いは弱い。
【石炭価格見通し】
石炭価格は中国の輸入再開もあり、水準を切り上げる展開になると予想する。ただし経済活動が本格的に回復するには時間が掛ることから、上昇余地も限定されると考える。
石炭市場は環境規制の強化トレンドもあって、今後供給が減っていく可能性が高い一方、直ちに石炭火力からLNGやその他の再生可能エネルギーにシフトすることも難しく、しばらくは高止まりすることになるだろう。
結果的に価格変動性は低く、代表銘柄であるNEWCやAPI Coalの変動性は歴史的に見ても極めて低い状況。
このように、石炭市場の流動性が低下していくことが予想されることから、投機資金がさほど入っていないと見られ、需給を反映した価格動向となりやすい。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・OPECプラスの増産が開始された。価格急落で早晩減産が再開されると見るが、2014年の第1次OPECショックの時と同様、長期化した場合(価格下落要因)。
・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。
・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。
・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。
・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。
(特殊要因)
・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化が、中東情勢を悪化させ供給リスクにつながる場合。
・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。
(投機・投資要因)
・WTI、Brentともロング・ショートが増加した。3月末の資金調達にある程度目処がたち、ポジションの再構築が始まったためと考えられる。
ただし売り圧力の方が強く、買い越し幅は縮小している。
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが624,397枚(前週比 +46,031枚)ショートが189,289枚(+46,936枚)ネットロングは435,108枚(▲905枚)
Brentはロングが219,723枚(前週比+7,676枚)ショートが163,354枚(+8,399枚)ネットロングは56,369枚(▲723枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属市場動向総括】
LME非鉄金属価格は上昇した。昨日の反動で上昇した側面が強いが、FRBの追加資金供給策を交換した株価の上昇と、実質金利の低下が価格上昇の一助となった。
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格はもみあうものと見ている。
コロナウイルスの感染拡大防止のためのロックダウンの動きが奏功し、欧米での新規感染者数が減少傾向にあること、生産者側にも影響が出ており、供給減少の動きが加速していることが価格を押し上げる。
その一方で、経済活動の抑制状態が続いている状況に変わりはなく、あと数ヵ月は通常状態よりも需要が抑制された状態が続くと見られることが、上昇余地を限定するため。
新型コロナウイルスが生産に影響を与えるとした銅生産者は全体の2割に達し、亜鉛、ニッケルも1割程度の供給に影響が出ると見られている。
中期的には、コロナウイルスの感染拡大がQ220のいずれかのタイミング(おそらく後半)で終息すると一般的に期待されていることから、年末にかけて水準を切り上げる展開になると予想される。
基本的に戻りは緩やかなものになると見ているものの、稼働停止となっている鉱山の稼働が速やかに再開されるのか不明であり、各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いをしている点も価格上昇リスクを強めている。
これによって株が急騰する可能性はあり、非鉄金属セクターは投機の売りポジションが増加しているため、リバランスの買いが価格を急速に押し上げる可能性があることだ。
逆に、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、さらなる事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクだろう。
長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。
具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。
再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・3月の中国製造業PMIは52.0(前月35.7)と大幅な改善となり、好不況の閾値である50を回復。ただし、統計の強制的な不連続性発生により、統計が安定して評価できるようになるには数ヵ月を要する見込み。
生産活動が回復(27.8→54.1)、新規受注も回復しているが(29.3→52.0)、輸出新規受注の回復が緩慢であることを勘案すると(28.7→46.4)、やはり国内向けの回復によるもの。
新規受注在庫レシオも急回復しており、ファンダメンタルズ的には非鉄金属価格を押し上げ(ただし輸出需要の回復が緩慢であり影響は限定)。
・金属にもよるが、主要生産者がコロナウイルスの影響による生産調整に動いており、供給面で価格を押し上げ(労働力が集まらない、業績悪化に伴う設備投資の減額、採算性悪化に伴う減産など、理由は様々)
・3月銅製品生産者稼働状況
銅線生産者 75.8%(前月34.7%、過去4年平均 82.9%) 銅棒生産者 53.6%(25.9%、75.3%) 銅板生産者 32.6%(59.8%、74.4%) 銅管生産者 76.9%(39.1%、83.3%)
・1-2月期中国工業生産は前年比▲13.5%(1-12月期+6.9%)と大幅に減速(フロー需要の減少=価格の下落要因)。
・1-2月期中国固定資産投資は前年比▲24.5%の3兆3,323億元(1-12月期+5.4%の55兆1,478億元)と減速。公的部門は▲23.1%(+6.8%)と大幅に減速、民間部門も▲26.4%(+4.7%)と大幅な減速となった(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・1-2月期中国不動産開発投資は前年比▲16.3%の1兆115億元(1-12月期+9.9%の13兆2,194億元)と減速(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・1-2月の中国の銅地金・製品の輸入量は2ヵ月で85万トン(前月53万トン)と前年比で+7.2%と増加、銅鉱石・精鉱 377万トン(198万トン)と前年比▲1.2%と小幅な減少となった。
・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)
・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。ただしTCが低下を始めており、徐々に需給は緩和方向へ。
・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。
・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。
(特殊要因)
・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。
・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)
(投機・投資要因)
・4月3日付のLMEロング・ショートポジションは、引き続き総じてロング・ショートの減少が続いた。3月末を含んだポジション解消の動きが継続したためと考えられる。
投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲53.1億ドル(前週▲56.0億ドル)と売り越し幅を縮小した。ポジション解消取引の結果、ショートの買戻し圧力の方が大きかったためと見られる。売り越し額の減少率は▲5.2%。
買い越し枚数はトン数換算ベースで▲1,851千トン(前週▲1,886千トン)と鉛とアルミの売り越し幅が増加したが、その他は買戻しが入った。ネット売り越しの減少率は▲1.8%。
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料市場動向総括】
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は小幅上昇、中国鉄鋼製品先物価格は小幅上昇した。
武漢の封鎖解除や、中国の高炉の再稼働の進捗を受けて、水準を切り上げた。しかしその実は、前日の下落の反動による買戻しとみられる。
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は中国の工場の稼働再開と、生産国がコロナウイルス対策の影響で鉱山の稼働を停止したり、輸送を停止したりということが顕在化し始めていることが価格を押し上げるものの、景気が減速する可能性が強く意識されているため、現状水準でもみ合うものと考える。
中国河北省の高炉稼働率は4月3日時点で76.8%(前週74.4%)と上昇を続けており、中国の工場稼働が加速していることが伺える。
今後、中国以外の国でコロナウイルスの影響が拡大することを考えると、鉄鋼業の景況感の回復にはやはり時間がかかることになるだろう。
中国の鉄鋼製品の在庫積み上がりが顕著であり、今後鉄鋼向けの需要は減速すると考えられることが、価格の上値を限定しよう。
中期的にはValeの生産が増加する見込みであり、コロナウイルスの影響が終息すればそれが本格化するとみられることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。
原料炭は新型コロナウイルスの影響で世界の経済活動が鈍化、鉄鋼需要の伸びも欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。
しかし、生産側も同様に影響を受けていること、世界的な石炭生産制限の流れを受けて、鉄鉱石とは異なり原料炭の価格中期見通しは強気である。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・3月の中国鉄鋼業PMIは42.2と前月の36.6から大幅に改善。
生産が回復したことと(31.3→39.3)、原材料在庫が積み上がったこと(29.2→44.9)によるもの。
受注は国内は改善したがむしろ海外向けは減速(新規受注 32.7→38.5、輸出新規受注 42.5→27.3)しており、需要面が価格を下押ししやすい。
・1-2月期中国工業生産は前年比▲13.5%(1-12月期+6.9%)と大幅に減速(フロー需要の減少=価格の下落要因)。
・1-2月期中国固定資産投資は前年比▲24.5%の3兆3,323億元(1-12月期+5.4%の55兆1,478億元)と減速。
公的部門は▲23.1%(+6.8%)と大幅に減速、民間部門も▲26.4%(+4.7%)と大幅な減速となった(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
・1-2月期中国不動産開発投資は前年比▲16.3%の1兆115億元(1-12月期+9.9%の13兆2,194億元)と減速(ストック需要の減少=価格の下落要因)。
1-2月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の1,075万トンと減速、コロナウイルスの感染拡大の影響で企業活動が鈍化していることが確認された。
また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に増加し、前年比+33.1%の6,806万トンとなった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入増加によるもの。
・中国の1-2月の鉄鉱石の輸入量は前年比+1.5%の1億7,684万トンとなった。鉄鋼製品在庫の増加によって生産活動が鈍化している一方、鉄鉱石の港湾在庫の在庫日数は低下しており、一定の在庫積み増し需要があると考えられるため。
中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲250万トンの1億1,865万トン(過去5年平均1億2,727万トン)、在庫日数は▲1.6日の28.3日(過去5年平均 31.1日)と依然として在庫水準は低い。
鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られ、価格を押し上げると考える。
・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲115.4万トンの2,375.1万トン(過去5年平均 1,435.9万トン)とコロナウイルスの影響で在庫が急増していたが、工場の再稼働で例年通り在庫の取り崩しが始まっている。ただし、依然として在庫水準が高いことに変わりはない。
なお、1-2月の鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の781万トンと大幅に減速しており、やはりコロナウイルスの影響が顕在化した形に。今後は徐々に回復すると見られるが感染終息状況次第である。
・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。
(特殊要因)
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
(投機・投資要因)
・特になし。
---≪貴金属≫---
【貴金属市場動向総括】
金価格は上昇した。FRBが新たな資金供給策を発表したことで長期金利が低下、実質金利が低下したことが材料となった。
銀価格も大幅に上昇。プラチナも金家格の上昇を受けて水準を切り上げた。パラジウムはもみ合った結果、前日比小幅マイナスで引けている。
【貴金属価格見通し】
金銀は新型コロナウイルスへの影響が拡大、各国政府とも低金利政策や量的緩和を余儀なくされていることから、堅調な推移になると考える。
上昇基調が強まっていた原油であるが、産油国の減産が十分ではないと見られ(そもそも需要減少局面では、減産による価格押し上げ効果は限定される)、上昇余地も限定されると考える。
現在のリスクプレミアムは186ドル(前日比変わらず)。
※毎日回帰分析をアップデートリスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない点はご注意ください。
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀在庫レシオを元にした分析では90倍、ヒストリカルに見れば80倍程度が妥当。
関係性が薄れているとはいえCOMEX銀在庫が過去最高水準で推移しているため、しばらくは100倍を超える状態が続くと考えられる。
コロナ・OPECショックによる相場急変で、金価格と銀価格の過去の関係性が完全に崩壊してしまっており、新しい関係性が構築されるまでには時間が掛りそうだ。
弊社は価格動向分析に生産コストを用いることを是としていない。というのも、過去に生産コスト近辺で価格が推移したことがないためである。
しかし、この状況になるとよりどころとなる情報が少なく、全く無視するわけにもいかない。
Silver Instituteの過去データを参考にすると、現在、銀生産のオールインコストは10ドル/オンス程度まで低下していると考えられる。急落局面での下値目処として、少し頭に置いておくのが良いだろう。
PGM価格は、景気の先行きは明確に悪く、少なくともQ220は悪い状態が続きそうであること、株式市場の混乱も続いているためしばらくは軟調地合いの中、神経質なレンジワークを継続することになると考える。
プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な色彩が強まっているが、各国の準備金や市場取引の担保価値がみとめられている金のような安全資産としては認知されていないことによる。
銀価格は上記の通り当面低迷する可能性が高いため、プラチナ価格も低迷するだろう。
パラジウムは、世界的な景気減速に伴う自動車向け需要の減速が価格を下押しするものの、コロナウイルスの感染拡大で南アフリカの鉱山がすべて停止するなど、供給途絶リスクが顕在化しているため、高値圏での推移になると考える。
ただ、Norilsk Nickelは2020年のパラジウムの需給見通しを▲90万オンスの供給不足から、▲20万オンスの供給不足に下方修正しており、上限は切り下がったと考えられる。
3月の米自動車販売は年率1,137万台(市場予想 1,270万台、前月 1,683万台)と、急速に悪化している。明らかにコロナウイルスによる消費手控えの影響によるものである。
中国の2月の自動車販売は前年比▲79.1%の31.0万台となり、年初来の累計も前年比▲42.0%の223.8万台と減少傾向を持続している。
今後、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・FRBは▲1.5%の緊急利下げ、無制限の量的緩和を決定、貴金属価格の上昇要因に。
ただしこれで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働全面停止による供給懸念。
・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。
・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。
パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、
(特殊要因)
・中国の新型ウイルスの世界的な拡大に伴う、安全資産需要の高まり。
・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。
・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。
・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。
(投機・投資要因)
・金・銀はキャッシュ化の動きでロング・ショートとも減少、特にロングの売り圧力が強かった。
PGMはプラチナが明確にベア転したが、パラジウムはショートの買い戻し圧力が強まった。
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが287,529枚(前週比 ▲30,399枚)、ショートが28,680枚(▲882枚)、ネットロングは258,849枚(▲29,517枚)、銀が47,050枚(▲6,027枚)、ショートが16,172枚(▲3,218枚)、ネットロングは30,878枚(▲2,809枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが31,051枚(前週比 ▲2,156枚)ショートが11,203枚(+292枚)、ネットロングは19,848枚(▲2,448枚)
パラジウムが2,267枚(▲410枚)、ショートが1,355枚(▲1,031枚)ネットロングは912枚(+621枚)
---≪農産品≫---
【穀物市場動向総括】
シカゴ穀物市場は上昇した。米FRBの追加資金供給策を受けて実質金利が低下、ドル安が進行したことが材料となった。需給報告はあまり材料にされず。
状況に大きな変化がない中で、昨日売られた商品に買戻しが入る流れを受けたもの、といったほうが正確かもしれない。
昨日発表された米需給報告は以下の通り。
・4月の米需給報告の在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 20億9,200万Bu(20億1,018万Bu、前月18億9,200万Bu)大豆 4億8,000万Bu(4億4,595万Bu、4億2,500万Bu)小麦 9億7,000万Bu(9億9,441万Bu、10億Bu)
【穀物価格見通し】
穀物価格は高安まちまちになると考える。
トウモロコシは作付け意向面積の増加と、コロナウイルスの感染拡大に伴うエタノール向け需要の減少が価格を下押しするが、同時にエタノール生産者の大幅な減産が見込まれていることが価格を下支え。
大豆はコロナウイルスの影響による輸出減速観測はあるものの、エタノール生産の減少に伴うDDGs(トウモロコシ由来の飼料)減少による飼料需要の増加や、作付面積の減少、南米の干ばつ観測で底堅い推移になると考える。
小麦はそもそもシカゴの受け渡し可能在庫水準が低く、かつ、コロナウイルスの感染拡大や干ばつの影響で、ロシアがQ220の輸出を制限するとの見方による供給懸念や、消費者のパニック買いで高値圏を維持すると考える。
懸念すべきは東アフリカ・中東地域でサバクトビバッタが激増、深刻な食糧危機をもたらしており、これに伴う食品需要が増加する場合。
【価格変動要因の整理】
(マクロ要因)
・トウモロ作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)
・4月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)
・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 79億5,300万Bu(81億8,354万Bu、114億200万Bu)大豆 22億5,300万Bu(22億2,830万Bu、32億5,800万Bu)小麦 14億1,200万Bu(14億2,979万Bu、18億4,100万Bu)
(特殊要因)
・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。
・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。
・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。
(投機・投資要因)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが235,355枚(前週比 ▲31,454枚)、ショートが274,291枚(▲26,044枚)ネットロングは▲38,936枚(▲5,410枚)
大豆はロングが158,029枚(+11,828枚)、ショートが68,618枚(▲17,236枚)ネットロングは89,411枚(+29,064枚)
小麦はロングが107,015枚(+9,578枚)、ショートが62,153枚(▲468枚)ネットロングは44,862枚(+10,046枚)
◆本日のMRA's Eye
「OPECプラスは減産合意も原油価格は乱高下」
今週発表された米石油統計は、非常にショッキングな内容だった。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、米国は多くの州で外出が禁止され、国境も封鎖されるという措置が取られている。このため、ガソリンを始めとする石油製品の需要が急速に減少しているのだ。
米国は5月の最終月曜日から9月のレイバーデーまで、自動車による外出需要が増加する「ドライブシーズン」となる。それに伴いガソリンの出荷需要も増加を始めるのだが、米週間石油統計では3週連続の減少となり、前年比ベースでの減少は▲19.3%に達した。
出荷の絶対水準もリーマンショック時をはるかに超えている。これは金融市場の機能が喪失し、実態経済に影響が及ぶというステップで影響を及ぼしたリーマンショックと異なり、感染拡大防止のために物理的な人と人の接触を断つための移動制限が強制的に行われたことが大きな違いである。
先行する中国の動向を見るに、恐らく米国の移動制限はあと2ヵ月程度続くと予想される。
このため、恐らく米国の原油在庫も積み上がることになり、このまま減産をしない状態が続けば、非常に速いペースで在庫が積み上がり、早晩在庫貯蔵施設の余剰が無くなることになる。実際、0.1ドル程度で推移していた米LOOP(Louisiana Offshore Oil Port Services)原油貯蔵設備先物価格は、0.55ドルまで上昇している。実際に原油が余り始めているのだ。
しかし、過去の動きを見てみると2016年に貯蔵施設先物は1.8ドルを超える水準まで上昇した。これは循環的な景気減速に加え、中国で発生した上海株ショックによる景気の減速に、2016年1月から始まったイランに対する米国の制裁解除が加わり、大幅な供給過剰状態になったからだ。
また、世界の洋上在庫も再び増加に転じているが、これもまだ2016年の水準までは達していない。しかし、洋上在庫の増加は昨年から始まっており世界的に既に原油の需要が減速している可能性は高い。
こうした環境を受けて、OPECは急速に減産に舵を切り、2016年11月のOPEC総会で歴史的な合意となる「OPECプラス協調減産」を決定している。
そのため、今回のOPECプラスでは減産合意となったが、市場の期待を下回ったようだ。しかし、1,000万バレルといえば、OPECプラスの生産量の23%に相当する量であり、OPECプラスだけで需要の減少している米国やその他の欧州分も減産せよ、というのはどう考えても無理筋である。
市場が要求していた2,000万バレルは、これら産油国のほぼ半分の生産量となり国家財政が破綻しかねない。
そのように考えると、サウジがもともと期待している、「再生可能エネルギー」や「高コストな非在来型油田」の自主的な減産が起きるのは市場原理に基づくものであるため諒とされるべきだろう。
IEAも現在の価格水準が続くのであれば、米国の生産は▲250万バレル程度減少するとの見通しを示している。しかし今回の減産でこの水準が▲150万バレル程度に低下するかもしれない。
いずれにしてもこれらの減産がなければ原油価格は再び10ドル台を目指してもおかしくなかった。
しかし問題は今後だろう。
OPECプラスは7月から減産幅を段階的に縮小させていく方針を示しているが、結局のところコロナウイルスの影響次第である(今のところ7月頃に欧米は終息するという楽観シナリオを希望的観測も込めてメインシナリオとしている)。
過去の例を見るに、感染症の新規感染者数が減少に転じると価格が上昇し、終息宣言と共に上げ幅を加速させる。
仮にIEAの見通し通りになるならば、これまでの間に非OPECプラスの生産者の破綻や生産調整が起き、これに加えてOPECプラスの▲800万バレルの減産が継続されると、顕著な供給不足となる。この場合、需要の戻りが緩慢だったとしても供給不足幅があまりに大きいため、大幅な上昇となるだろう。
しかしこうなると北米の生産者も息を吹き返すため、需要の戻りが緩慢な中で再び価格が急落する、ということもあり得る。
結局、コロナの状況を見つつ臨機応変に生産量を調整する必要がある、ということである。その意味で今回のOPECプラスは結束を確認するべき会合にするべきだったが、やはり3月のムハンマド・ショックによる決裂以降、各国の関係はギクシャクしており、短期間のうちにOPECプラスはその結束を取り戻す必要があるだろう。
結果、原油価格は需要の回復が弱い中で頭重い推移となりつつも、高い変動性を維持すると予想される。
◆主要ニュース
・3月東京都心オフィス空室率 1.50%(前月 1.49%)
・3月日本工作機械受注速報 前年比▲40.8%の773億5,500万円(前月▲29.6%の772億2,400万円)、外需▲43.8%の431億2,000万円(▲33.6%の452億2,700万円)
・2月独経常収支 237億ユーロの黒字(前月168億ユーロの黒字)
貿易収支208億ユーロの黒字(138億ユーロの黒字)
輸出 前月+1.3%(+0.1%)、輸入▲1.6%(+0.6%)
・2月インド鉱工業生産 前年比+4.5%(前月+2.0%)
・3月米生産者物価指数 前月比▲0.2%(前月▲0.6%)、前年比+0.7%(+1.3%)
除く食品エネルギー 前月比+0.2%(▲0.3%)、前年比+1.4%(+1.4%)
除く食品エネルギー・貿易 前月比▲0.2%(▲0.1%)、前年比+1.0%(+1.4%)
・米週間新規失業保険申請件数 6,606千件(前週6,867千件)
失業保険継続受給者数 7,455千人(3,059千人)
・2月米卸売在庫改定 前月比▲0.7%(速報比▲0.2%、前月▲0.5%)
卸売売上高▲0.8%(+1.6%)
・4月米ミシガン大学消費者マインド指数速報 71.0(前月89.1)
現況指数 72.4(103.7)
先行指数 70.0(79.7)
1年期待インフレ率 2.1%(2.2%)
5年期待インフレ率 2.5%(2.3%)
・日銀黒田総裁、「新型コロナで経済の先行きは不確実性が高い。必要な場合には躊躇なく追加緩和する。」
・FRB、最大2.3兆ドルを追加緩和。中小企業や州・地方政府の支援プログラムを開始。投資不適格に格下げされた社債の一部やローン担保証券、商業不動産ローン担保証券の一部といった、金融市場で最も打撃を受けている証券も対象に。
・EU財務相、5,900億ドルのウイルス対策で合意。
・米国立アレルギー感染症研究所 ファウチ所長、「米国の死者は従来予想を大きく下回る6万人に留まる可能性。」
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・DOE天然ガス稼働在庫 2,024BCF(前週比+37BCF)
東部 382BCF( 変わらずBCF)
中西部 475BCF(▲1BCF)
山間部 92BCF( 変わらずBCF)
太平洋地区203BCF(+6BCF)
南中央 872BCF(+32BCF)
・OPECプラス、▲1,000万バレルの減産で暫定合意。サウジアラビアとロシアは▲850万バレル減産。OPECプラスのメンバーは5、6月の生産量を23%削減することで合意。OPECプラスはメンバー以外の産油国で日量500万バレルの追加減産を望んでいる。7月から▲800万バレル、1月から2022年4月にかけては▲600万バレルまでの減産規模の縮小見通しが示された模様。
・「メキシコは、OPECプラスの石油削減を拒否し、グループから撤退、今後オブザーバーの地位を取るだろう」(関係者)
・サウジアラビア主導の連合軍、コロナウイルスの感染拡大防止でイエメンの内戦、2週間の停戦を発表。
【メタル】
・Vale、Voisey's Bayのメンテナンスの規模と期間を拡張。
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME木材 ( その他農産品 )/ +5.92%/ ▲20.53%
2.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ +5.23%/ +12.91%
3.CBTエタノール ( エネルギー )/ +5.04%/ ▲31.78%
4.インド・センセックス ( 株式 )/ +4.23%/ ▲24.47%
5.LME錫 3M ( ベースメタル )/ +3.39%/ ▲12.78%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲9.29%/ ▲62.73%
69.DME Oman ( エネルギー )/ ▲8.82%/ ▲63.51%
68.TCM灯油 ( エネルギー )/ ▲4.49%/ ▲47.38%
67.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲4.14%/ ▲52.30%
66.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲3.92%/ ▲60.97%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :23,719.37(+285.80)
S&P500 :2,789.82(+39.84)
日経平均株価 :19,345.77(▲7.47)
ドル円 :108.49(▲0.34)
ユーロ円 :118.58(+0.41)
米10年債 :0.72(▲0.05)
中国10年債利回り :2.51(+0.04)
日本10年債利回り :0.02(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.35(▲0.04)
ビットコイン :7,306.08(▲19.00)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :57.51(▲2.28)
エネルギー :106.45(▲1.03)
ベースメタル :40.21(▲0.96)
貴金属 :70.77(▲10.65)
穀物 :28.29(▲1)
その他農畜産品 :49.20(▲1.61)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :183.67(+2.12)
Brent :134.61(▲1.73)
米天然ガス :72.79(+2.66)
米ガソリン :215.70(▲11.11)
ICEガスオイル :86.37(+0.43)
LME銅 :48.01(▲0.88)
LMEアルミニウム :21.24(+0.23)
金 :21.56(▲0.31)
プラチナ :75.48(▲10.18)
トウモロコシ :25.64(▲0.6)
大豆 :21.56(▲0.31)
【エネルギー】
WTI :22.76(▲2.33)
Brent :31.48(▲1.36)
Oman :24.60(▲2.38)
米ガソリン :67.73(▲0.07)
米灯油 :97.26(▲3.81)
ICEガスオイル :302.50(+4.50)
米天然ガス :1.73(▲0.05)
英天然ガス :16.86(▲0.01)
【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :31.48(▲1.36)
SPO380cst :180.90(▲10.98)
SPOケロシン :29.94(▲1.13)
SPOガスオイル :36.24(▲1.78)
ICE ガスオイル :40.60(+0.60)
NYMEX灯油 :103.22(▲0.53)
【貴金属】
金 :1683.73(+37.59)
銀 :15.43(+0.47)
プラチナ :750.76(+18.03)
パラジウム :2164.85(▲3.20)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :4,993(▲8:29C)
亜鉛 :1,899(▲6:14.5C)
鉛 :1,704(▲9:19.5C)
アルミニウム :1,467(+8:38.5C)
ニッケル :11,523(+26:66C)
錫 :15,058(+450:113B)
コバルト :29,582(▲6)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5032.00(+9.50)
亜鉛 :1909.00(▲5.00)
鉛 :1725.00(+9.50)
アルミニウム :1484.00(+15.00)
ニッケル :11700.00(+190.00)
錫 :14950.00(+490.00)
バルチック海運指数 :607.00(+11.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :83.62(+0.63)
NYMEX鉄鉱石 :83.35(+0.48)
NYMEX原料炭スワップ先物 :135.99(+0.03)
上海鉄筋直近限月 :3,326(+3)
上海鉄筋中心限月 :3,293(+66)
米鉄スクラップ :270(+3.00)
【農産物】
大豆 :863.50(+9.00)
シカゴ大豆ミール :292.50(▲0.30)
シカゴ大豆油 :27.41(+0.23)
マレーシア パーム油 :2383.00(▲50.00)
シカゴ とうもろこし :331.75(+1.75)
シカゴ小麦 :556.50(+8.25)
シンガポールゴム :131.50(±0.0)
上海ゴム :9845.00(±0.0)
砂糖 :10.43(+0.06)
アラビカ :118.60(▲1.20)
ロブスタ :1189.00(▲11.00)
綿花 :54.37(+0.53)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :42.80(▲0.33)
シカゴ生牛 :94.00(+1.18)
シカゴ飼育牛 :119.53(▲0.35)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。