CONTENTSコンテンツ

パンデミック懸念と原油価格急落で下落
  • MRA商品市場レポート for PRO

2020年3月9日 第1702号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「パンデミック懸念と原油価格急落で下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は総じて軟調で、貴金属や債券以外の商品は総じて水準を切り下げる流れとなった。

注目されていた米雇用統計は良好な内容だったものの、コロナウイルスの感染拡大前の過去の指標であり市場の反応は限定、世界的な新規感染者数の拡大と、各国政府の断固たる対応強化によって景気の減速懸念が強まったこと、OPECプラスが減産で合意できなかったことで原油価格が急落したことで、すべてのリスク資産価格を下押しした。

OPECが減産を行わなかったことで原油価格は急落したが、「OPECの生産調整がなければこの原油価格が、実際の世界経済の状況を表す」と市場が判断したとしてもおかしくない。

原油価格の上昇=景気の底入れ、で株価が反発、リスク資産反転のきっかけとなり得るがOPECプラスの協調体制が崩れたことで先行きはより不透明になった。

コロナウイルスの評価は人によって異なるが、実際にビジネスや経済活動に関わっている労働者の年齢層は、感染したとしても致死率が低いとされる年齢であるためあまり強く意識されていない。

しかし、70歳を超える年齢層の致死率は高く、この年齢層に感染が拡大する状況を各国政府としても放置できないことが、現在の過剰な対応に繋がっていると考えられる。

※関連グラフはリンクをご参照ください。詳しい解説は「MRA商品市場レポート for PRO」をご購読ください。
https://marketrisk.jp/news-contents

※レポートのお申込みはこちらから。
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

【本日の価格見通し総括】

週明け月曜日は、金曜日の下落が大きかったことから、一旦買戻しが入り多くの商品価格が上昇すると考える。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は続き、特効薬が見つかっていないことも考えると、各国の対策強化による経済活動の強制鈍化は続くと見られ、上昇余地は限定されると考える。

懸念されるのはこれらを受けた株価の下落がどこまで起きるか、ということ。一旦コロナウイルスの感染拡大の影響は織り込んだと見られるが、「実態経済の指標」となった原油価格が急落する中で、さらなる調整の可能性は無視できない。

なお、週末に発表された中国の貿易統計は、輸出が前年比▲17.2%(市場予想▲16.2%)と市場予想を上回る減速となったが、輸入が▲4.0%(▲16.1%)と市場予想を上回っており、「中国の企業活動が再開している可能性」を示唆するものであり、やや明るい内容。

ただし交易量の減少は今後、中国以外の国で広がると予想され、楽観はできない。

【昨日の世界経済・市場動向のトピックス】

新型コロナウイルスは、インターネットやメールマガジン、SNSに親しんでいる世代では致死率が低く、ネット上では軽視されがちだ(もちろん逆に不安を煽るものもある)。

しかし、事実として高齢者の致死率は決して低くなくSARSを上回っている。そのため、各国政府は特効薬が見つかっていないこと、暖かい地域でも感染が拡大していることから、春になれば終息するとの見方は楽観的過ぎるとして、封じ込め策を強化している状況。

景気の「気」ではなく実態経済の強制停止が時間をかけてクレジットリスクに波及する、というリーマンショックとは逆の順序で、「時間をかけたリーマンショック」が起きているともいえる。早く終息させなければ本当にそうなってしまう。

特に気になるのが低金利を背景にした株式市場で、高レバレッジの取引が行われてきたこと。

スタートアップ企業に投資し、スタートアップ企業もその他のスタートアップ企業に投資をする...というレバレッジが掛かっていたわけだが、これらの企業の最終的な収益の源泉である実態経済(バーチャルではないフィジカルの世界)に影響が出ており、こうしたレバレッジの逆回転リスクが時間経過とともに高まることになる。

また、原油価格は2014年のOPECショックの時と同様、生産側の調整がうまくいかなくなると、歳入確保のために一気に増産、さらに価格が下落することもあり得る。

この場合、価格下落リスクヘッジをすでに実施済の生産者は別として、米国のシェール関連企業の業績が悪化、ジャンク債市場が壊れて信用リスクに波及するシナリオも想定される。

多少の景気悪化を犠牲にしても、早期終息を各国政府が図っているのはそのためだろう。

「アナリストの予想は必ずしも当たらない」のは、市場に携わっている人からすれば常識だ。同様に、コロナウイルスの影響やその終息状況の予想が当たる保証はない。

医療関係者の意見をもとに防疫するのは当然としても、企業としては、「その終息予想が当たらなかった場合」を想定して対応することが必要ではないだろうか。

過去の例を参考にすると、クライシスが起きた時に発生から終息までは9ヵ月程度。企業破綻を回避するための資金繰りの目処は、1年程度となる。各国政府は企業の資金繰り支援や雇用対策のために財政出動を早急に検討すべきタイミングだ。

「大山鳴動して鼠一匹」ということになれば、それはそれで問題はなく、火事がボヤで済むだけのこと。大火事になってしまってからでは打つ手は相当限られる。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

(マクロ要因)

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の減速。特に中国の製造業・非製造業PMIの減速はショッキングであり、今後、中国以外の国が中国ほど苛烈ではないにせよ、感染拡大防止策を講じた場合、同様の影響が出る可能性があることは需要面での価格下落要因。

今後は、これが短期的な減速で止まるのか、長期的なものになるのかは各国政府の対応に掛かっている。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを引き下げ(+3.4%→+3.3%)ている。2021年も3.4%(▲0.1%)に引き下げ。

なお、新型コロナウイルスの影響による景気の下振れは▲0.1%としていたが、「2019年の成長を下回る見通し」と非常に悲観的な発言も出ているため、今後のIMFの見通し変更には注意。

・FRBの利下げに打ち止め感が広がっていたが、新型肺炎の影響で▲50bpの追加利下げが行われた。しかし市場はさらに2回の利下げを市場は織り込んでいる(▲50bp程度)。景気の減速が懸念されているため追加利下げは景気循環系商品価格の下支え要因に。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

(特殊要因)

・中国の新型肺炎の世界的な感染拡大(パンデミックリスクの顕在化)を受けた経済活動の鈍化(景気循環系商品価格の下落要因)。

・米中が通商面で再び対立(国営企業への補助禁止、人権面、知的財産権など)する可能性はあり、景気循環銘柄価格の下振れ要因に。ただし、新型肺炎の影響で当面は中国の合意不履行は問題視されない可能性が高まった。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中東情勢が再度緊迫化し、域内景気への悪影響への懸念(下落要因)。可能性は低いが、イランと米国の散発的な衝突は続き、軍事衝突懸念が再びつよまる可能性があることは排除できず。

・英国のEU離脱が無秩序なものになるリスク。今後は2020年12月末の移行期間までに条件で合意ができるか否か。場合によっては、ハードブレグジットの可能性も。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

・日韓対立によるハイテク分野の市場混乱や、極東地区の地政学的リスクの高まり(下落要因)。

(投機・投資要因)

・コロナウイルスの影響拡大によるリスク回避の株安が、景気循環系商品価格にマイナスの影響を与える場合。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

昨日の原油価格は大幅に下落した。OPECプラスに対してOPECが▲150万バレルの追加減産、場合によっては年末までの減産を突きつけ、「ロシアが合意するかどうか」、に注目が集まっていたがこれを拒否、4月以降の協調減産離脱を宣言したことで需給バランスの悪化が意識されたため。

米雇用統計は市場予想を上回る良い内容だったが、市場は「今後」を意識しているためほとんど材料にならなかった。

【原油価格見通し】

原油価格はOPECプラスの協調減産体制が崩壊のリスクにさらされていることで、今後、歳入確保のための産油国の増産の可能性が高まること、需要の減少は景気とは関係ない部分で強化される見込みであることから、需給緩和に時間を要すると考えられ、下落余地を探る動きになると考える。ただ、月曜日のオープンは、売られすぎから一旦買戻しが入るだろう。

今後は、1.ロシアが何らかの譲歩を行う(その可能性は全くないというわけではない)、2.コロナウイルスの感染拡大が終息する、といったことが相場反転の必要条件となる。

しかし、感染のピークは恐らく今月~5月頃とみられており、一部で言われている「暖かくなって終息」「抗体を獲得した人間の増加で終息」ということが仮に事実だとしても、Q220以降になると予想される。もちろん、薬効のある薬が発見されれば話は別だが。

価格見通しは3ヵ月ごとに更新であるため、次回更新は4月となるが、恐らくQ220のBrentの価格見通しは情勢に変化がなければ、35~45ドル、WTIで35~40ドルといったところが平均価格予想となる。

このように需給の落としどころがわからない状況では、価格予想にファンダメンタルズ分析はあまり意味がない。Brentのコールオプションは55ドルまで特段大きな山がなく、真空地帯であるため一時的にここまでの上昇はあり得る。

しかし、市場は需要減少リスク側に傾いており、現時点ではよりプットオプション動向が注目される。

Brentは45ドルに16,003枚、42ドルに21,062枚、40ドルに20,806枚にオプション建玉が積み上がっており、40ドル以下は真空地帯だ。これらの攻防ラインを下回るとさらなる下落となる。この攻防線で価格はもみ合うものと考えるが、しばらくは42ドルが強い抵抗線として意識されよう。

ちなみにWTIは40ドルに13,027枚の建玉が積み上がっているが、それ以下は真空地帯である。

中国は早期の可能性が高まっているが、それでも終息は4月末の見込み。一方、中国以外の国での感染者数が増加しておりWHOも最高レベルの警戒を勧告、6月末頃の終息が市場のコンセンサスとなりつつある。

唯一、参考になるデータは新規感染者数の推移のみであり、しばらくこれに左右される展開が続くと考えられる。ただし今後はより、中国以外の感染者数の増加に注目する必要がある。

トランプ大統領の中東和平案を受けて、イスラエルとパレスチナの軍事的な衝突は激しさを増している。

ただ、今回の中東和平案は思いつきでやった、というよりもトランプ政権になってからの親イスラエルによる現状変更を追認した形でありもう逆回転は難しい。米国のエネルギー中東依存度も低く、米国の中東政策は「雑」になりやすい。

イデオロギー的にはアラブ諸国の敗北だが、武装集団や反イスラエル勢力がこの状況を看過するとは考え難い。イスラム国がイスラエルに攻撃を仕掛けるとも表明しており、特にシーア派三日月地帯の治安は悪化し、供給懸念が高まっているのも事実だ。

米・イラン問題は国同士の衝突リスクは低下した。しかし、イランの選挙では反米の保守派が大勝、反米機運が高まる可能性が高く中東の地政学的リスクは高まろう。

シリアとリビアに対する関与を強めているトルコの動向も、地政学的リスクを高めるため懸念されるところ。シリアへの介入はイドリブ県のクルド人を巡る対立で、シリアと全面戦争の可能性もある。リビア介入は、イスラエルのガス田からのガス輸送にかかわる権益の問題。

この他、新型コロナウイルスが中東でも拡大しており、政府への対応の不満がさらに高まって、暴動に発展する可能性が出てきた(暴動事態が感染拡大につながるため、感染拡大中は起きないだろうが、終息後に生活困窮で暴動が起きる可能性)。

米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

FOMCは、緊急利下げを行ったが市場はさらなる利下げを見込んでいる。ファイナンシャルな面で一定の価格下支え効果をもたらすだろう。

新型コロナウイルスの影響で、各国とも財政出動に動くとみられる。米国もすでに新型コロナウイルス対策で78億ドルの支出を下院で可決している。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。新型コロナウイルスの影響で企業活動が低迷していること、中国の港湾再稼働などの強弱材料が混在する中、レンジでの推移を継続している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は中国製造業の稼働再開報道が、域内需要の回復期待を高めているものの、新型肺炎の影響拡大は継続しており終息までは時間がかかることから、電力需要が鈍化、現状水準でもみ合うものと考える。

ただし、中国の石炭輸入は季節的に回復する可能性がある。実際、バルチック海運指数には徐々に底入れ感が出てきている。

長期的には同様の環境規制の強化が石炭供給を減じるため、価格の押し上げ要因となる。欧州の脱炭素の動きは非常にトリッキーだ。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・OPECプラスが▲150万バレルの減産で合意できず、産油国の足並みが乱れ歳入確保のために各産油国の増産バイアスがかかる場合(価格下落要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・世界2位の消費国である中国の輸入減少。1-2月はコロナウイルスの影響はあったが、輸入量は1,062万バレル/日(前月1,007万バレル/日)と高い水準を維持。

しかし、コロナウイルスの影響で3月以降、各国の輸入量が減少する可能性は高く、特に輸送燃料の減少リスクは無視できない状況。

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷していることは、石炭価格の下落要因に。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国とイランの軍事衝突リスクは回避されたが、「レッドゾーン」の水準が低く設定されたこともあり、偶発的な衝突が軍事力行使の懸念を強め、価格が上昇するリスクは残存している。

・米国の中東への関与低下や原油価格の下落、新型コロナウイルスの影響拡大に伴う不満爆発で、中東・北アフリカでの暴動発生。特にシーア派三日月地帯とリビアでの発生リスク。

・シリアイドリブ県を巡る、トルコとシリアの武力衝突懸念(中東の不安定化による供給懸念と、難民流入による南欧州の景況感悪化)。

・米朝交渉は目立った進捗がなく、制裁は継続する見込みであり北朝鮮炭の供給制限も継続されることは、価格の上昇要因(石炭)。

(投機・投資要因)

・WTIはロング・ショートとも増加。しかし明確にショートの増加圧力が強い。恐らく価格下落に備え、生産者が下落リスクヘッジを掛けたためと考えられる。

Brentはロングが減少、ショートが増加。イタリアの感染拡大と、OPEC減産も影響が限定されるとの見方から弱気のポジション取りに。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが563,904枚(前週比 +5,106枚)ショートが175,535枚(+48,203枚)ネットロングは388,369枚(▲43,097枚)

Brentはロングが340,024枚(前週比▲50,869枚)ショートが112,239枚(+9,421枚)ネットロングは227,785枚(▲60,290枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属価格は下落した。米金融緩和や中国の工場再稼働はあるものの、原油価格がOPECプラスの決裂で急落、実質金利が上昇したことが価格を下押しした。しかし、まだレンジワークを継続しているとの印象。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は最大消費国である中国のコロナウイルスの影響緩和や中央銀行の経済対策が価格を押し上げるものの、中国以外の国でのコロナウイルスの感染拡大による経済の強制停止の可能性は高く、原油価格の急落が期待インフレ率を押し下げ、実質金利に上昇圧力が掛かることが価格を押し下げると考えられるため、結局低い水準でのレンジワークになると考える。

非鉄金属の場合、最大消費国である中国の動向が重要になるが、統計上は新規感染者数が減少しているため徐々に下値は堅くなると予想されるものの、中国以外の国の感染者数の増加は続いていること、最も終息が早いと予想される中国も、終息は上手くいって4月末頃とみられることから、しばらく非鉄金属価格は低迷するだろう。

実需の手掛かり材料はかなりの時間差を以って発表されること、市場はまだパニック状態にあることから、原油と同様、オプションの建玉動向が価格動向を占う上で参考になる。

ベンチマークである銅のプットオプションは、5,600ドル、5,300ドルに、コールは5,800ドルと6,000ドルに積み上がっており、この価格帯が攻防線となる。原油価格の急落もあって、もし5,600ドルラインを割り込むと、レンジは5,300ドル~5,600ドルに切り下がると予想される。

2月の中国製造業PMIも、35.7(前月50.0)とリーマンショック時の最低水準を下回った。3月は事態の改善で徐々に稼働は戻ってこようが、時間はかかると予想される。

直近2月のデータが取得できた銅製品生産者の2月の稼働状況は、銅線生産者が34.7%(過去4年平均50.7%)、銅棒生産者40.4%(51.2%)、銅板生産者38.6%(51.8%)、銅管生産者46.5%(63.2%)と低い。

非鉄金属の取引所在庫は急速に積み上がっており、最終製品を製造している企業の稼働は上記の通り低い。非鉄金属業者が政府に対して在庫の買取を要求していることからもわかるように、当面需要が弱い状態が続き、価格も低迷すると予想される。

製造業PMIを詳細にみると、完成品在庫の水準は消費手控えでやや高く(46.0→46.1)、原材料在庫の水準は港湾の機能停止の影響で低い(47.1→33.9)。今後、港湾機能が回復する中で原材料在庫の積み増しが発生、非鉄金属価格にも上昇圧力が掛かると考えられる。

ただし、非鉄金属価格が上昇するには景気への影響が限定されることが必要条件で、さらに中国国内の詳細な情報がもたらされることや、WHOが終息宣言を出すことが必要条件となる。

しかし、中国の新規受注は29.3(前月51.4)と低迷しており、状況は厳しく、回復には時間を要するだろう。現在の感染拡大状況を勘案すると当初見込みの4~5月に終息、との見方は楽観的過ぎるかもしれない。

米中合意は市場に一定の安心感をもたらしたが、新型コロナウイルスの影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

FOMCは、緊急利下げを行ったが市場はさらなる利下げを見込んでいる。ファイナンシャルな面で一定の価格下支え効果をもたらすだろう。

新型コロナウイルスの影響で、各国とも財政出動に動くとみられる。米国もすでに新型コロナウイルス対策で78億ドルの支出を下院で可決している。

中長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。具体的には社会インフラとして「バッテリー」としての需要が高まると予想される、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・最大消費国である中国の製造業PMIは急減速し、リーマンショック時に記録した最低水準を下回った。状況は改善していると伝わっているが、回復にはまだ時間を要する見込み(価格の下落要因)。

在庫水準はほぼ変わっていないが、新規受注(主に国内)が堅調に推移しており、新規受注/完成品在庫レシオには上昇圧力が掛かっている。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているため伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

・1-2月の中国の銅地金・製品の輸入量は2ヵ月で85万トン(前月53万トン)と前年比で+7.2%と増加、銅鉱石・精鉱 377万トン(198万トン)と前年比▲1.2%と小幅な減少となった。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルトなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・亜鉛の精錬キャパシティ不足に伴う需給のタイト化。一方鉱山生産は増加しており、亜鉛精鉱需給は緩和、TCはやや軟化したが高水準を維持。

・環境規制強化・米制裁の影響による石炭価格上昇が、中国の非鉄金属製造コストを高止まりさせる場合。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)を強めた場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・中国政府が地方政府に債券発行枠の増枠を促し、シャドーバンキングを含むアンダーグラウンドな資金調達を認めてでも公共投資を進める方針を示したことは、需要面で価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

・LME指定倉庫在庫の減少が、LMEの倉庫運営ルール変更に伴う保管場所変更の取引の影響である場合、ルールが見直された際に再度、LME指定倉庫在庫が急増する可能性(下落要因)。

(投機・投資要因)

・2月28日付のLMEロング・ショートポジションの動向は、総じて弱気なポジション取りとなった。新型コロナウイルスの影響を懸念したものか。

ロングが増加したのはアルミのみだったが、それ以外の金属はロングの減少とショートの増加が確認されている。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は▲87.2億ドル(前週▲75.1億ドル)と売り越し幅を拡大した。買い越し額の増加率は+16.1%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで▲2,387千トン(前週▲2,141千トン)と全ての金属で売り越し幅を拡大している。ネット売り越しの増加率は+11.5%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格も下落した。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、世界景気の減速懸念で週末を控えた調整売りに押された。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は中国の港湾が再稼働を始めるとの期待感と、ValeやCompanhia Siderurgica Nacionalの生産減少が価格を押し上げるものの、新型コロナウイルスの影響が世界的に拡大しており、経済活動の鈍化懸念が強まる中で需要が減少するため、価格は現状水準でもみ合うと考える。

中国河北省の高炉稼働率は2月28日時点で72.7%(前週72.9%)と再び減速している。鉄鋼製品在庫は積み上がっているが、原材料在庫の水準が低いことが背景にあると考えられる。

2月の鉄鋼業PMIは、総合指数が36.6(前月47.1)と急低下、生産指数も31.3(46.7)と大幅に低下している。新規受注の伸びが国内外で低迷していること(新規受注 32.7(43.8)、輸出新規受注 42.5(49.7))が影響した。

その一方で、完成品在庫は57.5(45.3)と高く、原材料在庫は29.2(51.1)と非常に低い。工場が再稼働して鉄鋼製品在庫の水準が調整されれば、原材料在庫の水準が低いため、再び鉄鉱石価格に上昇圧力が掛かると考えられるが、中国工場の本格稼働は恐らく4月に入ってからと予想される。

米中の通商合意は景況感の改善で鉄鉱石価格・鉄鋼製品価格の上昇要因となるが、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

Valeは生産計画を下方修正したが、それでも2020年は同社の生産が本格再開の可能性が高いこと、景気の底入れは夏以降であると予想されることから、鉄鉱石価格の見通しはやや弱気である。

原料炭は新型肺炎の影響に加え、鉄鋼需要の伸びが欧州・中国を中心に減速していることから、下値余地を探りやすくなっている。しかし、世界的な石炭生産制限の流れを受けて鉄鉱石とは異なり、原料炭の価格中期見通しはやや強気である。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・直近の中国鉄鋼業PMIは36.6(前月47.1)と急速に悪化。新規受注も新型で新規受注も32.7(43.8)に低下している。

一方、最終需要の鈍化で完成品在庫の水準は57.5(45.3)と高く、港湾の稼働停止で原材料在庫の水準は29.2(51.1)と低い。工場再稼働が起きれば、原材料在庫の不足から輸入が増加し、海上輸送鉄鉱石価格の上昇要因となる。

・1-12月期中国工業生産は前年比+5.7%(1-11月期+5.6%)と小幅な改善となったが、12月単月では+6.9%(前月+6.2%)と伸びが加速(フロー需要の増加=価格上昇要因)。

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+5.4%の55兆1,478億元(1-11月期+5.2%の53兆3,718億元)と減速、公的+部門は6.8%(+6.9%)と減速したが、民間部門は+4.7%(+4.5%)とやや持ち直し(ストック需要の改善=価格上昇要因)。

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+9.9%の13兆2,194億元(1-11月期+10.2%の12兆1,265億元)と減速傾向が顕著に。

中国政府は景気刺激に住宅セクターを用いない、と発言しているためさらに伸びが加速するとは考え難い。特に建材であるアルミや配電に用いられる銅の下落要因に。

1-2月の中国の貿易統計では、鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の1,075万トンと減速、コロナウイルスの感染拡大の影響で企業活動が鈍化していることが確認された。

また、燃料炭・原料炭の内訳が出ていないが、石炭輸入は急速に増加し、前年比+33.1%の6,806万トンとなった。「新たなアノマリー」となった中国の季節的な輸入増加によるものだ。

・中国の1-2月の鉄鉱石の輸入量は前年比+1.5%の1億7,684万トンとなった。鉄鋼製品在庫の増加によって生産活動が鈍化している一方、鉄鉱石の港湾在庫の在庫日数は低下しており、一定の在庫積み増し需要があると考えられるため。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比▲70万トンの1億2,625万トン(過去5年平均1億2,638万トン)、在庫日数は+1.6日の27.6日(過去5年平均 36.6日)と在庫日数ベースは過去5年平均を下回り、鉄鉱石の需給ファンダメンタルズはタイト化しているため、鉄鉱石の輸入需要は堅調に推移すると見られる。

・中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+145.8万トンの2,509万トン(過去5年平均1,611.1万トン)とコロナウイルスの影響で製造業の工場の稼働が低迷しているためか、急速に増加している。

なお、1-2月の鉄鋼製品の輸出は前年比▲27.0%の781万トンと大幅に減速しており、やはりコロナウイルスの影響が顕在化した形に。今後は徐々に回復すると見られるが感染終息状況次第である。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、すでにインフラ整備のための投資拡大方針(5年で約160兆円)を示しており、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの影響拡大に伴う、世界的な景気減速懸念の強まり。

・中国政府の経済対策(金融緩和や公共投資など)は価格の上昇要因。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

(投機・投資要因)

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格はまちまち。米雇用統計が市場予想を上回ったことで下落する局面があったが、原油価格の下落が実態経済の減速懸念を想起させ、株価の調整と長期金利の低下で実質金利が押し下がったため、引けにかけて水準を切り上げた。

PGMは最大生産者のAnglo AmericaのRustenburgのWaterval精錬所で爆発が発生、フォースマジュールが宣言されたことで供給懸念が高まり、急速に買戻しが入った。

【貴金属価格見通し】

金価格は景気の先行き懸念の高まりで株価が下落、長期金利が低下して実質金利が低下していること、から高値圏を維持すると考える。

ただし、原油価格も景気の先行きを懸念して急落しており、実質金利の低下圧力を緩和するため上値も重いと予想する。現在、金のリスクプレミアムは162ドル程度まで低下。ほぼヒストリカル平均程度となった。

市場では実質金利の説明力が高まり、信用リスクや地政学的リスクを価格は織り込んでいない。しかし、この状態が続くと再びリスクプレミアムが上昇すると予想される。

イランでコロナウイルスの拡大が続き、トルコはシリアからの難民の欧州流出を停止、欧州情勢が混乱する可能性もあり信用リスクが高まることも十分に考えられるためだ。

リスクプレミアムが大幅に上昇するのは感染拡大の長期化と大規模化で、信用リスクの拡大につながり、終息後に改めて景況感の悪化が意識され、地政学的リスクが高まる場合だろう。

この場合、急落直前のリスクプレミアムが250ドル程度であることを考えると、あと100ドル程度、価格が上昇してもおかしくない。事態の長期化があれば、金価格は1,800ドル程度まで上昇する余地があると見ている。

なお、米中合意は第二弾合意が困難とみられること、中国が米国の要求通り合意を履行するかどうか不明なこと、中国の人権問題が俎上に載せられる可能性があること、などからむしろ今後は金銀価格の上昇リスクとなる可能性がある。

ただ、しばらくは米中合意の履行が肺炎の影響で困難であるため、当面、中国の合意順守未達が材料視されることはなかろう。

銀価格は金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)は再び上昇を始めている。金銀在庫レシオから類推される金銀レシオは、80倍程度が適切と考えられ、20ドル前後まで価格が上昇してもおかしくない。

特にリスク回避姿勢が強まり金が割高となる局面では、割安な銀が投機的な観点から物色される可能性は高かろう。

PGM価格は金銀価格が高値圏を維持する見込みであることから同様に高値を維持すると考えるが、新型コロナウイルスの影響拡大で景気後退懸念が強まっているため、対金銀で割安に推移しよう。

しかし、Anglo Americaのフォースマジュールの影響は小さくなく、しばらくは固有材料で価格は上昇しやすい地合いに。

中国・世界の自動車販売は前年比マイナスが続いているが、徐々に前年比マイナス幅が徐々に縮小し始めていることから、需要面で価格を押し上げる可能性は高い。

2月の米自動車販売は年率1,683万台(市場予想 1,671万台、前月 1,684万台)と、市場予想ほどではないが前月から若干減速した。一方、コロナウイルスの影響が出始めた中国は▲18.0%の194.1万台と減速傾向を持続。

今後、コロナウイルスの影響が拡大する中で、自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因となるだろう。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・FRBは▲0.5%の利下げを行ったが、さらに2回の利下げを市場は織り込んでいる。

ECBに関しては緩和余地がないため、今後は財政出動に動く可能性。日本は追加利下げも、追加財政出動もほとんど余地がない。

・景気の先行きを懸念した株価下落とそれに伴う長期金利・実質金利の低下(金銀価格の上昇要因)。ただし、欧州の政情安定化や、各国の金融緩和などを背景とする景況感の改善で株価が上昇した場合には金銀価格の下落要因。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはニッケルやプラチナ鉱山からの副産物としての生産が大半(80%)であり、プラチナ価格が低迷する中では増産されにくい、

(特殊要因)

・中国の新型ウイルスの世界的な拡大に伴う、安全資産需要の高まり。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・米中通商交渉が部分合意したが、第二弾合意は中国側にメリット少なく、むしろ今後は状況が悪化する可能性の方が高いか。この場合安全資産需要増加で価格の上昇要因。

・トルコとシリアのイドリブ県を巡る対立はロシアとトルコが停戦で合意したものの、再び衝突する可能性は排除できない。この場合、安全資産需要を高め、価格の上昇要因に。

・英国のブレグジットは、移行期間中の合意は容易ではなく、無秩序離脱の可能性はまだなくなっていない。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

(投機・投資要因)

・金はロング・ショートとも減少。株価の下落でポジション解消の動き。銀はロングが減少、ショートも小幅増加している。

PGMは景気への懸念からロングの解消圧力が顕著である。

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが366,173枚(前週比 ▲23,166枚)、ショートが46,440枚(▲7,034枚)、ネットロングは319,733枚(▲16,132枚)、銀が82,570枚(▲24,920枚)、ショートが34,267枚(+1,570枚)、ネットロングは48,303枚(▲26,490枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが49,931枚(前週比 ▲14,042枚)ショートが15,894枚(+2,122枚)、ネットロングは34,037枚(▲16,164枚)

パラジウムが6,936枚(▲1,553枚)、ショートが3,940枚(▲735枚)ネットロングは2,996枚(▲818枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は下落した。株価が続落する中で非景気循環銘柄として物色されていた穀物にも売り圧力が強まったため。

なお、中国政府は米国産大豆の一部の圧搾業者に対して関税の1年間の免除を承認したと伝えられた。

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は再びコロナウイルスの影響への懸念が広がっていることが、非景気循環系商品需要を高めること、FRBの利下げによるドル安進行から価格は押し上げられると考える。

金融緩和や財政出動が起きたとしても、感染拡大防止のためのヒトやモノの移動規制は継続するとみられるため、上昇余地は限定されると考える。新型コロナウイルスの影響は世界各地で五月雨式に発生しており、影響の評価が非常に難しい。

ファンダメンタルズ面では、米トウモロコシの受け渡し可能在庫は過去5年の最高水準を上回っており、大豆も過去5年平均を大幅に上回っている。

しかし、冬場の降雨の影響で2年連続で米生産地が洪水に見舞われており、作付けが予想を下回る可能性が出てきた。

小麦は豪州火災や干ばつ、ロシア・ウクライナの悪天候の影響で供給に懸念が出ていること、シカゴの小麦在庫は過去5年の最低水準を引き続き下回っていることから、上昇圧力が掛かりやすい展開が予想されるが、最終的には帳尻が合いやすい(世界各地で生産されているため)。

今後の市場の注目は大豆、トウモロコシの作付け意向面積。米農務省の予想では、トウモロコシが9,400万エーカー(2019年 8,970万エーカー)、大豆は8,500万エーカー(7,610万エーカー)、小麦が4,500万エーカー(4,520万エーカー)と、トウモロコシの作付けが増加すると見られている。

【価格変動要因の整理】

(マクロ要因)

・2月の米需給報告の生産見通しトウモロコシ136億9,200万Bu(前月136億9,200万Bu)大豆 35億5,800万Bu(35億5,800万Bu)小麦 19億2,000万Bu(19億2,000万Bu)

・2月の米需給報告の在庫見通しトウモロコシ18億9,200万Bu(市場予想18億7,972万Bu、前月18億9,200万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億4,832万Bu、4億7,500万Bu)小麦 9億4,000万Bu(9億5,888万Bu、9億6,500万Bu)

・12月末の四半期在庫トウモロコシ 113億8,900万Bu(市場予想114億7,171万Bu、前月22億2,100万Bu)大豆 35億5,200万Bu(31億9,033万Bu、9億900万Bu)小麦 183億4,000万Bu(190億300万Bu、23億4,600万Bu)

(特殊要因)

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米中通商交渉は部分合意、シカゴ穀物の買い材料となる。しかし、問題の本質は両国の軍事を巡る覇権争いであり、二次合意も難しく中国の合意不履行を材料に両国関係が再び悪化する可能性も考えられ、シカゴ定期の下落要因に。

ただし新型肺炎の影響で、しばらくの間、中国が合意を履行しなくても問題視はされないと予想される。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・エルニーニョ現象は終息したとみられるが、より北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の懸念は排除できず、特に今年の春先以降、価格が上昇する可能性があり、価格の上昇要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

・トランプ政権が製油業者に対する再生可能燃料基準(バイオ燃料の混合を義務付け)の適用を31の製油業者に対して免除していたが、これを撤廃するよう指示したと伝えられたことは、国内向けのエタノール・バイオディーゼル向け需要増加観測を強め、価格の上昇要因に。

(投機・投資要因)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが325,870枚(前週比 +4,042枚)、ショートが320,305枚(▲8,655枚)ネットロングは5,565枚(+12,697枚)

大豆はロングが149,082枚(+834枚)、ショートが137,704枚(▲41,102枚)ネットロングは11,378枚(+41,936枚)

小麦はロングが120,563枚(▲28,347枚)、ショートが93,824枚(▲12,219枚)ネットロングは26,739枚(▲16,128枚)

◆本日のMRA's Eye


「協調減産終了~懸念されるOPECショックの再来」

OPECプラス会合はリスクシナリオとして懸念されていた、「決裂」という形になった。ロシアが追加減産に難色を示す中で、OPECはロシア抜きで▲150万バレルの減産を決定、「追加減産を実施するかどうかは、ロシアに掛かっている」と、決断を丸投げしてロシアを追い込み決断を迫った。

しかし、ロシア政府はロスネフチなどの生産者から追加減産は困難である、と突き上げられており、実際、Brent原油で42ドル程度が財政均衡価格であるとプーチン大統領が表明しているため、現在の価格水準であっても追加減産は不要だった。

そのためロシアは価格の下落が需要を喚起し、早晩需要が回復して元に戻ると主張、両者の溝は埋まらなかった。しかし、ロシアを追い込むOPECのやり方には問題があったといわざるを得ない。この結果、OPECプラス、場合によるとOPECの結束が崩壊する可能性もあり得る。これは2014年11月のOPECショックを彷彿とさせるものだ。

仮に4月から非OPECが宣言通り増産を開始、OPECが現在の減産規模(+サウジアラビアの自主減産)を継続したとすれば、2020年の原油需給バランスは+83万バレル程度の供給過剰になると予想される。特にコロナウイルスの影響が大きい4月~6月は+170万バレル程度の供給過剰となり、原油価格には強い下落圧力が掛かる展開が予想される。

下落を始めると産油国は歳入確保のために増産に舵を切る可能性がある。この場合、価格の目処を設定することは難しいが、Brentは40ドル割れ、WTIも30ドル割れを意識する必要が出てくる(弊社は4月に見通しを変更予定だが、このままの状況に変化がなければ、Q220の価格予想レンジは、Brentで35ドル~45ドル、WTIは30ドル~40ドルになると見ている)。

そしてその結果、OPEC諸国+ロシアをはじめとするOPECプラスは再び協調減産の必要を認識することになり、2014年のOPECショックの時と同じように、「今は未定」、としている6月に再度会合を実施して協調減産が行われる、というのが現在のメインシナリオである。

OPECの結束が崩壊し、カルテルが機能しなくなるというのはリスクシナリオの位置づけだ。

ただ、今回のケースと過去のケースの大きな違いは、「原油価格の下落が、必ずしも需要の喚起につながらない」可能性があることだ。というのも、景気の気の部分が悪化しただけであれば、割安な燃料を使って消費が増えてもおかしくないのだが、今回の需要減少は感染拡大防止を企図したものであり、景気とは関係なく強制的に減少しているものだからだ。

逆に言えば、ロシアの主張するようにここでの減産が価格を押し上げる訳ではない。これはこのコラムで弊社が繰り返し主張しているように、価格を決めるのは需要なのだ。

原油価格の下落は産油国から消費国への所得移転を促すため、コロナウイルスの影響でマインドが悪化している消費国の消費マインドの改善(エネルギー以外の消費をしよう、というマインドの改善)には寄与するだろう。そのため、今回の価格下落は必ずしも悪いものではない。

しかし、懸念すべきは原油価格の下落で北米の低格付け債市場が混乱するケースだろう。BBB格の起債の中で2割程度がエネルギー関連企業であり、原油価格の下落が業績にマイナスし、その他の企業にも波及、信用リスクの拡大を通じて株価が下落して負のスパイラルに入る可能性はある。

ただ、生産者もその時の反省から、価格下落リスクヘッジをデリバティブの相対取引や先物を活用することで実施済のところも多く、エネルギー市場発で信用リスクの拡大が顕在化する可能性はそれほど高くないと考えている。

とはいえ、「実態経済を示す指標」として原油価格が広く認知される中、まだ割高と考えられる株価がシェールオイル企業とは関係なく調整する可能性は十分にあり得る。それを回避するためには、やはり、一にも二にも、コロナウイルスの影響拡大を防止することしかない。

◆主要ニュース


・1月日本毎月勤労統計 現金給与総額 前年比+1.5%(前月▲0.2%)、実質賃金総額 +0.7%(▲1.1%)

・2月日本外貨準備 1兆3,590億ドル(前月1兆3,423億ドル)

・1月日本景気動向指数速報 先行指数 90.3(前月改定 91.0)、景気一致指数 94.7(94.4)

・1月独製造業受注 前月比+5.5%(前月▲2.1%)、前年比▲1.4%(▲8.9%)

・1月米貿易収支赤字 ▲453億ドル(前月改定▲486億ドル)

・2月米雇用統計 非農業部門雇用者数 前月比+273千人(前月改定+273千人(速報比+48千人))
 民間部門雇用者数 +228千人(+222千人)
 製造業雇用者数 +15千人(▲20千人)

・2月米失業率 3.5%(前月 3.6%)
 不完全雇用率 7.0%(6.9%)
 労働参加率 63.4%(63.4%)
 時間当たり平均賃金 前月比+0.3%(+0.2%)、前年比+3.0%(+3.1%)
 週平均労働時間 34.4時間(34.3時間)

・1月米卸売在庫改定 前月比▲0.4%(速報比▲0.2%、前月▲0.3%)、卸売売上高+1.6%(▲0.2%)、売上高在庫率 1.33(1.36)

・1月米消費者信用残高 前月比+120億ドル(前月改定+203億ドル)
 回転信用▲30億ドル(+110億ドル)
 非回転信用+151億ドル(+92億ドル)

・1-2月中国貿易収支 ▲70.9億ドルの赤字(前月472.1億ドルの黒字)
 輸出総額 前年比▲17.2%(+7.6%)、輸入総額▲4.0%(+16.3%)

 輸出年初来ベース
  対米国 前年比 ▲27.7%(▲12.5%)
  対欧州 ▲18.4%(+4.9%)
  対日本 ▲24.5%(▲2.6%)
  対アセアン諸国 ▲5.1%(+12.7%)

 輸入
  対米国 前年比 +2.5%(▲20.9%)
  対欧州 ▲11.4%(+1.1%)
  対日本 ▲9.3%(▲4.9%)
  対アセアン諸国 +7.2%(+5.0%)

・G20、「景気下振れ回避へすべての政策手段を用いる。」

・米国、83億ドルのコロナウイルス対策の緊急予算を成立。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数682(前週比+4)、 ガスリグ 109(前週比▲1)。

・OPECプラス、ロシアが▲150万バレルの減産を拒否したことで決裂。OPECプラスの6月会合開催の可能性は低い。OPECプラスのすべての国は4月以降、協調減産から離脱の見込み。

・サウジアラビア当局、サルマン国王の兄弟と甥を反逆の疑いで拘束。拘束されたのは、ムハンマド・ビン・ナエフ前皇太子と、国王の兄弟であるアフメド・ビン・アブドルアジズ・サウド。ナエフ前皇太子の兄弟も拘束された。

・Morgan Stanley、OPECプラスの減産協議決裂で見通しを下方修正。

 Q220のBrent価格は35ドル(従前見通し57.5ドル)、Q320は40ドル(60ドル)、2021年は50ドル(60ドル)、WTIはQ220が30ドル(52.5ドル)、Q320が35ドル(55ドル)。2020年1月から12月のOPECプラスの生産は+1.4MBD、2020年の需給バランスは+80万バレルの供給過剰、2021年は+90万バレルの供給過剰。2020年のシェールオイル生産は▲20万バレル(従前予想+40万バレル)。

・1-2月中国石炭輸入 6,806万トン(前月277 万トン)

・1-2月中国原油輸入 8,609万トン、1,062万バレル/日(前月4,548万トン、1,086万バレル/日)
 精製石油製品輸入 494万トン(331万トン)
 輸出 1,075万トン(679万トン)

※原油1トン=7.4バレルとして算出。石油製品は種類の内訳が不明のためバレル換算していない。

・1-2月中国天然ガス輸入 1,780万トン(前月951万トン)

・イラン、新型コロナウイルスの死者124人に。

【メタル】
・1-2月中国銅輸入 85万トン(前月53万トン)
 銅鉱石・精鉱 377万トン(198万トン)
 アルミ(未加工品含む) 輸出 67万トン(48万トン)

・1-2月中国鉄鉱石輸入 1億7,684万トン(前月1億130万トン)
 鉄鋼製品輸入 204万トン(148万トン)
 鉄鋼製品輸出 781万トン(468万トン)

・Vale、2020年4月までにVale New Caledoniaの精錬所の操業停止を決定。これによりクラス1ニッケルの供給能力の5%が削減されることに。

・PGMは最大生産者のAnglo AmericaのRustenburgのWaterval精錬所で爆発が発生、フォースマジュール宣言。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.プラチナ ( 貴金属 )/ +4.35%/ ▲6.34%
2.パラジウム ( 貴金属 )/ +1.53%/ +32.82%
3.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +1.30%/ ▲5.59%
4.米国債先物 ( 先進国債券 )/ +0.94%/ +7.49%
5.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +0.84%/ ▲7.70%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
70.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲10.07%/ ▲32.39%
69.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲9.44%/ ▲31.41%
68.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲9.37%/ ▲32.70%
67.DME Oman ( エネルギー )/ ▲9.16%/ ▲32.93%
66.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲8.73%/ ▲18.19%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :25,864.78(▲256.50)
S&P500 :2,972.37(▲51.57)
日経平均株価 :20,749.75(▲579.37)
ドル円 :105.39(▲0.77)
ユーロ円 :118.92(▲0.37)
米10年債利回り :0.76(▲0.15)
独10年債利回り :▲0.71(▲0.02)
日10年債利回り :▲0.12(▲0.01)
中国10年債利回り :2.62(▲0.06)
ビットコイン :9,138.35(+22.54)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.75(+1.77)
エネルギー :45.18(+8.56)
ベースメタル :16.41(▲0.42)
貴金属 :33.33(+1.14)
穀物 :16.94(+0.47)
その他農畜産品 :28.18(+0.53)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :51.44(+14.26)
Brent :47.39(+13.94)
米天然ガス :42.44(+1.66)
米ガソリン :61.87(+9.29)
ICEガスオイル :49.39(+12.67)
LME銅 :11.35(▲0.58)
LMEアルミニウム :13.73(+1.36)
金 :10.72(+0.29)
プラチナ :32.00(+4.76)
トウモロコシ :18.36(+1.31)
大豆 :10.72(+0.29)

【エネルギー】
WTI :41.28(▲4.62)
Brent :45.27(▲4.72)
Oman :45.22(▲4.56)
米ガソリン :138.90(▲13.28)
米灯油 :138.52(▲10.33)
ICEガスオイル :413.25(▲42.75)
米天然ガス :1.71(▲0.06)
英天然ガス :21.85(▲0.50)

【石油製品(直近限月のスワップ)】
Brent :45.27(▲4.72)
SPO380cst :239.63(▲26.98)
SPOケロシン :52.70(▲4.05)
SPOガスオイル :54.02(▲4.05)
ICE ガスオイル :55.47(▲5.74)
NYMEX灯油 :138.89(▲4.02)

【貴金属】
金 :1673.83(+1.60)
銀 :17.35(▲0.09)
プラチナ :905.28(+37.73)
パラジウム :2584.13(+38.82)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :5,640(▲48:27.5B)
亜鉛 :1,998(▲21:19.5C)
鉛 :1,843(+17:37B)
アルミニウム :1,709(▲17:22C)
ニッケル :12,745(▲70:35C)
錫 :16,905(▲95:5B)
コバルト :33,113(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :5630.50(▲40.50)
亜鉛 :1988.00(▲26.00)
鉛 :1839.00(+7.00)
アルミニウム :1685.50(▲32.00)
ニッケル :12835.00(▲60.00)
錫 :16760.00(▲295.00)
バルチック海運指数 :617.00(+18.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR青島) :休場( - )
SGX鉄鉱石 :89.07(▲1.40)
NYMEX鉄鉱石 :89.18(▲0.94)
NYMEX原料炭スワップ先物 :161.13(▲0.81)
上海鉄筋直近限月 :3,466(▲5)
上海鉄筋中心限月 :3,449(▲26)
米鉄スクラップ :294(+6.00)

【農産物】
大豆 :883.25(▲5.75)
シカゴ大豆ミール :301.30(+0.90)
シカゴ大豆油 :28.48(▲0.62)
マレーシア パーム油 :2448.00(▲84.00)
シカゴ とうもろこし :377.25(▲7.25)
シカゴ小麦 :521.25(▲3.00)
シンガポールゴム :159.60(▲2.20)
上海ゴム :10825.00(▲240.00)
砂糖 :13.02(▲0.40)
アラビカ :105.60(▲4.25)
ロブスタ :1220.00(▲31.00)
綿花 :62.97(▲0.56)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :65.93(+0.55)
シカゴ生牛 :105.75(▲2.90)
シカゴ飼育牛 :130.70(▲2.93)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。